確率|条件つき確率について
条件つき確率を扱った問題を解いてみよう
次の問題を考えてみましょう。
問1の解答・解説
問1
男子 $6$ 人、女子 $4$ 人のうちバス通学者はそれぞれ $4$ 人、$2$ 人である。$1$ 人を選ぶとき、次の確率を求めよ。
$(i)$ バス通学者である確率
$(ii)$ 男子であると分かったとき、バス通学者である確率
このような問題では、人数の内訳を一覧表にまとめると確率を求めやすくなります。
問1の解答例 1⃣
人数の内訳を表にまとめると以下のようになる。
\begin{align*} \begin{array}{c|c|c|c} & {\scriptsize \text{男子}} & {\scriptsize \text{女子}} & {\scriptsize \text{合計}} \\ \hline {\scriptsize \text{バス通学者}} & 4 & 2 & 6 \\ \hline {\scriptsize \text{バス以外}} & 2 & 2 & 4 \\ \hline {\scriptsize \text{合計}} & 6 & 4 & 10 \end{array} \end{align*}男女10人を区別して1人を選んだ結果のそれぞれが根元事象です。そして、このときの選び方の総数が、全事象が起こる場合の数で10C1(=10)通りです。
また、男女合わせて10人のうち、バス通学者は男女合わせて6人です。
選んだ1人がバス通学者であるのは、バス通学者6人から1人を選ぶときです。このときの選び方の総数が、選んだ1人がバス通学者である事象が起こる場合の数で6C1(=6)通りです。
以上をもとに、選んだ1人がバス通学者である確率は以下のようになります。
問1の解答例 2⃣
人数の内訳を表にまとめると以下のようになる。
\begin{align*} \begin{array}{c|c|c|c} & {\scriptsize \text{男子}} & {\scriptsize \text{女子}} & {\scriptsize \text{合計}} \\ \hline {\scriptsize \text{バス通学者}} & 4 & 2 & 6 \\ \hline {\scriptsize \text{バス以外}} & 2 & 2 & 4 \\ \hline {\scriptsize \text{合計}} & 6 & 4 & 10 \end{array} \end{align*}$10$ 人から $1$ 人を選ぶ事象が起こる場合の数は、$10$ 通り。
また、選んだ $1$ 人がバス通学者である事象が起こる場合の数は、バス通学者 $6$ 人から $1$ 人を選べばよいので $6$ 通り。
これより、選んだ $1$ 人がバス通学者である確率は
\begin{align*} \quad \frac{6}{10}=\frac{3}{5} \end{align*}問1(ii)でも表を利用します。
人数の内訳
\begin{align*} \begin{array}{c|c|c|c} & {\scriptsize \text{男子}} & {\scriptsize \text{女子}} & {\scriptsize \text{合計}} \\ \hline {\scriptsize \text{バス通学者}} & 4 & 2 & 6 \\ \hline {\scriptsize \text{バス以外}} & 2 & 2 & 4 \\ \hline {\scriptsize \text{合計}} & 6 & 4 & 10 \end{array} \end{align*}「選んだ1人が男子と分かったとき」とあるので、これが条件になります。つまり「男子6人であるという条件のもとで」ということです。
選んだ1人が男子である事象Aを全事象と考えて、その中から無作為に選んだとき、それがバス通学者である事象Bに属する確率を求めます。
男子6人のうちバス通学者は4人です。このことから、n(A)=6,n(A⋂B)=4です。
なお、バス通学者の4人は男子であり、事象Bの要素は事象Aに属する要素なので、A⋂B=Bが成り立ちます。
これは2つの事象に包含関係がある場合に成り立ち、良く出題されます。包含関係にあることは図解すれば分かるので、ベン図を利用しながら考える習慣を付けましょう。
以上をもとに、選んだ1人が男子と分かったとき、バス通学者である確率は以下のようになります。
問1の解答例 3⃣
