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式と証明|不等式の証明の拡張について

数学2

数学2 式と証明

不等式の証明の拡張を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

a2 , b2 , c2 , d2 のとき、次の不等式が成り立つことを証明せよ。(1)aba+b(2)abcda+b+c+d

(1),(2)の不等式を見比べると、式の形がよく似ていることに気付きます。

(1)は(2)を解くための布石となる問題です。(2)を意識しながら(1)を解きましょう。

問(1)の解答・解説

問(1)

a2 , b2 , c2 , d2 のとき、次の不等式が成り立つことを証明せよ。aba+b

左辺と右辺の差を作って、大小を比較します。

問(1)の解答例 1⃣

ab(a+b)= abab= abab+11= (a1)(b1)1

左辺と右辺の差を変形して得られた式の値を吟味します。与えられたa,bの条件を利用します。

問(1)の解答例 2⃣

=(a1)(b1)1ここで、a2 , b2 よりa11 , b11であるので(a1)(b1)1よって(a1)(b1)10

この結果から、左辺と右辺の差の符号が分かります。

問(1)の解答例 3⃣

ab(a+b)=(a1)(b1)1(a1)(b1)10すなわちab(a+b)0したがってaba+b

(1)の不等式の証明は、基本通りの解法で容易に証明できます。

問(2)の解答・解説

問(2)

a2 , b2 , c2 , d2 のとき、次の不等式が成り立つことを証明せよ。abcda+b+c+d

(2)の不等式は、文字の種類が異なりますが、(1)と似ています。(1)の結果を上手く利用することを考えましょう。

そうは言っても、a,bの2文字から、a,b,c,dの4文字の不等式へと拡張されています。難易度が上がっているので注意しましょう。

いきなり4文字の不等式を扱うのではなく、(1)の結果を利用して、a,bだけの不等式と、c,dだけの不等式を導きます。

問(2)の解答例 1⃣

(1) の結果からaba+b , cdc+d

不等式の性質を利用します。①式を用いて、与式と共通の左辺をもつ不等式を導きます。

問(2)の解答例 2⃣

aba+b , cdc+dここでa+b4>0 , c+d4>0であるので、①よりabcd(a+b)(c+d)よってabcd(a+b)(c+d)

与式の左辺をもつ不等式②を導くことができました。

②式の右辺に注目すると、二項式の積になっています。各二項式をそれぞれ1文字に見立てると、(1)の結果を利用することができます。

問(2)の解答例 3⃣

aba+b , cdc+dabcd(a+b)(c+d)さらにa+b=X , c+d=YとおくとX4>2 , Y4>2であるので、(1)よりXY>X+Yただし、(1) の不等式は成り立つが等号は成り立たない。よって(a+b)(c+d)>(a+b)+(c+d)(a+b)(c+d)>a+b+c+d

ところで、(1)の不等式において、等号が成り立つのは、a=b=2のときです。それに対して、X,Yは4以上であるので、2よりも必ず大きくなります。

このことを踏まえると、(1)の結果を利用したとしても等号は成り立ちません。解答例3⃣ではそのことに言及しています。(1)の大小関係は成り立ちますが、等号が成り立たないことに注意しましょう。

②式の右辺と③式の左辺が共通になりました。これらを1つの不等式にまとめて、与式を導きます。

問(2)の解答例 4⃣

abcd(a+b)(c+d)(a+b)(c+d)>a+b+c+d②,③よりabcd(a+b)(c+d)>a+b+c+dよってabcd>a+b+c+d

なお、解答例2⃣において、②式を導くときに利用したのは不等式の性質です。

不等式の性質

AB>0 , CD>0 のときACBD

また、②,③式から得られる不等式についても、不等式の性質を用いて導くことができます。

覚えておきたい不等式の性質

AB , B>C ならばA>C

結果を利用すること自体に問題ありませんが、結果から得られる不等式の扱い方を知らないと、その後の処理に差が出ます。手順を大まかにまとめると、以下のようになります。

不等式の証明の拡張の手順

  1. 与式(A>B)を導くために、すでに証明された結果を利用する。
  2. 結果から得られた不等式を用いて、左辺を与式に揃える(A>Cを導く)。
  3. 右辺に注目して、与式の右辺を導く(C>Bを導く)。
  4. 2つの不等式をまとめて、与式を導く(A>Bを導く)。

問題によっては細部が異なるかもしれませんが、大まかな手順は上述の通りです。

また、式変形もそれぞれ異なります。できるだけ演習をこなして、自分なりに手順をまとめておくと良いでしょう。

等式の証明よりも、不等式の証明の方が難しいので、自分なりに手順をまとめておこう。

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  • 終章 さまざまな学ぶ場
  • おわりに
  • 特別コラム

さいごにもう一度まとめ

  • 似た不等式の証明では、すでに証明した結果を利用しよう。
  • 結果から得られた不等式を用いて、与式と共通の左辺をもつ不等式を導こう。
  • さらに与式と共通の右辺をもつ不等式を導こう。
  • 導いた2つの不等式を1つにまとめて、与式を導こう。
  • 文字の種類が増えても慌てず、1文字に見立てるなど工夫しよう。