集合と論理|共通部分・和集合・補集合について

共通部分や和集合を扱った問題を解いてみよう
次の問題を考えてみましょう。全体集合Uの要素の数が少なく、部分集合A,Bの要素も書き並べてあります。ですから、非常に易しい部類の問題です。
まずは用語の定義など基本的な事項が頭に入っているかを意識しながら解きましょう。
問1(1)の解答・解説
問1(1)
全体集合 U={1 , 2 , 3 , 4} の 2 つの部分集合 A={1 , 2} , B={2 , 3} について、次の集合を求めよ。
A∩B問1(1)は、部分集合A,Bの共通部分A∩Bを求める問題です。部分集合A,Bに共通の要素を探します。共通の要素は2だけです。
問1(1)の解答例
A={1 , 2}B={2 , 3}より
A∩B={2}問1(2)の解答・解説
問1(2)
全体集合 U={1 , 2 , 3 , 4} の 2 つの部分集合 A={1 , 2} , B={2 , 3} について、次の集合を求めよ。
A∪B第1問(2)は、部分集合A,Bの和集合A∪Bを求める問題です。部分集合A,Bの要素を単純に合わせるだけでは和集合にはなりません。重なった共通部分A∩Bの要素を除くことを忘れないようにしましょう。
問1(2)の解答例
A={1 , 2}B={2 , 3}より
A∪B=A+B−A∩B={1 , 2}+{2 , 3}−{2}={1 , 2 , 3}∴ A∪B={1 , 2 , 3}問1(3)の解答・解説
問1(3)
全体集合 U={1 , 2 , 3 , 4} の 2 つの部分集合 A={1 , 2} , B={2 , 3} について、次の集合を求めよ。
¯A第1問(3)は、部分集合Aの補集合 ¯A を求める問題です。全体集合Uから部分集合Aを除いた残りが補集合に属する要素です。
問1(3)の解答例
U={1 , 2 , 3 , 4}A={1 , 2}より
¯A=U−A={1 , 2 , 3 , 4}−{1 , 2}={3 , 4}∴ ¯A={3 , 4}問1(4)の解答・解説
問1(4)
全体集合 U={1 , 2 , 3 , 4} の 2 つの部分集合 A={1 , 2} , B={2 , 3} について、次の集合を求めよ。
¯A∩¯B第1問(4)は、2つの補集合 ¯A , ¯B の共通部分 ¯A∩¯B を求める問題です。
2つの補集合の要素を明らかにしてから共通部分を求めても良いですが、ここではド・モルガンの法則を利用して求めます。
問1(4)の解答例 1⃣
ド・モルガンの法則より
¯A∩¯B=¯A∪Bド・モルガンの法則を使って変形すると、和集合A∪Bの補集合を考えれば良いことが分かります。和集合A∪Bの要素は問1(2)で分かっているので、それを利用します。
和集合A∪Bの補集合 ¯A∪B は、全体集合Uから和集合A∪Bを除いた部分になります。
問1(4)の解答例 2⃣
⋮ここで (2) より
A∪B={1 , 2 , 3}であるので
¯A∪B=U−(A∪B)={1 , 2 , 3 , 4}−{1 , 2 , 3}={4}∴ ¯A∩¯B={4}このようにド・モルガンの法則を上手に利用すると、それまでに求めた結果を利用でき、かなり負担が減ります。
問1のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。ベン図を利用すると、要素の書き洩らしをなくせます。
次の問題を考えてみましょう。
問2では、要素がアルファベットになっていますが、用語の定義は変わらないので、同じ要領で解いていきます。見た目が変わっても慌てないようにしましょう。
問2(1),(2)の解答・解説
問2(1),(2)
全体集合 U={a , b , c , d} の 2 つの部分集合 A={a , b , c} , B={b , c , d} について、次の集合を求めよ。
(1)A∪B(2)A∩B問2(1)は、部分集合A,Bの和集合A∪Bを求める問題です。和集合を求めるには共通部分が必要です。ですから、問2(2)の共通部分A∩Bを先に求めておくと良いでしょう。
共通部分A∩Bの要素は、部分集合A,Bに共通の要素です。部分集合A,Bの要素で共通のものは2つあります。共通部分の要素が分かったら、和集合の要素を求めます。
問2(1),(2)の解答例
A={a , b , c}B={b , c , d}より
A∩B={b , c}よって
A∪B=A+B−(A∩B)={a , b , c}+{b , c , d}−{b , c}={a , b , c , d}(=U)和集合A∪Bは全体集合Uに等しいことが分かります。
問2(3)の解答・解説
問2(3)
全体集合 U={a , b , c , d} の 2 つの部分集合 A={a , b , c} , B={b , c , d} について、次の集合を求めよ。
¯B問2(3)は、部分集合Bの補集合 ¯B を求める問題です。全体集合Uから部分集合Bを除いた残りが補集合に属する要素です。
問2(3)の解答例
U={a , b , c , d}B={b , c , d}より
¯B=U−B={a , b , c , d}−{b , c , d}={a}∴ ¯B={a}問2(4)の解答・解説
問2(4)
全体集合 U={a , b , c , d} の 2 つの部分集合 A={a , b , c} , B={b , c , d} について、次の集合を求めよ。
¯A∪¯B問2(4)は、2つの補集合 ¯A , ¯B の和集合 ¯A∪¯B を求める問題です。
問2(3)で部分集合Bの補集合を求めたので、部分集合Aの補集合を求めれば解けます。ここでは、問1(4)と同じようにド・モルガンの法則を利用して与式を変形します。
問2(4)の解答例 1⃣
ド・モルガンの法則より
¯A∪¯B=¯A∩Bド・モルガンの法則から、共通部分A∩Bの補集合を考えれば良いことが分かります。共通部分A∩Bの要素は問2(2)で求めたので、それを利用します。
共通部分A∩Bの補集合 ¯A∩B は、全体集合Uから共通部分A∩Bを除いた部分です。
問2(4)の解答例 2⃣
⋮ここで (2) より
A∩B={b , c}であるので
¯A∩B=U−(A∩B)={a , b , c , d}−{b , c}={a , d}∴ ¯A∪¯B={a , d}問2のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。解答例のようにベン図を描いて解きましょう。
集合を扱うとき、ベン図はとても役立ちます。集合が3つ以上になったり、要素の個数が増えたりすると描くのが意外と難しくなります。描き慣れておきましょう。
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さいごに、もう一度、頭の中を整理しよう
- ベン図で可視化して、集合の関係を理解する。
- 共通部分・和集合・補集合の記号をしっかり使えるようにする。
- 集合や要素の書き方を工夫する。
- 補集合を扱うとき「ド・モルガンの法則」を念頭に。