数学2
今回は式の大小比較について学習しましょう。
式の大小の比較は、油断すると思った以上に面倒で時間が掛かる作業です。要領よく比較する方法を習得しましょう。
式の大小関係を効率よく調べよう
たとえば、4つの式の大小を比較することを考えましょう。
これまでの学習内容を参考にすれば、大小比較のために、2つの式の差を求め、その正負を調べます。4つの式から2つを選ぶので、その組合せは全部で4×3÷2=6通りになります。
6通りもあると、時間制限のある試験ではあまり良い調べ方とは言えません。
そこで、できるだけ手間を少なくし、効率よく比較することが求められます。ここでのポイントはこれに尽きます。目標は、式の大小比較の方法論をマスターすることです。
式の大小を比較してみよう
次の例題を解いてみましょう。
例題の解答・解説
答案を記述する前にやっておくこと
4つの式から2つを選んで比較する場合、全部で6通りの組合せが考えられます。上述したように、6通りすべてを調べるのは時間を掛けすぎです。
ここで、与えられた条件を参考にすると、少ない組み合わせで大小を比較できます。
例題では、文字a,bについて条件が与えられています。これらの条件を満たす数を考えます。
条件を満たす数を考える
0<a<b , a+b=2を満たす a , b はa=12 , b=32が考えられる。
条件を満たす数は、他にもありますが、できるだけ計算しやすい数を選びましょう。
条件を満たすa,bの値を与式に代入します。整理すると、与式の値が分かります。
与式の値を求める
⋮a=12 , b=32⋮式に代入するとa=12b=32ab=12⋅32=34a2+b22=12{(12)2+(32)2}=54
求めた式の値から、4つの式の大小関係を予想することができます。
4つの式の大小関係を予想する
⋮a=12b=32ab=12⋅32=34a2+b22=12{(12)2+(32)2}=54式の値から、4 つの式の大小はa<ab<a2+b22<bと予想できる。
このように条件を満たす数から、式の値を求めることによって、大小関係の見当を付けることができます。これをやっておかないと、要領よく比較できないので気をつけましょう。
言われれば分かりますし、大した事ではないように思うかもしれません。それでも案外やらないし、やれないものです。
条件を満たす数を代入して、式の値を求めよう。式の値から大小関係を予想しておこう。
例題
0<a<b , a+b=2のとき、次の 4 つの式の大小を比較せよ。a ,b ,ab ,a2+b22
例題の解答・解説
具体的な数を用いた大小比較では、ほとんど点数を得ることはできません(おそらく0点)。あくまでも一例であって、条件を満たす全ての数について吟味しているわけではないからです。
答案では、文字のままで大小を比較する必要があります。予想を参考にして、大小比較します。
大小を比較する前に、与えられた条件を利用して、文字を2種類から1種類に減らします。この作業によって、差の符号(正負)を調べやすくなります。
例題の解答例 1⃣
a+b=2であるのでb=2−aこれより
ab=a(2−a)=−a2+2a
同様に
a2+b22=a2+(2−a)22=a2−2a+2
bを消去すると、aが残ります。
与えられた条件を利用して、aの値の範囲を求めます。
例題の解答例 2⃣
⋮またb=2−a と 0<a<b より0<a<2−aすなわち{0<aa<2−aこれを解くと0<a<1
これで、差の符号(正負)を調べる準備が整いました。
予想した大小関係から差を作ります。最小のものと2番目に小さいものを比較します。
例題の解答例 3⃣
⋮0<a<1[ 1 ]a , ab の大小比較
ab−a= (−a2+2a)−a= −a2+a= −a(a−1)
0<a<1 より−a(a−1)>0であるのでab−a>0すなわちa<ab
2番目と3番目に小さいものを比較します。
例題の解答例 3⃣
⋮a<ab[ 2 ]ab , 12(a2+b2) の大小比較
\begin{align*}
\quad &\frac{a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}}}{2}-ab \\[ 10pt ]
= \ &\left(a^{\scriptsize{2}}-2a+2 \right) – \left(-a^{\scriptsize{2}}+2a \right) \\[ 10pt ]
= \ &2a^{\scriptsize{2}}-4a+2 \\[ 10pt ]
= \ &2 \left(a^{\scriptsize{2}}-2a+1 \right) \\[ 10pt ]
= \ &2 \left(a-1 \right)^{\scriptsize{2}}
\end{align*}
\begin{align*}
&0 \lt a \lt 1 \ \text{より} \\[ 5pt ]
&\quad 2 \left(a-1 \right)^{\scriptsize{2}} \gt 0 \\[ 7pt ]
&\text{であるので} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}}}{2} -ab \gt 0 \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad ab \lt \frac{a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}}}{2}
\end{align*}
3番目に小さいものと最大のものを比較します。
例題の解答例 4⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad a \lt ab \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad ab \lt \frac{a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}}}{2} \\[ 10pt ]
&[ \ 3 \ ] \quad \frac{1}{2}\left(a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}} \right) \ , \ b \ \text{の大小比較}
\end{align*}
\begin{align*}
\quad &b-\frac{a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}}}{2} \\[ 10pt ]
= \ &\left(2-a \right) – \left(a^{\scriptsize{2}}-2a+2 \right) \\[ 10pt ]
= \ &-a^{\scriptsize{2}}+a \\[ 10pt ]
= \ &-a \left(a-1 \right)
\end{align*}
\begin{align*}
&0 \lt a \lt 1 \ \text{より} \\[ 5pt ]
&\quad -a \left(a-1 \right) \gt 0 \\[ 7pt ]
&\text{であるので} \\[ 5pt ]
&\quad b- \frac{a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}}}{2} \gt 0 \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}}}{2} \lt b
\end{align*}
3つの場合分けの結果をまとめます。
例題の解答例 5⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad a \lt ab \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad ab \lt \frac{a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}}}{2} \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \frac{a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}}}{2} \lt b \\[ 10pt ]
&\text{$[ \ 1 \ ]$ ~ $[ \ 3 \ ]$ より} \\[ 5pt ]
&\quad a \lt ab \lt \frac{a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}}}{2} \lt b
\end{align*}
予想した大小関係をもとに、小さい方の2つずつを順に調べていけば、3通りだけで済みます。組合せは6通りありましたが、そのうちの半分は比較しなくてもよい組合せだったことが分かります。
また、予想の大小関係から、大きい方から小さい方の差を計算しています。ですから、差の符号(正負)は必ず正になるはずです。
もし、差が負であれば、計算ミスをしていることに気付けます。これも大小関係を予想することの利点です。
式の大小比較の手順をまとめると、以下のようになります。
式の大小比較の手順
- 与えられた条件を満たす数を考える。
- 数を与式に代入して、式の値を求める。
- 式の値から、与式の大小関係を予想する。
- 条件を利用して、文字の種類を減らす。
- 残った文字の範囲を求める。
- 予想をもとに、小さい方から2つずつ順に選び、式の大小を比較していく。
式の大小比較では、答案に記述する前の下準備がとても重要です。効率よく大小を比較するためにも、大小関係の予想を必ずやっておきましょう。
次は、式の大小比較を扱った問題を実際に解いてみましょう。