運用力を鍛える英文法基礎【第7回】
問7の訂正例
【問7】日本語訳を参考に、次の英文の文法的な誤りを直しなさい。
Nobody thinks that she is a doctor, but he believes to be true.
「誰も彼女が医者だとは思っていないが、彼は本当だと信じている」
※英文には文法的な誤りがあります
前ページに目を通した人には簡単ですが、基本的に文法的な誤りと言えば、述語動詞(V)の語法の誤りがほとんどです。ですから、述語動詞(V)から確認していくと良いでしょう。
参考にする日本語訳が意訳になっています。これはわざとそうしてあります。このまま考えると間違いやすいので、主語や目的語などを補って考えましょう。
日本語訳を補完する
「誰も彼女が医者だとは思っていないが、彼は本当だと信じている」
⇒「誰も彼女が医者だとは思っていないが、彼はその話(そのこと、それ)が本当だと信じている」
等位接続詞「but」の前の節には、特に日本語訳を補完しませんでした。それに対して、後ろの節には日本語訳を補完したので、「but」以降の節に注目します。
後半の節の述語動詞(V)は「believe」です。動詞「believe」は、一般に他動詞(Vt)として用いられます。「人・人のことばを信じる」などの意味では第3文型(SVO)をとり、「AがBだと考える」などの意味では第5文型(SVOC)をとります。
「彼は[その話(そのこと、それ)が本当だ]と信じている」という捉え方をすれば、that 節を用いた第3文型(SVO)が候補になりそうです。しかし、不定詞句「to be true」があるので、不定詞節を用いた表現だと予想できます。
問7の英文を文法的に正しい英文に直すと以下のようになります。
問7の訂正例
× but he believes to be true
〇 but he believes it to be true
彼はその話(そのこと、それ)が本当だと信じている
不定詞句を無視すれば、以下も可
〇 but he believes that it is true
〇 but he believes it true
不定詞句「to be true」を生かせば、第5文型(SVOC)の文になります。また、訂正例の要素は以下の通りです。
訂正例の要素
Nobody / thinks / [ that ] she is a doctor,
誰も/ 思っていない / 彼女が医者だとは(彼女が医者であることを)
- S+Vt+O,:第3文型(SVO)
- 主語(S):Nobody
- 述語動詞(Vt):thinks
- 目的語(O):that she is a doctor=that+S’V’C’【that節】
[ but ] I / believe / it / to be true.
[しかし]、私は / 信じている / それ(その話、そのこと)が / 本当だと
- but+S+Vt+O+C:第5文型(SVOC)
- 等位接続詞:but
- 主語(S):I
- 述語動詞(Vt):believe
- 目的語(O):it
- 補語(C):to be true【不定詞句】
- [ it to be true ]=不定詞節
訂正例では、不定詞節の形にしています。文型の分類では第5文型(SVOC)の文になります。
日本語訳に引っ張られると、文の要素を忘れがちになります。英文の5文型を意識して日本語訳を確認することが大切です。
接続詞 but について
「but」についても少し解説しておきます。「but」は「and, or」などとともに等位接続詞として働きます。
等位接続詞は、語・句・節などを対等の関係で結びつけます。等位接続詞で結ばれた語・句・節などは、意味の上でも同じ重みをもつのが特徴です。重みの異なる主節と従属節をつなぐ従位接続詞とは異なるので注意しましょう。
問7の文では、「but」が、その前後にある2つの節を同じ重要度でつないでいます。ですから、「thinks」と「believe」を英文の述語動詞(V)として扱います。
文型や語法についての解説がある辞書を使おう
文法の知識は文法書で身に付けられますが、あくまでも原理原則です。個別の単語については説明不足の場合があります。そんなときに辞書があります。
辞書にも扱いやすいものとそうでないものがあります。それは個々人がもつ知識の量が原因です。高校英語の初学者だと、十分な語彙力とは言えないので、できるだけ多くの情報をまとめた辞書を持った方が無難です。
初学者にお勧めの辞書は『ライトハウス英和辞典』です。慣れもあるかもしれませんが、レイアウトがすっきりしていて、とにかく読みやすい辞書です。
語義、熟語、語法なとが分かりやすくまとめてあります。また、類義語との比較もまとめてあるので、細かなニュアンスの違いも知ることができます。
使っていて特に助かるのは、動詞の場合、例文と合わせて文型が示してあることです。 意味に合わせて文型が分かるので、単語の意味を覚えるだけにはなりません。 辞書によっては文型が示されていないので、自分で考えることになります。
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『コンパスローズ英和辞典』には文型の情報がありませんが、実用的な辞書だと思います。