式と証明|条件式のある恒等式について

数学2

数学2 式と証明

条件式のある恒等式を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

\begin{equation*} (1) \quad 2x-y-3=0 \end{equation*}

を満たすすべての実数 $x \ , \ y$ に対して

\begin{equation*} \quad ax^{\scriptsize{2}}+by^{\scriptsize{2}}+2cx-9=0 \end{equation*}

が成立するような定数 $a \ , \ b \ , \ c$ を求めよ。

\begin{equation*} (2) \quad x+y+z=2 \ , \ x-y-5z=0 \end{equation*}

を満たす $x \ , \ y \ , \ z$ の任意の値に対して、つねに

\begin{equation*} \quad a \left(2-x \right)^{\scriptsize{2}}+b \left(2-y \right)^{\scriptsize{2}}+c \left(2-z \right)^{\scriptsize{2}} =35 \end{equation*}

が成立するような定数 $a \ , \ b \ , \ c$ を求めよ。

条件式があることはもちろんですが、問題文の文言にも気を付けましょう。

すべての実数に対して~が成り立つ」や「~の任意の値に対してつねに~が成立する」などの文言は、「等式が恒等式となるように」という意味です。

問題文の類似表現に気を付けよう。

問(1)の解答・解説

問(1)

\begin{equation*} (1) \quad 2x-y-3=0 \end{equation*}

を満たすすべての実数 $x \ , \ y$ に対して

\begin{equation*} \quad ax^{\scriptsize{2}}+by^{\scriptsize{2}}+2cx-9=0 \end{equation*}

が成立するような定数 $a \ , \ b \ , \ c$ を求めよ。

条件式を満たすすべての実数に対して等式が成り立てば良いので、恒等式の性質を用いることができます。文字の種類をできるだけ少なくして、係数比較法を用いて解きます。

条件式を変形しますが、このとき、係数が分数にならないようにします。

問(1)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\text{与えられた条件式} \\[ 5pt ] &\quad 2x-y-3=0 \\[ 7pt ] &\text{を変形すると} \\[ 5pt ] &\quad y=2x-3 \end{align*}

xについて変形すると係数が分数になるので、yについて変形しました。

変形後の条件式を与式に代入します。

問(1)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad y=2x-3 \\[ 7pt ] &\text{これを} \\[ 5pt ] &\quad ax^{\scriptsize{2}}+by^{\scriptsize{2}}+2cx-9=0 \\[ 7pt ] &\text{に代入すると} \\[ 5pt ] &\quad ax^{\scriptsize{2}}+b \left(2x-3 \right)^{\scriptsize{2}}+2cx-9=0 \\[ 7pt ] &\text{よって、} \\[ 5pt ] &\quad ax^{\scriptsize{2}}+b \left(4x^{\scriptsize{2}}-12x+9 \right)+2cx-9=0 \end{align*}

文字xの1種類だけで与式を表すことができました。

等式の左辺をxについて整理します。

問(1)の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad ax^{\scriptsize{2}}+b \left(4x^{\scriptsize{2}}-12x+9 \right)+2cx-9=0 \\[ 7pt ] &\text{左辺を $x$ について整理すると} \\[ 5pt ] &\quad \left(a+4b \right)x^{\scriptsize{2}}-2 \left(6b-c \right)x+9 \left( b-1 \right) = 0 \end{align*}

この等式がxについての恒等式となるためには、両辺の同じ次数の項の係数が等しくなる必要があります。

係数を比較して、定数a,b,cについての方程式を導出します。

問(1)の解答例 4⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left(a+4b \right)x^{\scriptsize{2}}-2 \left(6b-c \right)x+9 \left( b-1 \right) = 0 \\[ 7pt ] &\text{この等式が $x$ についての恒等式となるから} \\[ 5pt ] &\quad \left\{ \begin{array}{l} a+4b &=0 &\quad \cdots \text{①} \\ 6b-c &=0 &\quad \cdots \text{②} \\ b-1 &=0 &\quad \cdots \text{③} \end{array} \right. \end{align*}

連立方程式を解いて定数a,b,cの値を求めます。

問(1)の解答例 5⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left\{ \begin{array}{l} a+4b &=0 &\quad \cdots \text{①} \\ 6b-c &=0 &\quad \cdots \text{②} \\ b-1 &=0 &\quad \cdots \text{③} \end{array} \right. \\[ 7pt ] &\text{③から} \\[ 5pt ] &\quad b=1 \\[ 7pt ] &\text{これと①,②から} \\[ 5pt ] &\quad a=-4 \\[ 7pt ] &\quad c=6 \\[ 7pt ] &\text{したがって} \\[ 5pt ] &\quad a=-4 \ , \ b=1 \ , \ c=6 \end{align*}

