複素数と方程式|解と係数の関係と対称式について

数学

解と係数の関係と対称式を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

\begin{align*} &\text{$2$ 次方程式 $3x^{\scriptsize{2}}-2x-4=0$ の} \\[ 5pt ] &\text{$2$ つの解を $\alpha \ , \ \beta$ とするとき、} \\[ 5pt ] &\text{次の式の値を求めよ。} \\[ 5pt ] &(1) \quad \frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta} \\[ 7pt ] &(2) \quad \frac{\beta}{\alpha}+\frac{\alpha}{\beta} \\[ 7pt ] &(3) \quad \left(\alpha-\beta \right)^{\scriptsize{2}} \end{align*}

問(1)の解答・解説

問(1)

\begin{align*} &\text{$2$ 次方程式 $3x^{\scriptsize{2}}-2x-4=0$ の} \\[ 5pt ] &\text{$2$ つの解を $\alpha \ , \ \beta$ とするとき、} \\[ 5pt ] &\text{次の式の値を求めよ。} \\[ 5pt ] &\quad \frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta} \end{align*}

解と係数の関係を利用して、α,βの和と積を求めます。これらは基本対称式で表されるので、基本対称式の値を求めることができます。ここで、計算ミスがないようにしましょう。

問(1)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\quad 3x^{\scriptsize{2}}-2x-4=0 \\[ 7pt ] &\text{解と係数の関係より、} \\[ 5pt ] &\quad \alpha+\beta=-\frac{-2}{3} = \frac{2}{3} \\[ 7pt ] &\quad \alpha \beta =\frac{-4}{3} = -\frac{4}{3} \end{align*}

与式は分数の和で表される多項式ですが、対称式です。基本対称式を用いて表すことができます。また、基本対称式の値が分数なので、代入後の計算に要注意です。

与式を変形して基本対称式を用いた形にします。与式は分数の和で表されるので、通分して1つの分数にまとめます。

問(1)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \alpha+\beta=-\frac{-2}{3} = \frac{2}{3} \\[ 7pt ] &\quad \alpha \beta =\frac{-4}{3} = -\frac{4}{3} \\[ 7pt ] &\text{与式を通分して整理すると} \\[ 5pt ] &\quad \frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta} = \frac{\alpha+\beta}{\alpha \beta} \end{align*}

分母と分子に基本対称式が出てきました。

変形後の与式に基本対称式の値を代入して整理します。

問(1)の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \alpha+\beta=-\frac{-2}{3} = \frac{2}{3} \\[ 7pt ] &\quad \alpha \beta =\frac{-4}{3} = -\frac{4}{3} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta} = \frac{\alpha+\beta}{\alpha \beta} \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad \frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta} = \frac{\frac{2}{3}}{-\frac{4}{3}} \\[ 7pt ] &\text{整理すると} \\[ 5pt ] &\quad \frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta} = -\frac{2 \cdot 3}{3 \cdot 4} \\[ 7pt ] &\therefore \frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta} = -\frac{1}{2} \end{align*}

代入する値が分数なので、計算をミスしやすくなります。繁分数式の計算は意外と多いので、しっかりと演習をこなしておきましょう。

分母の分数は、分母と分子を上下入れ替え(ひっくり返す)、分子の分数は、分母と分子はそのまま。

解答例3⃣では、分母と分子にそのまま代入しました。基本的な計算であれば、割り算に戻してから代入します。計算ミスしにくい方法で計算しましょう。

問(1)の別解例

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \alpha+\beta=-\frac{-2}{3} = \frac{2}{3} \\[ 7pt ] &\quad \alpha \beta =\frac{-4}{3} = -\frac{4}{3} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta} = \frac{\alpha+\beta}{\alpha \beta} \\[ 7pt ] &\text{すなわち} \\[ 5pt ] &\quad \frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta} = \left(\alpha+\beta \right) \div \left( \alpha \beta \right) \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad \frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta} = \frac{2}{3} \div \left(-\frac{4}{3} \right) \\[ 7pt ] &\text{整理すると} \\[ 5pt ] &\quad \frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta} = -\frac{2 \cdot 3}{3 \cdot 4} \\[ 7pt ] &\therefore \frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta} = -\frac{1}{2} \end{align*}

問(2)の解答・解説

問(2)

\begin{align*} &\text{$2$ 次方程式 $3x^{\scriptsize{2}}-2x-4=0$ の} \\[ 5pt ] &\text{$2$ つの解を $\alpha \ , \ \beta$ とするとき、} \\[ 5pt ] &\text{次の式の値を求めよ。} \\[ 5pt ] &\quad \frac{\beta}{\alpha}+\frac{\alpha}{\beta} \end{align*}

