運用力を鍛える英文法基礎【第9回】
大学別の個別試験のような記述形式の試験では、いくら知識があっても、その運用力がなければ上手くいきません。センター試験から共通テストに変わって、思考力・表現力・判断力を問われる問題がより一層増えることが考えられます。
これからの受験生にとって、運用力は大切な能力となるでしょう。応用力のある人は、知識を適切に運用できる運用力をもつ人のことです。たくさんの知識を蓄え、それを適切に運用できる応用力のある人になりましょう!
文法的に誤りのある英文を訂正してみよう
次の英文は、問題のない英文に見えます。しかし、文法的な誤りがあります。どこに文法的な誤りがあるのか分かるでしょうか。また、文法的に正しい英文に訂正できるでしょうか。
【問9】日本語訳を参考に、次の英文の文法的な誤りを直しなさい。
I called Mary up yesterday. I did not call her on at her house.
「昨日メアリーに電話しました。彼女の家に行ったわけではありません。」
※英文には文法的な誤りがあります
誤文訂正に必要な知識
少なくともこの問題を解くのに必要な知識は以下の通りです。
- 句動詞
- 「自動詞+前置詞」と「他動詞+副詞」の区別
句動詞
句動詞とは、文法書によっては群動詞、動詞句、イディオムなどと言われるものです。一般には、 make や take などのような基本的な動詞に、in や up のような前置詞や副詞を組み合わせて、全体で1つの動詞の働きをするものを指します。
句動詞にはいくつかのタイプがあります。
- 動詞+副詞
- 動詞+前置詞
- 名詞を含む成句動詞
動詞+副詞
動詞に副詞がついてできる句動詞は2種類あります。
自動詞の働きをするもの
「自動詞(Vi)+副詞」は、副詞がついても本来の自動詞の働きをします。副詞が単に自動詞を修飾しているだけと考えると分かりやすいでしょう。
「自動詞(Vi)+副詞」の句動詞
The rose will come out next week.
(バラの花は来週咲きます)
例文の要素
The rose / will come out / ( next week ).
バラの花は / 咲きます / (来週)
- S+Vi+(M):第1文型(SV)+(M)
- 主語(S):The rose
- 述語動詞(Vi):will come out
- 副詞的修飾句(M):next week
句動詞「come out」は、「(花が)咲く、(芽が)出る」という意味で1つの自動詞として働きます。他にも「(製品などが)世に出る」や「(物事が)知られる」などの意味もあります。
他動詞の働きをするもの
「他動詞(Vt)+副詞」は、本来の他動詞の働きをします。これも副詞が単に他動詞を修飾しているだけと考えましょう。
「他動詞(Vt)+副詞」の句動詞
a) Could you turn on the light ?
b) Could you turn the light on ?
(明かりをつけてくださいませんか)
例文の要素
a) Could / you / turn on / the light ?
あなたは / つけることができるでしょうか / 明かりを
- S+Vt+O:第3文型(SVO)
- 主語(S):you
- 述語動詞(Vt):Could + turn on
- 目的語(O):the light
句動詞「turn on」は、「(スイッチを押して、明かり・テレビ・ラジオ)をつける」という意味で1つの他動詞として働きます。
この場合の「turn」はもともと他動詞なので、「他動詞+目的語+副詞」のように、目的語(O)を他動詞(Vt)に直接つけられるだけでなく、「他動詞+副詞+目的語」のようにしても問題ありません。どちらにするかは、文体やセンテンス全体のリズムによります。
ただし、注意したいことが1つあります。目的語が代名詞の場合には「turn it on」のように間に挟むのが原則になっています。
目的語が代名詞の場合、代名詞を他動詞の後に続けて他動詞と副詞で挟む。
「他動詞+副詞」の形をとる句動詞の一例です。
- give up(あきらめる)
- carry on(続ける)
- bring up(育てる)
- get (the message) across(伝える)
- see (my cousin) off(見送る)
- leave (my bag) behind(置き忘れる)
なお、下線を引いたものは目的語(O)を間に挟む語順となるので注意しましょう。
自動詞表現と他動詞表現
「動詞+副詞」の形をとる句動詞は、自動詞表現と他動詞表現を対にして覚えると効率が良いです。
例として come と bring の句動詞を紹介します。なお「動詞+副詞」以外の形もあるので注意しましょう。
自動詞表現 | 他動詞表現 |
---|---|
come about(起こる) | bring about+O(Oを引き起こす) |
come out(出版される) | bring out(Oを出版する) |
come to an end(終わる) | bring+O+to an end(Oを終わらせる) |
come to light(明るみに出る) | bring+O+to light(Oを明るみに出す) |
「bring+O+to an end」や「bring+O+to light」は、bringの後ろに目的語(O)が続きます。おそらく end や light の後ろに続く形だと目的語(O)が分かりにくいからだと考えられます。
動詞+副詞+前置詞
動詞に副詞と前置詞がついて1つの他動詞の働きをするものがあります。
「動詞+副詞+前置詞」の句動詞
a) I can’t put up with this noise.
(私はこの騒音に我慢できない)
b) They all look up to him as a pioneer.
(彼らはみな彼を先駆者として尊敬している)
例文 a の要素
a) I / can’t put up with / this noise.
私は / 我慢できない / この騒音に
- S+Vt+O:第3文型(SVO)
- 主語(S):I
- 述語動詞(Vt):can’t put up with
- 目的語(O):this noise
例文 b の要素
b) They all / look up to / him / ( as a pioneer ).
