式と証明|特徴のある文言を含む証明問題について
今回は特徴のある文言を含む証明問題について学習しましょう。
証明問題に限りませんが、問題文の文言を、同値な表現や数式に言い換えできる力が必要です。この力を身に付けることが本質を理解することにつながります。このことを意識して取り組みましょう。
「少なくとも1つは…」という表現を数式に置き換えよう
ここで扱う特徴のある文言とは、「少なくとも1つは…」です。たとえば、以下の3つの数式について条件が与えられたとします。
「少なくとも1つは…」という表現に注目
x+y,y+z,z+xのうち少なくとも1つは0である。
少なくとも1つということなので、最小で1つ、最大で3つが0であるということです。この条件を別な表現で表します。
「少なくとも1つは…」という表現の言い換え
x+y,y+z,z+xのうち少なくとも1つは0である。
⇔ x+y=0またはy+z=0またはz+x=0
3つの数式がすべて0である必要はないので、「または」を用いて言い換えることができます。「または」は、数学1で学習した用語です。
さらに、別な表現に言い換えます。
「少なくとも1つは…」という表現の言い換え
x+y,y+z,z+xのうち少なくとも1つは0である。
⇔ x+y=0 または y+z=0 または z+x=0
⇔ (x+y)(y+z)(z+x)=0 … (※)
以上のことから、「3つの数式のうち少なくとも1つが0であること」は、(※)の等式が成り立つことと同値であることが分かります。
このように、問題文で与えられた条件や表現から、別の表現や数式に置き換えられないかを考えることが、問題を解くために有効な方法となります。
問題文を数式で表現できるようになろう。
特徴のある文言を扱った問題に慣れよう
次の例題を解いてみましょう。
例題
特徴のある文言「少なくとも1つは…」があることに注目しましょう。
例題の解答・解説
結論を式で表す
結論は、問題文から分かるように「3つの数式のうち少なくとも1つは0である」です。この結論を式で表すことを考えます。
先ほどのプロセスを辿ると、結論を式で表すことができます。
結論を式で表す
$x+y \ , \ y+z \ , \ z+x$ のうち少なくとも $1$ つは $0$ である。
$\Leftrightarrow \ x+y=0$ または $y+z=0$ または $z+x=0$
$\Leftrightarrow \ (x+y)(y+z)(z+x)=0 \quad \cdots$ (※)
結論が成り立つには、(※)の等式が成り立つことを証明すれば良いことが分かります。
条件から結論が成り立つことを示す
次に、(※)の等式を導くことを考えます。条件として等式が与えられているので、これを変形して導きます。
与式を変形する
与式の分母を払うことができました。(※)の等式を意識してさらに変形します。
与式をさらに変形する
ようやく(※)の等式を導くことができました。式変形が難しいと感じるかもしれませんが、目標となる式が予め分かっています。ミスがなければ必ず導けるので、焦らず確実に変形しましょう。
得られた等式について吟味します。結論となる条件が得られるはずです。
得られた等式について吟味する
例題では、条件から式を導くことができましたが、問題によっては導くことが難しい場合があります。
そのような場合には、結論が成り立つ式が分かっているので、直接、その式が成り立つことを示します。条件となる与式は、結論を導くために変形するのではなく、その式を証明するための条件としてそのまま用います。
数学では逆算するのが有効
例題を通して分かるのは、「結論から解決の方針を立てる」という逆算の発想が大切であることです。
証明問題を苦手にする人は多いようですが、意外とこの考え方を知らないのかもしれません。この考え方は、証明問題に限らず、数学全般で有効な思考法なので、演習をこなしてマスターしておきましょう。
逆算の発想は、たとえば、入試や資格・検定の対策にも役立ちます。入試や資格・検定では、締め切りとなる試験日(=結論)が予め決まっています。
締切日が決まっているということは、それまでの日数が決まっています。ですから、その期間にできる準備の量も自ずと決まります。このようなことに気付けるので、全体を把握するのにも役立ちます。
締切日から逆算して、取り組み方を考えるのが入試や資格・検定の準備です。受験で成功する人の多くは、意識的か無意識的かは別として、たいてい逆算しながら準備しています。
それに対して、締切日から逆算せずに計画を立てると、物理的に無理な計画が多くなります。全体を把握できていないからです。
準備が中途半端になったり、計画通りに進まなかったりするのはたいていこのパターンです。計画を上手く実行出来ない人は、締切日から逆算して、全体を把握してから計画を立てると良いでしょう。
結論から解決の方針を立てる逆算の発想は、数学以外にも色々なことに利用できる思考法。
次は、特徴のある文言を含む証明問題を実際に解いてみましょう。