複素数と方程式|複素数の相等について

数学2

複素数の相等を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

次の等式または条件を満たす実数 $x \ , \ y$ の値を求めよ。

\begin{align*} &(1) \quad (1+2i)x-(2-i)y=3 \\[ 10pt ] &(2) \quad (-1+i)(x+yi)=1-3i \\[ 10pt ] &(3) \quad \frac{1+xi}{3+i} \ \text{が純虚数になる} \end{align*}

複素数の相等では、実部と虚部が実数であることが条件です。忘れないようにしましょう。

問(1)の解答・解説

問(1)

次の等式または条件を満たす実数 $x \ , \ y$ の値を求めよ。

\begin{equation*} \quad (1+2i)x-(2-i)y=3 \end{equation*}

複素数の実部と虚部を区別できるように、与式の左辺を整理します。

問(1)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\quad (1+2i)x-(2-i)y=3 \\[ 7pt ] &\text{与えられた等式を変形すると} \\[ 5pt ] &\quad (x-2y)+(2x+y)i = 3 \end{align*}

等式が成り立つのは、両辺の実部と虚部がそれぞれ等しくなるときです。両辺の実部と虚部をそれぞれ比較します。

問(1)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad (x-2y)+(2x+y)i = 3 \\[ 7pt ] &x \ , \ y \ \text{は実数であるので、} \\[ 5pt ] &x-2y \ , \ 2x+y \ \text{も実数である。} \\[ 5pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad x-2y=3 \\[ 7pt ] &\quad 2x+y=0 \end{align*}

両辺の実部と虚部の比較では、複素数の相等を利用します。そのためには、実部と虚部がともに実数であることが条件です。x,yは実数であるので、それらの和や差も実数となります。断りを忘れずに記述しましょう。

両辺を比較するときに注意したいのは、右辺には虚数単位がないことです。そのため、右辺には虚部がなく、実部だけがあります。

実部と虚部を比較すると、実数x,yについての方程式を2つ導くことができます。これらを連立して解きます。

問(1)の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x-2y=3 \\[ 7pt ] &\quad 2x+y=0 \\[ 7pt ] &\text{これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad x=\frac{3}{5} \ , \ y=-\frac{6}{5} \end{align*}

右辺に虚部がないことに注意する以外、特に難しいところはありません。

問(2)の解答・解説

問(2)

次の等式または条件を満たす実数 $x \ , \ y$ の値を求めよ。

\begin{equation*} \quad (-1+i)(x+yi)=1-3i \end{equation*}

複素数の実部と虚部を区別できるように、等式を整理します。左辺を展開して整理する方法でも良いですが、ここでは異なる方法で整理します。

左辺を見ると、求めたい実数x,yは2つ目のカッコ内にすべてあることに気付きます。このことに注目して変形します。

問(2)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\quad (-1+i)(x+yi)=1-3i \\[ 7pt ] &\text{等式の両辺を $-1+i$ で割ると} \\[ 5pt ] &\quad x+yi = \frac{1-3i}{-1+i} \end{align*}

右辺を整理します。分母を実数化します。このとき、共役な複素数を利用しましょう。

問(2)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x+yi = \frac{1-3i}{-1+i} \\[ 7pt ] &\text{ここで} \end{align*} \begin{align*} \quad \frac{1-3i}{-1+i} &= \frac{(1-3i)(-1-i)}{(-1+i)(-1-i)} \\[ 7pt ] &= \frac{-1+2i+3i^{\scriptsize{2}}}{1-i^{\scriptsize{2}}} \\[ 7pt ] &= \frac{-4+2i}{2} \\[ 7pt ] &= -2+i \end{align*} \begin{align*} &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad x+yi = -2+i \end{align*}

等式が成り立つのは、両辺の実部と虚部がそれぞれ等しくなるときです。両辺の実部と虚部をそれぞれ比較します。

問(2)の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x+yi = -2+i \\[ 7pt ] &\text{$x \ , \ y$ は実数であるので、} \\[ 5pt ] &\quad x=-2 \ , \ y=1 \end{align*}

両辺の実部と虚部の比較では、複素数の相等を利用します。そのためには、実部と虚部がともに実数であることが条件です。x,yが実数であることは問題文で与えられています。断りを忘れずに記述しましょう。

基本的な解法は左辺を展開するやり方ですが、やや煩雑になります。例題(2)や問(2)のような解法を知っていると便利です。

問(3)の解答・解説

問(3)

