集合と論理|必要条件と十分条件、同値について
十分条件や必要条件を扱った問題を解いてみよう
次の問題を考えてみましょう。
問1(1)の解答・解説
問1(1)
次の□の中には、「必要条件である」「十分条件である」「必要十分条件である」のうち、最も適するものをいれよ。ただし、文字はすべて実数とする。
$x=1$ は、$x^{\scriptsize{2}}=1$ であるための□。
問1(1)は、x=1がx2=1にとってどんな条件かを求める問題です。
x=1を条件p、x2=1を条件qとして、2つの命題「p⇒q」と「q⇒p(p⇐q)」の真偽をそれぞれ考えます。
2つの条件p,qの間に左右両方の矢印を書き(例p⇆q)、2つの命題「p⇒q」と「q⇒p(p⇐q)」の真偽を順番に調べます。
命題「p⇒q」の真偽を調べます。
問1(1)の解答例 1⃣
\begin{align*} \quad p: \ x=1 \ \Rightarrow \ q: \ x^{\scriptsize{2}} = 1 \end{align*}の真偽を調べる。
$x = 1$ のとき
\begin{align*} \quad x^{\scriptsize{2}} = 1 \end{align*}は成り立つので
\begin{align*} \quad p \Rightarrow q \ \text{は真} \end{align*}真偽が分かったら、矢印の上にマルバツをつけておきます。
次に、命題「q⇒p(p⇐q)」の真偽を調べます。こちらは少し注意する必要があります。
問1(1)の解答例 2⃣
\begin{align*} \quad p: \ x=1 \ \Leftarrow \ q: \ x^{\scriptsize{2}} = 1 \end{align*}の真偽を調べる。
$x^{2} = 1$ すなわち $x = \pm 1$ のとき
\begin{align*} \quad x=1 \end{align*}がつねに成り立つとは限らない。
反例は $x=-1$ のとき
これより
\begin{align*} \quad p \Leftarrow q \ \text{は偽} \end{align*}よって、$p$ は $q$ であるための十分条件である。
条件qは2次方程式で与えられています。このままでは、条件qを満たす変数xの値、言い換えると集合に属する要素が分かりません。
要素が分からないと、集合の包含関係を調べることができません。変数xの値(=要素)を明らかにするために2次方程式を解き、それから命題の真偽を調べます。
条件を満たす変数の値(=要素)をはっきりさせてから、命題の真偽を調べよう。
命題の真偽を調べる流れを図解すると以下のようになります。
命題の真偽は、矢印の上または下のマルバツで分かります。その結果をもとにp,qの関係を考えます。
命題「p⇒q」が真で、命題「q⇒p(p⇐q)」が偽です。
このことから、pはq(であるため)の十分条件ではありますが、必要条件ではありません。
問1(1)のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。解答例ではベン図も使っているので、命題の真偽をより簡単に調べることができています。
条件p,qが真となる変数の値を求めて、それを集合や要素に置き換えよう。集合の包含関係で命題の真偽を調べる方が、与えられた条件のままで調べるよりも確実でラク。
問1(2)の解答・解説
問1(2)
次の□の中には、「必要条件である」「十分条件である」「必要十分条件である」のうち、最も適するものをいれよ。ただし、文字はすべて実数とする。
$x=3$ は、$2x-6=0$ であるための□。
問1(2)は、x=3が2x-6=0にとってどんな条件かを求める問題です。
問1(1)と同じように、x=3を条件p、2x-6=0を条件qとして、2つの命題「p⇒q」と「q⇒p(p⇐q)」の真偽をそれぞれ考えます。
注意したいのは、条件qが1次方程式で与えられていることです。変数xの値が不明なので、方程式を解いて解を求めておきます。
問1(2)の解答例
とする。
条件 $q$ が真となる変数 $x$ の値は
\begin{align*} \quad x = 3 \end{align*}これは条件 $p$ と同値である。
よって、$p$ は $q$ であるための必要十分条件である。
条件qが真となる変数xの値は、与えられた1次方程式の解です。解はx=3となり、これは条件pと全く同じになります。
これより、集合と要素が一致するので、条件p,qは同値であることが分かります。
問1(2)のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
条件が真となる変数の値を使って、命題の真偽を調べよう。
問1(3)の解答・解説
問1(3)
次の□の中には、「必要条件である」「十分条件である」「必要十分条件である」のうち、最も適するものをいれよ。ただし、文字はすべて実数とする。
$x \geqq 1$ は、$x \geqq 2$ であるための□。
問1(3)は、x≧1がx≧2にとってどんな条件かを求める問題です。
(1),(2)と同じように、x≧1を条件p、x≧2を条件qとして、2つの命題「p⇒q」と「q⇒p(p⇐q)」の真偽をそれぞれ考えます。
命題「p⇒q」の真偽を調べます。
問1(3)の解答例 1⃣
\begin{align*} \quad p: \ x \geqq 1 \ \Rightarrow \ q: \ x \geqq 2 \end{align*}の真偽を調べる。
条件 $p$ を満たす実数 $x$ が
\begin{align*} \quad x = 1.5 \end{align*}であるとき、条件 $q$ を満たさないので
\begin{align*} \quad p \Rightarrow q \ \text{は偽} \end{align*}真偽が分かったら、矢印の上にマルバツをつけておきます。
次に、命題「q⇒p(p⇐q)」の真偽を調べます。
問1(3)の解答例 2⃣
\begin{align*} \quad p: \ x \geqq 1 \ \Leftarrow \ q: \ x \geqq 2 \end{align*}の真偽を調べる。
条件 $q$ を満たす実数 $x$ は、すべて条件 $p$ を満たす。
よって
\begin{align*} \quad p \Leftarrow q \ \text{は真} \end{align*}よって、$p$ は $q$ であるための必要条件である。
2つの条件p,qは、不等式で与えられています。この場合、ベン図よりも数直線の方が、真偽を調べるのに向いています。
数直線で図解すれば分かるように、x≧1の方がx≧2よりも大きな範囲になります。これより、集合P,Qの包含関係はQ⊂Pとなります。
集合P,Qの包含関係から、命題「p⇒q」が偽で、命題「q⇒p(p⇐q)」が真になります。
問1(3)のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
条件が不等式で与えられていれば、数直線を使って命題の真偽を調べよう。
十分条件や必要条件を調べるとき、ベン図や数直線を上手に利用しましょう。集合どうしの包含関係が分かれば、命題の真偽も簡単に分かります。
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それでは、《伝える》レッスンをはじめましょう!(まえがきより)
著者が異なりますが、こちらも『総合的研究』シリーズです。
さいごに、もう一度、頭の中を整理しよう
- 十分・必要条件は、2つの条件の関係を表す。
- 十分条件か必要条件かは、2つの命題「p⇒q」「p⇐q」の真偽を調べることで判定できる。
- 命題の真偽は、集合と要素に置き換えて包含関係を調べよう。
- 集合の包含関係はベン図を使って調べよう。
- 条件が不等式であれば、数直線を使おう。