数と式|一次不等式について

今回は「一次不等式」について学習します。一次不等式では不等式の性質を利用します。
参考 数と式|不等式について
一次不等式について
一次不等式とは、特定の文字についての一次式を用いた不等式のことです。なお、一次式とは文字を含む項の最高次数が $1$ である式のことです。
参考 数と式|整式について
たとえば、文字 $x$ についての一次式を挙げると以下のようになります。
このような一次不等式では、不等式の性質を用いて式変形することで、文字 $x$ の値の範囲を求めることができます。不等号を使っているので、解が文字 $x$ の値の範囲で与えられることが方程式などの解とは異なります。
一次不等式に関わる用語
一次不等式でも専門的に使う用語が出てきます。問題文や解説などでも使われるので、出題の意図を読み取れるようにしっかり覚えましょう。
- 一次不等式の解
- 一次不等式を解く
一次不等式の解とは文字(未知数)の取りうる値の範囲のことです。また、一次不等式を解くとは解を求めることです。一次不等式を解くためには、不等式の性質を利用しながら式を変形します。
一次不等式を解く流れ
一次不等式を解く流れは、一次方程式と基本的に変わりません。
方程式のときと同じように、文字を含む項を左辺に集め、定数項を右辺に集めます。
- 左辺に文字を含む項を集め、右辺に定数項を集めて整理する。
- 左辺の項の係数を見て、その逆数を乗算する。
- 右辺の乗算をすると、解が得られる。
逆数を乗算するのは、特定の文字の係数を $1$ にするためです。
移項の仕組みをもう一度確認
方程式や不等式の解を求めるために、式変形をします。その中でもよく利用するのが移項です。この移項は「両辺に正負の数を加算しても等式や不等式が成り立つ」という性質を利用しています。
実際には両辺に同じ数を加算しているのですが、片方の辺は相殺されてしまいます。そうすると、あたかも一方の辺から他方の辺に項が移動したように見えます。だから移項と呼ばれます。
一次方程式や一次不等式を解くとき、両辺に数を加算するのは不要な項をなくすのが目的なので、同じ数を加算するのと同じ効果のある移項で済ませてしまいます。
一次不等式の解を数直線で表す
一次不等式を解くと、解が不等式で得られます。この不等式が文字(未知数)が取り得る値の範囲を表します。たとえば、解が $x \gt -3$ であれば、$-3$ より小さい数はすべて解になります。
このような一次不等式の解を扱う場合、解を数直線で表すと、取り得る値の範囲を可視化できるので、非常に分かりやすくなります。
不等式を図示するとき、たとえば「$3$ 以上なのか」「$3$ より大きいのか」が分かるように図示します。不等号が等号を含む記号 $\geqq \ , \ \leqq$ のときは●(黒丸)で表し、含まない記号 $\gt \ , \ \lt$ ときは○(白丸)で表します。
一次不等式を扱った問題を解いてみよう
2問とも文字 $x$ についての一次不等式です。不等式の性質を用いて式変形し、一次不等式を解きます。
第1問の解答・解説
1. \quad 3x+2 \gt x-4
\end{equation*}
文字 $x$ を含む項を左辺に、定数項を右辺に集めるために移項します。移項した項の符号が変わることに注意しましょう。移項後、それぞれの辺を整理します。
3x+2 &\gt x-4 \\[ 5pt ]
3x-x &\gt -4-2 \\[ 5pt ]
2x &\gt -6
\end{align*}
その後、左辺の文字 $x$ の係数を $1$ にする処理を行います。この処理は、文字 $x$ の係数 $2$ の逆数を両辺に掛けるか、または係数 $2$ で割るかのどちらか好きな方で行います。整理すると、一次不等式の解が得られます。
&\vdots \\[ 5pt ]
2x &\gt -6 \\[ 5pt ]
\frac{2x}{2} &\gt \frac{-6}{2} \\[ 5pt ]
x &\gt -3
\end{align*}
第2問の解答・解説
2. \quad \frac{x+1}{3} \leqq x-1
\end{equation*}
一次方程式と同じように、分数や小数があれば整数にすることから始めましょう。
第2問では、分母が $3$ の分数があるので、両辺に $3$ を掛けて分母を払います。これが終われば第1問と同じ流れで式を変形していきます。
\frac{x+1}{3} &\leqq x-1 \\[ 5pt ]
\frac{x+1}{3} \times 3 &\leqq \left( x-1 \right) \times 3 \\[ 5pt ]
x+1 &\leqq 3x-3 \\[ 5pt ]
x-3x &\leqq -3-1 \\[ 5pt ]
-2x &\leqq -4
\end{align*}
左辺と右辺にそれぞれ項が1つだけの式になるように変形するのが目標です。
さいごに文字 $x$ の係数を $1$ にする処理をして整理すると、一次不等式の解が得られます。
&\vdots \\[ 5pt ]
-2x &\leqq -4 \\[ 5pt ]
\frac{-2x}{-2} &\geqq \frac{-4}{-2} \\[ 5pt ]
x &\geqq 2
\end{align*}
負の数を乗除算したので、不等号の向きが逆向きになります。解答例は以下のようになります。
一次不等式を解くとき、変形の流れを把握して目標の式の形へ変形していくことが大切です。
さいごに、もう一度まとめ
- 一次不等式は、特定の文字についての一次式を用いた不等式のこと。
- 一次不等式の解は、文字(未知数)の取りうる値の範囲になる。
- 一次不等式の解を求めることを、一次不等式を解くという。
- 一次不等式の解は、数直線で表すと分かりやすい。
- 解を図示するとき、等号があれば●(黒丸)で表す。
- 解を図示するとき、等号がなければ○(白丸)で表す。
- 大小は矢印の向きで表す。