式と証明|二項定理について

数学2

数学2 式と証明

二項定理を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

問1

次の式を展開せよ。(1)(a+b)5(2)(3a2b)4

問1は、4次式以上の展開なので、二項定理を利用する問題です。もちろん、2次式や3次式の展開公式を利用することはできます。

しかし、分配法則による展開や同類項の整理なども必要なので、二項定理による展開よりも大変です。式を覚えるまでに時間が掛るかもしれませんが、二項定理を積極的に利用しましょう。

問1(1)の解答・解説

問1(1)

次の式を展開せよ。(a+b)5

問1(1)は5次式の展開です。二項定理を利用して与式を展開します。

二項定理の式を与式のそば(たとえば与式の上)に記述し、対応関係を把握しましょう。見ながらでも良いですが、自分の手を動かして書くことが早く覚えるコツです。

与式と二項定理の式を見比べると、n=5のときです。また、二項係数は以下のようになります。

問1(1)の解答例 1⃣

二項係数は、r=0 , 1 , 2 , 3 , 4 , 5 のときで5C0 , 5C1 , 5C2 , 5C3 , 5C4 , 5C5となる。

これらが展開後の式の係数になります。ここでは、二項係数を書き出しましたが、係数を求める問題以外でわざわざ書き出す必要はありません。

二項定理の式に当てはめると以下のようになります。

問1(1)の解答例 2⃣

(a+b)n=nC0 an+nC1 an1 b+nC2 an2 b2++nCr anr br++nCn bn(1)(a+b)5=5C0 a5+5C1 a4 b+5C2 a3 b2+5C3 a2 b3+5C4 a1 b4+5C5 b5

二項定理の式を見ながら、対応箇所(nとrの値)を置き換えていきます。公式は途中の項が省略されていますが、式通りに覚えることを優先してそのまま書きましょう。

二項定理を使うときは以下をチェックしよう

5次式 (a+b)5 を二項定理を使って展開したとき

  • 二項式の前の項aの指数は、1つずつ減って5から0になっているか
  • 二項式の後ろの項bの指数は、1つずつ増えて0から5になっているか
  • Cの左下の数字は、展開前の指数5になっているか
  • Cの右下の数字は、bの指数と対応しているか
  • 各項の指数は、合わせて5になっているか

対応箇所が全て置き換わったので、あとは各項を整理していきます。公式を使う利点は、機械的に処理できることなので、その利点を最大限に活用しましょう。

問1(1)の解答例 3⃣

(a+b)n=nC0 an+nC1 an1 b+nC2 an2 b2++nCr anr br++nCn bn(a+b)5=5C0 a5+5C1 a4 b+5C2 a3 b2+5C3 a2 b3+5C4 a1 b4+5C5 b5=1a5+5a4 b+10a3 b2+10a2 b3+5a1 b4+1b5 (a+b)5=a5+5a4 b+10a3 b2+10a2 b3+5a1 b4+b5

問1(1)のように、二項式a+bの各項がともに1次の項であれば、展開後の各項の次数はどれも5次になります(5次式の展開の場合)。このことを知っていれば、各項の指数を間違えることも減るでしょう。

また、各項の係数については、パスカルの三角形を利用して求めることもできます。

問1(2)の解答・解説

問1(2)

次の式を展開せよ。(3a2b)4

問1(2)は、4次式を展開する問題です。ここでも二項定理を利用しましょう。(1)と異なるのは、二項式の各項の係数が1ではないことです。

展開前の各項の係数が1でない場合、二項係数は組合せの総数だけではないことに注意しましょう。このような場合には、一般項を使って係数を調べると良いでしょう。

与式の係数

二項定理の一般項nCr anr brにおいて、a を 3a に、b を 2b に置き換えれば良い。n=4 のとき、与式の一般項は4Cr (3a)4r(2b)r=4Cr34r(2)ra4rbrと表せる。よって、係数は4Cr34r(2)r

