数学1|図形を扱った入試問題を解いてみよう

大学入試

入試問題にチャレンジ

今回、紹介する問題は図形問題です。一見して簡単そうに見えますが、意外と難しい問題です。

図形を扱った問題の場合、解ける解けないの差がはっきりするような気がします。やはり慣れが必要かもしれません。

過去問を解いてみよう

過去の入試問題になります。最初は力試しに自力で解いてみることをお勧めします。

問題

\begin{align*} &\text{図において、} \\[ 5pt ] &\quad \angle {BOC}=30^{\circ} \\[ 5pt ] &\quad OA=BC=2 \\[ 5pt ] &\text{とするとき、$AB^{\scriptsize{3}}$ を求めよ。} \end{align*}
入試問題の図(数1)
問の図

自力で解けない人は、以下の「問題を解く前に」を確認しましょう。

問題を解く前に

方針を決めよう

マーク形式レベルであれば、方針に複数の候補がほとんど出てこないので、問題を読めばすぐに取り掛かれます。

それに対して、記述形式レベル(大学別の個別試験、通称2次試験レベル)になると、方針の候補が1つではない問題が多くなります。そもそも方針自体を立てることが難しい問題も多いでしょう。

そんな問題に対して、方針があやふやなままでは解ききることは困難です。完答は無理でも、部分点を確保するには、答案の中で方針を示す必要があります。要するに、記述形式レベルを問題を解くには、記述する前に方針をきちんと決めることがとても大切になります。

本問は、図形の辺の長さを求める問題です。辺の長さの求め方としては、主に3つが考えられます。

辺の長さを求めるときに利用するもの

  • 三平方の定理
  • 相似の関係
  • 三角比

与えられた図を観察すると、3つの三角形があることが分かります。△OAB,△OBC,△OACの3つです。

与えられた角の大きさや辺の長さから、相似の関係を利用することはこのままでは無理そうです。三平方の定理三角比に絞って各三角形を見ていきます。

△OABについて

△OABは∠OAB=90°の直角三角形です。ABの長さを求めるにあたって、真っ先に目に注目する三角形でしょう。

△OABに注目した図
△OABは直角三角形

直角三角形なので、三平方の定理を利用できます。三平方の定理から辺の長さを求めるには、少なくとも2辺の長さを必要とします。

残念ながら、長さを与えられたのは、3辺のうちOAだけです。OBの長さが分かれば良いのですが難しそうです。

△OBCについて

△OBCは、直角三角形ではありませんが、∠COB=30°の三角形です。

△OBCに注目した図
△OBCは∠BOC=30°の三角形

△OBCはABに直接関係するわけではありません。しかし、△OABとOBを共有しています。ですから、余弦定理を利用して、OBの長さを求めたいところです。

余弦定理の式は、1つの内角と3つの辺の関係を表します。もし、内角の大きさを求めるのであれば、3辺の長さが分かっていることが条件です。また、1辺の長さを求めるのであれば、内角の大きさと2辺の長さが分かっていることが条件です。

△OBCにおいて、余弦定理からOBの長さを求めるとすれば、OCの長さが必要になります。残念ながら、長さを与えられたのは、3辺のうちBCだけです。OCの長さが分かれば良いのですが難しそうです。

△OACについて

△OACは∠AOC=120°の三角形です。∠AOC=∠AOB+∠BOCが成り立ちます。

ACの長さが分かれば、ABの長さが分かります。しかし、この三角形でもOCの長さが分からないので、余弦定理を利用できません。

△OACに注目した図
△OACは∠COA=120°の三角形

このように各三角形を見てみると、どれも1辺の長さの情報が足りない状況になっています。ここから分かるのは、この問題のポイントが「足りない辺の長さをどのようにして得るか」ということです。

