整数の性質|合同式を利用して1次不定方程式を解こう

数学A

数学A 整数の性質

1次不定方程式を扱った問題を合同式で解いてみよう

問1

問1

\begin{align*} &\text{次の方程式の整数解をすべて求めよ。} \\[ 5pt ] &\quad 71x + 32y = 3 \end{align*}

整数解をすべて求めよ」とあるので、一般解を求めなければなりません。

問1の解答・解説

方程式から合同式に置き換えます。

問1の解答例 1⃣

\begin{align*} &\quad 71x + 32y = 3 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\text{$32$ を法とすると、①より} \\[ 5pt ] &\quad 71x + 32y \equiv 3 \pmod {32} \end{align*}

合同式ができたので、次は左辺の各項に注目します。

問1の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad 71x + 32y \equiv 3 \pmod {32} \\[ 7pt ] &\text{また} \\[ 5pt ] &\quad 32y \equiv 0 \pmod {32} \\[ 7pt ] &\text{であるので} \\[ 5pt ] &\quad 71x \equiv 3 \pmod {32} \quad \cdots \text{②} \end{align*}

これでx,yのうちxだけを用いた合同式を導出できました。この合同式から、左辺の係数が1になった合同式を導出します。

問1の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad 71x \equiv 3 \pmod {32} \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\text{ここで} \\[ 5pt ] &\quad 71 \equiv 7 \pmod {32} \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad 71 \cdot x \equiv 7 \cdot x \pmod {32} \\[ 7pt ] &\therefore \ 71x \equiv 7x \pmod {32} \\[ 7pt ] &\text{また} \\[ 5pt ] &\quad 3 \equiv 35 \pmod {32} \\[ 7pt ] &\text{であるので、②は} \\[ 5pt ] &\quad 7x \equiv 35 \pmod {32} \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad x \equiv 5 \pmod {32} \end{align*}

71と7が32を法として合同であるので、71xと7xが合同です。また、3は35と32を法として合同です。

これらと②から、7xは3、すなわち35と32を法として合同となります。これをさらに変形すると、xが5と32を法として合同であることが分かります。

ここでのポイントは2つあります。1つ目は、左辺の係数を小さくする(71から7へ)ことです。

2つ目は、合同式の右辺を係数で割れる数(7の倍数)に置き換える(3から35へ)ことです。このとき、係数で割り切れるだけでなく余りにも気を付けます。

ここでは、32で割ったときの余りが3となる数に置き換えました。

合同式の右辺を置き換える

\begin{align*} 35 &= 7 \cdot 5 \\[ 7pt ] &= 32 \cdot 1 + 3 \end{align*}

$35$ は $7$ の倍数であり、かつ $32$ で割ると余りが $3$ になる数

xの係数を1まで小さくできれば良いのですが、問1のようにすんなりいかないときもあります。

問1では、xの係数を7と小さくしても、1までは小さくできません。このようなときは、右辺の数を置き換えましょう

xの係数を1まで小さくできないときは、右辺の数を調整しよう。

xは32を法として5と合同になることが分かりました。ですから、xは32で割ったときの余りが5になる数となります。

方程式の一般解を求めます。

問1の解答例 4⃣

\begin{align*} &\quad 71x + 32y = 3 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x \equiv 5 \pmod {32} \\[ 7pt ] &\text{したがって、$k$ を整数とすると} \\[ 5pt ] &\quad x = 32k + 5 \quad \cdots \text{③} \\[ 7pt ] &\text{①,③より} \\[ 5pt ] &\quad 32y = -71(32k + 5) + 3 = -71 \cdot 32k – 352 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad y = -71k – 11 \quad \cdots \text{④} \\[ 7pt ] &\text{③,④は①を満たすので、①の解である。} \\[ 5pt ] &\therefore \ x = 32k + 5 \ , \ y = -71k – 11 \quad \text{($k$ は整数)} \end{align*}

この問題は、互除法を利用した解き方でも扱っていました。互除法を利用した解き方では、一般解は以下のように表されます。

互除法を利用したときの一般解

\begin{equation*} \quad x = 32k-27 \ , \ y = -71k + 60 \quad \text{($k$ は整数)} \end{equation*}