\begin{align*} \begin{array}{c|c|c|c} & {\scriptsize \text{男子}} & {\scriptsize \text{女子}} & {\scriptsize \text{合計}} \\ \hline {\scriptsize \text{バス通学者}} & 4 & 2 & 6 \\ \hline {\scriptsize \text{バス以外}} & 2 & 2 & 4 \\ \hline {\scriptsize \text{合計}} & 6 & 4 & 10 \end{array} \end{align*}男子であることが分かっているので、男子 $6$ 人から $1$ 人を選ぶ事象が起こる場合の数は、$6$ 通り。
また、バス通学者である事象が起こる場合の数は、男子のバス通学者 $4$ 人から $1$ 人を選べばよいので $4$ 通り。
これより、男子であると分かったとき、バス通学者である確率は
\begin{align*} \frac{n \left( A \cap B \right)}{n \left( A \right)} &= \frac{n \left( B \right)}{n \left( A \right)} \\[ 10pt ] &= \frac{4}{6} \\[ 10pt ] &= \frac{2}{3} \end{align*}問1(ii)では、全事象が男子である事象に変わっているので、問1(i)の分母とは異なっていることが分かります。
問1のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
問1のように、事象がもつ要素の個数が分かれば場合の数を考えやすいので、まずは要素の個数を数え上げることを考えましょう。
確率の基本は、要素の個数(=場合の数)を数え上げること。
問2の解答・解説
問2
赤玉 $3$ 個と白玉 $4$ 個が入っている袋から球を $1$ 個取り出し、それを元に戻さずにもう $1$ 個取り出す。このとき、$2$ 個とも白玉である確率を求めよ。
1回目に取り出した玉が白玉である事象をA、2回目に取り出した玉が白玉である事象をBとします。
2個とも白玉である事象は、2つの事象A,Bがともに起こる事象であるので、積事象A⋂Bです。このとき、2個とも白玉である確率はP(A⋂B)となります。これが求めたい確率です。
ところで、最初に取り出した玉を元に戻さないので、2回目の試行の結果は、1回目の試行の結果に影響されてしまいます。ですから、2つの試行は独立な試行ではありません。
このようなとき、条件つき確率を利用すると、積事象A⋂Bが起こる確率P(A⋂B)を求めることができます。
1回目の試行において、合計7個の玉を区別して1個だけ取り出します。その取り出し方の総数は7C1(=7)通りです。これは1回目の試行での根元事象の総数であり、全事象が起こる場合の数です。
また、1回目の試行において、取り出された玉が白玉である事象Aが起こる場合の数は、白玉4個から1個を取り出すときを考えれば良いので、その総数は4C1(=4)通りです。
このことから、事象Aが起こる確率P(A)は以下のようになります。
問2の解答例 1⃣
$1$ 回目、$2$ 回目に取り出した玉が白玉である事象をそれぞれ $A \ , \ B$ とする。このとき $2$ 個とも白玉である事象は $A \cap B$ となる。
$1$ 回目の試行で取り出された玉が白玉である確率 $P(A)$ は
\begin{align*} \quad P \left( A \right) = \frac{4}{7} \end{align*}次に2回目の試行においてですが、合計が6個になっているので注意しましょう。
2回目の試行において、合計6個の玉を区別して1個を取り出すとき、その取り出し方の総数は6C1(=6)通りです。これは2回目の試行での根元事象の総数であり、全事象が起こる場合の数です。
また、2回目の試行において、取り出された玉が白玉である事象Bが起こる場合の数は、白玉3個から1個を取り出すときを考えれば良いので、その総数は3C1(=3)通りです。1回目の試行で白玉が取り出されていることに注意しましょう。
ここで注意したいのは、2回目の試行は1回目の試行で白玉が取り出されたという条件のもとで考えています。このことから、条件つき確率を考えなくてはなりません。
問2の解答例 2⃣
$1$ 回目、$2$ 回目に取り出した玉が白玉である事象をそれぞれ $A \ , \ B$ とする。このとき $2$ 個とも白玉である事象は $A \cap B$ となる。
$1$ 回目の試行で取り出された玉が白玉である確率 $P(A)$ は
\begin{align*} \quad P \left( A \right) = \frac{4}{7} \end{align*}$2$ 回目の試行で取り出された玉が白玉である確率 $P_{A}(B)$ は