係数には、組合せの総数以外も含まれていることが分かります。

また、一般項を利用するとき、指数法則の知識が必要です。指数法則は、どの単元でもよく使われる法則なので、しっかり使えるようにしておきましょう。

公式との対応関係を把握してから与式を展開します。

問1(2)の解答例 1⃣

(a+b)n=nC0 an+nC1 an1 b+nC2 an2 b2++nCr anr br++nCn bn(3a2b)4=4C0 (3a)4+4C1 (3a)3(2b)+4C2 (3a)2(2b)2+4C3 (3a)(2b)3+4C4 (2b)4

対応箇所を全て置き換えたら、置き換えにミスがないか確認しましょう。前の項aの指数だけを確認、後ろの項のbの指数だけを確認……というように1つずつ調べましょう。

無事に置き換えできていれば、各項をそれぞれ整理します。

問1(2)の解答例 2⃣

(a+b)n=nC0 an+nC1 an1 b+nC2 an2 b2++nCr anr br++nCn bn(3a2b)4=4C0 (3a)4+4C1 (3a)3(2b)+4C2 (3a)2(2b)2+4C3 (3a)(2b)3+4C4 (2b)4=181a4+427a3(2b)+69a24b2+43a(8b3)+116b4=81a4216a3b+216a2b296ab3+16b4 (3a2b)4=81a4216a3b+216a2b296ab3+16b4

一遍に計算する必要はありません。たとえば、累乗の計算の後に、係数を整理するというように、ミスの出ない計算をしましょう。

また、よく間違えるのが係数の扱いです。

二項式の係数が1でなければ、その係数も2乗したり、3乗したりしなければなりません。そうなると、展開後の計算は意外と多くなります。計算過程をしっかり記述しないと、計算ミスしやすいので注意しましょう。

次の問題を解いてみましょう。

問2の解答・解説

問2

次の展開式における[ ]内に示した項の係数を求めよ。(2x3y)7[ x4y3 ]

問2は、展開後の式において、特定の項の係数を求める問題です。このような問題では、一般項を利用します。

問2の解答例

二項定理の一般項nCr anr brにおいて、a を 2x に、b を 3y に置き換えれば良い。n=7 のとき、与式の一般項は7Cr (2x)7r(3y)rと表せる。

この一般項を、係数が分かるように整理します。このとき、指数法則を利用します。

問2の解答例 2⃣

7Cr (2x)7r(3y)rこれを整理すると7Cr (2x)7r(3y)r=7Cr27r(3)rx7ryrよって、一般項の係数は7Cr27r(3)r

展開前の各項の係数が1でなければ、公式通りの二項係数ではなく、展開前の各項の係数も含まれます。また、係数を求めるとき、一般項をきちんと整理しておかないと、計算ミスが多くなります。

一般項から指定した項の係数を求めます。ここでは項が指定されているので、rの値を決めなくてはなりません。そこで、文字の指数を見比べて、rの値を求めます。

問2の解答例 3⃣

7Cr27r(3)rまたx7r yrが x4y3 の項となるのはr=3のときである。よって、求める係数は7C324(3)3=3516(27)=15120

問2は記述形式の試験でよく出題されます。二項式の係数が1以外の場合、展開後の係数に注意しましょう。

計算ミスしやすいので、演習をこなして慣れておきましょう。

Recommended books

計算力は重要な要素となります。試験では考える時間を多く取るために、いかに計算を手早く行うかが重要です。

計算力の有無は、数学2・Bや数学3では顕著になります。計算に時間がかかりすぎては解けるものも解けません。後悔しないためにも日頃からしっかり鍛えておきましょう。

これから紹介する教材で気になるものがあれば、ぜひ一読してみて下さい。気に入ったら最後まで徹底的にこなしましょう。

オススメその1『合格る計算数学1・A・2・B

オススメその2『鉄緑会 基礎力完成 数学Ⅰ・A+Ⅱ・B

さいごにもう一度まとめ

  • 二項定理の式は、組合せの総数を利用して表される。
  • 定理の式との対応関係を正しく把握しよう。
  • 係数の扱いに気をつけよう。
  • 4次式以上の展開では二項定理を利用しよう。