式と証明|二項定理について

二項定理を扱った問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問1
問1は、4次式以上の展開なので、二項定理を利用する問題です。もちろん、2次式や3次式の展開公式を利用することはできます。
しかし、分配法則による展開や同類項の整理なども必要なので、二項定理による展開よりも大変です。式を覚えるまでに時間が掛るかもしれませんが、二項定理を積極的に利用しましょう。
問1(1)の解答・解説
問1(1)
問1(1)は5次式の展開です。二項定理を利用して与式を展開します。
二項定理の式を与式のそば(たとえば与式の上)に記述し、対応関係を把握しましょう。見ながらでも良いですが、自分の手を動かして書くことが早く覚えるコツです。
与式と二項定理の式を見比べると、n=5のときです。また、二項係数は以下のようになります。
問1(1)の解答例 1⃣
これらが展開後の式の係数になります。ここでは、二項係数を書き出しましたが、係数を求める問題以外でわざわざ書き出す必要はありません。
二項定理の式に当てはめると以下のようになります。
問1(1)の解答例 2⃣
二項定理の式を見ながら、対応箇所(nとrの値)を置き換えていきます。公式は途中の項が省略されていますが、式通りに覚えることを優先してそのまま書きましょう。
二項定理を使うときは以下をチェックしよう
5次式 (a+b)5 を二項定理を使って展開したとき
- 二項式の前の項aの指数は、1つずつ減って5から0になっているか
- 二項式の後ろの項bの指数は、1つずつ増えて0から5になっているか
- Cの左下の数字は、展開前の指数5になっているか
- Cの右下の数字は、bの指数と対応しているか
- 各項の指数は、合わせて5になっているか
対応箇所が全て置き換わったので、あとは各項を整理していきます。公式を使う利点は、機械的に処理できることなので、その利点を最大限に活用しましょう。
問1(1)の解答例 3⃣
問1(1)のように、二項式a+bの各項がともに1次の項であれば、展開後の各項の次数はどれも5次になります(5次式の展開の場合)。このことを知っていれば、各項の指数を間違えることも減るでしょう。
また、各項の係数については、パスカルの三角形を利用して求めることもできます。
問1(2)の解答・解説
問1(2)
問1(2)は、4次式を展開する問題です。ここでも二項定理を利用しましょう。(1)と異なるのは、二項式の各項の係数が1ではないことです。
展開前の各項の係数が1でない場合、二項係数は組合せの総数だけではないことに注意しましょう。このような場合には、一般項を使って係数を調べると良いでしょう。
与式の係数
係数には、組合せの総数以外も含まれていることが分かります。
また、一般項を利用するとき、指数法則の知識が必要です。指数法則は、どの単元でもよく使われる法則なので、しっかり使えるようにしておきましょう。
公式との対応関係を把握してから与式を展開します。
問1(2)の解答例 1⃣
対応箇所を全て置き換えたら、置き換えにミスがないか確認しましょう。前の項aの指数だけを確認、後ろの項のbの指数だけを確認……というように1つずつ調べましょう。
無事に置き換えできていれば、各項をそれぞれ整理します。
問1(2)の解答例 2⃣
一遍に計算する必要はありません。たとえば、累乗の計算の後に、係数を整理するというように、ミスの出ない計算をしましょう。
また、よく間違えるのが係数の扱いです。
二項式の係数が1でなければ、その係数も2乗したり、3乗したりしなければなりません。そうなると、展開後の計算は意外と多くなります。計算過程をしっかり記述しないと、計算ミスしやすいので注意しましょう。
次の問題を解いてみましょう。
問2の解答・解説
問2
問2は、展開後の式において、特定の項の係数を求める問題です。このような問題では、一般項を利用します。
問2の解答例
この一般項を、係数が分かるように整理します。このとき、指数法則を利用します。
問2の解答例 2⃣
展開前の各項の係数が1でなければ、公式通りの二項係数ではなく、展開前の各項の係数も含まれます。また、係数を求めるとき、一般項をきちんと整理しておかないと、計算ミスが多くなります。
一般項から指定した項の係数を求めます。ここでは項が指定されているので、rの値を決めなくてはなりません。そこで、文字の指数を見比べて、rの値を求めます。
問2の解答例 3⃣
問2は記述形式の試験でよく出題されます。二項式の係数が1以外の場合、展開後の係数に注意しましょう。
計算ミスしやすいので、演習をこなして慣れておきましょう。
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さいごにもう一度まとめ
- 二項定理の式は、組合せの総数を利用して表される。
- 定理の式との対応関係を正しく把握しよう。
- 係数の扱いに気をつけよう。
- 4次式以上の展開では二項定理を利用しよう。