数学2
高次方程式の解法(因数分解の利用)を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問
\begin{align*}
&\text{次の方程式を解け。} \\[ 5pt ]
&(1) \quad x^{\scriptsize{4}}-5x^{\scriptsize{2}}-6=0 \\[ 7pt ]
&(2) \quad \left(x^{\scriptsize{2}}-x \right)^{\scriptsize{2}}+\left(x^{\scriptsize{2}}-x \right)-6 =0 \\[ 7pt ]
&(3) \quad x^{\scriptsize{4}}+2x^{\scriptsize{2}}+4=0
\end{align*}
問(1)の解答・解説
問(1)
\begin{align*}
&\text{次の方程式を解け。} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{4}}-5x^{\scriptsize{2}}-6=0
\end{align*}
与式は4次方程式です。方程式の扱いに慣れれば、与式をそのまま因数分解します。ここでは、文字を置き換えて次数を下げる解法で解きます。
問(1)の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\quad x^{\scriptsize{4}}-5x^{\scriptsize{2}}-6=0 \\[ 7pt ]
&\text{$x^{\scriptsize{2}}=X$ とおくと} \\[ 5pt ]
&\quad X^{\scriptsize{2}}-5X-6=0
\end{align*}
4次から2次に次数を下げることができました。2次方程式を因数分解します。
問(1)の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad X^{\scriptsize{2}}-5X-6=0 \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad \left(X+1 \right)\left(X-6 \right)=0
\end{align*}
置き換えた文字を元に戻します。元の文字に戻したら、因数分解できるか確認しましょう。
問(1)の解答例 3⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \left(X+1 \right)\left(X-6 \right)=0 \\[ 7pt ]
&\text{$X=x^{\scriptsize{2}}$ であるので} \\[ 5pt ]
&\quad \left(x^{\scriptsize{2}}+1 \right)\left(x^{\scriptsize{2}}-6 \right)=0
\end{align*}
前のカッコ内の2次式については、因数分解できないのでそのままです。また、後ろのカッコ内の2次式については、因数分解すると平方根が出てくるので、そのままにしておきます。
新たに次数の低い方程式を導き、与式の解を求めます。
問(1)の解答例 4⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \left(x^{\scriptsize{2}}+1 \right)\left(x^{\scriptsize{2}}-6 \right)=0 \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+1=0 \ \text{または} \ x^{\scriptsize{2}}-6=0 \\[ 7pt ]
&\text{したがって} \\[ 5pt ]
&\quad x = \pm i \ , \ \pm \sqrt{6}
\end{align*}
解は複素数の範囲で答えましょう。忘れやすいので注意しましょう。
問(2)の解答・解説
問(2)
\begin{align*}
&\text{次の方程式を解け。} \\[ 5pt ]
&\quad \left(x^{\scriptsize{2}}-x \right)^{\scriptsize{2}}+\left(x^{\scriptsize{2}}-x \right)-6 =0
\end{align*}
与式をよく観察しましょう。与式の左辺は3つの項の和で表されており、因数分解されていません。
符号の前にスラッシュを入れて項の数を確認
\begin{align*}
&\quad \left(x^{\scriptsize{2}}-x \right)^{\scriptsize{2}} \ / +\left(x^{\scriptsize{2}}-x \right) \ /-6 =0 \\[ 7pt ]
&\text{左辺は $3$ つの項の和で表される多項式。}
\end{align*}
1番目と2番目の項に共通因数があることに注目します。共通因数を1つの文字に置き換えて、与式を見やすくします。
問(2)の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\quad \left(x^{\scriptsize{2}}-x \right)^{\scriptsize{2}}+\left(x^{\scriptsize{2}}-x \right)-6 =0 \\[ 7pt ]
&\text{$x^{\scriptsize{2}}-x=X$ とおくと} \\[ 5pt ]
&\quad X^{\scriptsize{2}}+X-6=0
\end{align*}
上述のように、文字の置き換えは、単項式である必要はありません。多項式であっても別の文字に置き換えることができます。
文字の置き換えは、単項式だけでなく、多項式でもできる。
文字の置き換えによって、与式が2次方程式になりました。この2次方程式を因数分解します。
問(2)の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad X^{\scriptsize{2}}+X-6=0 \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad \left(X-2 \right)\left(X+3 \right)=0
\end{align*}
置き換えた文字を元に戻します。戻した後に因数分解できるか確認しましょう。
問(2)の解答例 3⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \left(X-2 \right)\left(X+3 \right)=0 \\[ 7pt ]
&\text{$X=x^{\scriptsize{2}}-x$ であるので} \\[ 5pt ]
&\quad \left(x^{\scriptsize{2}}-x-2 \right)\left(x^{\scriptsize{2}}-x+3 \right)=0 \\[ 7pt ]
&\text{左辺を因数分解すると} \\[ 5pt ]
&\quad \left(x+1 \right)\left(x-2 \right)\left(x^{\scriptsize{2}}-x+3 \right)=0
\end{align*}
3番目のカッコ内の2次式については、因数分解できないのでそのままです。新たに次数の低い方程式を導いて、与式の解を求めます。
問(2)の解答例 4⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \left(x+1 \right)\left(x-2 \right)\left(x^{\scriptsize{2}}-x+3 \right)=0 \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad x+1=0 \ \text{または} \ x-2=0 \ \text{または} \ x^{\scriptsize{2}}-x+3=0 \\[ 7pt ]
