式と証明|不等式の証明について(平方の差をつくる)
数学2
根号を含む不等式の証明を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問
$a \geqq 0 \ , \ b \geqq 0$ のとき、次の不等式が成り立つことを証明せよ。
また、等号が成り立つのはどのようなときか。
\begin{align*}
&(1) \quad \sqrt{a} + 2 \geqq \sqrt{a+4} \\[ 10pt ]
&(2) \quad \sqrt{2(a+b)} \geqq \sqrt{a} + \sqrt{b}
\end{align*}
根号を含む不等式の証明です。a≧0,b≧0という条件が与えられています。平方の差を利用することができそうです。
問(1)の解答・解説
問(1)
$a \geqq 0 \ , \ b \geqq 0$ のとき、次の不等式が成り立つことを証明せよ。
また、等号が成り立つのはどのようなときか。
\begin{equation*}
\quad \sqrt{a} + 2 \geqq \sqrt{a+4}
\end{equation*}
平方の差をつくり、式を整理します。
問(1)の解答例 1⃣
\begin{align*}
&(\text{左辺})^{\scriptsize{2}}-(\text{右辺})^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ]
= \ &\left(\sqrt{a} + 2 \right)^{\scriptsize{2}}-\left(\sqrt{a+4} \right)^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ]
= \ &a + 4\sqrt{a}+4-\left(a+4 \right) \\[ 7pt ]
= \ &4\sqrt{a}
\end{align*}
与えられたaの条件をもとに、平方の差の正負を調べます。
問(1)の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad = \left(\sqrt{a} + 2 \right)^{\scriptsize{2}}-\left(\sqrt{a+4} \right)^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad = 4\sqrt{a} \\[ 7pt ]
&\text{ここで、$a \geqq 0$ より} \\[ 5pt ]
&\quad 4\sqrt{a} \geqq 0 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad \left(\sqrt{a} + 2 \right)^{\scriptsize{2}}-\left(\sqrt{a+4} \right)^{\scriptsize{2}} \geqq 0 \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad \left(\sqrt{a} + 2 \right)^{\scriptsize{2}} \geqq \left(\sqrt{a+4} \right)^{\scriptsize{2}}
\end{align*}
平方の差は、平方完成しなくても正負を判断できる形になりました。また、平方の差から、左辺の平方と右辺の平方との大小関係を示すことができました。
平方の差の結果を利用して、平方する前の左辺と右辺の大小関係を示します。
問(1)の解答例 3⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \left(\sqrt{a} + 2 \right)^{\scriptsize{2}} \geqq \left(\sqrt{a+4} \right)^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ]
&\text{ここで $a \geqq 0$ より} \\[ 5pt ]
&\quad \sqrt{a} + 2 \gt 0 \ , \ \sqrt{a+4} \gt 0 \\[ 7pt ]
&\text{であるので} \\[ 5pt ]
&\quad \sqrt{a} +2 \geqq \sqrt{a+4}
\end{align*}
平方する前の左辺と右辺の大小関係を示すとき、もとの左辺と右辺が0以上(または正)であることを必ず記述しておきましょう。
さいごに、等号が成立するときを考えます。等号が成り立つのは、差が0となるときです。①式を利用します。
問(1)の解答例 4⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad 4\sqrt{a} \geqq 0 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \sqrt{a} +2 \geqq \sqrt{a+4} \\[ 7pt ]
&\text{また、等号が成り立つのは} \\[ 5pt ]
&\text{①より} \\[ 5pt ]
&\quad 4\sqrt{a} = 0 \\[ 7pt ]
&\text{のときである。} \\[ 5pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad a = 0 \\[ 7pt ]
&\text{のとき等号が成り立つ。}
\end{align*}
等号が成り立つのは、平方の差が0になるときです。平方の差が0になるには、平方する前の左辺と右辺がともに等しくなくてはなりません。
このことから、①式を利用します。等号が成り立つ条件を考えるのは、与えられた不等式ではなく、平方の差を利用しましょう。
(1)は、平方の差を平方完成する必要がないので、とても易しい証明問題です。記述例は以下のようになります。
問(1)の記述例
\begin{align*}
&\quad \left(\sqrt{a}+2 \right)^{\scriptsize{2}}-\left(\sqrt{a+4} \right)^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ]
&\quad = a + 4\sqrt{a}+4-\left(a+4 \right) \\[ 7pt ]
