数学2
今回は分数式の加法や減法の応用について学習しましょう。分数式の加法や減法には変わりませんが、分数数がこれまでのものとは異なります。
そのような分数式を扱った計算では、単純に加法や減法で計算するのではなく、工夫して計算する必要があります。分母や分子の次数に注目するのがここでのポイントです。
分数式の加法や減法の応用
ここで扱う分数式は、以下のような式です。
分数式の例
\begin{align*}
&(1) \quad \frac{x^{\scriptsize{2}}+4x+5}{x+3} \ , \ \frac{x^{\scriptsize{2}}+5x+6}{x+4} \\[ 10pt ]
&(2) \quad \frac{x+2}{x} \ , \ \frac{x+3}{x+1}
\end{align*}
このような分数式では、分母や分子の次数に注目しましょう。例(1)では、分子の方が分母よりも次数が大きくなっています。また、例(2)では、分母と分子の次数が同じになっています。
分数式の変形
例に挙げた分数式を扱った加法や減法では、いきなり計算するのではなく、分数式を変形することから始めましょう。
どのように変形すれば良いかと言うと、割り算の基本公式を利用します。
割り算の基本公式
$A \ , \ B \ (B \neq 0)$ は、同じ $1$ つの文字についての整式とする。
$A$ を $B$ で割ったときの商を $Q$、余りを $R$ とすると
\begin{equation*}
\quad A = BQ + R
\end{equation*}
ただし、$R$ は $0$ か $B$ より次数の低い整式
分子をA、分母をBとする分数式があるとき、商Qと余りRを用いて、分数式は以下のように表せます。
分数式の変形
分子 $A$ を分母 $B$ で割った商を $Q$、余りを $R$ とする。
このとき、$A = BQ + R$ より
\begin{align*}
\qquad \frac{A}{B} &= \frac{BQ + R}{B} \\[ 7pt ]
&= Q + \frac{R}{B} \\[ 7pt ]
\therefore \ \frac{A}{B} &= Q + \frac{R}{B}
\end{align*}
と表せる。
例(1)のように、(分子の次数)≧(分母の次数)である分数式を扱うとき、分子Aを分母Bで割ったときの商Qと余りRを用いて変形します。
このように変形すると、分子の次数が分母の次数より低くなり、計算を楽に進めることができるようになります。
割り算するとき、暗算で難しければ筆算します。先ほどの例(1)のような分数式であれば、筆算した方が良いでしょう。計算する前の式変形で間違えないように気を付けましょう。
例に挙げた分数式を変形してみましょう。
例(1)の分数式を変形してみよう
例(1)の分数式の変形
\begin{align*}
&\quad \frac{x^{\scriptsize{2}}+4x+5}{x+3} \ , \ \frac{x^{\scriptsize{2}}+5x+6}{x+4} \\[ 10pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+4x+5 = (x+3)(x+1)+2 \\[ 7pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+5x+6 = (x+4)(x+1)+2 \\[ 7pt ]
&\text{より} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{x^{\scriptsize{2}}+4x+5}{x+3} = x+1 + \frac{2}{x+3} \\[ 10pt ]
&\quad \frac{x^{\scriptsize{2}}+5x+6}{x+4} = x+1 + \frac{2}{x+4} \\[ 10pt ]
&\text{と表せる。}
\end{align*}
筆算した方が良いでしょうが、暗算することは不可能ではありません。2次式と1次式の割り算であれば、コツさえ掴めば簡単に暗算できます。
2次式を1次式で割った商と余りを求めるコツ
$x^{\scriptsize{2}}+4x+5 = (x+3) \times Q+R$
- 割る式は分母の1次式x+3で、割られる式は分子の2次式x2+4x+5であることから、2次の項x2を参考にすると、商が1次式x+□と決まる。
- 割られる式の1次の項4xに注目すると、商の定数項□が1と決まる。
- 商の1次式がx+1と分かる。
- 割る式と商の定数項の積は3となるので、割られる式の定数項5と比べると、余りが2と決まる。
割られる2次式と割る1次式とを見比べて、2次と1次の項が同じになるような商を考えるのがコツです。余りがあるので、定数項を無視した方が良いでしょう。
さすがに次数が大きくなってくると暗算では難しいので、そんなときは筆算で求めましょう。次は例(2)の分数式を変形してみましょう。
例(2)の分数式を変形してみよう
例(2)の分数式の変形
\begin{align*}
&\quad \frac{x+2}{x} \ , \ \frac{x+3}{x+1} \\[ 10pt ]
&\quad \frac{x+2}{x} = \frac{x}{x} + \frac{2}{x} \\[ 7pt ]
&\quad \frac{x+3}{x+1} = \frac{(x+1)+2}{x+1} = \frac{x+1}{x+1} + \frac{2}{x+1} \\[ 7pt ]
&\text{より} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{x+2}{x} = 1 + \frac{2}{x} \\[ 10pt ]
&\quad \frac{x+3}{x+1} = 1 + \frac{2}{x+1} \\[ 10pt ]
&\text{と表せる。}
\end{align*}
分子と分母の次数が等しい場合、分母がxのように単項式であれば、割り算の基本公式を利用せずに変形できます。
