場合の数|円順列、重複順列について
円順列や重複順列を扱った問題を解いてみよう
次の問題を考えてみましょう。
問1の解答・解説
問1
男子 $4$ 人、女子 $3$ 人の $7$ 人が手をつないで輪を作るとき
$(i) \quad$ 何通りの輪ができるか。
$(ii) \quad$ 女子 $3$ 人が隣り合うような並び方は何通りあるか。
問1(i)は「輪を作る」とあるので、円形に並べる円順列の総数を求める問題です。
7人の円順列は、特定の1人に対する残り6人の順列と考えることができます。
問1(i)の解答例
$7$ 人を円形に並べる円順列の総数は、特定の $1$ 人に対する残り $6$ 人の順列の総数に等しいので、
\begin{align*} \quad (7-1)! = 6! \end{align*}よって
\begin{align*} \quad 6! &= 6 \cdot 5 \cdot 4 \cdot 3 \cdot 2 \cdot 1 \\[ 7pt ] &= 720 \ \text{(通り)} \end{align*}公式にそのまま当てはめるだけでなく、どのように捉えるのかも確認しながら立式しましょう。
円順列の総数は、特定の1人(1つ)に対する残りの順列の総数に等しい。
次の問1(ii)も円順列の総数を求める問題ですが、条件があります。「女子3人が隣り合う」という条件があるので、女子3人を1人と見なして円順列の総数を考えます。
女子3人を1人として扱うと、男女5人の円順列になります。このときの円順列の総数は(5-1)!=4!通りあります。ただし、これで終わりではないので注意しましょう。
円順列の1つの並び方について、女子3人の並び方を変えたとき、異なる並び方になります。ですから、女子3人の並び方も考える必要があります。
円順列の1つの並び方のそれぞれについて、女子3人の並び方は3!通りずつあるので、積の法則を利用して立式します。
問1(ii)の解答例
女子 $3$ 人が隣り合うので、女子 $3$ 人を $1$ 人と見なしたときの円順列の総数は、
\begin{align*} \quad (5-1)! = 4! \ \text{(通り)} \end{align*}この並び方のそれぞれについて、女子 $3$ 人の並び方が $3!$ 通りずつある。
求める円順列の総数は
\begin{align*} \quad 4! \times 3! &= \left(4 \cdot 3 \cdot 2 \cdot 1 \right) \times \left(3 \cdot 2 \cdot 1 \right) \\[ 7pt ] &= 144 \ \text{(通り)} \end{align*}隣り合う人の並び方を忘れがちなので気を付けましょう。
隣り合うときはひとまとめにして扱う。ただし、ひとまとめにした部分の扱いも忘れない。
問1のポイントと解答例をまとめると以下のようになります
問2の解答・解説
問2
$1$ ~ $5$ までの $5$ つの数を使って $3$ 桁の整数を作る。ただし、同じ数字を繰り返し使っても良い。
$(i) \quad$ 全部でいくつの整数ができるか。
$(ii) \quad$ 偶数はいくつできるか。
問2(i)は「同じ数字を繰り返し使っても良い(=重複を許す)」とあるので、重複順列の総数を求める問題です。
各位の数の選び方は以下のようになります。
各位の数の選び方
- 百の位 … 5つの数から選ぶので5通り
- 十の位 … 百の位の数のそれぞれについて、5つの数から選ぶので5通りずつ
- 一の位 … 十の位の数のそれぞれについて、5つの数から選ぶので5通りずつ
積の法則を利用して立式します。なお、公式ではn=5,r=3のときに相当します。
問2(i)の解答例
百の位の数から順に使える数を考えていく。
百の位に使える数は $5$ 通り。
十の位に使える数は、百の位の数のそれぞれについて $5$ 通りずつ。
一の位に使える数は、十の位の数のそれぞれについて $5$ 通りずつ。
これより、できる整数は
\begin{align*} \quad 5 \times 5 \times 5 = 125 \ \text{(個)} \end{align*}次の問2(ii)も重複順列の総数を求める問題ですが、条件があります。できた整数が偶数でなければなりません。
整数が偶数であるためには、一の位の数が偶数でなければなりません。各位の数の選び方は以下のようになります。
各位の数の選び方
- 百の位 … 5つの数から選ぶので5通り
- 十の位 … 百の位の数のそれぞれについて、5つの数から選ぶので5通りずつ
- 一の位 … 十の位の数のそれぞれについて、2,4から選ぶので2通りずつ
一の位の数の選び方に注意しましょう。
積の法則を利用して立式します。なお、百の位と十の位に関しては重複が許されるので重複順列です。
問2(ii)の解答例
百の位の数から順に使える数を考えていく。
百の位に使える数は $5$ 通り。
十の位に使える数は、百の位の数のそれぞれについて $5$ 通りずつ。
一の位に使える数は、十の位の数のそれぞれについて $2 \ , \ 4$ の $2$ 通りずつ。
これより、偶数となる整数は
\begin{align*} \quad 5 \times 5 \times 2 = 50 \ \text{(個)} \end{align*}問2のポイントと解答例をまとめると以下のようになります
問2(ii)の別解
数字を並べて整数をつくるとき、高い位から順に数の選び方を考えるのが基本です。
しかし、偶数や4の倍数などの条件があれば、その条件に関わる位の数から先に考える方が解きやすい場合があります。
問2(ii)であれば、以下のように考えます。
各位の数の選び方
- 一の位 … 2,4から選ぶので2通り
- 百の位 … 一の位の数のそれぞれについて、5つの数から選ぶので5通りずつ
- 十の位 … 百の位の数のそれぞれについて、5つの数から選ぶので5通りずつ
樹形図を書けば、違いが良く分ります。百の位から選んだ場合、樹は5つできます。それに対して、一の位から選んだ場合、樹は2つで済みます。
このときの式は以下のようになります。答えは同じですが、過程が異なります。
問2(ii)の別解例
一の位に使える数は $2 \ , \ 4$ の $2$ 通り。
百の位に使える数は、一の位の数のそれぞれについて $5$ 通りずつ。
十の位に使える数は、百の位の数のそれぞれについて $5$ 通りずつ。
これより、偶数となる整数は
\begin{align*} \quad 2 \times 5 \times 5 = 50 \ \text{(個)} \end{align*}今回扱った問題は、難しく感じたかもしれませんが、これでも基本レベルの問題です。
入試レベルになると、公式に代入するだけで済むような問題は少ないです。むしろ、公式の使い処をよく考えないと間違えてしまう問題は増えるでしょう。
このような問題に対応するためには、問題をしっかり読み、場合の数の求め方を慎重に考える必要があります。考え方や解法は少ないので、類題を多くこなしてマスターしましょう。
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さいごに、もう一度、頭の中を整理しよう
- 円順列では、ずれた並びは同じ扱い。
- 円順列は、特定の1つ(1人)について残りの順列に相当。
- 重複順列では、重複を許して並べて良い。
- 重複順列の総数は、累乗の形で表される。
- 条件がある場合は、まず条件を満たすことから考えよう。