複素数と方程式|x,yに関する2次式の因数分解について
数学2
x,yに関する2次式の因数分解を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問
$k$ を定数とする $2$ 次式 $x^{\scriptsize{2}}+3xy+2y^{\scriptsize{2}}-3x-5y+k$ が $x \ , \ y$ の $1$ 次式の積に因数分解できるとき、$k$ の値を求めよ。
また、そのときの因数分解の結果を求めよ。
問の解答・解説
例題と同じ要領で進めていきます。まず、xについての2次方程式を導きます。このとき、降べきの順に整理しておきましょう。
問の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\text{与式から} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+3xy+2y^{\scriptsize{2}}-3x-5y+k=0 \\[ 7pt ]
&\text{とおいた方程式を $x$ についての $2$ 次方程式} \\[ 5pt ]
&\text{と考えて} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+\left(3y-3 \right)x+ \left(2y^{\scriptsize{2}}-5y+k \right)=0 \quad \cdots \text{①}
\end{align*}
xについての2次方程式と考えて、この方程式の解を求めます。そうすれば、方程式の左辺、すなわち与式を因数分解できます。
ここで、解の公式で解を求める前に、2次方程式の判別式を求めておきます。
問の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+\left(3y-3 \right)x+ \left(2y^{\scriptsize{2}}-5y+k \right)=0 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\text{ここで、①の判別式を $D_{1}$ とすると、} \\[ 5pt ]
&\quad D_{1}=\left(3y-3 \right)^{\scriptsize{2}}-4 \cdot 1 \cdot \left(2y^{\scriptsize{2}}-5y+k \right) \\[ 7pt ]
&\text{これを整理すると} \\[ 5pt ]
&\quad D_{1}=y^{\scriptsize{2}}+2y+9-4k
\end{align*}
判別式が分かったので、①式の解を求めて与式を因数分解します。
問の解答例 3⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+\left(3y-3 \right)x+ \left(2y^{\scriptsize{2}}-5y+k \right)=0 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad D_{1}=y^{\scriptsize{2}}+2y+9-4k \\[ 7pt ]
&\text{よって、①の解は} \\[ 5pt ]
&\quad x=\frac{-\left(3y-3 \right) \pm \sqrt{D_{1}}}{2} \\[ 7pt ]
&\text{であるので、与式は} \\[ 5pt ]
&\quad \text{(与式)} \ = \left\{ x- \frac{-\left(3y-3 \right) – \sqrt{D_{1}}}{2} \right\} \left\{ x- \frac{-\left(3y-3 \right) + \sqrt{D_{1}}}{2} \right\} \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ]
&\text{と変形できる。}
\end{align*}
与式を因数分解できましたが、1次式の積であることが条件です。そのために、解が1次式である必要があります。根号の中の判別式に注目して条件を導きます。
根号の中の判別式は、yについての2次式です。これが完全平方式となるとき、解は1次式となります。このことについて答案に記述しておきます。また、yについての2次方程式の判別式も求めておきます。
問の解答例 4⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+\left(3y-3 \right)x+ \left(2y^{\scriptsize{2}}-5y+k \right)=0 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad D_{1}=y^{\scriptsize{2}}+2y+9-4k \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \text{(与式)} \ = \left\{ x- \frac{-\left(3y-3 \right) – \sqrt{D_{1}}}{2} \right\} \left\{ x- \frac{-\left(3y-3 \right) + \sqrt{D_{1}}}{2} \right\} \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\text{与式が $x$ と $y$ の $1$ 次式の積に分解されるための} \\[ 5pt ]
&\text{必要十分条件は、①の解が $y$ の $1$ 次式となること、} \\[ 5pt ]
&\text{すなわち $D_{1}$ が $y$ の完全平方式となることである。} \\[ 5pt ]
&\text{このとき、$D_{1}=0$ とおいた $y$ の $2$ 次方程式} \\[ 5pt ]
&\quad y^{\scriptsize{2}}+2y+9-4k=0 \\[ 7pt ]
&\text{の判別式を $D_{2}$ とすると} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{D_{2}}{4} = 1^{\scriptsize{2}}-1 \cdot \left(9-4k \right) \\[ 7pt ]
&\text{これを整理すると} \\[ 5pt ]
&\quad \frac{D_{2}}{4} = 4k-8
\end{align*}
yの2次式が完全平方式となるのは、yについての2次方程式が重解をもつときです。言い換えると、判別式の値が0となるときです。
このことを利用して、定数kについての方程式を導き、定数kの値を求めます。
