数と式|因数分解にはコツがある。因数分解の手順の見つけ方について
因数分解にはコツがあります。因数分解の手順の見つけ方を知っているかどうかで決まります。
手順の見つけ方を知っていれば、方針を立てやすくなります。慣れてくれば反射的に解けるようになるので、計算のスピードも上がるでしょう。
しっかりマスターして、自信を持って式を扱えるようになりましょう。
因数分解のために乗法公式を必ず覚えよう
因数分解でよく使われるものに乗法公式があります。乗法公式は展開のためだけではなく、因数分解のときにも利用します。
よく使われる式には、以下のような式があります。
よく使われる乗法公式
\begin{align*} &1 \ \left\{ \begin{array}{l} a^2 +2ab+ b^2 = \left( a+b \right)^2 \\[ 7pt ] a^2 -2ab+b^2 = \left( a-b \right)^2 \end{array} \right. \\[ 10pt ] &2 \quad a^2 -b^2 = \left(a−b \right)^2 \\[ 10pt ] &3 \quad x^2 +\left( a+b \right)x +ab= \left( x+a \right) \left( x+b \right) \\[ 10pt ] &4 \quad acx^2 + \left( ad+bc \right)x +bd= \left( ax+b \right) \left( cx+d \right) \end{align*}これらのような基本的な公式を利用できる形を作り出すことが、因数分解を進めていく上でのポイントになります。
自分が勝負できる土俵に持ち込むことが大切。型に嵌めるのが数学の問題を解くときのコツ。
因数分解のポイントは5つ
因数分解をするとき、押さえておくべきポイントが5つあります。
因数分解の5つのポイント
- 共通因数
- 置き換え
- 最低次数の文字
- 平方の差
- 因数分解の可能性の有無
以下、それぞれのポイントについて解説します。
因数分解のポイント1 共通因数
因数分解のポイントの1つ目は「共通因数でくくる」です。これは因数分解をするときに最優先で確認したいポイントです。
すべての項に共通な因数があれば、最初にその因数を共通因数としてくくり出します。
例1
共通因数 $3axy$ でくくる
\begin{align*} &3a^2 xy^4−6ax^2 y^3+15a^2 xy \\[ 7pt ] = \ &3axy \left( ay^3−2xy^2+5a \right) \end{align*}例1のように共通因数がすぐに見つかれば良いですが、そうでないものもあります。
その場合、項の組合せを工夫して、自分で共通因数を作り出します。
例2
項の組み合わせを工夫する
\begin{align*} &{\left( x+y \right)}^{2}+\underline{yz+xz} \\[ 7pt ] = \ &{\left( x+y \right)}^{2}+z \underline{\left( x+y \right)} \end{align*}自分で $(x+y)$ を作った
入試レベルだと、例2のような問題が多くなる。与式を良く観察しよう。
因数分解のポイント2 置き換え
因数分解のポイントの2つ目は「同じ形をしたものには置き換えを利用する」です。
与式の中に同じ形をしたものが見られる場合があります。特に、同じ形をしたものが多項式であるとき、1つの文字に置き換えてみましょう。式が格段にスッキリするはずです。
例3
多項式を $1$ つの文字に置き換える
$(x+1)=X$ とおくと
\begin{align*} &2{\left( x+1 \right)}^2−13 \left( x+1 \right) +15 \\[ 7pt ] = \ &2X^2−13X+15 \end{align*}多項式(x+1)をXに置き換えたことで、与式がスッキリして扱いやすい形になりました。
また、次数が高い場合、乗法公式を利用できないことがよくあります。このようなとき、たとえば置き換えによって次数を下げることもあります。
例4
単項式を $1$ つの文字に置き換える
$x^2=X$ とおくと
\begin{align*} &2x^4−13x^2+15 \\[ 7pt ] = \ &2X^2−13X+15 \end{align*}例4では、置き換えによって4次式が2次式になりました。これなら乗法公式も使えそうです。
項の組合せを工夫して自分で作り出すときもあります。
例5
作り出したものを $1$ つの文字に置き換える
\begin{align*} &\left( x+1 \right) \left( x+2 \right) \left( x+3 \right) \left( x+4 \right)−8 \\[ 7pt ] = \ &\left\{ \left( x+1 \right) \left( x+4 \right) \right\} \left\{ \left( x+2 \right) \left( x+3 \right) \right\}−8 \quad \Leftarrow \ \left( \ast 1 \right) \\[ 7pt ] = \ &\left\{ \left( {x}^{2}+5x \right) +4 \right\} \left\{ \left( {x}^{2}+5x \right) +6 \right\}−8 \\[ 7pt ] = \ & \left( X+4 \right) \left( X+6 \right)−8 \quad \Leftarrow \ \left( \ast 2 \right) \\[ 7pt ] = \ &X^2+10X+16 \end{align*}$\left( \ast 1 \right)$ … 交換法則と結合法則を利用
$\left( \ast 2 \right)$ … $x^2+5x=X$ とおいた
多項式を1つの文字に置き換えるやり方は、式の扱い方を大きく変えてくれるのでぜひマスターしておこう。
因数分解のポイント3 最低次数の文字
因数分解のポイントの3つ目は「2種類以上の文字を含む式では、最低次数の文字について整理する」です。