それに対して、分母がx+1のように多項式であれば、割り算の基本公式を利用するのが基本ですが、分母と同じ式を作るように分子を変形できれば、暗算できるようになります。
どちらも割り算の基本公式を利用せずに変形しましたが、公式を利用すると以下のようになります。
例(2)の分数式の変形
\begin{align*}
&\quad \frac{x+2}{x} \ , \ \frac{x+3}{x+1} \\[ 10pt ]
&\quad x+2 = x \times 1 + 2 \\[ 7pt ]
&\quad x+3 = (x+1) \times 1 +2 \\[ 7pt ]
&\text{より、} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{x+2}{x} = 1 + \frac{2}{x} \\[ 10pt ]
&\quad \frac{x+3}{x+1} = 1 + \frac{2}{x+1} \\[ 10pt ]
&\text{と表せる。}
\end{align*}
どちらも商が1となります。割り算の基本公式を利用した変形は、分母と同じ式が分子にいくつできるのかを考えるのがポイントです。ここを押さえておけば、式変形で困ることはないでしょう。
分数式の加法や減法の例題
分数式の加法や減法を例を挙げて考えてみましょう。
例題
\begin{align*}
&\text{次の計算をせよ。} \\[ 5pt ]
&(1) \quad \frac{x^{\scriptsize{2}}+4x+5}{x+3} – \frac{x^{\scriptsize{2}}+5x+6}{x+4} \\[ 10pt ]
&(2) \quad \frac{x+2}{x} – \frac{x+3}{x+1} – \frac{x-5}{x-3} + \frac{x-6}{x-4}
\end{align*}
例題(1)の解答・解説
例題(1)
\begin{align*}
&\text{次の計算をせよ。} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{x^{\scriptsize{2}}+4x+5}{x+3} – \frac{x^{\scriptsize{2}}+5x+6}{x+4}
\end{align*}
例題(1)は、分数式の減法です。分子の次数が分母の次数よりも大きいことに注目します。分子の次数が分母の次数よりも小さくなるように、分数式をそれぞれ変形します。
分子を割られる式、分母を割る式として、分子を割り算の基本公式の形に変形します。コツを利用した暗算が難しいときは筆算しましょう。
例題(1)の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\frac{x^{\scriptsize{2}}+4x+5}{x+3} – \frac{x^{\scriptsize{2}}+5x+6}{x+4} \\[ 10pt ]
= &\frac{(x+3)(x+1)+2}{x+3} – \frac{(x+4)(x+1)+2}{x+4}
\end{align*}
さらに分数式をそれぞれ変形します。
例題(1)の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\qquad \vdots \\[ 7pt ]
&= \frac{(x+3)(x+1)+2}{x+3} – \frac{(x+4)(x+1)+2}{x+4} \\[ 10pt ]
&= \left\{ \frac{(x+3)(x+1)}{x+3} + \frac{2}{x+3} \right\} – \left\{ \frac{(x+4)(x+1)}{x+4} + \frac{2}{x+4} \right\} \\[ 10pt ]
&= \left( x+1 + \frac{2}{x+3} \right) – \left( x+1 + \frac{2}{x+4} \right)
\end{align*}
式変形に慣れてくれば、解答例2⃣の波カッコを用いた記述を省略できるでしょう。
準備ができたので、計算します。部分分数の公式を利用すると計算が楽です。符号ミスにはくれぐれも注意しましょう。
例題(1)の解答例 3⃣
\begin{align*}
&\qquad \vdots \\[ 7pt ]
&= \left( x+1 + \frac{2}{x+3} \right) – \left( x+1 + \frac{2}{x+4} \right) \\[ 10pt ]
&= \frac{2}{x+3} – \frac{2}{x+4} \\[ 10pt ]
&= 2 \left( \frac{1}{x+3} – \frac{1}{x+4} \right) \\[ 10pt ]
&= 2 \cdot \frac{4-3}{(x+3)(x+4)} \\[ 10pt ]
&= 2 \cdot \frac{1}{(x+3)(x+4)} \\[ 10pt ]
&= \frac{2}{(x+3)(x+4)}
\end{align*}
先に共通因数の2をくくり出し、分子を1にしておきましょう。その後に部分分数の公式を利用します。
部分分数の公式(応用)
\begin{align*}
&\quad \frac{1}{(x+a)(x+b)} = \frac{1}{b-a} \left( \frac{1}{x+a} – \frac{1}{x+b} \right) \\[ 10pt ]
&\text{が成り立つ。} \\[ 5pt ]
&\text{両辺に $b-a$ を掛けると} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{1}{x+a} – \frac{1}{x+b} = \frac{b-a}{(x+a)(x+b)}
\end{align*}
部分分数への式変形は頻出なので、覚えておくと便利な公式です。
例題(2)の解答・解説
例題(2)
\begin{align*}
&\text{次の計算をせよ。} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{x+2}{x} – \frac{x+3}{x+1} – \frac{x-5}{x-3} + \frac{x-6}{x-4}
