図形の性質|角の二等分線と比について

数学A

数学A 図形の性質

今回から新しい単元になります。数Aの「図形の性質」という単元です。

数学1・A全般に言えることですが、この単元も中学での履修内容がベースになっています。もちろん、新しい定理や公式が出てくるのですが、その導出ではこれまでに学習した図形の性質を利用します。

復習もかねて導出の過程をしっかり熟読しましょう。その際には、中学の教科書も参照しながら学習すると良いでしょう。

なお、記事の画像が見辛いときはクリックすると拡大できます。

角の二等分線と比

角の二等分線と比の関係については、既に中学で学習しています。三角形の面積比を求めるときに利用しました。

三角形の面積比に利用できる理由を知らないままに覚えたかもしれませんが、その理由をこの単元で理解しましょう。

また、角の二等分線と比の関係だけでなく、この単元では内分や外分などの新しい用語についても学習します。これらとのつながりもしっかりと理解しましょう。

ここで学習する用語は以下のようなものがあります。

単元「角の二等分線と比」で学習する用語

  • 内分
  • 外分
  • 三角形の内角の二等分線と比
  • 三角形の外角の二等分線と比

線分の内分

内分とは、線分上の点で線分を分けることです。

一般に「線分ABについて、AP:BP=m:nが成り立つとき、線分ABは点Pによってm:nに内分される」と言います。

線分の内分と内分点
線分ABの内分点P

また、線分を内分する点を内分点と言います。内分点は図を見ると分かるように必ず線分上に存在します。

内分後の線分の長さ

線分は、内分されるといくつかの線分に分割されます。分割された各線分の長さは、内分比を利用して表されます。

内分後の線分の長さを求める問題は頻出なので、確実にマスターしよう。

たとえば、線分ABを2:1に内分する点をPとします。このとき、線分AP,BPの長さを線分ABで表わしてみましょう。

線分ABを内分点Pによって2:1に内分するので、AP:BP=2:1です。

図のように、線分AP,BPに対応する比を書き込みます。

図に比を書き込むと分かりますが、線分ABに対応する比は、線分ABを2:1に内分に内分したので2+1=3です。

内分比の利用の仕方
各線分の比

比を書き込むとき、長さと区別するために丸や四角で囲んであげると分かりやすいです。また、比較している線分の比を同じ囲みにすることで、比較対象を簡単に区別できるのも利点です。

比は長さではないので、長さと混同しないように気を付けよう。

線分ABに対応する比が分かると、AB:BP=3:2という比例式を得ることができます。この比例式において、内項の積と外項の積の関係から、ABを用いてAPを表すことができます。

