数学2
今回は、2次方程式の解と判別式について学習しましょう。
2次方程式の解や判別式については、すでに数学1で学習していますが、そのときと異なることがあります。それは、数の範囲が広がっていることです。
数学1では実数までを扱っていましたが、この単元では実数だけでなく、虚数も含む複素数までを扱っています。ですから、解の種類についてもう少し詳細に分類できるようになります。
2次方程式の解法
2次方程式の解法には、主に2通りの解法が挙げられます。
2次方程式の解法
- 解法1 因数分解して解を求める。
- 解法2 解の公式に代入して解を求める。
一般に、解の公式を利用できれば、上手く因数分解できなくても、2次方程式の解を求めることができます。ここでは、解の公式に絞って解説します。
2次方程式の解の公式は、方程式の係数や定数項で表される式です。導出の過程を知っておくと、式の成り立ちをよく理解できるでしょう。
2次方程式の解の公式
\begin{align*}
&\text{$a \ , \ b \ , \ c$ を実数とする。また、$a \neq 0$} \\[ 5pt ]
&\text{このとき、$2$ 次方程式} \\[ 5pt ]
&\quad ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0 \\[ 7pt ]
&\text{の解は} \\[ 10pt ]
&\quad x= \frac{-b \pm \sqrt{b^{\scriptsize{2}}-4ac}}{2a} \\[ 10pt ]
&\text{特に、$b=2b’$ のとき、$2$ 次方程式} \\[ 5pt ]
&\quad ax^{\scriptsize{2}}+2b’x+c=0 \\[ 7pt ]
&\text{の解は} \\[ 10pt ]
&\quad x= \frac{-b’ \pm \sqrt{b’^{\scriptsize{2}}-ac}}{a}
\end{align*}
解の公式が2つありますが、1次の項の係数が偶数かどうかで使い分けます。
公式を導出すると以下のようになります。式変形の訓練にちょうど良いので、力試しに取り組んでみると良いでしょう。
2次方程式の解の公式の導出 1⃣
\begin{align*}
ax^{\scriptsize{2}}+bx+c &=0 \\[ 7pt ]
a \left(x^{\scriptsize{2}}+\frac{b}{a}x \right)+c &=0 \quad \text{($a$ でくくる)} \\[ 7pt ]
a \left\{ \left(x+\frac{b}{2a} \right)^{\scriptsize{2}}-\left(\frac{b}{2a} \right)^{\scriptsize{2}} \right\}+c &=0 \quad \text{(平方完成)} \\[ 7pt ]
a \left\{ \left(x+\frac{b}{2a} \right)^{\scriptsize{2}}-\frac{b^{\scriptsize{2}}}{4a^{\scriptsize{2}}} \right\}+c &=0 \\[ 7pt ]
a \left(x+\frac{b}{2a} \right)^{\scriptsize{2}}-\frac{b^{\scriptsize{2}}}{4a} +c &=0 \quad \text{($a$ で分配法則)} \\[ 7pt ]
a \left(x+\frac{b}{2a} \right)^{\scriptsize{2}} &=\frac{b^{\scriptsize{2}}}{4a} -c \quad \text{(左辺から右辺へ移項)} \\[ 7pt ]
a \left(x+\frac{b}{2a} \right)^{\scriptsize{2}} &=\frac{b^{\scriptsize{2}}-4ac}{4a} \quad \text{(右辺を通分)} \\[ 7pt ]
\left(x+\frac{b}{2a} \right)^{\scriptsize{2}} &=\frac{b^{\scriptsize{2}}-4ac}{4a^{\scriptsize{2}}} \quad \text{(両辺を $a$ で割る)} \\[ 7pt ]
x+\frac{b}{2a} &= \pm \sqrt{\frac{b^{\scriptsize{2}}-4ac}{4a^{\scriptsize{2}}}} \quad \text{(両辺の平方根をとる)} \\[ 7pt ]
x+\frac{b}{2a} &= \frac{\pm \sqrt{b^{\scriptsize{2}}-4ac}}{2a} \\[ 7pt ]
x &= \frac{\pm \sqrt{b^{\scriptsize{2}}-4ac}}{2a}-\frac{b}{2a} \quad \text{(左辺から右辺へ移項)} \\[ 7pt ]
x &= \frac{-b \pm \sqrt{b^{\scriptsize{2}}-4ac}}{2a} \quad \text{(右辺を通分)}
\end{align*}
公式の導出を見ると分かるように、2次方程式の解の公式は、平方完成を利用して導出されます。
また、1次の項の係数が偶数のときは以下のようになります。
2次方程式の解の公式の導出 2⃣
特に、$b=2b’$ のとき
\begin{align*}
\quad x &= \frac{-2b’ \pm \sqrt{\left(2b’ \right)^{\scriptsize{2}}-4ac}}{2a} \\[ 7pt ]
&= \frac{-2b’ \pm \sqrt{4b’^{\scriptsize{2}}-4ac}}{2a} \\[ 7pt ]
&= \frac{-2b’ \pm \sqrt{4\left(b’^{\scriptsize{2}}-ac \right)}}{2a} \\[ 7pt ]
&= \frac{-2b’ \pm 2 \sqrt{b’^{\scriptsize{2}}-ac}}{2a} \\[ 7pt ]
