式と証明|分数式の加法や減法について

数学2

数学2 式と証明

今回は、分数式の加法や減法について学習しましょう。

数だけの分数では一通り学習しているので、計算の流れを把握することはそれほど難しくありません。

大切なのは、分母や分子が整式となった場合、どのあたりが数の場合と異なるのかを知ることです。違いを把握できれば、整式であっても上手に計算できるでしょう。

分数式の計算に必要な性質

分数式の基本性質

分数式の乗法や除法で学習したように、分数式には基本的な性質が2つありました。

分数式の基本性質

(1)AB=ACBCただし、C0(2)ADBD=AB

ここで大切なのは、基本性質(1)です。この性質は「分母と分子に0でない同じ値をそれぞれ掛けても等しい」という性質です。

この性質は、通分のときに用いられています。また、この性質を利用して、分数式の加法や減法を行います。

整式を扱った分数式で基本性質を用いるには

先ほども述べたように、通分は基本性質(1)を用いて行われます。

約分の仕組み

314+110=3×5(2×7)×5+1×7(2×5)×7AB=ACBC と同じ形=1570+770

分母の様子が分かるように通分しました。分母の様子から、通分では互いの分母が同じ数や式、または同じ積の形になります。

互いの分母が同じ積の形になるのは、公倍数のときです。ただ、できるだけ小さい方が扱いやすいので、通分では最小公倍数を考えるのが一般的です。

このことは整式であっても同じです。整式では最小公倍数を考えることはありませんが、分母が全く同じ整式になれば通分できます。

全く同じ整式になるのは、整式のもつ因数が等しいときです。また、因数は少ない方が扱いやすいので、そのことも考慮します。

いずれにせよ、互いの整式がもつ因数を調べる必要があるので、整式を因数分解しなければなりません。つまり、乗法や除法と同じように、加法や減法のときでもまずは整式を因数分解することが大切です。

このことは、分数式に限らないので、整式を扱うときには因数を調べてみると良いでしょう。

整式を上手に扱うために因数を調べよう。

分数式の加法や減法

分数式の四則計算では、それぞれ決まった規則で計算します。ここでは、加法と減法について確認します。

分数式の加法や減法

加法AC+BC=A+BC減法ACBC=ABC

分数式の加法や減法では、分母がともに等しいことが前提です。このとき、加法では、分子を足し算します。また、減法では、分子を引き算します

もし、分母が異なるのであれば、通分した後に加法や減法を行います。分母が異なる原因は、因数が異なるからです。このことは分母の整式を因数分解すれば分かります。

整式が異なる ⇔ 整式がもつ因数が異なる

分数式の加法や減法の例題

分数式の加法や減法を扱った例題を考えてみましょう。

例題

次の計算をせよ。(1)x+112x2+7x+3x102x23x2(2)4x2+41x2+1x+2

例題(1)の解答・解説

例題(1)

次の計算をせよ。x+112x2+7x+3x102x23x2

例題(1)は、分数式の減法です。分母が異なるので、通分するために分母をそれぞれ因数分解します。

例題(1)の解答例 1⃣

x+112x2+7x+3x102x23x2= x+11(x+3)(2x+1)x10(x2)(2x+1)

分母の因数分解はたすき掛けで行いますが、できるだけ暗算で手早く済ませましょう。

なお、因数分解した後の分数式について、カッコでくくられた多項式をそれぞれ1つの文字に置き換えてみると、以下のような式になっていると捉えることができます。

多項式の積を単項式の積に見立てよう

x+11(x+3)(2x+1)x10(x2)(2x+1)= CABEDB= C×DAB×DE×ADB×A= CDAEABD
ただしA=x+3B=2x+1C=x+11D=x2E=x10とする。

上記のような形に見えれば、分数式の基本性質(1)を利用するのも容易いでしょう。

通分して分母の因数を揃えます。その際、分母に掛けた因数を分子にも掛けます。

通分するときは、分母の因数を揃えることを優先しよう。分母に掛ける因数が決まったら、分子にも掛けよう。

通分できたら、分子を引き算します。分子の引き算では、符号ミスが多いので注意しましょう。

例題(1)の解答例 2⃣

x+112x2+7x+3x102x23x2= x+11(x+3)(2x+1)x10(x2)(2x+1)= (x+11)(x2)(x+3)(2x+1)(x2)(x10)(x+3)(x2)(2x+1)(x+3)= (x+11)(x2)(x10)(x+3)(x+3)(x2)(2x+1)= (x2+9x22)(x27x30)(x+3)(x2)(2x+1)= 16x+8(x+3)(x2)(2x+1)

丁寧に記述したので計算過程がだいぶ長くなっています。慣れてきたら、任意で省略して構いません。

数のときと同じように、分子を整理してから約分の有無を確認します。

例題(1)の解答例 3⃣

x+112x2+7x+3x102x23x2= = 16x+8(x+3)(x2)(2x+1)= 8(2x+1)(x+3)(x2)(2x+1)= 8(x+3)(x2)

分子を因数分解すると、約分できます。分数式の計算では、最後に約分することがほとんどです。油断しないようにしましょう。

分数式の計算では、最後に約分の有無を確認しよう。

数が整式に変わり、扱い方に多少の違いはありますが、これまでの分数の加減算とほとんど変わりません。整式になったせいで、因数が分かりにくくなったくらいです。

例題(2)の解答・解説

例題(2)

