2次関数|2次関数のグラフの平行移動について
前回の記事でこれまでに学習した比例や反比例などの関数について復習ました。関数の式とグラフの関係を関連付けておくことが大切でした。
今回は高校数学の関数においてメインで扱う2次関数について学習します。
2次関数のグラフの平行移動
グラフの平行移動とは、グラフをx軸方向やy軸方向に沿って移動させることです。
グラフの平行移動では、直線の傾きが変わったり、曲線の曲がり具合が変わったりすることはないので注意しましょう。ただ単に、グラフの位置が変わるだけです。
高校数学で学習する2次関数の式は、グラフの平行移動に関係しています。2乗に比例する関数のグラフを平行移動すると、2次関数の標準形と呼ばれる式が導かれるからです。
2次関数のグラフは、中学で学習した2乗に比例する関数のグラフを平行移動したもの。2乗に比例する関数は、2次関数の一例。
ですから2次関数の式やグラフを扱えるように、2乗に比例する関数に関する事柄を予めマスターしておく必要があります。
グラフの概形や用語も確認しておきましょう。
2乗に比例する関数のグラフを平行移動するやり方は3パターンあります。
2乗に比例する関数のグラフを平行移動するやり方
- グラフをy軸方向に平行移動する
- グラフをx軸方向に平行移動する
- グラフをy軸方向およびx軸方向に平行移動する
3番目は1,2番目の平行移動を組み合わせたものなので、1,2番目の平行移動をきちんと理解しましょう。
y軸方向の平行移動
2乗に比例する関数y=ax2のグラフをy軸方向(上下方向)にqだけ平行移動してみましょう。
このとき、原点にある頂点(0,0)はy軸方向にqだけ平行移動します。すると、頂点の座標は(0,q)に移動します。
y軸方向の平行移動では、x座標は変わらず、y座標が平行移動の分だけ変化。
頂点以外の点も同じように、すべてがy軸方向にqだけ平行移動するので、座標もy座標だけがqだけ変化します。
このような平行移動をしたとき、移動後の式は右辺に定数項qが加わった式に変わります。
y軸方向にqだけ平行移動したとき
$y=ax^2$ のグラフを $y$ 軸方向に $q$ だけ平行移動する。
\begin{align*} &\text{移動前の式} \ \cdots \ y = ax^2 \\[ 7pt ] &\text{移動後の式} \ \cdots \ y = ax^2 \underline{+q} \end{align*}y軸方向の平行移動は、式では右辺の定数項に反映されます。ただし、頂点の座標は変わりましたが、軸や凸の向きは変化しません。
y軸方向にqだけ平行移動したとき
\begin{align*} &\text{移動後の式} \ \cdots \ y = ax^2 +q \\[ 7pt ] &\text{頂点} \ \cdots \ \text{原点から点} \ (0 \ , \ q) \ \text{に移動} \\[ 7pt ] &\text{軸} \ \cdots \ \text{$y$ 軸で変わらず} \\[ 7pt ] &\text{凸の向き} \ \cdots \ \text{変わらず} \end{align*}具体例から分かるように、同じxの値に対して、yの値だけが平行移動の分だけ変化しています。
グラフ上にある点のy座標が変化するのに伴って、グラフはy軸方向に平行移動します。
2次関数のグラフの平行移動では、グラフの位置が変わるだけで、移動の前後で比例定数aの値は変わらない。比例定数aは凸の向きやグラフの開き具合を表す値。
x軸方向の平行移動
2乗に比例する関数y=ax2のグラフをx軸方向(左右方向)にpだけ平行移動してみましょう。
このとき、原点にある頂点(0,0)はx軸方向にpだけ平行移動します。すると、頂点の座標は(p,0)に移動します。
x軸方向の平行移動では、y座標は変わらず、x座標が平行移動の分だけ変化。
頂点以外の点も同じように、すべてがx軸方向にpだけ平行移動するので、座標もx座標だけがpだけ変化します。
このような平行移動をしたとき、移動後の式は右辺のxが(x-p)に置き換わった式に変わります。
x軸方向にpだけ平行移動したとき
$y=ax^2$ のグラフを $x$ 軸方向に $p$ だけ平行移動する。
\begin{align*} &\text{移動前の式} \ \cdots \ y = ax^2 \\[ 7pt ] &\text{移動後の式} \ \cdots \ y = a\left( x \underline{-p} \right)^2 \end{align*}x軸方向の平行移動は、式では右辺の変数xに反映されます。ただし、頂点の座標とともに軸の位置が変わりますが、凸の向きは変化しません。
特に注意したいのは、軸の位置です。軸はグラフにおいて対称の軸であり、頂点を必ず通ります。軸と頂点の関係から、頂点がx軸方向に平行移動すると、それに伴って軸もx軸方向に平行移動します。
x軸方向にpだけ平行移動したとき
\begin{align*} &\text{移動後の式} \ \cdots \ y = a\left( x-p \right)^2 \\[ 7pt ] &\text{頂点} \ \cdots \ \text{原点から点} \ (p \ , \ 0) \ \text{に移動} \\[ 7pt ] &\text{軸} \ \cdots \ \text{直線 $x=p$ に移動} \\[ 7pt ] &\text{凸の向き} \ \cdots \ \text{変わらず} \end{align*}具体例から分かるように、同じyの値に対してxの値だけが平行移動の分だけ変化しています。
