式と証明|二項係数と等式の証明について

数学2

数学2 式と証明

今回は、二項係数と等式の証明について学習しましょう。

二項定理が式の展開以外にも用いられることを知るための単元と言えます。証明問題の中でも易しいので、二項定理の式を覚えるために単元にしましょう。

二項定理と二項係数について

二項定理は、二項式の累乗とその展開式との間に成り立つ関係を式で表したものです。

以下のような式で表すことができます。

二項定理 1⃣

\begin{align*} ( a+b )^{n} = \ &{}_n \mathrm{ C }_0 a^{n} + {}_n \mathrm{ C }_1 a^{n-1} \ b + {}_n \mathrm{ C }_2 a^{n-2} \ b^{2} + \\[ 7pt ] &\qquad \cdots + {}_n \mathrm{ C }_r a^{n-r} \ b^{r} + \cdots + {}_n \mathrm{ C }_n b^{n} \end{align*}

二項定理を利用するのは、4次式以上の展開のときです。2次式や3次式の展開では公式を利用しますが、公式を忘れていたら、二項定理を利用すると良いでしょう。

また、展開式において、各項の係数のことを二項係数と言います。

二項定理の二項係数

\begin{align*} \quad {}_n \mathrm{ C }_r \quad ( r=0 \ , \ 1 \ , \ 2 \ , \cdots \cdots , n ) \end{align*}

二項係数は、組合せの総数によって表されます。

これから学習する等式の証明では、等式に二項係数を含むものが出てきます。そのような等式が成り立つことを、二項定理を用いて証明しようというのがここで学習することです。

等式の証明では、先ほどの二項定理の式だけでなく、以下の式が用いられることもあります。

二項定理 2⃣

$a=1 \ , \ b=x$ とおくと

\begin{align*} \quad ( 1+x )^{n} = \ &{}_n \mathrm{ C }_0 1^{n} + {}_n \mathrm{ C }_1 1^{n-1} \cdot x + {}_n \mathrm{ C }_2 1^{n-2} \cdot x^{2} + \\[ 7pt ] &\qquad \cdots + {}_n \mathrm{ C }_r 1^{n-r} \cdot x^{r} + \cdots + {}_n \mathrm{ C }_n x^{n} \end{align*}

右辺を整理すると

\begin{align*} \quad ( 1+x )^{n} = \ &{}_n \mathrm{ C }_0 + {}_n \mathrm{ C }_1 x + {}_n \mathrm{ C }_2 x^{2} + \\[ 7pt ] &\qquad \cdots + {}_n \mathrm{ C }_r x^{r} + \cdots + {}_n \mathrm{ C }_n x^{n} \end{align*}

この式では、カッコ内にある二項式が、xの1次式になっています。この1次式は本当によく用いられますが、a,bを他の数や文字に置き換えることで、色々な展開式を導出することができます。

等式の証明では、a,bやxが何らかの数に置き換えられています。結局のところ、等式の証明とは「a,bやxがどんな数に置き換わりましたか?」という問題を解くことです。

二項係数で表される等式

たとえば、二項定理を利用する等式の証明では、以下の等式が成り立つことを証明します。

扱われる等式の例

\begin{equation*} \quad {}_n \mathrm{ C }_0 + {}_n \mathrm{ C }_1 + {}_n \mathrm{ C }_2 + \cdots + {}_n \mathrm{ C }_r + \cdots + {}_n \mathrm{ C }_n = 2^{n} \end{equation*}

この等式の左辺は、二項係数の和で表されています。このような多項式が出てくれば、二項定理の利用を考えましょう。

先ほどのxの1次式を用いた式と見比べてみましょう。

2つの等式を比較する

\begin{align*} {}_n \mathrm{ C }_0 + {}_n \mathrm{ C }_1 x + {}_n \mathrm{ C }_2 x^{2} + \cdots + {}_n \mathrm{ C }_r x^{r} + \cdots + {}_n \mathrm{ C }_n x^{n} &= ( 1+x )^{n} \quad \cdots \text{①} \\[ 10pt ] {}_n \mathrm{ C }_0 + {}_n \mathrm{ C }_1 + {}_n \mathrm{ C }_2 + \cdots + {}_n \mathrm{ C }_r + \cdots + {}_n \mathrm{ C }_n &= 2^{n} \quad \cdots \text{②} \end{align*}

