中学数学|正負の数の乗除算を解いてみよう
3つ以上の数の乗除算
次の乗除算を解いてみましょう。
問
\begin{align*} &(1) \quad \left(-2 \right) \times \left(+3 \right) \times \left(-4 \right) \\[ 7pt ] &(2) \quad \left(-5 \right)^{2} \\[ 7pt ] &(3) \quad -{5^{2}} \end{align*}正負の数の乗除算では、扱う数が3つ以上になると計算をラクにするために符号の規則性に注目する必要があります。
問(1)では、3つの数の乗算を扱っています。問(2),(3)では、3つ以上の数を扱っていませんが、符号の規則性を扱っています。
問(1)の解答・解説
問(1)
\begin{align*} \quad \left(-2 \right) \times \left(+3 \right) \times \left(-4 \right) \end{align*}3つ以上の乗除算は、2数の乗除算の繰り返し
3つ以上の数の乗除算は、2数の乗除算の繰り返しで解くことができます。
3つ以上の数の乗除算
- 除算があれば、乗算に置き換える。
- 交換法則や結合法則を利用して、同符号の2数の乗算を先に行う。
- さいごに異符号の2数の乗算を行う。
計算の流れは加算のときと変わらないことが分かります。加算と同じように、同符号の2数の乗算であれば答えの符号がプラスとなるので、もし符号を忘れたとしても問題が起きにくいからです。
基本的な流れで計算すると過程が長くなりますが、以降の解き方につながるので、この考え方を覚えておいて損はありません。
符号の規則性を利用する
3つ以上の数を乗算するときでもできるだけ簡単に解くには、符号の規則性を利用します。
乗算では、乗算する数の符号の組合せで答え(積)の符号が決まるという規則性があります。式の中にあるマイナス(-)の個数に注目すると、以下のような規則性があります。
マイナスの個数で決まる規則性
- 式の中にマイナス(-)が奇数個あるとき、答え(積)の符号はマイナス(-)
- 式の中にマイナス(-)が偶数個あるとき、答え(積)の符号はプラス(+)
マイナスの個数が偶数個ならば、負の数どうしの積が複数組できる。その積の符号はどれもプラスとなる。
マイナス(-)の符号に注目した乗算は、もちろん2数のときでもできます。
正負の数を扱うとき、よくあるミスが符号の扱いなので、符号に注目して計算することは良いことだと思います。
計算過程は以下のようになります。左側が2数の乗算を繰り返す基本的な解法です。右側がマイナスの個数で決まる規則性を利用した解法(「慣れたらこちらで」)です。
最終的には右側の解法で解けるようになりましょう。
問(2),(3)の解答・解説
問(2),(3)
\begin{align*} &(2) \quad \left(-5 \right)^{2} \\[ 7pt ] &(3) \quad -{5^{2}} \end{align*}上述のように、3つ以上の数を乗算するときには符号の規則性を利用します。ただし、問(2),(3)のような計算が含まれると、よく符号のミスをします。
累乗について
問(2)では、-5を2乗しており、問(3)では、5を2乗しています。累乗は同じ文字や数の乗算を表します。
数字の右肩にある小さな数字は指数と言い、同じ数を何個(何回)掛けているかを表します。この指数を用いると、同じ数の乗算を簡略化して表記できるようになります。
「累」は累計や累加といった言葉のように、重ねるや繰り返すなどの意味を持つ言葉。そこから転じて、累乗は同じ数を繰り返し乗算する意味だと考えられる。累乗も数式を簡略化して表すための工夫の1つ。
累乗を乗算に書き換えてみると、どんな数をいくつ掛け合わせているのかが良く分かります。
累乗を乗算に書き換える
\begin{align*} (2) \quad &\left(-5 \right)^{2} \\[ 7pt ] = \ &\left(-5 \right) \times \left(-5 \right) \\[ 10pt ] (3) \quad &-{5^{2}} \\[ 7pt ] = \ &-\left(5 \times 5 \right) \end{align*}指数がカッコの右上に付いている場合と、数字の右上に付いている場合とで意味が異なることが分かります。負の数の累乗であれば、負の数をカッコでくくり、そのカッコの右上に指数を書きましょう。