グラフ上にある点のx座標が変化するのに伴って、グラフはx軸方向に平行移動します。
y軸方向およびx軸方向の平行移動
y軸方向およびx軸方向の平行移動は、これまでの2つの平行移動を合わせた移動です。
ここで注意したいのは、混乱の元となるので同時に平行移動させないことです。たとえば、y軸方向に平行移動してからx軸方向に平行移動させるなどします。そうすると平行移動後のグラフの位置が分かります。
2乗に比例する関数y=ax2のグラフをx軸方向にpだけ、y軸方向にqだけ平行移動したときの式は以下のようになります。また、頂点や軸についてもまとめておきます。
x軸方向にpだけ、y軸方向にqだけ平行移動したとき
$y=ax^2$ のグラフを $x$ 軸方向に $p$ だけ平行移動する。
\begin{align*} &\text{移動前の式} \ \cdots \ y = ax^2 \\[ 7pt ] &\text{移動後の式} \ \cdots \ y = a\left( x \underline{-p} \right)^2 \underline{+q} \ \text{(この式を標準形と言う)} \\[ 7pt ] &\text{頂点} \ \cdots \ \text{原点から点} \ (p \ , \ q) \ \text{に移動} \\[ 7pt ] &\text{軸} \ \cdots \ \text{直線 $x=p$ に移動} \\[ 7pt ] &\text{凸の向き} \ \cdots \ \text{変わらず} \end{align*}x軸方向とy軸方向とで式の変わる箇所が決まっているので、対応関係を把握しましょう。2次関数のグラフの平行移動をまとめると以下のようになります。
グラフの平行移動は、式の形を見て判断しよう。
なお、関数y=ax2をx軸方向およびy軸方向に平行移動して得られる式y=a(x-p)2+qを「2次関数の標準形」として用います。
2次関数を扱うとき、標準形の式で考えるのが基本です。この式から「軸・頂点・凸の向き」の3つの情報を得ることができるようにしておきましょう。
2乗に比例する関数と2次関数との関係をまとめると以下のようになります。2乗に比例する関数は、2次関数の一例と考えることができます。
グラフの平行移動を一般化する
2乗に比例する関数y=ax2のグラフをx軸方向にpだけ平行移動すると、式がxから(x-p)に置き換えた形に変わりました。
この置き換えは、y軸方向の平行移動でも成り立ちます。
y軸方向にqだけ平行移動したとき
$y=ax^2$ のグラフを $y$ 軸方向に $q$ だけ平行移動させる。
\begin{align*} \quad y=ax^2 \end{align*}において、$y$ を $y-q$ に置き換えると
\begin{align*} \quad y-q=ax^2 \end{align*}よって
\begin{align*} \quad y=ax^2 +q \end{align*}このことから分かるのは、グラフを平行移動した後の式は、xやyを平行移動のぶんを考慮した式に置き換えるだけで求めることができるということです。
グラフの平行移動の一般化
- x軸方向にpだけ平行移動 ⇒ xを(x-p)に置き換える
- y軸方向にqだけ平行移動 ⇒ yを(y-q)に置き換える
このことは、2次関数だけではなく関数全般で成り立ちます。この性質を上手に利用できるようになると、どんな関数でも平行移動後の式を簡単に求めることができます。
今後、三角関数、対数・指数関数、3次関数など様々な関数を学習する。2次関数の平行移動でマスターしておこう。
手順は非常に簡単です。xやyを平行移動した分を考慮した式に置き換えるだけです。
置き換えた後に式を整理すると、平行移動後の式になります。
この性質の利点は、対応部分の置き換えだけで平行移動後の式を求めることができる点です。
平行移動後の式を求めるだけであれば、グラフの図示や標準形への変形が不要なので、かなり便利な性質です。
y=f(x)について
図解では、y=f(x)という式を用いています。fはfunction(関数)の頭文字です。
y=f(x)という式は、yがxの関数であることを表します。ただし、y=f(x)だけは、具体的にどんな式であるのか分かりません。
たとえば、f(x)をyの代わりに用いて、f(x)=x+5のように記述します。f(x)を用いると、xの値とそれに対応するyの値とを1つの式で扱えるようになります。
f(1)=6であれば、x=1のときy=6であることを表します。x=1やy=6だけでは、対応するxやyの値が分かりません。それに対してf(x)を使うと、1つの式でx,yの値を両方とも知ることができます。
関数では、x,yの値をセットで扱うので、1つの式で記述できるのはとても便利です。
2次関数のグラフの平行移動を扱った問題を解いてみよう
次の問題を考えてみましょう。
問の解答例・別解
問
次の $2$ 次関数のグラフを、$x$ 軸方向に $-2$、$y$ 軸方向に $1$ だけ平行移動したあとのグラフの式を求めよ。
\begin{align*} \quad y=x^2 +3 \end{align*}2次関数のグラフの平行移動に関する問題です。2次関数のグラフを平行移動する問題の基本的な解き方をまとめると以下のようになります。
2次関数のグラフの平行移動の基本的な解き方
- 与式を標準形にして頂点を求め、平行移動する。
- 移動後の頂点の座標を標準形の式に戻す。
与式は標準形で表されています。与式は、関数y=x2のグラフをy軸方向に3だけ平行移動したときの式です。
