整数の性質|最大公約数と最小公倍数について

数学A

数学A 整数の性質

最大公約数や最小公倍数の求め方その2

ここからがこの単元の本題です。高校数学では、素因数分解を利用して最大公約数や最小公倍数を求める方法を学習します。

素因数分解を利用した求め方

2つの整数を素因数分解すると、2つの整数の成り立ちが良く分かります。この素因数に注目して、最大公約数や最小公倍数を求めることができます。

まず、2つの整数をそれぞれ素因数分解します。

24と36の素因数分解

\begin{align*} 24 &= \underline{2 \times 2} \times 2& &\underline{\times 3}& &= 2^{3} \times 3^{1} \\[ 7pt ] 36 &= \underline{2 \times 2}& &\underline{\times 3} \times 3& &= 2^{2} \times 3^{2} \end{align*}

2つの整数をそれぞれ素因数分解すると、素因数には共通のものとそうでないものとがあることが分かります。

24と36は、2個の2と1個の3を共通にもっています。ですから、先ほどの筆算で、2で2回、3で1回だけ共通に割ることができたのです。

最大公約数は、2つの整数を共通に割れる数のうち、正で最大のものです。ですから、最大公約数は、共通の素因数をすべてもつ数であれば良いことが分かります。

筆算では共通の数で割りますが、これが共通の素因数となるので、縦に並んだ数の積が最大公約数となるのは明らかです。

24と36の最大公約数

\begin{align*} 24 &= \underline{2 \times 2} \times 2& &\underline{\times 3}& &= 2^{3} \times 3^{1} \\[ 7pt ] 36 &= \underline{2 \times 2}& &\underline{\times 3} \times 3& &= 2^{2} \times 3^{2} \end{align*}

よって、$24$ と $36$ の最大公約数は

\begin{align*} \quad 2 \times 2 \times 3 &= 2^{2} \times 3^{1} \\[ 7pt ] &= 12 \end{align*}

また、整数の倍数は、もとの整数に新たに数を掛け算して得られます。

たとえば、24の倍数なら24を△倍したもので、36の倍数なら36を□倍したものです(△や□には整数が入ります)。

24と36の倍数

$24$ の倍数は

\begin{align*} \quad 24 \times \text{□} = 2 \times 2 \ \underline{\underline{\times 2}} \times 3 \times \text{□} \end{align*}

$36$ の倍数は

\begin{align*} \quad 36 \times \text{△} = 2 \times 2 \ \underline{ \times 3} \times 3 \times \text{△} \end{align*}

共通の積になるためには、$24$ には $2$ が $1$ つ、$36$ には $3$ が $1$ つだけ余分にある。

公倍数であれば、新たな数を掛けたとしても素因数分解したときの式が全く同じになるはずです。

それでは、公倍数の中でも最小となるにはどうすれば良いでしょうか?

24と36に何を掛ければ最小公倍数になるか

$24$ に $3$ を掛けたとき

\begin{align*} \quad 24 \times 3 = 2 \times 2 \ \underline{\underline{\times 2}} \times 3 \times \underline{3} \end{align*}

$36$ に $2$ を掛けたとき

\begin{align*} \quad 36 \times 2 = 2 \times 2 \ \underline{\times 3} \times 3 \ \underline{\underline{\times 2}} \end{align*}

素因数がすべて同じで最小の公倍数になっている。

最小の公倍数になるのは、一方の整数だけがもつ素因数を、他方の整数に掛けたときの数です。

つまり、最小の公倍数は、24に3を1個だけ掛けた数、または36に2を1個だけ掛けた数です。新たに掛けた2や3は、24と36の一方だけがもつ素因数で、浮いた素因数と言えます。

このことから、2つの整数が共通にもつ素因数に加えて、浮いた素因数も含めた積が最小公倍数になります。

24と36の最小公倍数

$24$ と $36$ の最小公倍数は

\begin{align*} \quad 2 \times 2 \times 3 \ \underline{\underline{\times 2}} \ \underline{\times 3} = 2^{3} \times 3^{2} = 72 \end{align*}

ここで

\begin{align*} \quad 2 \times 2 \times 3 \end{align*}

は、共通の素因数の積で

\begin{align*} \quad \underline{\underline{2}} \ \times \ \underline{3} \end{align*}

は、浮いた素因数の積

実際は、素因数分解すると累乗の形で表します。ですから、累乗の指数を見て判断します

最大公約数と最小公倍数は指数を参考にする

\begin{align*} &\quad 24 = 2^{3} \times \underline{3^{1}} \\[ 7pt ] &\quad 36 = \underline{2^{2}} \times 3^{2} \end{align*}