左辺どうし、右辺どうしを見比べてみると対応関係がよく分かります。例に挙げた等式(②式)は、①式にx=1を代入したときの等式であることが分かります。

左辺が二項係数の和となっていて特徴的なので、二項定理を利用するかどうかはすぐに判断できます。

二項定理を扱った等式の証明では、a,bやxにどんな値を代入すれば良いのかを考えることがポイントです。思ったほど難易度が高くないので、コツを掴めば得点源にできるでしょう。

二項係数の和

先ほど導出されたように、二項係数の和は2nで表されます。この等式の意味を考えてみましょう。

二項係数の和

\begin{align*} {}_n \mathrm{ C }_0 + {}_n \mathrm{ C }_1 + {}_n \mathrm{ C }_2 + \cdots + {}_n \mathrm{ C }_r + \cdots + {}_n \mathrm{ C }_n = 2^{n} \end{align*}

n個の異なるものから選ぶとき、その選び個数は1個のときもあれば、2個のときもあります。ここでは、特に個数が指定されていないので、r個としています。

ここで、rは0,1,2,……,nのときを考えるので、すべての選び方を考えていることになります。

つまり、左辺はn個の異なるものから0,1,2,……,n個を選ぶ場合の数の合計を表しています。言い換えると、選び方の総数を考えていると言えます。

また、n個のそれぞれについて考えてみると、1つ1つは「選ばれる」か「選ばれない」の2通りずつとなります。ですから、選び方の総数は、右辺のように2nとなります。

具体例で考えてみましょう。3個の異なるものから選ぶとき、選び方の総数を考えます。

3個の異なるものから選ぶときの選び方の総数

  • 3個から0個を選ぶとき、その場合の数は ${}_3 \mathrm{ C }_0$
  • 3個から1個を選ぶとき、その場合の数は ${}_3 \mathrm{ C }_1$
  • 3個から2個を選ぶとき、その場合の数は ${}_3 \mathrm{ C }_2$
  • 3個から3個を選ぶとき、その場合の数は ${}_3 \mathrm{ C }_3$

それぞれの場合の数の合計(和)が選び方の総数

3個の異なるものの選び方は、以上の4通りあります。これらの場合の数の合計が、選び方の総数になります。

場合の数の合計を求めるには、それぞれの場合の数を足し算します。

場合の数の合計を計算する

\begin{align*} &{}_3 \mathrm{ C }_0 + {}_3 \mathrm{ C }_1 + {}_3 \mathrm{ C }_2 + {}_3 \mathrm{ C }_3 \\[ 7pt ] = \ &1 + 3 + 3 +1 \\[ 7pt ] = \ &8 \\[ 7pt ] = \ &2^{3} \end{align*}

3個の1つ1つの選び方は「選ばれる」か「選ばれない」の2通りずつなので、その選び方の総数は23になります。上の計算結果から分かるように、場合の数の合計は23に等しくなりました。

ちなみに、この関係は、場合の数や確率の単元でも利用できるので覚えておくと良いでしょう。

覚えておきたい式

($n$ 個の異なるものから $r$ 個を選ぶときの場合の数の合計)$=2^{n}$

次は、二項定理を扱った等式の証明問題を実際に解いてみましょう。

二項定理を扱った等式の証明問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

次の等式を証明せよ。

\begin{align*} &(1) \quad {}_n \mathrm{ C }_0 \ – {}_n \mathrm{ C }_1 + {}_n \mathrm{ C }_2 \ – \cdots + (-1)^{r} {}_n \mathrm{ C }_r + \cdots + (-1)^{n} {}_n \mathrm{ C }_n = 0 \\[ 10pt ] &(2) \quad {}_n \mathrm{ C }_0 \ – \frac{{}_n \mathrm{ C }_1}{2} + \frac{{}_n \mathrm{ C }_2}{2^{2}} \ – \cdots \cdots + (-1)^{n} \frac{{}_n \mathrm{ C }_n}{2^{n}} = \frac{1}{2^{n}} \end{align*}

