式と証明|二項定理の利用について

二項定理の利用を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問
(1)32000 の下位 5 桁を求めよ。
(2)19971997 を 9 で割った余りを求めよ。
あまりにも指数が大きいので、素直に計算すると大変な時間と労力が必要です。現実的ではないので、何らかの工夫が必要だと考えなければなりません。
このような問題で利用できるのが二項定理です。
問(1)の解答・解説
問(1)
32000 の下位 5 桁を求めよ。
問(1)は桁に関する問題なので、例題1を参考にしましょう。桁に関する問題では、10の累乗を作るのが基本です。
二項定理を利用するには、二項式が必要です。10の累乗を含む二項式にするために、与式を工夫して変形します。
問(1)の解答例 1⃣
指数が2000のままでは上手くいきません。指数法則を利用して指数を1000にしました。この変形によって10が作れたので、展開式に10の累乗が出てきます。
ただ、もう1つの項の-1が問題です。このまま展開すると、項によっては正の数になったり、負の数になったりします。
展開後に和をきちんと調べる必要が出てくるので面倒です。これだと二項定理を利用したメリットがなくなってしまいます。ですから、二項とも正の数となるように、与式を変形します。
問(1)の解答例 2⃣
10そのものは作れませんでしたが、80は10の倍数です。ですから、10の累乗を作ることができます。
桁に関する問題では、二項とも正の数にしよう。ただし、一方は1にしよう。
二項式に変形できたので、二項定理を利用して展開します。
問(1)の解答例 3⃣
ここで、下位5桁に影響を与える項が何番目までかを調べます。
問(1)の解答例 4⃣
ここで
500C0 1500=1⋅1=1500C1 1499 801=500⋅1⋅80=40000500C2 1498 802=500⋅4992⋅1⋅802=500⋅4992⋅82⋅102=16⋅499⋅105500C3 1497 803=500⋅499⋅4983⋅2⋅1⋅803=500⋅499⋅4983⋅2⋅83⋅103=128⋅499⋅166⋅106⋮各項をそれぞれ調べてみると、3番目の項には105が含まれ、4番目以降の項には106が含まれることが分かります。
ここで大切なことは、すべてを計算するのではなく、どんな10の累乗ができているのかを調べることです。これより、下位5桁に影響があるのは、1,2番目の項となります。
問(1)の解答例 5⃣
最初の式変形がかなり難しいと感じるかもしれません。桁を考えるとき、作りたい二項式をよく吟味しましょう。
問(2)の解答・解説
問(2)
19971997 を 9 で割った余りを求めよ。
問(2)は、余りに関する問題です。これも二項定理を利用します。1997を二項式で表します。
9で割ることに注意して、9の倍数が出てくるように変形しましょう。
問(2)の解答例 1⃣
9の倍数は、各位の和が9の倍数となるものです。また、9を含む項であれば、その項は9の倍数になることが確実です。
二項式に変形できたので、二項定理を利用して展開します。
問(2)の解答例 2⃣
19971997を9で割るということは、展開式の各項を9でそれぞれ割るということです。9の倍数になっている項であれば、9で割り切れます。
展開式において、9を含む項と含まない項を調べて、展開式を変形します。
問(2)の解答例 3⃣
展開式の2項目以降には、必ず9が含まれます。2項目以降の各項が9の倍数となることから、2項目以降をひとまとめにしておきます。これで9を含む項と含まない項とに分けることができました。
しかし、例題2と同じように、答えを急いではいけません。-1が負の数であることに注目しましょう。
整数問題を解いていると、時折、余りが負の数になるときがあります。そのようなときは、もう少し変形する必要があります。
一般に、9で割った余りは0~8のどれかで表されます。ですから、-1は9で割った余りとして適切ではありません。もう少し手を加えましょう。
問(2)の解答例 4⃣
19971997を9で割った余りは、0~8の間の数になっています。余りに関する問題は最後にミスしやすいので注意しましょう。
また、二項定理を利用すると、式が長く複雑になり、記述ミスが起きやすくなります。丁寧で見やすい記述を心掛けましょう。
9で割った余りは、0~8のどれか。
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さいごにもう一度まとめ
- 二項定理を利用できる二項式に上手に変形しよう。
- 桁に関する問題では、ともに正の数となるように変形しよう。
- 余りに関する問題では、割る数を含む項が出てくるように変形しよう。
- 二項式の各項について、一方は1または-1となるようにしよう。