線分APを線分ABで表す

点 $P$ は線分 $AB$ を $2:1$ に内分するので

\begin{align*} &\quad AP:BP = 2:1 \end{align*}

よって

\begin{align*} \quad AB:AP = 3:2 \end{align*}

内項の積と外項の積の関係から

\begin{align*} \quad 3 \cdot AP = 2 \cdot AB \end{align*}

よって

\begin{align*} \quad AP = \frac{2}{3} AB \end{align*}
内分比の利用の仕方
点Pが線分ABを2:1に内分

また、線分BPについてもAB:BP=3:1という比例式を得ることができます。同じようにして、線分ABを用いて線分BPを表すことができます。

線分BPを線分ABで表す

点 $P$ は線分 $AB$ を $2:1$ に内分するので

\begin{align*} \quad AP:BP = 2:1 \end{align*}

よって

\begin{align*} \quad AB:BP = 3:1 \end{align*}

内項の積と外項の積の関係から

\begin{align*} \quad 3 \cdot BP = 1 \cdot AB \end{align*}

よって

\begin{align*} \quad BP = \frac{1}{3} AB \end{align*}
内分比の利用の仕方
点Pが線分ABを2:1に内分

内分についてまとめると以下のようになります。

内分比を利用した線分の長さ
内分のまとめ

比例式について

ちなみに、比例式とは2つの比を等号(=:イコール)でつないだ式のことです。

この比例式は等式です。しかし、このままではあまり使い道がありません。そこで、内項(内側の比)の積と外項(外側の比)の積は常に等しいという性質を利用します。

この性質を利用すると、長さが未知の線分についての方程式を導出することができます。導出された方程式を解くと、所望の線分の長さを求めることができます。

先ほどAP,BPの長さをABで表しましたが、これは方程式を解いた後の式になります。

線分の外分

外分とは、線分の延長線上にある点で線分を分けることです。

一般に「線分ABについて、AQ:BQ=m:nが成り立つとき、線分ABは点Qによってm:nに外分される」と言います。

線分の外分と外分点
線分ABの外分点Q

また、線分を外分する点のことを外分点と言います。外分点は線分上ではなく、線分の延長線上に存在します。

外分点で注意したいのは、内分点のときとは異なり、外分点は線分の左右どちらかにできるということです。

たとえば、点Qが線分ABを2:1に外分する場合、AQ:BQ=2:1です。ですから、外分点Qは比の小さいB側にできます

外分点は2パターンあるので注意しよう。

外分後の線分の長さ

外分でも線分の長さを求める問題が出題されます。ただ、外分点の作図は意外と間違えやすいので、演習をこなしておきましょう。

たとえば、線分ABを3:1に外分する点をQとするとき、線分AQ,BQの長さを線分ABで表わしてみましょう。

線分ABを外分点Qによって3:1に外分するので、AQ:BQ=3:1です。

図のように、線分AQ,BQに対応する比を書き込みます。

比を書き込むと分かりますが、線分ABに対応する比は、線分ABを3:1に外分するので3-1=2です。

外分比の利用の仕方
各線分の比

線分ABに対応する比が分かると、AB:AQ=2:3という比例式を得ることができます。この比例式において、内項の積と外項の積の関係から、ABを用いてAQを表すことができます。

線分AQを線分ABで表す

点 $Q$ は線分 $AB$ を $3:1$ に外分するので

\begin{align*} \quad AQ:BQ = 3:1 \end{align*}

よって

\begin{align*} \quad AB:AQ = 2:3 \end{align*}

内項の積と外項の積の関係から

\begin{align*} \quad 2 \cdot AQ = 3 \cdot AB \end{align*}

よって

\begin{align*} \quad AQ = \frac{3}{2} AB \end{align*}
外分比の利用の仕方
点Qが線分ABを3:1に外分

また、線分BQについてもAB:BQ=2:1という比例式を得ることができます。同じようにして、線分ABを用いて線分BQを表すことができます。

線分BQを線分ABで表す

点 $Q$ は線分 $AB$ を $3:1$ に外分するので

\begin{align*} \quad AQ:BQ = 3:1 \end{align*}

よって

\begin{align*} \quad AB:BQ = 2:1 \end{align*}

内項の積と外項の積の関係から

\begin{align*} \quad 2 \cdot BQ = 1 \cdot AB \end{align*}

よって

\begin{align*} \quad AQ = \frac{1}{2} AB \end{align*}
外分比の利用の仕方
点Qが線分ABを3:1に外分

外分についてまとめると以下のようになります。

外分比を利用した線分の長さ
外分のまとめ

内分比や外分比を使いこなそう

内分比外分比を使って線分の長さを求めるとき、そのたびごとに比例式を記述するのは面倒です。比の意味を知っていれば、作図だけで線分の長さを求めることができます

線分ABを2:1に内分する例で求めた線分AP,BPの長さについて考えてみましょう。

図から分かるように、線分ABを2:1に内分するということは、ABの長さを3として、APの長さを2BPの長さを1となるように分けるという意味です。

このとき、線分AB全体に対して、APの占める割合は2/3BPの占める割合は1/3になります。

この分数は、比例式から得た結果から分かるように、AP,BPをABで表したときの係数です。

内分比の利用の仕方
線分ABを2:1に内分する点P

線分AP,BPの長さ

点 $P$ は線分 $AB$ を $2:1$ に内分するので

\begin{align*} \quad AP:BP = 2:1 \end{align*}

よって

\begin{align*} &\quad AB:AP = 3:2 \\[ 7pt ] &\quad AB:BP = 3:1 \end{align*}

したがって

\begin{align*} &\quad AP = \frac{2}{3} AB \\[ 7pt ] &\quad BP = \frac{1}{3} AB \end{align*}

つまり、線分AB全体に占める割合が分かれば、線分ABの長さと割合との積によって線分の長さを表せるということです。

(各線分の長さ)=(各線分の全体に占める割合)×(全体の長さ)

毎回、比例式から線分の長さを求めるのは時間が掛かるので、慣れてきたら割合を使って一気に求めましょう

なお、線分と内分比の関係は、教科書や参考書などでは公式化されています。ただ、作図しながら解いていれば、自然と覚えてしまう式なので、あまり心配しなくても良いでしょう。

線分と内分比の関係

線分 $AB$ を $m:n$ に内分するとき

\begin{align*} \quad AP &= \frac{m}{m+n} AB \\[ 7pt ] BP &= \frac{n}{m+n} AB \end{align*}