&\text{より} \\[ 5pt ]
&\quad x = -1 \ , \ 2 \ , \ \frac{1 \pm \sqrt{11}i}{2}
\end{align*}
2次方程式を解くには、解の公式を利用します。2次方程式の解が虚数解となりますが、慌てず丁寧に計算しましょう。なお、高次方程式の解には、複素数が出てくることが多いので気を付けましょう。
問(3)の解答・解説
問(3)
\begin{align*}
&\text{次の方程式を解け。} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{4}}+2x^{\scriptsize{2}}+4=0
\end{align*}
与式をよく観察しましょう。与式は3項からなる4次式です。式の形は問(1)に似ています。
とりあえず問(1)を参考にして解いてみましょう。文字を置き換えて、与式の次数を下げます。
問(3)の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\quad x^{\scriptsize{4}}+2x^{\scriptsize{2}}+4=0 \\[ 7pt ]
&\text{$x^{\scriptsize{2}}=X$ とおくと} \\[ 5pt ]
&\quad X^{\scriptsize{2}}+2X+4=0
\end{align*}
問(1)と異なるのはここからです。置き換え後の2次方程式を見ると、素直に因数分解できそうにありません。このままだと行き詰ってしまいます。どうやら問(1)と同じやり方では上手くいかないようです。
最初からやり直しです。今度は文字を置き換えずに4次方程式のままで解きます。数学1ですでに学習していますが、平方の差を作ります。
実際に記述するとすれば、以下の解答例2⃣からになります。4次の項と定数項に注目して変形します。
問(3)の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad x^{\scriptsize{4}}+2x^{\scriptsize{2}}+4=0 \\[ 7pt ]
&\text{与式より} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{4}}\underline{+4x^{\scriptsize{2}}}+4\underline{-2x^{\scriptsize{2}}}=0 \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad \left(x^{\scriptsize{2}}+2 \right)^{\scriptsize{2}}-2x^{\scriptsize{2}}=0 \\[ 7pt ]
&\text{さらに} \\[ 5pt ]
&\quad \left(x^{\scriptsize{2}}+2 \right)^{\scriptsize{2}}-\left(\sqrt{2}x \right)^{\scriptsize{2}}=0
\end{align*}
平方の差を作るには、新たに作った項が負(後ろの平方)となるように変形します。ここでは、新たに作った項とは-2x2を指します。
前の平方については、4次の項x4と定数項+4に合わせて作ります。これらに合わせて2次の項が+4x2と決まります。これが決まってから、後ろの平方が決まります。慣れが必要ですが、それほど難しくありません。
平方の差ができたら因数分解します。
問(3)の解答例 3⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \left(x^{\scriptsize{2}}+2 \right)^{\scriptsize{2}}-\left(\sqrt{2}x \right)^{\scriptsize{2}}=0 \\[ 7pt ]
&\text{左辺を因数分解すると} \\[ 5pt ]
&\quad \left(x^{\scriptsize{2}}+2+\sqrt{2}x \right)\left(x^{\scriptsize{2}}+2-\sqrt{2}x \right)=0 \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad \left(x^{\scriptsize{2}}+\sqrt{2}x+2 \right)\left(x^{\scriptsize{2}}-\sqrt{2}x+2 \right)=0
\end{align*}
どちらの2次式も因数分解できないのでそのままです。新たに次数の低い方程式を導きます。
問(3)の解答例 4⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \left(x^{\scriptsize{2}}+\sqrt{2}x+2 \right)\left(x^{\scriptsize{2}}-\sqrt{2}x+2 \right)=0 \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+\sqrt{2}x+2=0 \\[ 7pt ]
&\text{または} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}-\sqrt{2}x+2=0
\end{align*}
それぞれの2次方程式について、解の公式を利用して解きます。係数が平方根であっても、公式に代入できます。
問(3)の解答例 5⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+\sqrt{2}x+2=0 \\[ 7pt ]
&\text{または} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}-\sqrt{2}x+2=0 \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+\sqrt{2}x+2=0 \quad \text{より} \quad \frac{-\sqrt{2} \pm \sqrt{6}i}{2} \\[ 7pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}-\sqrt{2}x+2=0 \quad \text{より} \quad \frac{\sqrt{2} \pm \sqrt{6}i}{2} \\[ 7pt ]
&\text{したがって} \\[ 5pt ]
&\quad x = \frac{-\sqrt{2} \pm \sqrt{6}i}{2} \ , \ \frac{\sqrt{2} \pm \sqrt{6}i}{2}
\end{align*}
問(3)は、文字を置き換えても素直に因数分解できない問題です。入試では確実に差がつく問題になるので、しっかり解けるようにしておきましょう。
4次方程式の解法は2パターン
- 文字を置き換えた後の2次方程式を因数分解。
- 置き換えで上手くいかなければ、4次方程式のままで平方の差を作る。
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さいごにもう一度まとめ
- 高次方程式を解くとき、因数分解して積の形で表す。
- 公式を利用して因数分解する。
- 文字を置き換えて次数を下げた方程式を因数分解する。
- 4次方程式では、文字を置き換えて2次方程式にするのが基本的な解法。
- 4次方程式では、平方の差を作るのが応用的な解法。