与式と標準形(公式)の対応関係は以下のようになります。
与式と標準形(公式)の対応関係
\begin{align*} &\text{標準形} \ \cdots \ y = a\left( x-p \right)^2 +q \\[ 7pt ] &\text{与式} \ \cdots \ y=x^2 +3 \end{align*}対応関係を調べると
\begin{align*} \quad a=1 \ , \ p=0 \ , \ q=3 \end{align*}よって、与式の頂点の座標は
\begin{align*} \quad (0 \ , \ 3) \end{align*}対応関係が分かれば、平行移動後の頂点や軸などの情報もすぐに分かります。ただし、平行移動によって、凸の向きや開き具合に変化はないので、a=1のままです。
2次関数のグラフの平行移動では、頂点に注目してグラフの平行移動を考えるのが基本です。ですから、与式が標準形になっているかを最初に確認しましょう。
頂点(0,3)をx軸方向に-2だけ、y軸方向に1だけ平行移動します。
問の解答例 1⃣
与式から頂点の座標は
\begin{align*} \quad (0 \ , \ 3) \end{align*}$x$ 軸方向に $-2$、$y$ 軸方向に $1$ だけ平行移動すると
平行移動後の頂点の座標は
\begin{align*} \quad (-2 \ , \ 4) \end{align*}平行移動の頂点の座標が分かったら、2次関数の式を求めます。標準形(公式)に代入します。
標準形(公式)に代入するのは、a=1,p=-2,q=4です。
問の解答例 2⃣
\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad (-2 \ , \ 4) \end{align*}よって、平行移動後の式は
\begin{align*} \quad y=\left\{ \underline{x-\left(-2 \right)} \right\}^2 +4 \end{align*}したがって
\begin{align*} \quad y=\left(x+2 \right)^2 +4 \end{align*}得られた式を展開する必要はありません。標準形のままで問題ありません。
また、pに負の値を代入するときは注意しましょう。p=-2を代入すれば下線部分のようになります。符号ミスが多いので気を付けましょう。
問の別解例
別解として、一般化したグラフの平行移動の考えを利用する解法もあります。応用的な解法になりますが、慣れるとかなり簡単に解けるようになります。
一般化したグラフの平行移動
$y=f(x)$ のグラフを $x$ 軸方向に $p$ だけ、$y$ 軸方向に $q$ だけ平行移動する。
このとき
\begin{align*} \quad y=f(x) \end{align*}において、$x$ を $x-p$ に、$y$ を $y-q$ に置き換えて
\begin{align*} \quad y-q=f \left(x-p \right)\end{align*}よって
\begin{align*} \quad y=f \left(x-p \right)+q \end{align*}f(x)を用いていても同じ要領で求めることができます。
平行移動の応用的な解法の手順
y-q=f(x-p)を利用する。
- xを(x-p)に、yを(y-q)に置き換える。
- 置き換え後の式を整理する。
x,yを平行移動に合わせた式に置き換えて整理します。
問の別解例
のグラフを $x$ 軸方向に $-2$、$y$ 軸方向に $1$ だけ平行移動するので
$x$ を $x-(-2)$、すなわち $x+2$ に、$y$ を $y-1$ に置き換えればよい。
よって、平行移動後の式は
\begin{align*} \quad y-1= \left(x+2 \right)^2 +3 \end{align*}整理すると
\begin{align*} \quad y = \left(x+2 \right)^2 +4 \end{align*}f(x)に相当するのはx2+3です。この式においてxをx+2に置き換えます。+3を忘れないようにしましょう。
応用的な解法は機械的に解くので、手順さえ覚えてしまえば簡単に利用できるようになります。ただ、2次関数では軸や頂点の情報を求めることが必須になります。ですから、最初のうちは基本的な解法で解くようにした方が無難でしょう。
問のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
2次関数のグラフの平行移動では、頂点の平行移動で解くのが基本。ただし、応用的な解法を利用すると、時間の短縮や負担の軽減になるので状況に応じて使い分けよう。
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大事なことは、自分に合った教材を徹底的に活用することです。どの教材を選ぶにしても、自分の目で中身を確認し、納得してから購入することが大切です。
さいごに、もう一度、頭の中を整理しよう
- 2次関数の標準形は、2乗に比例する関数のグラフの平行移動から得られる。
- y軸方向とx軸方向の平行移動を個別に理解しよう。
- y軸方向およびx軸方向に平行移動した後の式が、2次関数の標準形。
- 標準形から「軸・頂点・凸の向き」の3つの情報を取り出せるようにしよう。
- 関数のグラフの平行移動では、決まった置き換えで移動後の式を求めることができる。