\end{align*}
例題(2)は、分数式の加法と減法が混じった計算です。分子の次数と分母の次数が等しいので、それぞれの分数式を変形してから計算します。分母を意識しながら分子を変形します。
例題(2)の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\frac{x+2}{x} – \frac{x+3}{x+1} – \frac{x-5}{x-3} + \frac{x-6}{x-4} \\[ 10pt ]
= &\frac{x+2}{x} – \frac{(x+1)+2}{x+1} – \frac{(x-3)-2}{x-3} + \frac{(x-4)-2}{x-4}
\end{align*}
割り算の基本公式なしで変形できます。各分数式をさらに変形します。符号ミスがないように、カッコを上手に使いましょう。
例題(2)の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\qquad \vdots \\[ 7pt ]
&= \frac{x+2}{x} – \frac{(x+1)+2}{x+1} – \frac{(x-3)-2}{x-3} + \frac{(x-4)-2}{x-4} \\[ 10pt ]
&= \left( \frac{x}{x} + \frac{2}{x} \right) – \left( \frac{x+1}{x+1} + \frac{2}{x+1} \right) – \left( \frac{x-3}{x-3} + \frac{-2}{x-3} \right) + \left( \frac{x-4}{x-4} + \frac{-2}{x-4} \right) \\[ 10pt ]
&= \left( 1 + \frac{2}{x} \right) – \left( 1 + \frac{2}{x+1} \right) – \left( 1 + \frac{-2}{x-3} \right) + \left( 1 + \frac{-2}{x-4} \right)
\end{align*}
準備ができたので、計算します。この後も符号ミスをしやすいので注意しましょう。
例題(2)の解答例 3⃣
\begin{align*}
&\qquad \vdots \\[ 7pt ]
&= \left( 1 + \frac{2}{x} \right) – \left( 1 + \frac{2}{x+1} \right) – \left( 1 + \frac{-2}{x-3} \right) + \left( 1 + \frac{-2}{x-4} \right) \\[ 10pt ]
&= \frac{2}{x} – \frac{2}{x+1} – \frac{-2}{x-3} + \frac{-2}{x-4} \\[ 10pt ]
&= 2 \left( \frac{1}{x} – \frac{1}{x+1} – \frac{-1}{x-3} + \frac{-1}{x-4} \right) \\[ 10pt ]
&= 2 \left( \frac{1}{x} – \frac{1}{x+1} + \frac{1}{x-3} – \frac{1}{x-4} \right)
\end{align*}
共通因数ができたら、くくり出しておきます。前2つの分数式の計算と、後ろ2つの分数式の計算とを分けて行います。部分分数の公式を利用します。
例題(2)の解答例 4⃣
\begin{align*}
&\qquad \vdots \\[ 7pt ]
&= 2 \left( \frac{1}{x} – \frac{1}{x+1} + \frac{1}{x-3} – \frac{1}{x-4} \right) \\[ 10pt ]
&= 2 \left\{ \frac{1-0}{x(x+1)} + \frac{-4-(-3)}{(x-3)(x-4)} \right\} \\[ 10pt ]
&= 2 \left\{ \frac{1}{x(x+1)} + \frac{-1}{(x-3)(x-4)} \right\}
\end{align*}
分数式が2つ残っていますが、分母は2次式です。分母が2次式だと部分分数の公式を使えません。ですから、通分して1つの分数式にまとめます。
分母の因数がともに等しくなるように通分します。通分したら、分子を整理します。
例題(2)の解答例 5⃣
\begin{align*}
&\qquad \vdots \\[ 7pt ]
&= 2 \left\{ \frac{1}{x(x+1)} + \frac{-1}{(x-3)(x-4)} \right\} \\[ 10pt ]
&= 2 \left\{ \frac{1 \cdot (x-3)(x-4) -1 \cdot x(x+1)}{x(x+1)(x-3)(x-4)} \right\} \\[ 10pt ]
&= 2 \left\{ \frac{x^{\scriptsize{2}}-7x+12 -x^{\scriptsize{2}}-x}{x(x+1)(x-3)(x-4)} \right\} \\[ 10pt ]
&= 2 \cdot \frac{-8x+12}{x(x+1)(x-3)(x-4)} \\[ 10pt ]
&= 2 \cdot \frac{-4(2x-3)}{x(x+1)(x-3)(x-4)} \\[ 10pt ]
&= \frac{-8(2x-3)}{x(x+1)(x-3)(x-4)} \\[ 10pt ]
&= – \frac{8(2x-3)}{x(x+1)(x-3)(x-4)}
\end{align*}
丁寧に記述したので長くなりましたが、1つずつやるべきことをこなしていくと上述のようになります。
もし、計算過程を少なくしたいのであれば、暗算で済ませる部分を増やさなければなりません。どの程度、暗算で済ませるかは人によって異なります。
実際に自分で答案を作成してみると、どのくらいの記述で済むのかが分かるでしょう。その際に、自分で作成した答案と模範解答とを見比べてみると理解が進みます。
次は、分数式の加法や減法を実際に解いてみましょう。