次の計算をせよ。4x2+41x2+1x+2

例題(2)は、分数式の加法と減法が混じった計算です。与式を観察すると、分母が異なったり、共通の因数を互いにもたなかったりすることが分ります。

そのまま左から順に計算しても良いのですが、計算の順番を工夫すると計算量がだいぶ変わります。

分母が2次式と1次式であることに注目します。分母が1次式である分数式を通分すれば、2次式になります。ですから、2番目と3番目の分数式を使って先に計算します。

例題(2)の解答例 1⃣

4x2+41x2+1x+2= 4x2+4+(1x2+1x+2)= 4x2+4+{1×(x+2)(x2)(x+2)+1×(x2)(x+2)(x2)}= 4x2+4+(x+2)+(x2)(x2)(x+2)= 4x2+4+4(x2)(x+2)= 4x2+4+4x24

解答例1⃣の2行目では、2番目と3番目の分数式を計算するために、計算の順番を変える結合法則を用いています。カッコでくくると、計算の優先順位を上げることができます。

ちなみに、カッコでくくる場合、別解として以下のようにくくることもできます。

例題(2)の解答例 1⃣(別解)

4x2+41x2+1x+2= 4x2+4(1x21x+2)= 4x2+4{1×(x+2)(x2)(x+2)+1×(x2)(x+2)(x2)}= 4x2+4(x+2)(x2)(x2)(x+2)= 4x2+44(x2)(x+2)= 4x2+44x24

一応、別解を挙げましたが、多項式は単項式の和であることを考えると、「ー」は減法の記号ではなく、符号と捉える習慣を持っておいた方が良いでしょう。つまり、解答例1⃣のように、2番目の分数式を負の数として扱うということです。

別解の場合、3番目の分数式の符号を変え忘れることが多く、符号ミスを起こす可能性が高いです。ですから、解答例1⃣のようなくくり方をした方が無駄な計算ミスを減らせるでしょう。

計算ミスをしにくい式変形を採用しよう。

2番目と3番目の分数式を計算すると、分母が2次式になりました。2つの分数式を通分します。

例題(2)の解答例 2⃣

4x2+41x2+1x+2= = 4x2+4+4x24= 4(x24)(x2+4)(x24)+4(x2+4)(x24)(x2+4)= 4(x24)4(x2+4)(x24)(x2+4)= 4{(x24)(x2+4)}(x24)(x2+4)= 4(8)(x2)242= 32x416

分母と分子をそれぞれ整理します。分母と分子が関わるのは約分のときです。

次は左から順に計算したときと比べてみましょう。

計算過程を研究しよう

計算のやり方には、人それぞれに癖のようなものがあります。ルールさえ守っていれば問題ありませんが、計算ミスが少なく、短時間で解けるやり方でなければ良いとは言えません。

例題(2)について、左から順に計算すると、以下のようになります。上述した解答例と比べてみましょう。

例題(2)の別解例

4x2+41x2+1x+2= 4×(x2)(x2+4)(x2)+1×(x2+4)(x2)(x2+4)+1x+2= 4(x2)(x2+4)(x2)(x2+4)+1x+2= x2+4x12(x2)(x2+4)+1x+2= (x2+4x12)(x+2)(x2)(x2+4)(x+2)+1×(x2)(x2+4)(x+2)(x2)(x2+4)= (x2+4x12)(x+2)+(x2)(x2+4)(x2)(x+2)(x2+4)= x3+2x24x24+x32x2+4x8(x2)(x+2)(x2+4)= 32(x2)(x+2)(x2+4)= 32(x24)(x2+4)= 32x416= 32x416

同じ計算結果になりましたが、別解例では、分子の計算がとても面倒です。ですから、例題(2)のような計算では、次数の同じ分母を優先して計算します

左から順に計算するやり方と、結合法則で計算の順序を変えて計算するやり方は、どちらもルールを守ったやり方です。両方とも正しい解き方と言えますが、別解例の方が明らかに煩雑な計算過程になっています。

量を確保して、その後に質を考えよう

煩雑さを減らせるかどうかは、これまでに学習してきたことを上手に活用できるかどうかにかかっています。

活用できる習熟度に至るには、演習をこなさなければなりません。量をこなさなければ、習熟度を上げることはできないからです。

演習をこなすことを嫌がるかもしれませんが、このことは部活動を考えれば分かるはずです。

大して練習していないのに、技術が身についたり、試合で活躍できたりするでしょうか? 体力や技術を身に付け、向上させるために、日々、同じ練習を反復しているはずです。学習も全く同じです。

模範解答を再現できるくらいに量をこなした後に考えるのが質です。そうは言っても、量をこなせば、同じことをやっていたとしても、徐々に無駄が減って中身は洗練されていきます。ですから、量をこなしていれば、自ずと質は向上します。

まずは量をこなすことを意識すれば良いのですが、実際はそれだけでは足りません。

さらに正確で手早く計算できるように、また、より良い答案作成ができるように、意識的に研究していくことが必要です。ここからがいわゆる入試対策です。このような研究が時間制限のある入試で役立ちます。

量をこなす前から質を考えてはいけない。まずは教科書や問題集で量をこなそう。

次は、分数式の加法や減法を実際に解いてみましょう。