次は、角と線分の比との関係についてです。作図しながら学習しましょう。

三角形の内角の二等分線と比の関係

角の二等分線と比の関係を理解するには、中学で学習した平行線と線分の比の関係を知っておく必要があります。

△ABCにおいて、∠Aの二等分線と辺BCとの交点をPとするとき、AB:AC=BP:PCが成り立ちます。

この比例式を導出してみましょう。

角の二等分線と比の関係
角の二等分線と比の関係

補助線を必要とするので、初見で導出できる人は少ないと思います。図形を扱う訓練になるので、ぜひチャレンジしてみて下さい。

平行線と角の関係を利用しよう

∠Aの二等分線APに平行で点Cを通る直線を引き、この直線と辺ABの延長線との交点をDとします。

平行線と角の関係を利用すると、以下のような関係を得ることができます。

平行線と角の関係を利用する

$\angle BAC$ の二等分線と $BC$ の交点を $P$ とする。

また、点 $C$ を通り、$AP$ に平行な直線と、直線 $AB$ との交点を $D$ とする。

$AP \parallel CD$ より

\begin{align*} &\quad \angle ADC = \angle BAP \ \text{(同位角)} \\[ 7pt ] &\quad \angle ACD = \angle CAP \ \text{(錯角)} \end{align*}

$\angle BAP = \angle CAP$ より

\begin{align*} \quad \angle ADC = \angle ACD \end{align*}

これより $\triangle ACD$ は二等辺三角形になるので

\begin{align*} \quad AC = AD \end{align*}
角の二等分線と比の関係の導出
角の二等分線に平行な補助線を引く

平行線と角の関係を利用して、AC=ADを導くことがポイントです。

平行線と線分の比の関係を利用しよう

また、平行線と線分の比の関係を利用すると、以下のような関係を得ることができます。

平行線と線分の比の関係を利用する

$AP \parallel CD$ より

\begin{align*} \quad BA : AD = BP : PC \end{align*}
角の二等分線と比の関係の導出
内角の二等分線に平行な補助線を引く

この比例式と、先ほど証明したAC=CDであることを利用すると、AB:AC=BP:PCを導出することができます。証明の例は以下のようになります。

角の二等分線と比の関係の導出の例
内角の二等分線と比の関係

以上のことから、三角形において内角の二等分線と比の関係から、対辺の内分比を求めることができるようになります。

角の二等分線と比の関係を内分比に絡めた問題は頻出なので、性質を上手に使いこなせるように演習しておきましょう。

三角形の外角の二等分線と比との関係

△ABCにおいて、∠Aの外角の二等分線と辺BCとの交点をQとするとき、AB:AC=BQ:QCという比例式が成り立ちます。

この比例式を導くときにも、補助線が必要になります。

外角の二等分線と比の関係
外角の二等分線と比の関係

平行線と角の関係を利用しよう

内角の二等分線と同じようにして補助線を書き込むことから始めます。

∠Aの外角の二等分線AQに平行で点Cを通る直線を引き、この直線と辺ABとの交点をDとします。なお、辺ABの延長線上にEを取ります。

平行線と角の関係を利用すると、以下のような関係を得ることができます。

平行線と角の関係を利用する

$\angle BAC$ の外角の二等分線と直線 $BC$ の交点を $Q$ とする。

この二等分線に平行で、点 $C$ を通る直線と辺 $AB$ との交点を $D$ とする。

また、直線 $AB$ 上に点 $B$ とは反対側にある点を $E$ とする。

$AQ \parallel CD$ より

\begin{align*} &\quad \angle ADC = \angle EAQ \ \text{(同位角)} \\[ 7pt ] &\quad \angle ACD = \angle CAQ \ \text{(錯角)} \end{align*}

$\angle EAQ = \angle CAQ$ より

\begin{align*} \quad \angle ADC = \angle ACD \end{align*}

これより $\triangle ACD$ は二等辺三角形になるので

\begin{align*} \quad AC = AD \end{align*}
外角の二等分線と比の関係の導出
外角の二等分線に平行な補助線を引く

内角のときと同じように、AC=ADを導くことがポイントです。

平行線と線分の比の関係を利用しよう

また、平行線と線分の比の関係を利用すると、以下のような関係を得ることができます。

平行線と線分の比の関係を利用する

$AQ \parallel CD$ より

\begin{align*} \quad AB : AD = QB : QC \end{align*}
外角の二等分線と比の関係の導出
外角の二等分線に平行な補助線を引く

この比例式と、先ほどのAC=ADであることを利用すると、AB:AC=BQ:QCを導出することができます。証明の例は以下のようになります。

外角の二等分線と比の関係の導出の例
外角の二等分線と比の関係

以上のことから、三角形において外角の二等分線と比の関係から、対辺の外分比を求めることができるようになります。

角の二等分線と比の学習内容をまとめると以下のようになります。図とセットにして、しっかり覚えましょう。

角の二等分線と比に関する用語
角の二等分線と比のまとめ

次は、角の二等分線と比の関係を利用して問題を解いてみましょう。