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式と証明|二項定理の利用について

数学2

数学2 式と証明

二項定理の利用を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

(1)32000 の下位 5 桁を求めよ。

(2)199719979 で割った余りを求めよ。

あまりにも指数が大きいので、素直に計算すると大変な時間と労力が必要です。現実的ではないので、何らかの工夫が必要だと考えなければなりません。

このような問題で利用できるのが二項定理です。

問(1)の解答・解説

問(1)

32000 の下位 5 桁を求めよ。

問(1)は桁に関する問題なので、例題1を参考にしましょう。桁に関する問題では、10の累乗を作るのが基本です。

二項定理を利用するには、二項式が必要です。10の累乗を含む二項式にするために、与式を工夫して変形します。

問(1)の解答例 1⃣

32000=(32)1000=91000=(1+10)1000

指数が2000のままでは上手くいきません。指数法則を利用して指数を1000にしました。この変形によって10が作れたので、展開式に10の累乗が出てきます。

ただ、もう1つの項の-1が問題です。このまま展開すると、項によっては正の数になったり、負の数になったりします

展開後に和をきちんと調べる必要が出てくるので面倒です。これだと二項定理を利用したメリットがなくなってしまいます。ですから、二項とも正の数となるように、与式を変形します。

問(1)の解答例 2⃣

32000=(32)1000=91000=(92)500=81500=(1+80)500

10そのものは作れませんでしたが、80は10の倍数です。ですから、10の累乗を作ることができます。

桁に関する問題では、二項とも正の数にしよう。ただし、一方は1にしよう。

二項式に変形できたので、二項定理を利用して展開します。

問(1)の解答例 3⃣

32000=(1+80)500=500C0 1500+500C1 1499 801+500C2 1498 802+500C3 1497 803+500C4 1496 804+500C5 1495 805++500C499 11 80499+500C500 80500

ここで、下位5桁に影響を与える項が何番目までかを調べます。

問(1)の解答例 4⃣

ここで

500C0 1500=11=1500C1 1499 801=500180=40000500C2 1498 802=50049921802=500499282102=16499105500C3 1497 803=500499498321803=5004994983283103=128499166106

各項をそれぞれ調べてみると、3番目の項には105が含まれ、4番目以降の項には106が含まれることが分かります。

ここで大切なことは、すべてを計算するのではなく、どんな10の累乗ができているのかを調べることです。これより、下位5桁に影響があるのは、1,2番目の項となります。

問(1)の解答例 5⃣

500C2 1498 802=164991053 番目の項以降は 105 を含むので、下位 5 桁は1+40000=40001となる。

最初の式変形がかなり難しいと感じるかもしれません。桁を考えるとき、作りたい二項式をよく吟味しましょう。

問(2)の解答・解説

問(2)

199719979 で割った余りを求めよ。

問(2)は、余りに関する問題です。これも二項定理を利用します。1997を二項式で表します。

9で割ることに注意して、9の倍数が出てくるように変形しましょう。

問(2)の解答例 1⃣

19971997=(19981)19971998=9×222 より、19971997=(1+9×222)1997

9の倍数は、各位の和が9の倍数となるものです。また、9を含む項であれば、その項は9の倍数になることが確実です。

二項式に変形できたので、二項定理を利用して展開します。

問(2)の解答例 2⃣

19971997= (1+9×222)1997= 1997C0 (1)1997+1997C1 (1)1996 (9222)1+1997C2 (1)1995 (9222)2+1997C3 (1)1994 (9222)3++1997C1996 (1)1 (9222)1996+1997C1997 (9222)1997= 1(1)+19971(9222)+1997C2 (1)(9222)2+1997C3 1(9222)3++1997C1996 (1)(9222)1996+1997C1997 (9222)1997

19971997を9で割るということは、展開式の各項を9でそれぞれ割るということです。9の倍数になっている項であれば、9で割り切れます。

展開式において、9を含む項と含まない項を調べて、展開式を変形します。

問(2)の解答例 3⃣

19971997= (1+9×222)1997= = 1(1)+19971(9222)_+1997C2 (1)(9222)2+1997C3 1(9222)3++1997C1996 (1)(9222)1996+1997C1997 (9222)1997= 1(1)+9 {19971222+1997C2 (1)92222+1997C3 1922223++1997C1996 (1)919952221996+1997C1997 919962221997 }= 1+9k( k は自然数)

展開式の2項目以降には、必ず9が含まれます。2項目以降の各項が9の倍数となることから、2項目以降をひとまとめにしておきます。これで9を含む項と含まない項とに分けることができました。

しかし、例題2と同じように、答えを急いではいけません。-1が負の数であることに注目しましょう。

整数問題を解いていると、時折、余りが負の数になるときがあります。そのようなときは、もう少し変形する必要があります。

一般に、9で割った余りは0~8のどれかで表されます。ですから、-1は9で割った余りとして適切ではありません。もう少し手を加えましょう。

問(2)の解答例 4⃣

19971997= (1+9222)1997= = 1_9k= 9(1)+8_9k= 9(k1)+8

19971997を9で割った余りは、0~8の間の数になっています。余りに関する問題は最後にミスしやすいので注意しましょう。

また、二項定理を利用すると、式が長く複雑になり、記述ミスが起きやすくなります。丁寧で見やすい記述を心掛けましょう。

9で割った余りは、0~8のどれか。

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さいごにもう一度まとめ

  • 二項定理を利用できる二項式に上手に変形しよう。
  • 桁に関する問題では、ともに正の数となるように変形しよう。
  • 余りに関する問題では、割る数を含む項が出てくるように変形しよう。
  • 二項式の各項について、一方は1または-1となるようにしよう。