&\quad = 4\sqrt{a} \geqq 0 \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad \left(\sqrt{a} + 2 \right)^{\scriptsize{2}} \geqq \left(\sqrt{a+4} \right)^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ]
&\text{ここで $a \geqq 0$ より} \quad \text{(※断りを記述)} \\[ 5pt ]
&\quad \sqrt{a} + 2 \gt 0 \ , \ \sqrt{a+4} \gt 0 \\[ 7pt ]
&\text{であるので} \\[ 5pt ]
&\quad \sqrt{a} + 2 \geqq \sqrt{a+4} \\[ 7pt ]
&\text{また、等号が成り立つのは} \\[ 5pt ]
&\quad a=0 \\[ 7pt ]
&\text{のときである。}
\end{align*}
記述例は、最低限の記述に留めています。大小比較に必要な条件を忘れないようにしましょう。
問(2)の解答・解説
問(2)
$a \geqq 0 \ , \ b \geqq 0$ のとき、次の不等式が成り立つことを証明せよ。
また、等号が成り立つのはどのようなときか。
\begin{equation*}
\quad \sqrt{2(a+b)} \geqq \sqrt{a} + \sqrt{b}
\end{equation*}
平方の差をつくり、式を整理します。
問(2)の解答例 1⃣
\begin{align*}
&(\text{左辺})^{\scriptsize{2}}-(\text{右辺})^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ]
= \ &\left(\sqrt{2(a+b)} \right)^{\scriptsize{2}}-\left(\sqrt{a} + \sqrt{b} \right)^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ]
= \ &2\left(a+b \right)-\left(a+2\sqrt{ab}+b \right) \\[ 7pt ]
= \ &a-2\sqrt{ab}+b \\[ 7pt ]
= \ &\left(\sqrt{a}-\sqrt{b} \right)^{\scriptsize{2}}
\end{align*}
平方の差を整理すると、平方完成して多項式の2乗を導くことができました。
a,bの条件をもとに、平方の差が0以上であることを示します。このとき、実数の性質を利用します。
問(2)の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad = \left(\sqrt{2(a+b)} \right)^{\scriptsize{2}}-\left(\sqrt{a} + \sqrt{b} \right)^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad = \left(\sqrt{a}-\sqrt{b} \right)^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ]
&\text{ここで、$a \ , \ b$ はともに $0$ 以上の} \\[ 5pt ]
&\text{実数であるので} \\[ 5pt ]
&\quad \sqrt{a}-\sqrt{b} \\[ 7pt ]
&\text{も実数である。} \\[ 5pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad \left(\sqrt{a}-\sqrt{b} \right)^{\scriptsize{2}} \geqq 0 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad \left(\sqrt{2(a+b)} \right)^{\scriptsize{2}}-\left(\sqrt{a} + \sqrt{b} \right)^{\scriptsize{2}} \geqq 0 \\[ 7pt ]
&\text{したがって} \\[ 5pt ]
&\quad \left(\sqrt{2(a+b)} \right)^{\scriptsize{2}} \geqq \left(\sqrt{a} + \sqrt{b} \right)^{\scriptsize{2}}
\end{align*}
平方の差から、左辺の平方と右辺の平方との大小関係を示すことができました。
平方の差の結果を利用して、平方する前の左辺と右辺の大小関係を示します。
問(2)の解答例 3⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \left(\sqrt{2(a+b)} \right)^{\scriptsize{2}} \geqq \left(\sqrt{a} + \sqrt{b} \right)^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ]
&\text{ここで $a \geqq 0 \ , \ b \geqq 0$ より} \\[ 5pt ]
&\quad \sqrt{2(a+b)} \geqq 0 \ , \ \sqrt{a} + \sqrt{b} \geqq 0 \\[ 7pt ]
&\text{であるので} \\[ 5pt ]
&\quad \sqrt{2(a+b)} \geqq \sqrt{a} + \sqrt{b}
\end{align*}
平方する前の左辺と右辺の大小関係を示すとき、もとの左辺と右辺が0以上(または正)であることを必ず記述しておきましょう。
さいごに、等号が成立するときを考えます。等号が成り立つのは、差が0となるときです。①式を利用します。
問(2)の解答例 4⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \left(\sqrt{a}-\sqrt{b} \right)^{\scriptsize{2}} \geqq 0 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \sqrt{2(a+b)} \geqq \sqrt{a} + \sqrt{b} \\[ 7pt ]