問の解答例 5⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \frac{D_{2}}{4} = 4k-8 \\[ 7pt ]
&\text{$D_{2}=0$ となればよいので} \\[ 5pt ]
&\quad 4k-8=0 \\[ 7pt ]
&\text{これを解くと} \\[ 5pt ]
&\quad k=2
\end{align*}
例題ではここで終わりでしたが、問では因数分解の結果を示す必要があります。
求めた定数kの値を用いて、①式の解を求めます。これと合わせて、根号の中の判別式も確認しておきましょう。
問の解答例 6⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad D_{1}=y^{\scriptsize{2}}+2y+9-4k \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \text{(与式)} \ = \left\{ x- \frac{-\left(3y-3 \right) – \sqrt{D_{1}}}{2} \right\} \left\{ x- \frac{-\left(3y-3 \right) + \sqrt{D_{1}}}{2} \right\} \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad k=2 \\[ 7pt ]
&\text{また、このとき $D_{1}$ は} \\[ 5pt ]
&\quad D_{1}=y^{\scriptsize{2}}+2y+9-4 \cdot 2 \\[ 7pt ]
&\text{より} \\[ 5pt ]
&\quad D_{1}=y^{\scriptsize{2}}+2y+1 \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad D_{1}=\left(y+1 \right)^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ]
&\text{したがって、①の解は} \\[ 5pt ]
&\quad x=\frac{-\left(3y-3 \right) \pm \sqrt{ \left(y+1 \right)^{\scriptsize{2}} }}{2} \\[ 7pt ]
&\text{より} \\[ 5pt ]
&\quad x=\frac{-\left(3y-3 \right) \pm \left(y+1 \right) }{2} \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad x=-y+2 \ , \ -2y+1
\end{align*}
yの2次式D1が完全平方式になったので、根号が無事に消えました。その結果、①式の解がちゃんと1次式になっています。
①式の解が分かったので、因数分解の結果を示します。
問の解答例 7⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \text{(与式)} \ = \left\{ x- \frac{-\left(3y-3 \right) – \sqrt{D_{1}}}{2} \right\} \left\{ x- \frac{-\left(3y-3 \right) + \sqrt{D_{1}}}{2} \right\} \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad x=-y+2 \ , \ -2y+1 \\[ 7pt ]
&\text{これより、②は} \\[ 5pt ]
&\quad \text{(与式)} \ = \left\{ x- \left(-y+2 \right) \right\} \left\{ x- \left(-2y+1 \right) \right\} \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad \text{(与式)} \ = \left(x+y-2 \right) \left(x+2y-1 \right)
\end{align*}
最後の最後で符号ミスをしないように気を付けましょう。多項式を代入するときは、つねにカッコでくくっておくと符号ミスを防げます。
問の別解例
例題と同じ要領で解答例を記述しましたが、恒等式の考えを用いて解くこともできます。
与式をよく観察すると、与式の一部(別解例①の下線部分)が因数分解できることに気付きます。
問の別解例 1⃣
\begin{align*}
&\quad \underline{x^{\scriptsize{2}}+3xy+2y^{\scriptsize{2}} }-3x-5y+k \\[ 7pt ]
&\text{与式が $1$ 次式の積に因数分解されるとき、} \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+3xy+2y^{\scriptsize{2}}= \left(x+y \right) \left(x+2y \right) \\[ 7pt ]
&\text{に着目する。}
\end{align*}
このような1次式の積が出てくるのは、与式の因数がその一部にこれらを含むからです。このことを利用します。
問の別解例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \underline{x^{\scriptsize{2}}+3xy+2y^{\scriptsize{2}} }-3x-5y+k \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+3xy+2y^{\scriptsize{2}}= \left(x+y \right) \left(x+2y \right) \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\text{これより、与式は} \\[ 5pt ]
&\quad \text{(与式)} \ = \left(x+y+a \right) \left(x+2y+b \right) \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\text{と因数分解される。}
\end{align*}
①式の右辺を展開します。
問の別解例 3⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \text{(与式)} \ = \left(x+y+a \right) \left(x+2y+b \right) \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\text{①の右辺を展開すると} \\[ 5pt ]