\begin{align*} \quad P_{A} \left( B \right) = \frac{3}{6} \end{align*}2つの試行は独立ではありませんが、条件つき確率を使った公式に乗法定理があります。以上をもとに2個とも白玉である確率は以下のようになります。
問2の解答例 3⃣
$1$ 回目、$2$ 回目に取り出した玉が白玉である事象をそれぞれ $A \ , \ B$ とする。このとき $2$ 個とも白玉である事象は $A \cap B$ となる。
$1$ 回目の試行で取り出された玉が白玉である確率 $P(A)$ は
\begin{align*} \quad P \left( A \right) = \frac{4}{7} \end{align*}$2$ 回目の試行で取り出された玉が白玉である確率 $P_{A}(B)$ は
\begin{align*} \quad P_{A} \left( B \right) = \frac{3}{6} \end{align*}したがって、$2$ 個とも白玉である確率 $P(A \cap B)$ は
\begin{align*} \quad P \left(A \cap B \right) &= P \left( A \right) \times P_{A} \left( B \right) \\[ 10pt ] &= \frac{4}{7} \times \frac{3}{6} \\[ 10pt ] &= \frac{2}{7} \end{align*}問2のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
互いに独立でない2つの試行において、2回目の試行は1回目の試行の結果に影響を受ける。2回目の試行の事象が起こる確率は条件つき確率。
事象Bが起こる確率を求めてみよう
意外と間違えやすい確率は、2回目の試行で取り出された玉が白玉である事象Bが起こる確率P(B)です。これについて考えてみましょう。
事象Bは、2回目の試行で取り出された玉の色に言及しているだけです。ですから、1回目の結果が白玉とは限りません。1回目の試行では、赤玉または白玉が取り出された可能性が考えられます。
2回目の試行で取り出された玉が白玉である事象B
- 1回目で赤玉、2回目で白玉が取り出される。
- 1回目で白玉、2回目で白玉が取り出される。
事象Bは、2つの事象を含むことが分かります。この2つの事象は同時に起こらない結果なので、互いに排反です。
1回目の試行で赤玉が取り出された場合、1回目の試行で赤玉が取り出された条件のもとで、2回目の試行で白玉が取り出されます。
このことから、1回目で赤玉、2日目で白玉が取り出される確率は以下のようになります。
1回目の試行で赤玉が取り出された場合の確率
\begin{align*} \quad \frac{{}_3 \mathrm{ C }_1}{{}_7 \mathrm{ C }_1} \times \frac{{}_4 \mathrm{ C }_1}{{}_6 \mathrm{ C }_1} = \frac{3}{7} \times \frac{4}{6} \end{align*}1回目の試行で白玉が取り出された場合、1回目の試行で白玉が取り出された条件のもとで、2回目の試行で白玉が取り出されます。これは問2の結果を利用できます。
2つの事象は互いに排反だったので、事象Bが起こる確率P(B)は以下のようになります。
事象Bが起こる確率P(B)
\begin{align*} \quad P \left( B \right) &= \frac{3}{7} \times \frac{4}{6} + \frac{4}{7} \times \frac{3}{6} \\[ 10pt ] &= \frac{3}{7} \times \frac{4}{6} \times 2 \\[ 10pt ] &= \frac{4}{7} \\[ 10pt ] &\neq P \left(A \cap B \right) \end{align*}事象Bが起こる確率P(B)は、2個とも白玉である確率P(A⋂B)よりも大きな値になっています。
確率からも分かるように、事象Bは、積事象A⋂Bの要素(結果)以外にも要素(結果)をもつことが分かります。
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さいごに、もう一度、頭の中を整理しよう
- 条件つき確率とは、事象Aが起こったという条件のもとで事象Bが起こる確率のこと。
- 条件つき確率は「全事象をAと考え、Aから無作為に選ぶときにそれがBに属する確率」と捉えることもできる。
- 「事象Aが起こったという条件のもとで」という表現でも、事象Aが先に起こるとは限らない。
- 積事象が起こる確率と条件つき確率を混同しないこと。