&\text{また、等号が成り立つのは} \\[ 5pt ]
&\text{①より} \\[ 5pt ]
&\quad \left(\sqrt{a}-\sqrt{b} \right)^{\scriptsize{2}} = 0 \\[ 7pt ]
&\text{のときである。} \\[ 5pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad \sqrt{a}-\sqrt{b} = 0 \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad a=b \\[ 7pt ]
&\text{のとき等号が成り立つ。}
\end{align*}
(2)では、平方の差を平方完成して変形する必要がありました。基本的に、不等式の証明では、平方完成することを意識しておくと良いでしょう。
記述例は以下のようになります。
問(2)の記述例
\begin{align*}
&\quad \left(\sqrt{2(a+b)} \right)^{\scriptsize{2}}-\left(\sqrt{a} + \sqrt{b} \right)^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ]
&\quad = 2 \left(a+b \right) – \left(a+2\sqrt{ab}+b \right) \\[ 7pt ]
&\quad = a -2\sqrt{ab} -b \\[ 7pt ]
&\quad = \left(\sqrt{a} – \sqrt{b} \right)^{\scriptsize{2}} \geqq 0 \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad \left(\sqrt{2(a+b)} \right)^{\scriptsize{2}} \geqq \left(\sqrt{a} + \sqrt{b} \right)^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ]
&\text{ここで $a \geqq 0 \ , \ b \geqq 0$ より} \quad \text{(※断りを記述)} \\[ 5pt ]
&\quad \sqrt{2(a+b)} \geqq 0 \ , \ \sqrt{a} + \sqrt{b} \geqq 0 \\[ 7pt ]
&\text{であるので} \\[ 5pt ]
&\quad \sqrt{2(a+b)} \geqq \sqrt{a} + \sqrt{b} \\[ 7pt ]
&\text{また、等号が成り立つのは} \\[ 5pt ]
&\quad a=b \\[ 7pt ]
&\text{のときである。}
\end{align*}
不等式の証明に限らず、根号や絶対値を含む式のままでは大小を比較できないことがほとんどです。そのような場合、平方の差を利用して大小を比較します。
ただし、平方する前の数や式が0以上(または正)であることが条件です。この条件があるから平方の差を利用できます。条件について言及することを忘れないようにしましょう。
Recommended books
チャート式と言えば有名ですが、学校で配布されるのは、ほとんどが黄色か青色のどちらかです。数学を苦手にしている人にとっては、扱い辛く感じるかもしれません。ページ数も多いので尚更です。
オススメ その1
日常学習では辞書的に利用できる参考書があると助かります。有名なのは、チャート式でしょう。
チャート式は、色別にレベル分けされています。学校で配布されるのは、青や黄のチャート式が多いと思います。ただし、青や黄の内容が高度だと感じるのであれば、いっそのこと白のチャート式の方が良いかもしれません。
『チャート式基礎と演習数学1+A 増補改訂版』や『チャート式基礎と演習数学2+B 増補改訂版』では、より基礎的な内容が扱われています。教科書の内容を補完してくれるので、予習や復習を進めやすくなるでしょう。
基礎固めには白チャート。数学の苦手な生徒でも,安心して学習を進められます。教科書と併用しながらの学習や、基礎固めには最適の参考書。中堅私立大学の受験対策や、大学入学共通テストの準備にも役立つ一冊。本冊巻末に、大学入学共通テストの対策ができる「実践編」を追加。
オススメ その2
白チャートと同じように基礎的な内容を扱っているのが、スカイチャートと言われる『チャート式 絶対に身につけたい数学1+Aの基本』や『チャート式 絶対に身につけたい数学2+Bの基本』です。速習型の参考書なので、たとえば、受験勉強を何から始めれば良いのか分からない人向けの教材です。
白チャート『チャート式基礎と演習数学1+A 増補改訂版』は、560ページ(別冊解答編368ページ)あります。青チャートだと640ページ(別冊解答編404ページ)なので、白チャートも少ない方です。これらに対して、スカイチャート『チャート式 絶対に身につけたい数学1+Aの基本』は160ページ(別冊解答編88ページ)なので、かなりコンパクトにまとめられています。
使い方としては、予習や復習の際に類題をこなしたり、定期考査前の確認や仕上げに使ったりできます。また、受験勉強の準備にあたって、自分の基礎学力を短期間で確認することができます。
対象 … 教科書の内容を効率的に総復習したい人や、基礎知識を総整理したい人
特長 … 絶対に身につけたい基礎知識が詰まった良問を精選しました。「極意」では,問題を解くとき、効果的にアプローチするための手順や考え方をコンパクトにまとめました。例題と同等のレベルである練習問題を解くことで,例題の解法や基礎知識の理解度を確認できます。
参考書は紹介した教材だけではありません。大事なことは、自分に合った教材を徹底的に活用することです。どの教材を選ぶにしても、自分の目で中身を確認し、納得してから購入することが大切です。
さいごにもう一度まとめ
- 根号や絶対値を含む不等式の証明では、左辺の平方と右辺の平方の差をつくろう。
- 平方の差を整理するとき、平方完成を意識しよう。
- 平方完成できたら、実数の性質を利用しよう。
- 平方の大小関係を示したら、もとの左辺と右辺の大小を示そう。
- 断りを忘れずに記述しよう。