&\qquad \left(x+y+a \right) \left(x+2y+b \right) \\[ 7pt ]
&\quad = \left(x+y \right) \left(x+2y \right)+b \left(x+y \right) +a \left(x+2y \right) +ab \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\qquad \left(x+y+a \right) \left(x+2y+b \right) \\[ 7pt ]
&\quad = x^{\scriptsize{2}}+3xy+2y^{\scriptsize{2}}+\left(a+b \right)x +\left(2a+b \right)y +ab \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad ( \ \text{与式} \ ) \\[ 7pt ]
&\quad = x^{\scriptsize{2}}+3xy+2y^{\scriptsize{2}}+\left(a+b \right)x +\left(2a+b \right)y +ab \quad \cdots \text{②}
\end{align*}
②式において、恒等式の考えを利用して、対応する項の係数を比較します。
問の別解例 4⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \text{(与式)} \ = \left(x+y+a \right) \left(x+2y+b \right) \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad ( \ \text{与式} \ ) \\[ 7pt ]
&\quad = x^{\scriptsize{2}}+3xy+2y^{\scriptsize{2}}+\left(a+b \right)x +\left(2a+b \right)y +ab \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ]
&\text{②より、与式の各項と係数を比較すると} \\[ 5pt ]
&\quad a+b=-3 \quad \cdots \text{③} \\[ 7pt ]
&\quad 2a+b=-5 \quad \cdots \text{④} \\[ 7pt ]
&\quad ab=k \quad \cdots \text{⑤} \\[ 7pt ]
&\text{③,④より} \\[ 5pt ]
&\quad a=-2 \ , \ b=-1 \\[ 7pt ]
&\text{これと⑤より} \\[ 5pt ]
&\quad k=2 \\[ 7pt ]
&\text{よって、与式は①より} \\[ 5pt ]
&\quad \text{(与式)} \ = \left(x+y-2 \right) \left(x+2y-1 \right)
\end{align*}
この解法で解くには、①式を作れるかどうかに掛かっています。
恒等式の考え方を利用した解法の方が、いくらか取り組みやすいかもしれません。判別式を利用する解法に比べて、あまり難しいことを考えなくて済みます。
それに対して、判別式を利用する解法では、2次式から2次方程式を作ったり、複数の判別式が出てきたりするので、慣れるまでは理解に苦しむかもしれません。
わりと難しい部類に入る問題ですが、何度もやり直して理解を深めましょう。
Recommended books
チャート式と言えば有名ですが、学校で配布されるのは、ほとんどが黄色か青色のどちらかです。数学を苦手にしている人にとっては、扱い辛く感じるかもしれません。ページ数も多いので尚更です。
オススメ その1
日常学習では辞書的に利用できる参考書があると助かります。有名なのは、チャート式でしょう。
チャート式は、色別にレベル分けされています。学校で配布されるのは、青や黄のチャート式が多いと思います。ただし、青や黄の内容が高度だと感じるのであれば、いっそのこと白のチャート式の方が良いかもしれません。
『チャート式基礎と演習数学1+A 増補改訂版』や『チャート式基礎と演習数学2+B 増補改訂版』では、より基礎的な内容が扱われています。教科書の内容を補完してくれるので、予習や復習を進めやすくなるでしょう。
基礎固めには白チャート。数学の苦手な生徒でも,安心して学習を進められます。教科書と併用しながらの学習や、基礎固めには最適の参考書。中堅私立大学の受験対策や、大学入学共通テストの準備にも役立つ一冊。本冊巻末に、大学入学共通テストの対策ができる「実践編」を追加。
オススメ その2
白チャートと同じように基礎的な内容を扱っているのが、スカイチャートと言われる『チャート式 絶対に身につけたい数学1+Aの基本』や『チャート式 絶対に身につけたい数学2+Bの基本』です。速習型の参考書なので、たとえば、受験勉強を何から始めれば良いのか分からない人向けの教材です。
白チャート『チャート式基礎と演習数学1+A 増補改訂版』は、560ページ(別冊解答編368ページ)あります。青チャートだと640ページ(別冊解答編404ページ)なので、白チャートも少ない方です。これらに対して、スカイチャート『チャート式 絶対に身につけたい数学1+Aの基本』は160ページ(別冊解答編88ページ)なので、かなりコンパクトにまとめられています。
使い方としては、予習や復習の際に類題をこなしたり、定期考査前の確認や仕上げに使ったりできます。また、受験勉強の準備にあたって、自分の基礎学力を短期間で確認することができます。
対象 … 教科書の内容を効率的に総復習したい人や、基礎知識を総整理したい人
特長 … 絶対に身につけたい基礎知識が詰まった良問を精選しました。「極意」では,問題を解くとき、効果的にアプローチするための手順や考え方をコンパクトにまとめました。例題と同等のレベルである練習問題を解くことで,例題の解法や基礎知識の理解度を確認できます。
参考書は紹介した教材だけではありません。大事なことは、自分に合った教材を徹底的に活用することです。どの教材を選ぶにしても、自分の目で中身を確認し、納得してから購入することが大切です。
さいごにもう一度まとめ
- 2次式に複数種類の文字が含まれる場合、特定の文字に注目しよう。
- 2次式を因数分解するとき、2次方程式を作って解を求めることで、2次式の因数が分かる。
- 2次方程式の解が1次式となるには、根号の中の2次式が完全平方式となるとき。
- 2次式が完全平方式となるのは、2次方程式が重解をもつ、すなわち判別式の値が0となるとき。
- 多項式を代入するときは、カッコでくくった状態で代入しよう。