複素数と方程式|2重解をもつ条件について

数学2

3次方程式が2重解をもつ条件を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

$3$ 次方程式
\begin{equation*} \quad x^{\scriptsize{3}}+(a-2)x^{\scriptsize{2}}-4a=0 \end{equation*}
が $2$ 重解をもつように定数 $a$ の値を定め、そのときの解をすべて求めよ。

問の解答・解説

3次方程式を扱った問題なので、まず因数分解することを考えましょう。また、定数aの値が分かったら、3次方程式の解を確認することも忘れないようにしましょう。

剰余の定理や因数定理を利用して、因数となる1次式を見つけます。方程式の左辺をよく観察しましょう。意外と簡単に因数となる1次式が分かります。

問の解答例 1⃣

\begin{align*} &\quad f(x)=x^{\scriptsize{3}}+\left(a-2 \right) x^{\scriptsize{2}}-4a \\[ 7pt ] &\text{とすると} \\[ 5pt ] &\quad f(2)=2^{\scriptsize{3}}+\left(a-2 \right) \cdot 2^{\scriptsize{2}}-4a=0 \\[ 7pt ] &\text{より、$f(x)$ は $x-2$ を因数にもつ。} \end{align*}

因数となる1次式が分かったら、組立除法で3次式を割り算します。組立除法の結果は以下の通りです。3次式には1次の項がないことに注意しましょう。1次の項がないので、係数は0と考えます。

問の組立除法
問の組立除法

3次式を因数分解できたら、与えられた3次方程式を因数分解した形にします。この因数分解の結果から、解を求めるための方程式を新たに導きます。

問の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\text{より、$f(x)$ は $x-2$ を因数にもつ。} \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad f(x)=\left(x-2 \right) \left(x^{\scriptsize{2}}+ax+2a \right) \\[ 7pt ] &\text{より、方程式は} \\[ 5pt ] &\quad \left(x-2 \right) \left(x^{\scriptsize{2}}+ax+2a \right)=0 \\[ 7pt ] &\text{したがって} \\[ 5pt ] &\quad x-2=0 \quad \text{または} \quad x^{\scriptsize{2}}+ax+2a=0 \end{align*}

3次方程式の解の1つは、1次方程式からすぐに分かります。この解をもとに場合分けをして、2重解をもつときの条件、言い換えると定数aの値を求めます。

まず、2次方程式が重解をもつときです。ただし、1次方程式の解とは異なることも忘れないようにしましょう。

問の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x-2=0 \quad \text{または} \quad x^{\scriptsize{2}}+ax+2a=0 \\[ 7pt ] &\text{[1] $x^{\scriptsize{2}}+ax+2a=0$ が $2$ ではない重解をもつ} \\[ 5pt ] &\text{判別式を $D$ とすると} \\[ 5pt ] &\quad D=0 \quad \text{かつ} \quad 2^{\scriptsize{2}}+a \cdot 2+2a \neq 0 \\[ 7pt ] &\text{を満たせばよい。ここで} \\[ 5pt ] &\quad D=a^{\scriptsize{2}}-8a=a \left(a-8 \right) \\[ 7pt ] &\text{より、$D=0$ とすると} \\[ 5pt ] &\quad a= 0 \ , \ 8 \\[ 7pt ] &\text{これは $a+1 \neq 0$ を満たす。} \end{align*}

誤って3重解にならないように、2次方程式がx=2を解にもたないという条件を付けています。判別式の条件だけでは、2次方程式が重解をもつことは言えても、x=2を解にもたないことは言えないからです。

定数aの値が分かったので、このときの残りの解、つまり2次方程式の重解を求めます。

問の解答例 4⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\text{$a=0$ のとき、$2$ 次方程式は} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}=0 \\[ 7pt ] &\text{となるので、重解は $x=0$} \\[ 5pt ] &\text{また、$a=8$ のとき、$2$ 次方程式は} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}+8x+16=0 \\[ 7pt ] &\text{となるので、重解は $x=-4$} \end{align*}