彼らはみな / 尊敬している / 彼を /(先駆者として)
- S+Vt+O+(M):第3文型(SVO)+(M)
- 主語(S):They all
- 述語動詞(Vt):look up to
- 目的語(O):him
- 副詞的修飾句(M):as a pioneer
句動詞「put up with」は、「~を我慢する」という意味で1つの他動詞として働きます。類義語には「bear」があります。
また、句動詞「look up to」は、「(人)を尊敬する」という意味で1つの他動詞として働きます。対義語には「(人)を見下す」という意味の「look down on [upon]」があります。
なお、all は名詞や代名詞と同格に用いられる代名詞で、「~は〔を〕全部、~は〔を〕みんな」という意味です。
この意味では語順に注意しましょう。「All we」や「All they」の語順では誤りです。どうしても人称代名詞の前にallを置く場合には「All of us」や「All of them」の形にします。
「自動詞+副詞+前置詞」の形をとる句動詞の一例です。
- look up to(尊敬する)
- catch up with(追いつく)
- run out of(尽きる)
下線を引いたものは受動態にできない句動詞なので注意しましょう。
動詞+前置詞
動詞に前置詞が直接つくのは、動詞が自動詞のときです。自動詞(Vi)だけでは目的語(O)をとれませんが、前置詞がつけばその後ろに目的語(O)をとることができるようになります。
後ろにあった前置詞句の前置詞が、自動詞と結びついて1つの他動詞になったイメージです。
自動詞+前置詞句(前置詞+名詞)
⇒ 他動詞(自動詞+前置詞)+名詞
ただし、句動詞の本体である自動詞の直後に、目的語(O)として名詞をつけることはできません。「自動詞+前置詞」で1つの他動詞として振る舞うので、句動詞全体でまとまって目的語(O)をとります。目的語(O)を間に挟める「他動詞+副詞」と混同しないように気を付けましょう。
「自動詞+前置詞」の形をとる句動詞の一例です。
- deal with(扱う)
- refer to(言及する)
- look after(世話をする)
- stand for(表す)
- result in(結果となる)
- come across(出くわす)
下線を引いたものは受動態にできない句動詞なので注意しましょう。
同じ自動詞でも前置詞によって意味が違う
たとえば、同じ look という自動詞に、前置詞 for がついて句動詞「look for」になると、「~を探す」という意味になります。また、前置詞 after がついて句動詞「look after」になると、「~の世話をする」という意味なります。
このように同じ自動詞であっても、前置詞が異なると句動詞の意味も変わってくるので注意しましょう。
同じ自動詞につく前置詞による意味の違い
a) The United States consists of fifty states.
(合衆国は 50 の州からなる)
b) It is said that happiness consists in contentment.
(幸福は満足にあると言われている)
例文 a の要素
The United States / consists of / fifty states.
合衆国は / 50 の州 / からなる
- S+Vt+O:第3文型(SVO)
- 主語(S):The United States
- 述語動詞(Vt):consists of
- 目的語(O):fifty states
例文 b の要素
It / is said / [that] happiness consists in contentment.
言われている / 幸福は満足にあると(いうことが)
- 仮S’+Vi+真S:第1文型(SV)
- 仮主語(S’):It【形式主語】
- 述語動詞(Vi):is said
- 真主語(S):that happiness consists in contentment【that節】
that 節(名詞節)内の要素
[that] happiness / consists in / contentment
[といことが]幸福は / にある / 満足
- that+S’+Vt’+O’:that+第3文型(S’V’O’)
- 従位接続詞:that
- 主語(S’):happiness
- 述語動詞(Vt’):consists in
- 目的語(O’):contentment
句動詞「consist of」は、「(~から)成る」という意味で1つの他動詞として働きます。また、句動詞「consist in」は、「(~に)存する、ある」という意味で1つの他動詞として働きます。「consist of」と「consist in」はよく出題される句動詞です。
誤りやすい句動詞
同じ動詞が自動詞にも他動詞にも使われるので、「自動詞+前置詞」か「他動詞+副詞」か分かりにくい場合があります。
「自動詞+前置詞」か「他動詞+副詞」か
a) I got off the bus at the next stop.
(私は次の停留所でバスを降りた)
b) You will never get back the money.
(そのお金を返してもらうことは無理です)
例文 a の要素
I / got off / the bus / ( at the next stop ).
私は / 降りた / バスを /(次の停留所で)
- S+Vt+O+(M):第3文型(SVO)+(M)
- 主語(S):I
- 述語動詞(Vt):got off
- 目的語(O):the bus
- 副詞的修飾句(M):at the next stop
例文 b の要素
You / will ( never ) get back / the money.
あなたは / 返してもらうことは無理です / そのお金を
- S+Vt+O:第3文型(SVO)
- 主語(S):You
- 述語動詞(Vt):will ( never ) get back
- 目的語(O):the money
- 副詞的修飾語句(M):never【get back を修飾】
同じ第3文型(SVO)の文ですが、述語動詞(V)になっている句動詞の成り立ちに違いがあります。
a) の get は「~へ動く」という意味の自動詞です。in, on, into などの色々な前置詞と共に「移動」を表す句動詞になります。「get off」で1つの他動詞(Vt)となるので、「get the bus off」とすることはできません。
b) の get は「~を手に入れる」という意味の他動詞です。「他動詞+副詞」の句動詞なので、「get the money back」とすることができます。