図形と方程式|折れ線の長さの最小について
今回は、折れ線の長さの最小について学習しましょう。折れ線のままで考えると、長さの最小値を求めることが難しくなります。
図を見ながら考えると、視覚的に理解できるでしょう。
折れ線の長さ
直線上にない2点A,Bがあります。この2点は直線に対して同じ側にあります。
たとえば、点Aが直線の上側にあれば、点Bも同じように直線の上側にあります。この2点A,Bと直線上の点Pを結びます。
2点A,Bは直線上にない点です。ですから、線分APと線分PBはつながってはいますが、まっすぐではなく、折れ曲がっています。
このような線分APと線分PBの長さの和、すなわち折れ線の長さを考えます。
折れ線の長さ=AP+PB
このような折れ線について、その長さが最小になるとき、点Pは直線上のどこにあれば良いでしょうか。
線対称な点をつくる
折れ線のままで点Pの位置を考えるのはとても難しいです。折れ線になるのは、2点A,Bが直線に関して同じ側にあるからです。
これを解決するために、線対称な図形の性質を利用します。線対称な図形の性質を利用すると、2点のうち一方を、直線に関して他方とは反対側にとることができます。
直線ℓを対称の軸として、点Aと線対称な点を作ります。点Aの代わりに点Bでも構いません。図では、点Aと直線ℓに関して対称な点A’を作っています。
2点A,A’は対応する点なので、直線ℓまでの距離は等しくなります。また、線分AA’は直線ℓに垂直です。
ですから、対称の軸である直線ℓは、線分AA’の垂直二等分線となります。
線分AA’,AP,A’Pによって三角形ができており、これが直線ℓによって二等分されています。
二等分されてできた2つの三角形は、直角三角形であり、合同な図形です。ですから、2つの線分AP,A’Pの長さは等しくなります。
2つの線分AP,A’Pの関係から、AP+PBはA’P+PBに等しいことが分かります。これは、点Pが直線ℓ上のどこにあっても成り立つ関係です。
点Aと直線ℓに関して線対称な点A’をとって、AP=A’Pを利用する。
線分で結ぶ
線対称な点を作れたらあとは簡単です。2点A’,B間の最短経路は、2点A’、Bを結んだ線分A’Bです。このとき、折れ線の長さが最小となります。
作図では点A’と点Bをまっすぐな線で結ぶだけです。
自分で点Pの位置を決める必要はありません。線分A’Bを引けば、点Pの位置が勝手に決まるからです。点Pの位置を自分で頑張って探す必要はありません。
直線ℓと線分A’Bとの交点がP
折れ線の長さの最小を求めてみよう
折れ線の長さの最小となる点Pの座標を求めてみましょう。
例題
$A(2 \ , \ 5) \ , \ B(9 \ , \ 0)$ とするとき、直線 $x+y=5$ 上に点 $P$ をとり、$AP+PB$ を最小にする点 $P$ の座標を求めよ。
例題の解答・解説
作図は以下の通りです。与えられた情報を整理するために、作図することを心掛けましょう。
2点A,Bが直線に関して同じ側にあることを確認しましょう。
AP+BPは折れ線の長さです。この折れ線の長さを最小にするときを考えます。
まず、直線x+y=5を対称の軸として、点Aと線対称な点A’を作り、その座標を求めます。
線対称な点の座標の求め方はすでに学習済みです。2直線の垂直条件や中点の座標を利用します。
例題の解答例 1⃣
与えられた直線
\begin{align*} \quad x+y=5 \quad \cdots \text{①} \end{align*}をℓとする。
また、直線ℓに関して $A$ と対称な点を
\begin{align*} \quad A'(a \ , \ b) \end{align*}とする。
ここで直線 $AA’$ は $x$ 軸に垂直ではないので
\begin{align*} \quad a \neq 2 \end{align*}$AA’ \perp$ ℓであるので
\begin{align*} \quad \frac{b-5}{a-2} \cdot \left(-1 \right)=-1 \end{align*}整理すると
\begin{align*} \quad a-b=-3 \quad \cdots \text{②} \end{align*}線分 $AA’$ の中点が直線ℓ上にあるので
\begin{align*} \quad \frac{a+2}{2}+\frac{b+5}{2}=5 \end{align*}整理すると