次は、2次方程式の解の1つが2となる(1次方程式の解と同じになる)ときです。もちろん、2次方程式の残りの解は2になってはいけません。

問の解答例 5⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\text{[2] $x^{\scriptsize{2}}+ax+2a=0$ の解の $1$ つが $2$ で、他の解が $2$ ではない} \\[ 5pt ] &\text{$x=2$ が解であるので} \\[ 5pt ] &\quad 2^{\scriptsize{2}}+a \cdot 2+2a= 0 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad a+1=0 \quad \text{すなわち} \quad a=-1 \\[ 7pt ] &\text{このとき、$2$ 次方程式は} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}}-x-2=0 \\[ 7pt ] &\text{となるので} \\[ 5pt ] &\quad \left(x+1 \right) \left(x-2 \right)=0 \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad x=-1 \ , \ 2 \\[ 7pt ] &\text{これは、他の解が $2$ ではないので適する。} \\[ 5pt ] &\text{[1],[2]より} \\[ 5pt ] &\quad a=-1 \quad \text{のとき} \quad x=2 \ \text{(重解)} \ , \ -1 \\[ 7pt ] &\quad a=0 \quad \text{のとき} \quad x=0 \ \text{(重解)} \ , \ 2 \\[ 7pt ] &\quad a=8 \quad \text{のとき} \quad x=-4 \ \text{(重解)} \ , \ 2 \end{align*}

定数aの値が小さい順に書き並べています。解いた順番と前後するので注意しましょう。

また、3次方程式が2重解をもつのは3通りあり、そのときの解も求めなければなりません。定数aの値に対応させてそのときの解を書き並べましょう。いい加減な記述だと最後に混乱するので、記述の仕方を工夫しましょう。

組立除法が上手くいかないとき

問の3次式あっても、最低次数の文字(ここでは定数a)について整理すると、3次式を因数分解できます。

最低次数の文字に注目して因数分解する

\begin{align*} &\quad x^{\scriptsize{3}}+(a-2)x^{\scriptsize{2}}-4a=0 \\[ 7pt ] &\text{方程式の左辺を $a$ について整理すると} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{3}}-2x^{\scriptsize{2}}+a \left(x^{\scriptsize{2}}-4 \right)=0 \\[ 7pt ] &\text{さらに変形すると} \\[ 5pt ] &\quad x^{\scriptsize{2}} \left(x-2 \right)+a\left(x+2 \right) \left(x-2 \right)=0 \\[ 7pt ] &\text{共通因数 $x-2$ でくくると} \\[ 5pt ] &\quad \left(x-2 \right) \left\{x^{\scriptsize{2}}+a\left(x+2 \right) \right\}=0 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad \left(x-2 \right) \left(x^{\scriptsize{2}}+ax+2a \right)=0 \end{align*}

2次方程式の重解の求め方

2次方程式の重解を求めるとき、素直に方程式を解く人が意外と多いかもしれません。間違ってはいませんが、その解き方は効率の悪い解き方です。マーク形式などの時間に余裕がない試験では、方程式を解くという基本的な解法はおすすめしません。

2次方程式が重解をもつことが分かっているとき、その重解は以下のようになることが分かっています。

2次方程式の重解

\begin{align*} &\text{$2$ 次方程式 $ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0$ が重解をもつとき、} \\[ 5pt ] &\text{その重解は} \\[ 5pt ] &\quad x=-\frac{b}{2a} \end{align*}

このことを知っておくと、方程式をわざわざ解く必要がなく、時間短縮になります。暗算で解けるので、とても便利です。

本当に上述の解となるのかを確認してみましょう。

2次方程式の重解を実際に求めてみる

\begin{align*} &\text{$2$ 次方程式 $ax^{\scriptsize{2}}+bx+c=0$ の判別式を $D$ とする。} \\[ 5pt ] &\text{重解をもつとき $D=0$ となるので} \\[ 5pt ] &\quad b^{\scriptsize{2}}-4ac=0 \\[ 5pt ] &\text{$a \neq 0$ より} \\[ 5pt ] &\quad c=\frac{b^{\scriptsize{2}} }{4a} \\[ 5pt ] &\text{これを $2$ 次方程式に代入すると} \\[ 5pt ] &\quad ax^{\scriptsize{2}}+bx+\frac{b^{\scriptsize{2}} }{4a}=0 \\[ 5pt ] &\text{整理して因数分解すると} \\[ 5pt ] &\quad 4a^{\scriptsize{2}}x^{\scriptsize{2}}+4abx+b^{\scriptsize{2}} =0 \\[ 5pt ] &\quad \left(2ax+b \right)^{\scriptsize{2}} =0 \\[ 5pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad 2ax+b =0 \\[ 5pt ] &\text{したがって、$2$ 次方程式が重解をもつとき、その解は} \\[ 5pt ] &\quad x=-\frac{b}{2a} \end{align*}

上述のことから、2次方程式が重解をもつとき、その解は2次の項と1次の項の係数だけ決まります。この性質を上手に利用して、方程式を解かずに済ませましょう。

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さいごにもう一度まとめ

  • 3次方程式の問題では、因数分解を優先しよう。
  • 3次方程式が2重解をもち方は2通りある。
  • 1次式の因数を見つけて因数分解しよう。
  • 2次方程式の重解は公式を用いて求めよう。
  • 3重解にならないように、他の解も確認しよう。