次の等式または条件を満たす実数 $x \ , \ y$ の値を求めよ。

\begin{equation*} \quad \frac{1+xi}{3+i} \ \text{が純虚数になる} \end{equation*}

複素数の実部と虚部を区別できるように、与式を整理します。

与えられた与式は分数です。その分母は虚部をもつ複素数です。分母を実数化します。

問(3)の解答例 1⃣

\begin{equation*} \text{与式について} \end{equation*} \begin{align*} \quad \frac{1+xi}{3+i} &= \frac{(1+xi)(3-i)}{(3+i)(3-i)} \\[ 7pt ] &= \frac{3+(3x-1)i-xi^{\scriptsize{2}}}{9-i^{\scriptsize{2}}} \\[ 7pt ] &= \frac{(x+3)+(3x-1)i}{10} \\[ 7pt ] &= \frac{x+3}{10}+\frac{3x-1}{10}i \end{align*}

与式を整理すると、実部と虚部を区別できるようになります。

次に、与えられた複素数が純虚数になるときの条件を考えます。複素数が純虚数になるのは、実部をもたないときです。ただし、この条件だけでは不十分です。

もう少し正確に言えば、実部が0であり、かつ虚部が0でない複素数が純虚数です。このことを利用して、実数xについての方程式を導きます。

問(3)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad = \frac{x+3}{10}+\frac{3x-1}{10}i \\[ 7pt ] &\text{ここで、$x \ , \ y$ は実数であるので、} \\[ 5pt ] &\frac{x+3}{10} \ , \ \frac{3x-1}{10} \ \text{も実数である。} \\[ 5pt ] &\text{与式が純虚数となるための条件は、} \\[ 5pt ] &\quad x+3 = 0 \ \text{かつ} \ 3x-1 \neq 0 \end{align*}

実部と虚部はそれぞれ分数で表されますが、分数が0となるのは分子が0であるときです。また、虚部の分数は0ではないので、これを満たすのは分子が0でないときです。

実数xについての方程式を2つ導くことができたので、これらを解きます。

問(3)の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x+3 = 0 \ \text{かつ} \ 3x-1 \neq 0 \\[ 7pt ] &x+3 = 0 \ \text{より} \\[ 5pt ] &\quad x=-3 \\[ 7pt ] &\text{これは、$3x-1 \neq 0$ を満たす。} \\[ 5pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad x=-3 \end{align*}

実部だけでなく、虚部の条件も忘れずに考えることが大切です。

複素数が純虚数 =(実部=0かつ虚部≠0)

実数と虚数についてまとめると以下の通りです。実部や虚部の条件も併せて覚えましょう。

実数と虚数

\begin{align*} &\text{$a \ , \ b$ を実数、$i$ を虚数単位とする。} \\[ 5pt ] &\text{複素数} \ a+bi \\[ 7pt ] &\quad = \begin{cases} \text{実数} \ a & ( b = 0 ) \\ \text{虚数} \ a+bi & ( b \neq 0 ) \\ \text{純虚数} \ bi & ( a=0 \ , \ b \neq 0 ) \end{cases} \end{align*}

問(3)の別解例

複素数の相等を利用すると、別解例のようになります。

問(3)の別解例

\begin{align*} &b \neq 0 \ \text{である実数を用いて} \\[ 5pt ] &\quad \frac{1+xi}{3+i} = bi \\[ 7pt ] &\text{とおく。等式を変形すると} \\[ 5pt ] &\quad 1+xi = bi(3+i) \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad 1+xi = 3bi+bi^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] &\quad 1+xi = -b+3bi \\[ 5pt ] &x \ , \ b \ \text{は実数であるので} \\[ 5pt ] &\quad 1=-b \ , \ x=3b \\[ 7pt ] &\text{これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad b=-1 \ , \ x=-3 \\[ 7pt ] &\text{これは $b \neq 0$ を満たす。} \\[ 5pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad x=-3 \end{align*}

純虚数という条件から、与えられた複素数は実部をもたず、虚部だけをもつことが分かります。

このことを利用すると、複素数を定義することができるので、等式を導くことができます。あとは複素数の相等を利用して解きます。

複素数の相等を利用するので、実部や虚部が実数であることの断りも忘れずに記述しましょう。

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さいごにもう一度まとめ

  • 複素数の相等では、実部と虚部はともに実数である。
  • 複素数が与えられたら、実部と虚部を区別できるように変形しよう。
  • 複素数が実数や純虚数になるときの条件を覚えよう。
  • 複素数が分数で与えられたら、分母の実数化を利用しよう。