$24$ と $36$ の最大公約数は

\begin{align*} \quad 2^{2} \times 3^{1} = 12 \end{align*}

$24$ と $36$ の最小公倍数は

\begin{align*} \quad 2^{3} \times 3^{2} = 72 \end{align*}

最大公約数は、共通の素因数からなります。ですから、共通の素因数があれば、指数の小さい方の累乗を採用します。

また、最小公倍数は、共通の素因数だけでなく、浮いた素因数も含みます。ですから、共通の素因数があれば、指数の大きい方の累乗を採用します。

ただし、下例の2,5のように、完全に浮いた素因数があれば、指数の大小にかかわらずそのまま採用します。

12と45の最大公約数と最小公倍数

\begin{align*} \quad 12 &=& 2^{2} \times &3 \\[ 7pt ] \quad 45 &=& &3^{2} \times 5 \end{align*}

よって、$12$ と $45$ の最大公約数は $3$

また、$12$ と $45$ の最小公倍数は

\begin{align*} \quad 2^{2} \times 3^{2} \times 5 = 180 \end{align*}

素因数分解を利用する方法をまとめると以下のようになります。

最大公約数や最小公倍数を筆算で求める(素因数分解を利用)
最大公約数や最小公倍数を素因数分解で求める

素因数と最大公約数・最小公倍数との関係

2つの整数の素因数と、最大公約数・最小公倍数との関係をベン図で表すと良く分かります。2つの整数がもつ素因数を要素とする集合を考えてみましょう。

素因数と最大公約数・最小公倍数との関係
素因数と最大公約数・最小公倍数との関係

共通にもつ素因数と浮いた素因数とに分けられます。最大公約数は、共通部分に属する素因数からなり、最小公倍数は、和集合に属する素因数からなることが分かります。

かなり解説が長くなりましたが、素因数と公約数・公倍数との関係がイメージできたのではないでしょうか?

因数に注目できるようになると、数や式の扱いが格段に上達します。めげずに取り組みましょう。

次は、2つの整数の最大公約数が1となるときや、2つの整数の積を考えます。新しい用語や関係式が出てきます。きちんと覚えましょう。

互いに素

2つの整数の最大公約数が1であるとき、2つの整数は互いに素であると言います。

たとえば、2つの整数が3,5のような素数であれば、最大公約数は1となるので、3と5は互いに素であると言えます。

2つの整数が互いに素かどうかの判定は、素因数分解して素因数を調べることで可能です。

互いに素かどうかの判定

\begin{align*} &\quad 15 = 3 \times 5 \\[ 7pt ] &\quad 28 = 2^{2} \times 7 \end{align*}

$15$ と $28$ は共通の素因数をもたない。

よって、$15$ と $28$ は互いに素である。

2つの整数が共通の素因数を持たなければ、最大公約数が1となるので互いに素となります。

互いに素かどうかの判定は、暗算で考えるより、素因数分解した方が早く確実。

2つの整数の積、最大公約数、最小公倍数の関係

2つの整数を、最大公約数を用いて表すことができます。また、2つの整数の積を、最大公約数最小公倍数を用いて表すこともできます。

24と36を最大公約数を用いて表す

\begin{align*} \quad 24 &= \underline{2 \times 2} \times 2& &\underline{\times 3} \\[ 7pt ] \quad 36 &= \underline{2 \times 2}& &\underline{\times 3} \times 3 \end{align*}

よって、最大公約数は

\begin{align*} \quad 2 \times 2 \times 3=12 \end{align*}

であるので

\begin{align*} &\quad 24 = \underline{12} \times 2 \\[ 7pt ] &\quad 36 = \underline{12} \times 3 \end{align*}

24と36の例で分かるように、2つの整数は、最大公約数12と浮いた素因数2,3との積でそれぞれ表されます。

ここで、一方の整数だけがもつ、浮いた素因数2,3は、互いに素であることに注意しましょう。もし、互いに素でなければ、共通の素因数がまだ残っているので、最大公約数が間違っていることになります。

一般に、2つの整数の積は、最大公約数と最小公倍数を用いて以下のように表されます。

2つの整数の積

$2$ つの整数 $a \ , \ b$ の積は

\begin{align*} \quad ab = gl \end{align*}

と表せる。

ただし

$\quad g$ … 最大公約数

$\quad l$ … 最小公倍数

この式を導出してみましょう。2つの整数や最小公倍数を、最大公約数で表せることがポイントです。

2つの整数の積を導出する

最大公約数を $g$、最小公倍数を $l$ とする。

$2$ つの整数 $a \ , \ b$ は

\begin{align*} &\quad a = a’g \\[ 7pt ] &\quad b = b’g \end{align*}

と表せる。

ただし、$a’ \ , \ b’$ は互いに素。

このとき、$2$ つの数の積を求めると

\begin{align*} \quad ab &= a’g \cdot b’g \\[ 7pt ] &= a’b’g \cdot g \end{align*}

ここで、$a’b’g=l$ より

\begin{align*} \quad ab = gl \end{align*}

が成り立つ。

式だけではよく分からない場合、筆算を思い浮かべると良いでしょう。

2つの整数の積と、最大公約数・最小公倍数との関係
2つの整数の積と、最大公約数・最小公倍数との関係

次は、最大公約数や最小公倍数を扱った問題を実際に解いてみましょう。