条件式のある恒等式を扱った問題では、最も基本的なものです。まずはこのレベルの問題を確実に解けるようにしておきましょう。

問(2)の解答・解説

問(2)

\begin{equation*} \quad x+y+z=2 \ , \ x-y-5z=0 \end{equation*}

を満たす $x \ , \ y \ , \ z$ の任意の値に対して、つねに

\begin{equation*} \quad a \left(2-x \right)^{\scriptsize{2}}+b \left(2-y \right)^{\scriptsize{2}}+c \left(2-z \right)^{\scriptsize{2}} =35 \end{equation*}

が成立するような定数 $a \ , \ b \ , \ c$ を求めよ。

条件式の関係を反映させるために、与式に条件式を代入します。反映させるにあたって、文字の種類ができるだけ少なくなるように代入します。

2つの条件式から、x,yをzで表します。

問(2)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\text{条件式について} \\[ 5pt ] &\quad x+y+z=2 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad x-y-5z=0 \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\text{とする。} \\[ 5pt ] &\text{①+②から} \\[ 5pt ] &\quad 2x-4z=2 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad x=2z+1 \\[ 7pt ] &\text{①-②から} \\[ 5pt ] &\quad 2y+6z=2 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad y=-3z+1 \end{align*}

条件式①,②からx,yをzで表すことができました。

これらを与式に代入して、zについての式を導きます。

問(2)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x=2z+1 \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad y=-3z+1 \\[ 7pt ] &\text{これらを} \\[ 5pt ] &\quad a \left(2-x \right)^{\scriptsize{2}}+b \left(2-y \right)^{\scriptsize{2}}+c \left(2-z \right)^{\scriptsize{2}} =35 \\[ 7pt ] &\text{に代入すると} \\[ 5pt ] &\quad a \left\{2-\left(2z+1 \right) \right\}^{\scriptsize{2}}+b \left\{2-\left(-3z+1 \right) \right\}^{\scriptsize{2}}+c \left(2-z \right)^{\scriptsize{2}} =35 \\[ 7pt ] &\quad a \left\{4-4\left(2z+1 \right)+\left(2z+1 \right)^{\scriptsize{2}} \right\}+b \left\{4-4\left(-3z+1 \right)+\left(-3z+1 \right)^{\scriptsize{2}} \right\}+c \left(2-z \right)^{\scriptsize{2}} =35 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad a \left(4z^{\scriptsize{2}}-4z+1 \right) +b \left(9z^{\scriptsize{2}}+6z+1 \right)+c \left(z^{\scriptsize{2}}-4z+4 \right) =35 \end{align*}

文字zの1種類だけで与式を表すことができました。

等式の左辺をzについて整理します。少し複雑かもしれませんが、丁寧に変形しましょう。

問(2)の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad a \left(4z^{\scriptsize{2}}-4z+1 \right) +b \left(9z^{\scriptsize{2}}+6z+1 \right)+c \left(z^{\scriptsize{2}}-4z+4 \right) =35 \\[ 7pt ] &\text{左辺を $z$ について整理すると} \\[ 5pt ] &\quad \left( 4a+9b+c \right)z^{\scriptsize{2}}-2 \left( 2a-3b+2c \right)z+ \left( a+b+4c \right) = 35 \end{align*}

左辺を整理すると、zについての2次式となります。

ここで、等式はすべての実数zについて恒等式となるはずです。そのためには、両辺の係数や定数項が等しくなる必要があります。

両辺の係数を比較して、定数a,b,cについての方程式を導出します。

問(2)の解答例 4⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left( 4a+9b+c \right)z^{\scriptsize{2}}-2 \left( 2a-3b+2c \right)z+ \left( a+b+4c \right) = 35 \\[ 7pt ] &\text{この等式が $z$ についての恒等式となるのは、} \\[ 5pt ] &\text{両辺の同じ次数の項の係数が等しいときで} \\[ 5pt ] &\text{あるので} \\[ 5pt ] &\quad \left\{ \begin{array}{l} 4a+9b+c &=0 &\quad \cdots \text{③} \\ 2a-3b+2c &=0 &\quad \cdots \text{④} \\ a+b+4c &=35 &\quad \cdots \text{⑤} \end{array} \right. \end{align*}