また、以上の考察から、ABの長さを求めるのに効率の良さそうな辺の長さは、OCの長さではないかと予想できます。

与えられた角の大きさを活用する

以上の考察を踏まえて、与えられた∠BOCの大きさ(30°)を活用できないかを考えます。頂点Cから直線OAに垂線を下ろし、その足をHとします。

補助線である垂線を使って、新たな△OCHを作ります。△OCHは∠COH=90°の直角三角形です。しかも、∠COH=60°であるので、3辺の比を利用できます。

垂線を下ろした図
頂点Cから直線OAに垂線を下ろす

また、OBとCHは平行なので、平行線と線分の比の関係も利用できます。これを利用すれば、OHの長さをABを用いて表すことができそうです。

OHの長さが決まれば、3辺の比を利用してOCの長さも決まります。これで大まかな方針が決まりました。与えられた30°の使い方に気付けるかどうかで見通しの良さがだいぶ変わります。

問題の解答・解説

解答例の図
補助線を使って△OCHを作る

求めたいABの長さをxとおき、平行線と線分の比を利用してOHをABで表します。

問題の解答例 1⃣

\begin{align*} &\text{$AB=x \quad (\gt 0)$ とおく。} \\[ 5pt ] &\text{$AB$ と $CH$ は平行であるので} \\[ 5pt ] &\quad AB : BC = AO : OH \\[ 5pt ] &\text{が成り立つ。よって} \\[ 5pt ] &\quad x : 2 = 2 : OH \\[ 5pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad OH= \frac{4}{x} \quad \cdots \text{①} \end{align*}

直角三角形である△OCHに注目します。3辺の比、または三角比を利用して、OCをABで表します。

問題の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad OH= \frac{4}{x} \quad \cdots \text{①} \\[ 5pt ] &\text{$\triangle {OCH}$ において、$\angle {COH}=60^{\circ}$ であるので} \\[ 5pt ] &\quad OH=OC \cos {60^{\circ}} \\[ 5pt ] &\text{よって、} \\[ 5pt ] &\quad OC=2OH \\[ 5pt ] &\text{これと①より} \\[ 5pt ] &\quad OC=\frac{8}{x} \end{align*}

これで念願のOCの長さが決まりました。△OACの3辺の長さは、値こそ分かりませんが、文字を用いて表せるのですべて埋まっています。また、∠AOC=120°であるので、内角も1つ分かっています。

△OACにおいて余弦定理を利用できる条件が揃いました。余弦定理を利用して、xについての方程式を導き、そして解きます。

問題の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad OC=\frac{8}{x} \\[ 5pt ] &\text{$\triangle {OAC}$ において、余弦定理より} \\[ 5pt ] &\quad AC^{\scriptsize{2}}=OA^{\scriptsize{2}}+OC^{\scriptsize{2}}-2OA \cdot OC \cos {120^{\circ}} \\[ 5pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad \left(x+2 \right)^{\scriptsize{2}}=2^{\scriptsize{2}}+\left( \frac{8}{x} \right)^{\scriptsize{2}}-2 \cdot 2 \cdot \frac{8}{x} \cdot \left( -\frac{1}{2} \right) \\[ 5pt ] &\text{これを整理すると} \\[ 5pt ] &\Longleftrightarrow \quad x^{\scriptsize{2}}+4x+4=4+\frac{64}{x^{\scriptsize{2}}}+\frac{16}{x} \\[ 5pt ] &\Longleftrightarrow \quad x^{\scriptsize{2}}+4x=\frac{64}{x^{\scriptsize{2}}}+\frac{16}{x} \\[ 5pt ] &\Longleftrightarrow \quad x \left(x+4 \right)=\frac{16}{x^{\scriptsize{2}}} \left(4+x \right) \\[ 5pt ] &\Longleftrightarrow \quad x^{\scriptsize{3}} \left(x+4 \right)=16 \left( x+4 \right) \quad (\because \ x^{\scriptsize{2}} \neq 0) \\[ 5pt ] &\Longleftrightarrow \quad x^{\scriptsize{3}}=16 \quad (\because \ x+4 \neq 0) \\[ 5pt ] &\text{$x=AB$ であるので} \\[ 5pt ] &\quad AB^{\scriptsize{3}}=16 \end{align*}

xについての方程式を導いた後は、要領よく変形していきましょう。解答例を見れば大したことではないと分かりますが、実際に解いてみると意外と考えさせられます。

入試レベルの問題では、よく考えないとなかなか解けないものが多いです。思考力が鍛えられるので、日頃から標準レベル以上の問題に積極的に取り組みたいところです。

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