問(1),(2)は、二項係数の和を用いた等式なので、二項定理を利用する問題です。等式をよく観察して、どの式を利用するかを考えましょう。

二項定理の式を使い分けよう

\begin{align*} ( a+b )^{n} = \ &{}_n \mathrm{ C }_0 a^{n} + {}_n \mathrm{ C }_1 a^{n-1} \ b + {}_n \mathrm{ C }_2 a^{n-2} \ b^{2} + \\[ 7pt ] &\qquad \cdots + {}_n \mathrm{ C }_r a^{n-r} \ b^{r} + \cdots + {}_n \mathrm{ C }_n b^{n} \quad \cdots \text{①} \\[ 10pt ] ( 1+x )^{n} = \ &{}_n \mathrm{ C }_0 + {}_n \mathrm{ C }_1 x + {}_n \mathrm{ C }_2 x^{2} + \\[ 7pt ] &\qquad \cdots + {}_n \mathrm{ C }_r x^{r} + \cdots + {}_n \mathrm{ C }_n x^{n} \quad \cdots \text{②} \end{align*}

問(1)の解答・解説

問(1)

次の等式を証明せよ。

\begin{align*} \quad {}_n \mathrm{ C }_0 \ – {}_n \mathrm{ C }_1 + {}_n \mathrm{ C }_2 \ – \cdots + (-1)^{r} {}_n \mathrm{ C }_r + \cdots + (-1)^{n} {}_n \mathrm{ C }_n = 0 \end{align*}

右辺が0であることに注目します。xの1次式を用いた等式(②式)で考えると、x=-1を代入すれば導出できそうです。

問(1)の解答例

二項定理より

\begin{align*} \quad ( 1+x )^{n} = {}_n \mathrm{ C }_0 + {}_n \mathrm{ C }_1 x + {}_n \mathrm{ C }_2 x^{2} + \cdots + {}_n \mathrm{ C }_r x^{r} + \cdots + {}_n \mathrm{ C }_n x^{n} \end{align*}

この式に $x=-1$ を代入すると

\begin{align*} \quad ( 1-1 )^{n} = {}_n \mathrm{ C }_0 + {}_n \mathrm{ C }_1 \cdot (-1) + {}_n \mathrm{ C }_2 \cdot (-1)^{2} + \cdots + {}_n \mathrm{ C }_r \cdot (-1)^{r} + \cdots + {}_n \mathrm{ C }_n \cdot (-1)^{n} \end{align*}

よって

\begin{align*} \quad {}_n \mathrm{ C }_0 \ – {}_n \mathrm{ C }_1 + {}_n \mathrm{ C }_2 \ – \cdots + (-1)^{r} {}_n \mathrm{ C }_r + \cdots + (-1)^{n} {}_n \mathrm{ C }_n = 0 \end{align*}

偶数番目の項の符号がマイナスであることに注意しましょう。このような場合、xに負の数を代入すると上手くいきます。

問(1)は基本的な問題なので、確実に正解できるようにしておきましょう。

問(2)の解答・解説

問(2)

次の等式を証明せよ。

\begin{align*} \quad {}_n \mathrm{ C }_0 \ – \frac{{}_n \mathrm{ C }_1}{2} + \frac{{}_n \mathrm{ C }_2}{2^{2}} \ – \cdots \cdots + (-1)^{n} \frac{{}_n \mathrm{ C }_n}{2^{n}} = \frac{1}{2^{n}} \end{align*}