&= \frac{-b’ \pm \sqrt{b’^{\scriptsize{2}}-ac}}{a}
\end{align*}
これまでの2次方程式では、整式を扱っていました。しかし、複素数を学習したこともあり、今後、方程式の係数はすべて実数として扱います。また、方程式の解は複素数の範囲で考えなければなりません。
方程式の係数が整数とは限らない。方程式の解も実数解だけとは限らない。
2次方程式の解の種類の判別
解の公式で得られる2次方程式の解を考えます。このとき、根号の中の式に注目すると、解を分類することができます。これが解の種類の判別です。
「負の数の平方根は存在しない」という平方根の定義を思い出しましょう。この定義を用いれば、根号の中にある式の値によって、解の種類を分類できることが分かるでしょう。
解の公式において、根号の中にある式に注目します。
判別式の定義 1⃣
\begin{align*}
&\text{$2$ 次方程式} \\[ 5pt ]
&\quad ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0 \\[ 7pt ]
&\text{の解は} \\[ 5pt ]
&\quad x= \frac{-b \pm \sqrt{b^{\scriptsize{2}}-4ac}}{2a} \\[ 7pt ]
&\text{ここで、} \\[ 5pt ]
&\quad D = b^{\scriptsize{2}}-4ac \\[ 7pt ]
&\text{とおくと} \\[ 5pt ]
&\quad x= \frac{-b \pm \sqrt{D}}{2a}
\end{align*}
一般に、根号の中にある式をDで表し、判別式と呼びます。
判別式という用語を知っていても、何を判別できるのかを説明できる人は意外と多くありません。2次方程式の解の種類を判別する式だから「判別式」と言います。
2次方程式の解を、判別式の値に応じて分類します。これまでと異なるのは、判別式の値が負のときです。
2次方程式の解の種類の判別
\begin{align*}
&\quad x= \frac{-b \pm \sqrt{D}}{2a} \\[ 10pt ]
&(1) \ D \gt 0 \ \text{のとき、$+\sqrt{D}$ と $-\sqrt{D}$ が存在するので、} \\[ 5pt ]
&\quad \text{$2$ 次方程式は異なる $2$ つの実数解をもつ。} \\[ 10pt ]
&(2) \ D = 0 \ \text{のとき、$\pm \sqrt{D}=0$ となるので、} \\[ 5pt ]
&\quad \text{$2$ 次方程式は重解(ただ $1$ つの実数解)をもつ。} \\[ 10pt ]
&(3) \ D \lt 0 \ \text{のとき、負の数の平方根となるので、} \\[ 5pt ]
&\quad \text{$2$ 次方程式は異なる $2$ つの虚数解をもつ。}
\end{align*}
まとめると以下のようになります。
2次方程式の解と判別式
\begin{align*}
&\quad x= \frac{-b \pm \sqrt{D}}{2a} \\[ 10pt ]
&(1) \quad D \gt 0 \ \Leftrightarrow \ \text{異なる $2$ つの実数解をもつ} \\[ 5pt ]
&(2) \quad D = 0 \ \Leftrightarrow \ \text{重解をもつ} \\[ 5pt ]
&(3) \quad D \lt 0 \ \Leftrightarrow \ \text{異なる $2$ つの虚数解をもつ} \\[ 10pt ]
&\text{なお、$(1)$ と $(2)$ をまとめて} \\[ 5pt ]
&\quad D \geqq 0 \ \Leftrightarrow \ \text{実数解をもつ} \\[ 10pt ]
&\text{また、$(3)$ について、$2$ つの虚数解は} \\[ 5pt ]
&\text{互いに共役な複素数}
\end{align*}
一般に判別式と言う場合、上記の式を覚えておけば問題ありません。
また、1次の項の係数が偶数のとき、判別式をもう少し簡単な式で表せます。計算が楽になるので、余裕があれば覚えておくと良いでしょう。
判別式の定義 2⃣
\begin{align*}
&\text{$2$ 次方程式} \\[ 5pt ]
&\quad ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0 \\[ 7pt ]
&\text{の解は} \\[ 5pt ]
&\quad x= \frac{-b \pm \sqrt{b^{\scriptsize{2}}-4ac}}{2a} \\[ 7pt ]
&\text{ここで、} \\[ 5pt ]
&\quad D = b^{\scriptsize{2}}-4ac \\[ 7pt ]
&\text{とおく。} \\[ 5pt ]
&\text{$b=2b’$ のとき}
\end{align*}
\begin{align*}
\quad D &= \left(2b’ \right)^{\scriptsize{2}}-4ac \\[ 7pt ]
&= 4b’^{\scriptsize{2}}-4ac
\end{align*}
\begin{align*}
&\text{両辺を $4$ で割ると} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{D}{4} = b’^{\scriptsize{2}}-ac
\end{align*}
1次の項の係数が偶数のとき、判別式を4で割っても、判別式の値の正負には影響しません。ですから、このような変形をしても問題ありません。
1次の項の係数が偶数のときは、解の公式はもちろんですが、判別式も簡単な式になります。これらを利用すれば計算ミスを減らせるので、使いこなせるようにしておきましょう。
次は、2次方程式の解と判別式を扱った問題を実際に解いてみましょう。