同じ不定方程式なのに、得られる一般解の式が異なります。しかし、得られる値は同じなので心配いりません。

互除法での一般解では、k=1のときx=5,y=-11です。それに対して、合同式での一般解では、k=0のときx=5,y=-11です。

kの値は異なりますが、同じ解がきちんと得られます。ですから、どちらの一般解でも問題ありません。

もう少し丁寧に言えば、互除法での一般解のkをk+1に置き換えると、合同式での一般解が得られます。つまり、解がずれて出てくるだけです。

もう一問解いてみましょう。

問2

問2

\begin{align*} &\text{次の方程式の整数解をすべて求めよ。} \\[ 5pt ] &\quad 37x – 90y = 4 \end{align*}

問2の解答・解説

過程は問1とほとんど変わりません。37を法とした合同式を利用します。

ただし、係数が負の数になっているので、yについての合同式を導出してから(②式以降)が要注意です。

与えられた方程式から37を法とする合同式を立式します。そして、文字x,yのうちyだけを用いた合同式を導出します。

問2の解答例 1⃣

\begin{align*} &\quad 37x – 90y = 4 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\text{$37$ を法とすると、①より} \\[ 5pt ] &\quad 37x – 90y \equiv 4 \pmod {37} \\[ 7pt ] &\text{また} \\[ 5pt ] &\quad 37y \equiv 0 \pmod {37} \\[ 7pt ] &\text{であるので} \\[ 5pt ] &\quad -90y \equiv 4 \pmod {37} \quad \cdots \text{②} \end{align*}

②式を導出するのは難しくありません。問題はここからです。

問2の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad -90y \equiv 4 \pmod {37} \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ] &\text{ここで} \\[ 5pt ] &\quad 90 \equiv 16 \pmod {37} \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad -90 \cdot y \equiv -16 \cdot y \pmod {37} \\[ 7pt ] &\therefore \ -90y \equiv -16y \pmod {37} \\[ 7pt ] &\text{また} \\[ 5pt ] &\quad 4 \equiv -144 \pmod {37} \\[ 7pt ] &\text{であるので、②は} \\[ 5pt ] &\quad -16y \equiv -144 \pmod {37} \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad y \equiv 9 \pmod {37} \end{align*}

②式以降について、yの係数を16と小さくしても、1までは小さくできません。問1と同じように、右辺の数を置き換えます。

右辺の数は、係数の16で割り切れる数(16の倍数)であり、なおかつ37で割ったときの余りが4となる数です。

また、係数が負の数(-16)なので、右辺も負の数にします。

正の数とは限らない

\begin{align*} -144 &= 16 \cdot (-9) \\[ 7pt ] &= 37 \cdot (-4) + 4 \end{align*}

このような数に置き換えることによって、yについての合同式を求めたとき、その右辺が正の数になります。問1よりも難易度が高いですが、慣れればすぐに見つけることができるようになります。

yは37を法として9と合同になることが分かりました。ですから、yは37で割ったときの余りが9になる数となります。

方程式の一般解を求めます。

問2の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad 37x – 90y = 4 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad y \equiv 9 \pmod {37} \\[ 7pt ] &\text{したがって、$k$ を整数とすると} \\[ 5pt ] &\quad y = 37k + 9 \quad \cdots \text{③} \\[ 7pt ] &\text{①,③より} \\[ 5pt ] &\quad 37x = 90(37k + 9) + 4 = 90 \cdot 37k + 814 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad x = 90k + 22 \quad \cdots \text{④} \\[ 7pt ] &\text{③,④は①を満たすので、①の解である。} \\[ 5pt ] &\therefore \ x = 90k + 22 \ , \ y = 37k + 9 \quad \text{($k$ は整数)} \end{align*}

1次不定方程式を解くには、1組の整数解を見つける必要があります。しかし、どうしても見つからなければ、互除法を利用すれば上手くいきます。

また、合同式を利用すれば、1組の整数解を見つけることなく、一般解を求めることができます。

1次不定方程式の解くために知っておきたい事柄

  • 一般的な解法:1組の整数解を見つけて、それをもとに一般解を求める
  • 1組の整数解がどうしても見つからない ⇒ 互除法を利用する
  • 1組の整数解を見つけずに一般解を求めたい ⇒ 合同式を利用する

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さいごにもう一度まとめ

  • 合同式を利用して、不定方程式の一般解を求めることができる。
  • 小さい方の係数を法とした合同式にする。
  • 合同式の性質を利用して、左辺の係数や右辺の数を小さくしよう。
  • 係数が1まで小さくできないときは、右辺の数を係数で割り切れる数に置き換えよう。