数と式|ただ覚えれば良いというわけではなく、使えてこその公式

数学1

文字ばかりで苦労する公式の扱い方

整式について学習した後は「展開」や「因数分解」について学びます。

この展開や因数分解には公式がたくさん出てきます。真面目に公式を覚えたのに、数学が苦手な人がいます。なぜでしょうか。

理系科目全般で共通に言えるのは、「公式を覚えることは大切だが、覚えただけでは解けない」ということです。

「覚える」よりも「使える」ことを意識する

公式は特定の条件であれば必ず同じ結果を得られる数式なので、非常に重宝します。個人的には暗記が苦手な方で、公式などの大切な事柄を覚えるのに非常に苦労しました。

とにかく覚えなきゃ始まりません。そのために、どんな公式を使うのかが分かる基礎レベルの問題(例題の後にある練習問題)を選び、次の手順で公式を覚えていきました。

公式を覚える手順

  1. 練習問題を解くとき、公式を書く。教科書を見ながらで良い。
  2. 公式と問題の式とを見比べて、対応する数や文字を確認する。
  3. 照らし合わせながら対応する数や文字に置き換える
  4. 対応関係を見極めることができるまで反復する。

例として、分配法則を扱った問題を挙げます。

与式の上に公式を書いておきます。公式と与式の対応関係を読み取りやすくなります。対応関係を掴めたら、公式通りに展開した式を書きます。

参考 分配法則

$3x \left( x-2 \right)$ を解け。

\begin{align*} a \left( b+c \right) = \ &ab+ac \quad \text{(公式)} \\[ 10pt ] 3x \left( x-2 \right) = \ &3x \times x + 3x \times \left( -2 \right) \\[ 5pt ] = \ &3{x}^{2}-6x \end{align*}

公式を与式の真上に書くと、対応関係が分かりやすい。

\begin{align*} &\quad a=3x \\[ 7pt ] &\quad b=x \\[ 7pt ] &\quad c=-2 \end{align*}

公式を覚えるとき、ひたすらこの手順を繰り返します。この手順を繰り返すことで、公式を覚えるだけでなく、公式を使う練習もできます。

この手順で公式を覚えると、式を見て公式が使えるかどうかを判断できるようになります。問題と公式が紐づくからです。

公式を頑張って覚えても、覚えた公式が設問で使えることに気づかなければ使いようがない。

文系科目であれば、覚えた事柄がそのまま点数に反映されることが多いですが、理系科目はそうではありません。

たとえば、使う公式は同じであっても、問題によって数や文字が異なることがあります。そうすると、公式をただ暗記しただけではあまり効果がないことが分かるでしょう。

もし、公式を真面目に覚えているにもかかわらず、なかなか点数を取れないのであれば、公式を正しく使えているかを確認してみましょう。

数や文字が変わっても公式を使えていれば問題ありません。おそらく、数や文字が変わると、公式を正しく使えていなかったり、そもそも公式を使えることに気づいていなかったりするのではないかと思われます。

アウトプットとインプットはセットで

実際の問題では、条件は同じでも公式で使われている数や文字と異なることがよくあります。

そのような問題では、出題者が「公式を使いこなせるか」を意図して出題したのだと推測できます。その意図に対応するためにも、使いながら覚えていく」のが効率の良い学習だと思われます。

学習内容を覚えること(インプット)は大事です。しかし、最終的には、覚えた事柄を出せること(アウトプット)ができなければなりません。

なぜなら、試験ではアウトプットできるかどうかを試されているからです。このことはどの科目にも言えることです。

ただ、数学を始めとした理系科目では、「公式がどんな条件のときに使えて、どのように公式を使うのか」までをインプットしておかなければ、試験ではアウトプットできません。

ですから、まとめ学習は、文系科目で有効であっても、理系科目ではあまり役に立たないのかもしれません。そうなると、理系科目の学習では、まとめ学習中心よりも問題演習中心の方が効率的だと言えそうです。

公式などの基本事項をただ暗記することを目的とした学習はNG。演習をこなしながら覚えていく感覚で。

公式の背景や条件は、公式の成り立ち(導出の過程)から知ることができます。たいていの公式の場合、これらは教科書や参考書に記載されています。

また、例題で公式の使い方を知ることができます。そして、練習問題で実際に使ってみて、公式の当てはめ方を知ることができます。このような手順を踏むことで、理系科目では公式を使える状態にできます。

文系科目と理系科目とでは問題で要求されることが異なります。ですから、学習の取り組み方を少し変えると良いでしょう。

公式を覚えるときは導出もセットで

公式を覚えていても、公式がどのように導出されたかを知っている人は少ないです。

「公式は暗記するもの」という感覚であれば、それはどちらかと言うと文系科目での学習のやり方です。そのやり方であれば、あらゆる問題の方針や模範解答まで丸暗記しないと理系科目では通用しないでしょう。

すべてを丸暗記することは現実的ではありません。それに、覚えるためには理解が伴います。理解の伴わない暗記は、短期記憶であり、数日経てば忘れてしまうものです。長期記憶にするためには、理解を伴います。

先ほども言ったように、公式を使えることが大切です。公式を十全に使いこなすには、「どんな条件のとき公式が導出されたのか」という背景を知ることが必ず役に立ちます。

たとえば、三平方の定理が図形以外の問題で使えるでしょうか?