与式は対称式です。問(1)の結果を利用するために、与式を変形します。

問(1)と同じように、通分して1つの分数にまとめます。ただし、問(1)とは少し様子が違うので注意しましょう。

問(2)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\text{与式を通分して整理すると} \\[ 5pt ] &\quad \frac{\beta}{\alpha}+\frac{\alpha}{\beta} = \frac{{\alpha}^{\scriptsize{2}}+{\beta}^{\scriptsize{2}}}{\alpha \beta} \end{align*}

与式を1つの分数にまとめると、分子がまだ対称式のままです。

問題によっては、対称式の値がすでに分かっている場合もありますが、ここでは基本対称式を用いた形に変形する必要があります。

与式をこのまま変形すると煩雑になるので、このような場合には分子だけを取り出します。分子の式の値を求めます。

問(2)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \frac{\beta}{\alpha}+\frac{\alpha}{\beta} = \frac{{\alpha}^{\scriptsize{2}}+{\beta}^{\scriptsize{2}}}{\alpha \beta} \\[ 7pt ] &\text{ここで、} \\[ 5pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}}+{\beta}^{\scriptsize{2}} =\left(\alpha+\beta \right)^{\scriptsize{2}}-2\alpha \beta \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}}+{\beta}^{\scriptsize{2}} = \left(\frac{2}{3} \right)^{\scriptsize{2}}-2 \cdot \left( -\frac{4}{3} \right) = \frac{4}{9}+\frac{8}{3} \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}}+{\beta}^{\scriptsize{2}} = \frac{28}{9} \end{align*}

分子の対称式の値が分かったので、与式の値を求めます。

問(2)の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \frac{\beta}{\alpha}+\frac{\alpha}{\beta} = \frac{{\alpha}^{\scriptsize{2}}+{\beta}^{\scriptsize{2}}}{\alpha \beta} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad {\alpha}^{\scriptsize{2}}+{\beta}^{\scriptsize{2}} = \frac{28}{9} \\[ 7pt ] &\text{これを用いて} \\[ 5pt ] &\quad \frac{\beta}{\alpha}+\frac{\alpha}{\beta} = \frac{ \frac{28}{9} }{ -\frac{4}{3} } \\[ 7pt ] &\text{整理すると} \\[ 5pt ] &\quad \frac{\beta}{\alpha}+\frac{\alpha}{\beta} = -\frac{28 \cdot 3}{9 \cdot 4} \\[ 7pt ] &\therefore \frac{\beta}{\alpha}+\frac{\alpha}{\beta} = -\frac{7}{3} \end{align*}

問(2)は、通分しただけでは基本対称式で表せないので、問(1)よりも難易度の高い問題です。

問(3)の解答・解説

問(3)

\begin{align*} &\text{$2$ 次方程式 $3x^{\scriptsize{2}}-2x-4=0$ の} \\[ 5pt ] &\text{$2$ つの解を $\alpha \ , \ \beta$ とするとき、} \\[ 5pt ] &\text{次の式の値を求めよ。} \\[ 5pt ] &\quad \left(\alpha-\beta \right)^{\scriptsize{2}} \end{align*}

カッコの中の式はαとβの差になっているので、一見すると対称式には見えません。しかし、展開すると対称式になるので、やはり基本対称式を用いて表すことができます。

また、与式を展開してみると、変形のやり方に気付けます。基本対称式の値を利用するために、与式を変形します。

問(3)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\text{与式を展開すると} \\[ 5pt ] &\quad \left(\alpha-\beta \right)^{\scriptsize{2}} = {\alpha}^{\scriptsize{2}}-2\alpha \beta+{\beta}^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] &\text{より、} \\[ 5pt ] &\quad \left(\alpha-\beta \right)^{\scriptsize{2}} = \underline{{\alpha}^{\scriptsize{2}}+{\beta}^{\scriptsize{2}} }-2\alpha \beta \end{align*}

まだ基本対称式で表せていませんが、問(2)の結果を利用することができます。もし結果を利用できなければ、されに変形する必要があります。

対応する式に値を代入して、与式の値を求めます。

問(3)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left(\alpha-\beta \right)^{\scriptsize{2}} = \underline{{\alpha}^{\scriptsize{2}}+{\beta}^{\scriptsize{2}} }-2\alpha \beta \\[ 7pt ] &\text{$(2)$ より} \\[ 5pt ] &\quad \left(\alpha-\beta \right)^{\scriptsize{2}} =\frac{28}{9}-2 \cdot \left(-\frac{4}{3} \right) \\[ 7pt ] &\text{整理すると} \\[ 5pt ] &\quad \left(\alpha-\beta \right)^{\scriptsize{2}} =\frac{28}{9}+\frac{8}{3} \\[ 7pt ] &\therefore \left(\alpha-\beta \right)^{\scriptsize{2}} = \frac{52}{9} \end{align*}