問(2)も二項定理を利用して等式を証明します。分母が2の分数が出てきていることに注目しましょう。

また、左辺の偶数番目の項の符号がマイナスになっています。問(1)と同じように、xに負の数を代入すれば良いと予想できます。

xの1次式を用いた等式(②式)で考えると、x=-1/2を代入すれば導出できそうです。

問(2)の解答例

二項定理より

\begin{align*} \quad ( 1+x )^{n} = {}_n \mathrm{ C }_0 + {}_n \mathrm{ C }_1 x + {}_n \mathrm{ C }_2 x^{2} + \cdots \cdots + {}_n \mathrm{ C }_n x^{n} \end{align*}

この式に $x = -1/2$ を代入すると

\begin{align*} \quad \left( 1-\frac{1}{2} \right)^{n} = {}_n \mathrm{ C }_0 + {}_n \mathrm{ C }_1 \cdot \left(-\frac{1}{2} \right) + {}_n \mathrm{ C }_2 \cdot \left(-\frac{1}{2} \right)^{2} + \cdots \cdots + {}_n \mathrm{ C }_n \cdot \left(-\frac{1}{2} \right)^{n} \end{align*}

ここで

\begin{align*} &\quad \left( 1-\frac{1}{2} \right)^{n} = \left( \frac{1}{2} \right)^{n} = \frac{1}{2^{n}} \\[ 10pt ] &\quad {}_n \mathrm{ C }_1 \cdot \left(-\frac{1}{2} \right) = {}_n \mathrm{ C }_1 \cdot (-1) \cdot \frac{1}{2} = \ -\frac{{}_n \mathrm{ C }_1}{2} \\[ 10pt ] &\quad {}_n \mathrm{ C }_2 \cdot \left(-\frac{1}{2} \right)^{2} = {}_n \mathrm{ C }_2 \cdot (-1)^{2} \cdot \frac{1}{2^{2}} = \frac{{}_n \mathrm{ C }_1}{2^{2}} \\[ 10pt ] &\quad {}_n \mathrm{ C }_n \cdot \left(-\frac{1}{2} \right)^{n} = {}_n \mathrm{ C }_n \cdot (-1)^{n} \cdot \frac{1}{2^{n}} = (-1)^{n} \frac{{}_n \mathrm{ C }_n}{2^{n}} \end{align*}

であるので

\begin{align*} \quad {}_n \mathrm{ C }_0 \ – \frac{{}_n \mathrm{ C }_1}{2} + \frac{{}_n \mathrm{ C }_2}{2^{2}} \ – \cdots \cdots + (-1)^{n} \frac{{}_n \mathrm{ C }_n}{2^{n}} = \frac{1}{2^{n}} \end{align*}

指数法則を上手に利用して式変形します。指数法則はどの単元でもよく用いられるので、使いこなせるようにしておきましょう。

二項係数を用いた等式の証明では、二項定理の式にどのような数を代入すれば良いのかを考えることがポイントです。代入する数さえ分かってしまえば、あとは式変形だけなので、完答するチャンスの多い問題です。

記述試験でよく出題されますが、他の証明問題に比べると説明の記述がほとんどないので、得点源にしておきましょう。

Recommended books

計算力は重要な要素となります。試験では考える時間を多く取るために、いかに計算を手早く行うかが重要です。

計算力の有無は、数学2・Bや数学3では顕著になります。計算に時間がかかりすぎては解けるものも解けません。後悔しないためにも日頃からしっかり鍛えておきましょう。

これから紹介する教材で気になるものがあれば、ぜひ一読してみて下さい。気に入ったら最後まで徹底的にこなしましょう。

オススメその1『合格る計算数学1・A・2・B

オススメその2『鉄緑会 基礎力完成 数学Ⅰ・A+Ⅱ・B

大事なことは、自分に合った教材を徹底的に活用することです。どの教材を選ぶにしても、自分の目で中身を確認し、納得してから購入することが大切です。

さいごにもう一度まとめ

  • 二項係数を用いた等式では、二項定理の式を利用しよう。
  • 二項係数を用いた等式では、二項定理の式に適当な値を代入しよう。
  • 二項定理の式と見比べて、代入する値を推測しよう。
  • 指数法則をきちんと使えるようにしておこう。