与式によっては2種類以上の文字を含むときがあります。このような式では、最低次数の文字に着目して式を整理してみましょう。
例6
最低次数の文字について整理する
$a$ について整理すると
\begin{align*} &4b^2+2ab−3a−9 \\[ 7pt ] = \ &a \left( 2b−3 \right) + \left( 4b^2−9 \right) \\[ 7pt ] = \ &a \left( 2b−3 \right) + \left( 2b+3 \right) \left( 2b−3 \right) \end{align*}例6の式では、aは1次、bは2次なので、次数の低いaについて与式を整理します。すると、共通因数の(2b-3)を作ることができます。
2種類以上の文字があっても、最低次数が同じときがあります。そのようなときでも特定の文字について整理します。
例7
最低次数が同じときも特定の文字について整理する
$x$ について整理すると
\begin{align*} &x^2−xy−2y^2−x−7y−6 \\[ 7pt ] = \ &x^2+ \left( −y−1 \right)x− \left( 2y^2+7y+6 \right) \\[ 7pt ] = \ &x^2+ \left( −y−1 \right)x− \left( y+2 \right) \left( 2y+3 \right) \\[ 7pt ] = \ &\left\{ x+ \left( y+2 \right) \right\} \left\{ x− \left( 2y+3 \right) \right\} \end{align*}例7の式ではx,yの次数はともに1次ですが、xについて与式を整理します。頻出のたすき掛け2セットの式です。
因数分解のポイント4 平方の差
因数分解のポイントの4つ目は「複2次式では、置き換えが上手くいかなければ、平方の差を作る」です。
(参考)複2次式
\begin{align*} \quad ax^4+bx^2+c \end{align*}最高次数が4次である複2次式を因数分解するとき、まず考えられるのはx2=Xの置き換えによって次数を落とすことです。
基本的な取り組みとしては良いのですが、このやり方で上手くいかないときがあります。そんなとき、平方の差を作ってみましょう。
(参考)平方の差になっている乗法公式
\begin{align*} \quad a^2−b^2=\left( a−b \right) \left( a+b \right) \end{align*}平方の差を利用するとき、4次の項と定数項に注目するのがコツです。
4次の項と定数項が出てくるような、カッコの2乗の形を作ります。
例8
平方の差をつくる
$4$ 次の項と定数項に着目すると
\begin{align*} &\underline{x^4}+4x^2\underline{+16} \\[ 7pt ] = \ &x^4+8x^2+16\underline{−4x^2} \\[ 7pt ] = \ &\left( x^2 +4 \right)^2−\left( 2x \right)^2 \end{align*}4次の項と定数項が出てくるような、カッコの2乗の形にするためには、2次の項の係数を調整する必要があります。
下線を引いた2次の項が調整部分になります。この項が出てこないと、式全体を因数分解することができません。
一見、次数を落とせば因数分解できそうだができない式。平方の差を利用する式では、係数がすべて正の数になっていることが多い。
因数分解のポイント5 因数分解の可能性の有無
因数分解のポイントの5つ目は「カッコの中の式について因数分解の可能性の有無を確認する」です。
このポイントは、因数分解が終わったと思ったときの注意点のようなものです。
ちょっと複雑な式の因数分解になると、実は複数の因数分解があるにもかかわらず、最初の因数分解が終わったことで安心する人がいます。
例9
まだ因数分解できる式
\begin{align*} &\vdots \\[ 7pt ] = \ &\left( x−1 \right) \left( \underline{x^2+3x−4} \right) \end{align*}2つ目のカッコ内にある2次式に注目しましょう(下線部分)。この2次式は、因数分解できる式です。これに気付かずに終わってしまうと、正解にはなりません。
カッコの中の式の次数が2次以上であれば、これ以上因数分解できないか確認しよう。
また、係数が有理数の範囲で可能な限り因数分解する必要があります。式に分数が含まれる場合、正解は1つとは限りません。
例10
係数が有理数の範囲で因数分解する
\begin{align*} &x^2−x+ \frac{1}{4} \\[ 7pt ] = \ &\left( x− \frac{1}{2} \right)^2 \end{align*}次の例11は、例10とどこが異なるのか比較してみましょう。
例11
係数が有理数の範囲で因数分解する
$\frac{1}{4}$ でくくってから因数分解すると
\begin{align*} &x^2−x+ \frac{1}{4} \\[ 7pt ] = \ &\frac{1}{4} \left( 4x^2−4x +1 \right) \\[ 7pt ] = \ &\frac{1}{4} \left( 2x−1 \right)^2 \end{align*}例10,11は同じ式を因数分解しています。しかし、結果は異なる形になりました。
それでも有理数の範囲で因数分解できているので、どちらも正解になります。このように複数の正解がある因数分解もあるので注意しましょう。
特に断りがない場合、係数が有理数となる範囲で可能な限り因数分解しよう。
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さいごにもう一度まとめ
- まず共通因数を探そう。
- 同じ多項式を見つけたら、1つの文字に置き換えてみよう。
- 同じ単項式を見つけたら、1つの文字に置き換えて次数を落としてみよう。
- 2種類以上の文字を含む式では、最低次数の文字について整理してみよう。
- 複2次式で置き換えが上手くいかないとき、平方の差を作ってみよう。
- 2次以上の式が残っているとき、これ以上因数分解できないかを確認しよう。