数式を処理中: 100%

式と証明|不等式の証明について(平方の差をつくる)

数学2

数学2 式と証明

今回は不等式の証明の応用について学習しましょう。

不等式の証明では、差をつくることが基本です。ただ、問題によっては、差をつくっても大小を比較することができないものがあります。

根号や絶対値を含む不等式の証明

不等式を証明する問題では、左辺と右辺の差から正負を調べることが基本的な解法です。しかし、根号や絶対値を含む式になると、単に差をつくっても大小を比較することができません。

差をつくっても計算が進まない

5a+b(3a+4b)ab(ab)

根号や絶対値があると、差をつくることはできても、それ以上、計算することができないことが原因です。

根号や絶対値を含む式の大小比較

式に根号や絶対値が含まれる場合、式の大小比較では以下の性質を利用します。

正の数の大小と平方の大小

A0 , B0のときA>B  A2>B2  A2B2>0

平方した2数を用いて、大小比較します。平方した2数の大小関係は、もとの2数の大小関係に等しくなります。

ただし、比較する2数がともに0以上(または正)であることが条件です。この条件は問題文に明記されていることがほとんどです。もし、条件が明記されていなければ、性質を利用するために自分で断りを入れましょう。

このような性質を利用すれば、根号や絶対値を含む不等式であっても証明できるようになります。

不等式を証明してみよう

例題から不等式の証明でのポイントを確認してみましょう。

例題

次の不等式が成り立つことを証明せよ。

また、(1) の等号が成り立つのはどのようなときか。

(1)a0 , b0 のとき5a+b3a+4b(2)a>b>0 のときab>ab

例題(1)の解答・解説

例題(1)

次の不等式が成り立つことを証明せよ。

また、(1) の等号が成り立つのはどのようなときか。

a0 , b0 のとき5a+b3a+4b

証明したい不等式には、根号が含まれます。このような不等式を証明するには、平方の差を利用します。性質を利用するために必要な条件が与えられていることを確認しましょう。

与式を見ると、左辺と右辺が等しい、または左辺が右辺よりも大きいことが分かります。ですから、(左辺)2-(右辺)2≧0を導くことができれば、不等式を証明することができます。

平方の差をつくります。

例題(1)の解答例 1⃣

(左辺)2(右辺)2= (5a+b)2(3a+4b)2

差が0以上であると誰が見ても分かる形を導かなければなりません。平方の差を整理します。

例題(1)の解答例 2⃣

=(5a+b)2(3a+4b)2=25(a+b)(9a+24ab+16b)=16a24ab+9b=(4a3b)2

平方の差を整理すると、平方完成して多項式の2乗を導くことができました。

a,bの条件をもとに、平方の差が0以上であることを示します。このとき、実数の性質を利用します。

例題(1)の解答例 3⃣

=(5a+b)2(3a+4b)2=(4a3b)2ここで、a , b はともに 0 以上の実数であるので4a3bも実数である。よって(4a3b)20すなわち(5a+b)2(3a+4b)20したがって(5a+b)2(3a+4b)2

平方の差から、左辺の平方と右辺の平方との大小関係を示すことができました。

平方の差の結果を利用して、平方する前の左辺と右辺の大小関係を示します。

例題(1)の解答例 4⃣

(5a+b)2(3a+4b)2ここで5a+b0 , 3a+4b0であるので5a+b3a+4b

平方する前の左辺と右辺の大小関係を示すとき、もとの左辺と右辺が0以上(または正)であることを必ず記述しておきましょう。

さいごに、等号が成立するときを考えます。等号が成り立つのは、差が0となるときです。①式を利用します。

例題(1)の解答例 5⃣

(4a3b)205a+b3a+4bまた、等号が成立するのは①より(4a3b)2=0となるときである。このとき4a3b=0より4a=3bすなわち16a=9bのとき、等号が成り立つ。

等号が成り立つのは、平方の差が0になるときです。平方の差が0になるには、平方する前の左辺と右辺がともに等しくなくてはなりません。

このことから、①式を利用します。等号が成り立つ条件を考えるのは、与えられた不等式ではなく、平方の差を利用しましょう。

例題(2)の解答・解説

例題(2)

次の不等式が成り立つことを証明せよ。

a>b>0 のときab>ab

証明したい不等式には、根号が含まれます。ですから、基本的な方針は(1)と変わりません。性質を利用するために必要な条件が与えられていることを確認しましょう。

与式を見ると、左辺が右辺よりも大きいことが分かります。ですから、(左辺)2-(右辺)2>0を導くことができれば、不等式を証明することができます。

平方の差をつくります。

例題(2)の解答例 1⃣

(左辺)2(右辺)2= (ab)2(ab)2

差が0より大きい(正である)と誰が見ても言える形を導かなければなりません。平方の差を整理します。

例題(2)の解答例 2⃣

=(ab)2(ab)2=(ab)(a2ab+b)=2ab2b=2b(ab)

平方の差を整理すると、(1)のような形を導くことができません。しかし、差の正負を調べることができる形には変形できました。

平方完成できなくても、差の正負を調べることができれば問題ありません。慌てないようにしましょう。

a,bの条件をもとに、平方の差が0より大きい(正である)ことを示します。

例題(2)の解答例 3⃣

=(ab)2(ab)2=2b(ab)ここで、a>b>0 であるので2b(ab)>0よって(ab)2(ab)2>0すなわち(ab)2>(ab)2

平方の差から、左辺の平方と右辺の平方との大小関係を示すことができました。

平方の差の結果を利用して、平方する前の左辺と右辺の大小関係を示します。

例題(2)の解答例 4⃣

(ab)2>(ab)2ここでab>0 , ab>0であるのでab>ab

平方する前の左辺と右辺の大小関係を示すとき、もとの左辺と右辺が0以上(または正)であることを必ず記述しておきましょう。

また、(2)の不等式には等号がないので、等号が成り立つときの条件を考える必要はありません。

正の数の大小と平方の大小

A0 , B0 のとき(※絶対に記述すること!)A>B  A2>B2  A2B2>0

次は、根号を含む不等式の証明を扱った問題を実際に解いてみましょう。