\begin{align*} \quad a+b=3 \quad \cdots \text{③} \end{align*}②,③を解くと
\begin{align*} \quad a=0 \ , \ b=3 \end{align*}よって、点 $A’$ の座標は
\begin{align*} \quad A’ \ (0 \ , \ 3 ) \end{align*}解答例では、直線AA’がx軸に垂直でないことを確認しています。
傾きの分母が0となる可能性があるからです。答案では直線AA’がx軸と垂直でないことに言及しておきましょう。
確認のやり方は、点Aと点A’のx座標が同じかどうかを確認するだけです。2点A,A’のx座標が同じであれば、傾きの分母は0となるからです。
点A’を図示すると以下の通りです。作図が上手であれば、点A’の座標を推測することができます。
直線ℓに関して点Aと線対称な点A’ができたので、点Pの位置を決めます。
点A’から点Pを経由して点Bへたどる経路を考えると、この経路が最短となるのは、3点A’,P,Bが同一直線上にあるときです。
つまり、点Pが線分A’B上にあれば良いことが分かります。このとき、折れ線の長さが最小となります。
例題の解答例 2⃣
\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad A’ \ (0 \ , \ 3 ) \end{align*}このとき
\begin{align*} \quad AP+PB=A’P+PB \geqq A’B \end{align*}よって、$3$ 点 $A’ \ , \ P \ , \ B$ が同じ直線上にあるとき、$AP+PB$ は最小になる。
折れ線の長さは、線分A’Bの長さよりも短くなることはないので注意しましょう。
3点A’,P,Bが同じ直線上にあるときの図は以下の通りです。
点Pが線分A’B上にあるとき、点Pは線分A’Bと直線ℓの交点となる位置にあります。
直線A’Bの方程式を求め、交点の座標を求めます。
例題の解答例 3⃣
\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x+y=5 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad AP+PB=A’P+PB \geqq A’B \\[ 7pt ] &\quad \vdots \end{align*}直線 $A’B$ の方程式は、$2$ 点 $A'(0 \ , \ 3) \ , \ B(9 \ , \ 0)$ を通るので
\begin{align*} \quad \frac{x}{9}+\frac{y}{3}=1 \end{align*}よって
\begin{align*} \quad x+3y=9 \quad \cdots \text{④} \end{align*}直線 $A’B$ と直線ℓの交点を $P_{0}$ とすると、その座標は①,④を解いて
\begin{align*} \quad x=3 \ , \ y=2 \end{align*}よって
\begin{align*} \quad P_{0} \ (3 \ , \ 2) \end{align*}したがって、$AP+PB$ を最小にする点 $P$ の座標は $(3 \ , \ 2)$
直線A’Bの方程式を求めるときは、x切片とy切片を利用しましょう。
x,y切片を用いた直線の方程式
\begin{align*} \quad a \neq 0 \ , \ b \neq 0 \end{align*}のとき、$2$ 点
\begin{align*} \quad (a \ , \ 0) \ , \ (0 \ , \ b) \end{align*}を通る直線の方程式は
\begin{align*} \quad \frac{x}{a}+\frac{y}{b}=1 \end{align*}解法の手順をまとめてみましょう。
折れ線の長さの最小を求める手順
- 点Aと直線ℓに関して線対称な点A’をとり、点A’と点Bを線分で結んだ図を描いておく。
- 点A’の座標を求める。
- 直線A’Bの方程式を求める。
- 直線A’Bと直線ℓの交点(点P)の座標を求める。
結論が分かっているので、最初にきちんと作図しておきましょう。図を見ながら、点の座標や直線の方程式を求めていきます。求めた座標や方程式を図に追記しておくと良いでしょう。
次は、折れ線の長さの最小を扱った問題を実際に解いてみましょう。