場合の数|集合の要素の個数について
要素の個数を扱った問題を解いてみよう
次の問題を考えてみましょう。
問(1)の解答・解説
問(1)
$1$ から $100$ までの整数について
$3$ の倍数はいくつあるか。
1~100の整数の集まりを全体集合U、3の倍数の集まりを集合Aとします。
問題で使われていない文字を使うとき、きちんと定義しよう。
集合Aの要素を書き並べて表すと、以下のようになります。このとき、3の倍数だと分かるように書き並べておきます。3の倍数は3を因数にもつ(3で割り切れる)数です。
問(1)の解答例
$1$ から $100$ までの整数の集まりを $U$、$3$ の倍数の集まりを $A$ とする。
このとき、集合 $A$ は
\begin{align*} \quad A=\{ 3 \cdot 1 \ , \ 3 \cdot 2 \ , \ \cdots \ , \ 3 \cdot \underline{\underline{33}} \} \end{align*}と表せる。よって
\begin{align*} \quad n(A)=33 \end{align*}したがって、$3$ の倍数は $33$ 個。
集合Aの要素を3,6,9,……,99と記述しても構いません。ただし、この記述だと要素の個数を別途に求める記述が必要になります。
それに対して、解答例の記述では少し工夫してあります。最後の要素である3・33は99のことです。これを見れば、99が33番目の3の倍数であることがすぐに分かります。
つまり、この記述であれば、集合Aの要素の個数は33個であることが分かります。このように要素が倍数であれば、積の形にすると簡潔で、それでいて要素の個数も分かる記述ができます。
問(1)のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
要素が倍数であれば、、積の形で要素を表そう。
問(2)の解答・解説
問(2)
$1$ から $100$ までの整数について
$3$ または $5$ の倍数はいくつあるか。
5の倍数の集まりを集合Bとします。3または5の倍数の集まりは、2つの集合A,Bの和集合A⋃Bです。
和集合A⋃Bの要素の個数を求めるには、各集合A,Bの要素の個数と、共通部分A⋂Bの要素の個数が必要です。集合Aの要素の個数は、問(1)の結果から33個です。
集合Bの要素の個数と共通部分A⋂Bの要素の個数を求めた後に、和集合A⋃Bの要素の個数を求めます。
問(2)の解答例
$5$ の倍数の集まりを $B$ とすると、$A \cup B$ は $3$ または $5$ の倍数の集まり、$A \cap B$ は $15$ の倍数の集まりである。
このとき、各集合 $B \ , \ A \cap B$ は
\begin{align*} &\quad B=\{ 5 \cdot 1 \ , \ 5 \cdot 2 \ , \ \cdots \ , \ 5 \cdot \underline{\underline{20}} \} \\[ 7pt ] &\quad A \cap B=\{ 15 \cdot 1 \ , \ 15 \cdot 2 \ , \ \cdots \ , \ 15 \cdot \underline{\underline{6}} \} \end{align*}と表せる。よって
\begin{align*} &\quad n(B)=20 \\[ 7pt ] &\quad n(A \cap B)=6 \end{align*}したがって、$3$ または $5$ の倍数は
\begin{align*} \quad n(A \cup B) &= n(A)+n(B)-n(A \cap B) \\[ 7pt ] &=33+20-6 \\[ 7pt ] &= 47 \ \text{(個)} \end{align*}共通部分A⋂Bには3の倍数でもあり、5の倍数でもある要素、言い換えると15の倍数である要素が属します。
和集合の要素の個数を求めるには、以下の式を利用しましょう。
和集合の要素の個数
\begin{align*} \quad n(A \cup B) = n(A)+n(B)-n(A \cap B) \end{align*}$n(A \cup B)$ … 和集合 $A \cup B$ の要素の個数
$n(A)$ … 集合 $A$ の要素の個数
$n(B)$ … 集合 $B$ の要素の個数
$n(A \cap B)$ … 共通部分 $A \cap B$ の要素の個数
問(2)のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
各問を解いた後は、情報を追記しながら進めていきましょう。
問題を解くたびに情報をベン図に追記し、可視化しながら進めていこう。ベン図を上手に使えば、要素の個数を求める問題は、数字を埋めていくゲームと変わらない。
問(3)の解答・解説
問(3)
$1$ から $100$ までの整数について
$15$ の倍数でないものはいくつあるか。
15の倍数でないものの集まりは、15の倍数の集まりである共通部分A⋂Bの補集合です。
補集合の要素の個数を求めるには、以下の式を利用しましょう。公式を利用するとき、AをA⋂Bに置き換えて使いましょう。
補集合の要素の個数
\begin{align*} \quad n(\overline{A}) = n(U)-n(A) \end{align*}$n(\overline{A})$ … 補集合 $\overline{A}$ の要素の個数
$n(U)$ … 全体集合 $U$ の要素の個数
$n(A)$ … 集合 $A$ の要素の個数
共通部分A⋂Bの要素の個数は、問(2)から分かります。全体集合Uの要素の個数は不明ですが、すぐに分かります。これらを利用して、15の倍数でないものの個数を求めます。
問(3)の解答例
$1$ から $100$ までの整数の集まり $U$ は
\begin{align*} \quad U=\{ 1 \ , \ 2 \ , \ \cdots \ , \ 100 \} \end{align*}と表せるので
\begin{align*} \quad n(U)=100 \end{align*}ここで、$15$ でないものの集まりは $\overline{A \cap B}$ である。
よって、その要素の個数は
\begin{align*} \quad n(\overline{A \cap B}) &= n(U)-n(A \cap B) \\[ 7pt ] &=100-6 \\[ 7pt ] &= 94 \ \text{(個)} \end{align*}公式を利用する際には、使われている文字が変わっていることがほとんどです。対応する文字にきちんと置き換えて利用しましょう。
問(3)のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
この単元でも新しく記号を使った表し方を学習しましたが、間違いを恐れずに積極的に使いましょう。
新しい事柄を学習した後は、教科書でも問題でも当たり前のように使われます。相手がどんどん使ってくる以上、こちらも使い慣れていかなければなりません。
近年、教科書内容で言えば導入部分に相当する問題が、入試でも出題されています。たとえば、導関数や微分係数の定義、集合と要素の関係や集合の包含関係を表す記号などに関する問題です。
このような問題に対応するためにも、教科書内容の暗記で済ませない学習にしたいところです。なかなか難しいことですが、演習を繰り返すことで用語や記号を正しく使えるようにしましょう。
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さいごに、もう一度、頭の中を整理しよう
- 要素の個数を考えるとき、要素を書き並べる方法で集合を表そう。
- 要素が倍数のとき、要素は積の形で表そう。
- 和集合の要素の個数は、共通部分の有無に注意しよう。
- 補集合の要素の個数は、全体集合を利用する。
- 定義された記号や表記をどんどん利用して慣れよう。