数と式|整式の因数分解について

今回は、前回の記事で解説した整式の展開と関係の深い整式の因数分解です。
展開と因数分解の関係は、互いに逆の操作になります。ですからセットで学習するのが効率的です。
参考
数と式|整式の展開と乗法公式について
参考
数と式|整式の展開に関する問題を解いてみよう
因数分解の定義
因数分解とは、数や多項式などを、それらを掛け合わせると元に戻る因数の積に分解することです。
たとえば $15$ という数を因数分解すれば、$3 \times 5$ という積で表すことができます。この $3 \ , \ 5$ を $15$ の因数と言います。もちろん、$1 \times 15$ という積でも表すこともできるので、$1 \ , \ 15$ も $15$ の因数です。
単項式(数)の因数分解
単項式のうち、数だけの単項式を因数分解してみます。
たとえば $6$ を因数分解すると、$6$ は $1 \times 6$ や $2 \times 3$ などの積で表せます。他には負の数を使って積を表せますが、今回は省略します。
因数を見てみると、もとの数 $6$ の約数であることが分かります。数を因数分解するとき、もとの数の約数を考えると因数を探しやすくなります。
文字を含む単項式の因数分解
単項式のうち、文字を含む単項式を因数分解してみます。
たとえば単項式 $2a$ を因数分解すると、$2a = 2 \times a$ であるので、因数は $2$ と $a$ です。
もともと単項式は積の形で表された式であり、乗算の計算記号を省略した形であるので、因数を考えるのはそれほど難しくありません。
多項式の因数分解
多項式の因数分解であっても積で表すことに変わりはありません。多項式をいくつかの数や式の積で表すためには、展開の知識が必要になります。
展開は、数や式を使った積を1つの多項式(和の形)で表すことでした。ですから、展開する前の状態に戻せば、数や式を使った積で表すことができるはずです。
因数分解については色々な表現の仕方があります。
- 因数分解の説明の仕方
- 展開する前の状態に戻す作業(展開と逆の操作)
- 式を和の形から積の形に変形する作業
- 式をカッコなしの状態からカッコありの状態に変形する作業
展開前の式に戻せば、乗算する数や式が因数になります。特に、多項式の因数分解では、因数には多項式が含まれるので注意が必要です。
展開のやり方が分配法則だけであるのに対して、因数分解のやり方は与式によって異なります。そういう意味では、展開よりも因数分解の方が難しさを感じるかもしれません。
因数分解の典型的なパターンを2つ取り上げるので、それらをきちんとマスターしておきましょう。
展開のやり方は2パターン
展開の本質は分配法則でした。ただ、乗法公式で展開した場合、分配法則で展開したあとに同類項を整理するので、項数が変わっています。単純に分配法則だけで展開した場合は項数が変わりません。
これを踏まえて展開を分類すると、主に2パターンに分類できます。
- 乗法公式に当てはまらず、分配法則で展開した場合
- 乗法公式に当てはまり、公式で展開した場合
乗法公式に当てはまらず、分配法則で展開した場合
単項式と多項式の積を分配法則で展開した場合
乗法公式に当てはまらず、分配法則で展開するのは、ほとんどが単項式と多項式の積を展開する場合です。
$a \left( b+c \right)$ を分配法則で展開するときを考えます。同じ $a$ をカッコ内の多項式 $b+c$ に乗算すると展開できます。
a \left( b+c \right) = a \times b + a \times c
\end{equation*}
展開後の式を見ると、各項に共通の $a$ が存在します。
この $a$ は、各項に共通にあり、かつ各項における因数です。このような数や式のことを共通因数と言います。乗法公式に当てはまらず、分配法則で展開した後の式には、共通因数が必ず存在します。
ab + ac = a \left( b+c \right)
\end{equation*}
共通因数 $a$ が見つかったら、分配法則を使う前の式に戻すだけです。戻し方は手順通りにやれば簡単です。
- 共通因数 $a$ を先頭に置く。
- 共通因数 $a$ の後ろにカッコを書く。
- カッコの中に、共通因数 $a$ を除いた部分 $b+c$ をそのまま書く。
このパターンの因数分解では共通因数を見つけることがポイントです。この共通因数での因数分解は、因数分解を考えるとき最優先するパターンなので、必ずマスターしておきましょう。
多項式どうしの積を分配法則で展開した場合
これが多項式どうしの積を分配法則で展開した場合、ちょっと様子が異なります。
多項式のどうしの積を分配法則で展開した場合、分配法則を2セット行っています。展開の様子を良く観察すると、後ろの多項式 $c+d$ に $a$ と $b$ を乗算しています。
この場合、展開後の式には共通因数 $a$ をもつ項と共通因数 $b$ をもつ項とが存在することになります。式全体で共通因数が存在しないのが特徴です。
そこで同じ共通因数を持つ項だけでそれぞれ因数分解をします。すると、新たな共通因数 $c+d$ が現れます。
ac + ad + bc + bd = a \left( c+d \right) + b \left( c+d \right)
\end{equation*}
新たな共通因数 $c+d$ でくくると、因数分解の終了です。このように共通因数でくくる作業を2セット行うことで、与式を因数分解することができます。
展開の計算過程を逆に戻っているだけなので、難しく考えないことです。分配法則を2セット行って展開したので、それと逆の作業である因数分解も2セット行います。
次からが高校数学でよく出てくる因数分解になります。