累乗の表記は、指数の付き方で意味が全く異なるので注意しよう。符号のミスが多いものの1つ。
累乗の計算
問(2)では、目に見えるマイナスの符号は1個だけです。しかし、-5の2乗とは-5を2回掛け合わせるという意味なので、実際にはマイナスの符号が2個あります。ですから積の符号はプラスの符号になります。
問(2)の解答例
\begin{align*} \quad &\left(-5 \right)^{2} \\[ 7pt ] = \ &\left(-5 \right) \times \left(-5 \right) \\[ 7pt ] = \ &+\left(5 \times 5 \right) \\[ 7pt ] = \ &+25 \\[ 7pt ] = \ &25 \end{align*}問(3)では、目に見えるマイナスの符号は1個だけです。しかも、このマイナスの符号は乗算には関与しません。なぜなら、5の2乗とは5を2回掛け合わせるという意味だからです。
問(3)の解答例
\begin{align*} \quad &-{5^{2}} \\[ 7pt ] = \ &-\left(5 \times 5 \right) \\[ 7pt ] = \ &-\left(+25 \right) \\[ 7pt ] = \ &+\left(-25 \right) \\[ 7pt ] = \ &-25 \end{align*}累乗の計算に関係がないマイナスの符号はそのままにしておきます。カッコ内の乗算は正の数どうしの乗算なので、積の符号がプラスの符号になります。その結果、ー(+25)となります。正の数の減算から負の数の加算に置き換えてカッコを省略すると、-25になります。
問(2),(3)の結果の違い
問(2),(3)では、目に見えているマイナスの符号はともに1個ですが、積の符号は異なります。指数が何に付いているかで結果が変わります。累乗は乗除算だけでなく、四則計算などでも頻出なので、その扱いには細心の注意を払いましょう。
累乗は乗算を簡略化した式なので、「マイナス(-)の個数≠目に見えている個数」。累乗を見かけたら最優先で処理。乗算の計算記号を補った式に置き換えるのが符号ミスを減らすコツ。
計算過程やコツをまとめると以下のようになります。
除算は分数の形に置き換えて計算してもよい
除算の基本的な解法は、乗算に置き換えることです。ここでは、応用的な解法も解説しておきます。
文字を含む除算では、計算記号(÷)を省略して分数の形で表すことを中学で学習します。このことは数だけでも当然成り立ちます。
図解すると以下のようになります。
除算を乗算に置き換える際に、割る数は逆数になります。その結果、割る数が分母、割られる数が分子となった分数が得られます。このことが理解できれば、除算を一気に分数で表すことができるようになります。
除算を分数で表して、計算をラクに進めよう。
除算を分数に置き換えてしまう解き方は、3つ以上の数を乗除算するときに非常に便利です。乗除算をまとめて1つの分数に置き換えることができるからです。
例題のような乗除算では非常に楽に計算できます。
例題
\begin{align*} \quad &(-6) \times 5 \div (-3) \times 2 \\[ 7pt ] = \ &+ \ \frac{6 \times 5 \times 2}{3} \\[ 7pt ] = \ &+20 \end{align*}マイナスの符号(-)から答えの符号を決め、数字(絶対値)だけで1つの分数を作ります。割る数は3です。分数ができたら約分し、分母や分子を整理します。
2は掛ける数であって、割る数ではない。例題では割る数は(-3)だけです。除算の計算記号(÷)の直後にあるものが割る数。
慣れると非常に素早く計算できるようになります。
除算の応用的な解法
- 除算は分数に置き換える。このとき符号と数字は別々に扱う。
- 割る数を分母に、それ以外の数を分子において分数を作る。
- 約分して分母と分子の乗算をそれぞれ行う。
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さいごに、もう一度まとめ
- 乗除算は乗算に統一。
- 同符号の数の乗算ならば、答え(積)の符号はプラス(+)。
- 異符号の数の乗算ならば、答え(積)の符号はマイナス(-)。
- 答え(積)の符号はマイナス(-)の個数で判断できる。
- 累乗を見たら最優先で計算。
- 除算は割る数の逆数を取って乗算に。
- 分数の乗算は1つの分数にまとめる。
- 除算はまるごと分数に置き換える。(応用)