三平方の定理は直角三角形で成り立つ定理なので、直角三角形が出てこない限り使わない定理です。

このように公式が導出された背景をもう少し意識的に学習できれば、公式の成り立ちを理解でき、公式の使い所も分かるでしょう。

公式の使い所が分かれば、設問の条件によって「このままでは使えない」とか「これだけ条件が揃えば使える」と言った判断もできるようになります。

たとえば、直角三角形の辺の長さを求める問題で、3辺のうち1辺の長さが与えられているとします。このとき、三平方の定理を利用しても、他の辺の長さを求めることはできません。

三平方の定理を使うには、3辺のうち2辺の長さが分かっている必要があるからです。

公式がどのようにして導出されたのかを意識的に学習しよう。

公式を自分で導出できるようにしよう

公式を自分で導出できることには利点があります。

公式の導出には、今まで学習してきたことを利用します。既習内容を駆使して公式を導出するので、かなりの復習になります。

既習内容を復習しながら、数式の扱い方を知ったり、新たな学習内容とのつながりを知ったりと恩恵は計り知れません。また、この経験は融合問題を解くときにも役立ちます。

公式の導出は既習内容の復習だけでなく、数式の扱い方や学習内容のつながりを知ることができる。

その点を踏まえて書かれたのが教科書です。いきなり公式だけが出てくるような構成になっていません。既習内容を踏まえて、条件の定義、そして公式の導出という流れになっています。

公式の背景や成り立ちを知れば、公式に対する理解が深まります。そして、公式がただの数字や文字の羅列ではなく、きちんと意味を持ったものに見えてくるはずです。

数式が数字と文字の羅列にしか見えない場合、公式の導出に取り組んでみよう。数式が意味をもつものだと分かる。

数式を扱う力を養おう

高校数学を学習するのに必要なものは「数式を扱う力」かもしれません。数式を扱う力がないと、公式はもちろん、条件式の導出や変形もできないからです。

特に、数学1の「数と式」では、高校数学に出てくる数式を扱う基礎を学習します。この単元がどのくらい浸透しているかによって、数学の得意・不得意が決まるような気がします。そのくらい大事な単元です。

「数と式」の単元では、整式について学習した後、展開や因数分解を学習します。この展開や因数分解はほとんどの問題で利用されます。

展開と因数分解の単元はセットで学習した方が効率的です。この際、比重を置くのは、断然、因数分解です。

展開のやり方は実質的に1つだけなので、公式を覚えていなくても式を展開することができます。それに対して、因数分解はそれほど簡単ではありません。

因数分解では、与式が公式に当てはまる式かどうかで方針が変わります。その見極めができないと、上手に因数分解することができません。

ですから、因数分解の方に比重を置きつつ、合わせて学習していきましょう。

Recommended books(公式集・事典)

公式や定理をまとめた数学事典です。1冊あると便利です。

おすすめ その1

「数学」の公式・定理・決まりごとがまとめてわかる事典

導出が丁寧に記載されている公式集を1冊もっておくと困ったときに辞書代わりになります。 ポケットサイズのものと違いサイズが少し大きいので、図が豊富です。

おすすめ その2

高校数学公式活用事典第4版

公式・定理・定義は左ページ、活用例・解説・証明は右ページの見開き構成になっているので、使いやすいです。

おすすめ その3

モノグラフ 公式集5訂版

難関大を志望している人向けです。大学に進学してからも使えます。ただ、出版日が古いので、別の公式集でも良いかもしれません。

おすすめ 番外

知っておきたい数学や科学の知識が一目で分かる事典です。重要な人物、理論、発見や概念をそれぞれ1ページで解説してあります。

Recommended books(計算)

計算力は重要な要素となります。試験では考える時間を多く取るために、いかに計算を手早く行うかが重要です。

計算力の有無は、数学2・Bや数学3では顕著になります。計算に時間がかかりすぎては解けるものも解けません。後悔しないためにも日頃からしっかり鍛えておきましょう。

これから紹介する教材で気になるものがあれば、ぜひ一読してみて下さい。気に入ったら最後まで徹底的にこなしましょう。

オススメその1『合格る計算数学1・A・2・B

オススメその2『鉄緑会 基礎力完成 数学Ⅰ・A+Ⅱ・B

大事なことは、自分に合った教材を徹底的に活用することです。どの教材を選ぶにしても、自分の目で中身を確認し、納得してから購入することが大切です。

さいごに、もう一度まとめ

  • 「覚える」ことではなく「使える」ことを目標に公式を覚える。
  • 公式に当てはめる練習をして「公式の使い方」を覚える。
  • 教科書の例題が公式の使い方の一番易しい取り扱い説明書。
  • 公式の導出を意識的に学習して、条件やつながりなどを知る。