3つの方程式からなる連立方程式になりました。

計算量が多くなりそうですが、これを解いて定数a,b,cの値を求めます。

問(2)の解答例 5⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left\{ \begin{array}{l} 4a+9b+c &=0 &\quad \cdots \text{③} \\ 2a-3b+2c &=0 &\quad \cdots \text{④} \\ a+b+4c &=35 &\quad \cdots \text{⑤} \end{array} \right. \\[ 7pt ] &\text{③×2-④から} \\[ 5pt ] &\quad 6a+21b=0 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad 2a+7b=0 \quad \cdots \text{⑥} \\[ 7pt ] &\text{④×2-⑤から} \\[ 5pt ] &\quad 3a-7b=-35 \quad \cdots \text{⑦} \\[ 7pt ] &\text{⑥+⑦から} \\[ 5pt ] &\quad 5a=-35 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad a=-7 \\[ 7pt ] &\text{これと⑥から} \\[ 5pt ] &\quad -14+7b=0 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad b=2 \\[ 7pt ] &\text{さらに③から} \\[ 5pt ] &\quad -28+18+c=0 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad c=10 \\[ 7pt ] &\text{したがって} \\[ 5pt ] &\quad a=-7 \ , \ b=2 \ , \ c=10 \end{align*}

連立方程式は以下のようにしても解くことができます。必ずしも2つの式だけで計算する必要はありません。

たとえば、3つの式すべてを用いることもできます。楽な計算になるように、加減法や代入法を上手に使いましょう。

問(2)の別解例(解答例5⃣の代わり)

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left\{ \begin{array}{l} 4a+9b+c &=0 &\quad \cdots \text{③} \\ 2a-3b+2c &=0 &\quad \cdots \text{④} \\ a+b+4c &=35 &\quad \cdots \text{⑤} \end{array} \right. \\[ 7pt ] &\text{③+④+⑤から} \\[ 5pt ] &\quad 7a+7b+7c=35 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad a+b+c=5 \quad \cdots \text{⑥} \\[ 7pt ] &\text{⑤-⑥から} \\[ 5pt ] &\quad 3c=30 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 7pt ] &\quad c=10 \\[ 5pt ] &\text{これと③,④から} \\[ 5pt ] &\quad 4a+9b+10=0 \\[ 7pt ] &\quad 2a-3b+20=0 \\[ 7pt ] &\text{これらから $b$ を消去すると} \\[ 5pt ] &\quad 10a+70=0 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad a=-7 \\[ 7pt ] &\text{さらに⑥から} \\[ 5pt ] &\quad -7+b+10=5 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad b=2 \\[ 7pt ] &\text{したがって} \\[ 5pt ] &\quad a=-7 \ , \ b=2 \ , \ c=10 \end{align*}

消去する文字や、用いる式などによって、計算量は異なります。この選択によって難易度に差が付きます。

どのようにすれば楽な計算になるのか、自分なりに研究しましょう。

問題文から何に関する問題かを認識できるようになろう

問題を解くとき、たとえば、どの分野に関係するのか、あるいはどの定理に関係しているのかを認識できれば、方針や解法をスムーズに決めることができます。

分野や定理などに当たりをつけるのは、決して難しくありません。問題文の中に、式や文言などを用いて提示されているからです。そうでなければ、方針や解法を決められません。

例題や練習問題レベルの問題を解くときは、ほとんどネタバレした状態で取り組むので、この辺りを意識しないかもしれません。ただ、この意識が足りないと、入試レベルでは解けない問題が多くなります。

普段の学習では、何に関する問題かを知っているはずです。分野や定理などと紐づく文言や式を見つけておき、それらを方針や解法と関連付けておく必要があります。

この単元で言えば、条件式をはじめ、「すべての実数」「~の任意の値」などの文言と、恒等式とを関連付けておきます。これらが揃ったとき、上述の解法が方針として挙がります。

このことは、覚えるときのコツで、どの科目にも言えることです。眼の前の知識を単体で覚えるのではなく、必ず他の知識と結びつけて覚えることが大切です。

たとえば、英単語であれば、スペルや発音・アクセント、品詞や語法などを関連付けて覚えておかないと、時間や労力に見合わない知識になってしまいます。

「この文言や条件式が出てきたら、この方針や解法で」など、問題の内容と方針や解法とを関連付けて学習しよう。知識は他の知識と結びつくことで役に立つ

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さいごにもう一度まとめ

  • 条件式のある恒等式では、条件式を用いて、文字の種類を減らそう。
  • 特定の文字についての等式になったら、恒等式の考えを適用しよう。
  • 複雑な連立方程式でも、加減法や代入法を上手に用いて計算しよう。
  • 問題文の文言にも注意しよう。