運用力を鍛える英文法基礎【第8回】
問8の訂正例
【問8】日本語訳を参考に、次の英文の文法的な誤りを直しなさい。
I was made apologize when I was seen beating my brother.
「弟をたたいているのを見られて、謝らされた。」
※英文には文法的な誤りがあります
従位接続詞 when の前後で2つの節がつながれています。when の前の節が主節で、後ろの節が従属節です。
主節の述語動詞(V)は「was made」です。従属節の述語動詞(V)は「was seen」です。使役動詞「make」と知覚動詞「see」の受動態です。
使役動詞や知覚動詞が第5文型(SVOC)をとるとき、補語(C)には不定詞や分詞などの準動詞が用いられます。特に、不定詞の場合、to のない原形不定詞が用いられます( get は除く)。
原形不定詞が用いられる場合、受動態にすると、目的語(O)が主語(S)になるので、2つの動詞が並んでしまします。そのため原形不定詞は to 不定詞にしなければなりません。
問8の英文を文法的に正しい英文に直すと以下のようになります。
問8の訂正例
× I was made apologize
〇 I was made to apologize
「私は謝らされた」
原形不定詞の部分をto不定詞に訂正します。訂正例の要素は以下の通りです。
訂正例の要素
I / was made / to apologize
私は / 謝ることを / 強制された
- S+Vi+C:第2文型(SVC)【主節】
- 主語(S):I
- 述語動詞(Vi):was made
- 補語(C):to apologize
[ when ] I / was seen / beating my brother.
[ とき ]、私が / 弟をたたいているのを / 見られた
- when S+Vi+C:第2文型(SVC)【従属節】
- 従位接続詞:when
- 主語(S):I
- 述語動詞(Vt):was seen
- 補語(C):beating my brother
第5文型(SVOC)の受動態では、目的語(O)が主語(S)になり、目的語がなくなります。ですから、構造上、第2文型(SVC)の文になります。
補語(C)の不定詞と現在分詞の意味の違い
従属節には、知覚動詞「see」が用いられています。補語(C)には原形不定詞ではなく、現在分詞が用いられています。
知覚動詞の場合、補語(C)に現在分詞や過去分詞などの分詞をとることも頻繁にあります。原形不定詞でも現在分詞でも違いがなさそうですが、違いがちゃんとあります。
原形不定と現在分詞の意味の違い
a) I saw a dog barking at my brother.
「私は1匹の犬が兄(弟)に向かって吠えているのを見た」
b) I saw a dog bark at my brother.
「私は1匹の犬が兄(弟)に向かって吠えるのを見た」
- 現在分詞の場合:「犬が吠えている(途中の)瞬間を見た」という意味
- 原形不定詞の場合:「犬が吠える」という行為を1つのまとまりとしてとらえた言い方
「知覚動詞+目的語(O)+現在分詞」は、「 O が~しているところを見る〔聞く〕」のように、何かをしている動作の途中の一部を示すのが原則です。
それに対して、「知覚動詞+目的語(O)+原形不定詞」は、「 O が~するのを見る〔聞く〕」のように、目的語(O)の行為を初めから終わりまで見たり聞いたりするところが現在分詞と異なります。
このように表す内容に違いがあるので、たとえば「catch」や「find」はともに「 O が~しているところを見つける」という意味で第5文型(SVOC)をとりますが、どちらも原形不定詞を補語(C)にとりません。
動詞の5種類
これまで5つの文型を見てきました。なぜ英文の基本文型が5つに分類されるかというと、結局のところ、5種類の動詞があるからです。
目的語(O)で分類すれば2種類ですが、補語(C)で分類すれば5種類になります。一覧表にまとめると覚えやすくなります。
目的語による分類 | 補語による分類 | 文型 | |
---|---|---|---|
動詞 | 自動詞(vi)〔Oとらない〕 | 完全自動詞〔C不要〕 | 第1文型(SV) |
不完全自動詞〔C必要〕 | 第2文型(SVC) | ||
他動詞(vt)〔O必要〕 | 完全他動詞〔C不要〕 | 第3文型(SVO) | |
授与動詞〔C不要・Oを2つとる〕 | 第4文型(SVOO) | ||
不完全他動詞〔C必要〕 | 第5文型(SVOC) |
自動詞(Vi)と他動詞(Vt)は、その後ろに目的語(O)をとるかどうかどうかで分類されます。
また、自動詞(Vi)と他動詞(Vt)に「完全」や「不完全」が付く、付かないは、補語(C)を必要とするかどうかで分類されます。
このような動詞の分類を知っていることは、意外とあなどれません。このことを知っていれば、動詞を覚えていくとき、動詞の後ろに続く要素に意識が向くようになるからです。
単に動詞の意味だけを覚えた場合と、意味と語法を合わせて覚えた場合とを比較してみれば、応用力や運用力に差が出るのは容易に予想がつきます。
以上のことを踏まえると、動詞を覚えるときは、目的語(O)や補語(C)をとるのか、つまりどの文型で使われるのかを意識して覚えることが効果的な取り組み方だと言えるでしょう。
後に続く要素が分かれば、初見の英文でも対応しやすくなります。決まった文型で用いられる動詞も多いので、例文集などを活用して覚えていくと効率が良いでしょう。
第7回と第8回のまとめ
第7回と第8回には共通のテーマがあります。動詞と文型の関係の中でも「第4文型(SVOO)と第5文型(SVOC)の違いと、第5文型(SVOC)をとる使役動詞や知覚動詞を知る」ということです。
知識が定着しているかの確認のために、以下の事柄について確認しましょう。
- 第4文型(SVOO)と第5文型(SVOC)【第7回】
- 3種類の節【第7回】
- 小節の作り方【第7回】
- 使役動詞【第8回】
- 知覚動詞【第8回】
- 使役動詞や知覚動詞の受動態【第8回】
他にも色々ありましたが、テーマに沿った内容が定着していれば最初のステップはクリアしたと考えて良いでしょう。
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