問(2)の結果がなければ、与式を基本対称式で表す必要があります。

問(3)の対称式の変形

\begin{align*} \left(\alpha-\beta \right)^{\scriptsize{2}} &= {\alpha}^{\scriptsize{2}}-2\alpha \beta+{\beta}^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] &= \underline{{\alpha}^{\scriptsize{2}}+{\beta}^{\scriptsize{2}}}-2\alpha \beta \\[ 7pt ] &= \underline{\left( \alpha+\beta \right)^{\scriptsize{2}}-2\alpha \beta}-2\alpha \beta \\[ 7pt ] &= \left(\alpha+\beta \right)^{\scriptsize{2}}-4\alpha \beta \\[ 7pt ] \therefore \left( \alpha-\beta \right)^{\scriptsize{2}} &= \left( \alpha+\beta \right)^{\scriptsize{2}}-4\alpha \beta \end{align*}

一度は自分で変形して導出しておかないと、初見では難易度の高い変形かもしれません。実際のところ、問(3)は差のつく問題です。

例題のように、ちょっと変形するだけで済む問題は、入試レベルではほとんど出題されません。ですから、問のような少し手のかかる問題を中心に演習をこなしておきましょう。

覚えておきたい対称式

\begin{align*} &(1) \quad x^{\scriptsize{2}}+y^{\scriptsize{2}} = \left(x+y \right)^{\scriptsize{2}}-2xy \\[ 7pt ] &(2) \quad x^{\scriptsize{3}}+y^{\scriptsize{3}} = \left(x+y \right)^{\scriptsize{3}}-3xy \left(x+y \right) \\[ 7pt ] &(3) \quad \left(x-y \right)^{\scriptsize{2}} = \left( x+y \right)^{\scriptsize{2}}-4xy \end{align*}

3つの対称式は、式の値を扱った問題では頻出です。2,3番目の対称式は要注意です。

Recommended books

オススメその1

予習の際に理解が進めば授業のスピードについていくことができ、復習や課題をこなす時間も少なくて済みます。予習や復習の補助教材に向いている教材が『とってもやさしい数学』シリーズです。

とってもやさしい数学1・Aでは2冊とも中学で学習した内容にも触れており、中学内容と高校内容とのつながりを把握しやすい教材です。

一学期のうちは不安を抱えながら学習を進めていく人も多いかと思います。スタートで躓かないためにも易しく取り組みやすい教材を使うのも一つのやり方です。無理をして内容の難しい教材を使うよりもはるかに良いでしょう。

基礎的な内容を扱っているので、数学が苦手な人でも取り組みやすくなっています。興味のある人はぜひ一読してみて下さい。

高校とってもやさしい数学1・A 改訂版 その1』は「数と式」「2次関数」の単元を扱っています。

高校とってもやさしい数学1・A 改訂版 その2』は「場合の数」「確率」「整数の性質」「図形の性質」「三角比」の単元を扱っています。

オススメその2

高校の数学I・Aが1冊でしっかりわかる本』は、これ1冊で数学1・Aの全範囲を復習できます。内容のレベルは「とってもやさしい」シリーズとそれほど変わらず、教科書レベルです。

本書と「とってもやさしい」シリーズのページ数を比較してみました。「とってもやさしい」シリーズは、1冊ごとのページ数が少ないのですが、分冊なのが難点です。

ページ数を比べると分かるように、本書の方が1冊でも遥かにページ数が少ないので、短時間でこなすことができます。

紹介した教材を使うとした場合、高校1年生であれば「とってもやさしい」シリーズで復習し、高校2,3年生であれば『高校の数学I・Aが1冊でしっかりわかる本』と「とってもやさしい」シリーズを組み合わせて復習すると良いでしょう。

こんな人に向いています

  • 定期試験や大学受験のための基礎を固めて、成績を上げたい高校生へ。
  • 医療看護系入試、高卒認定試験などの対策で、短期間で数学1・Aを理解したい方へ。
  • 学び直しや頭の体操をしたい大人の方へ。

さいごにもう一度まとめ

  • 2次方程式と対称式の組み合わせは、解と係数の関係を利用する可能性が高い。
  • 解と係数の関係の式は、基本対称式。
  • 対称式は、基本対称式で表すことができる。
  • 対称式の変形では、展開や因数分解の公式を利用しよう。
  • 忘れても大丈夫なように、自分で式変形できるようにしておこう。