数学2
今回は、定点を通る直線の方程式について学習しましょう。前の単元で学習した、2直線の交点を通る直線に関係しています。恒等式についての知識も必要です。
不安のある人はこれまでに学習した内容を確認しながら取り組みましょう。
定点を通る直線の方程式
ここでは、次の式のように、未知の実数(ここではk)が含まれる直線の方程式を扱います。
未知の実数を含む直線の方程式の例
\begin{equation*}
\left(4k-3 \right)y=\left(3k-1 \right)x-1
\end{equation*}
このように未知の実数kが含まれていても、未知の実数がどんな値にかかわらず等式が成り立つ場合があります。言い換えると、未知の実数によらない、方程式の解が存在するということです。この方程式の解が定点の座標を表します。
未知の実数kの値にかかわらず、与えられた直線が定点を通るとき、その定点の座標は、実数kの値によらず得られる方程式の解です。この解は、以下の手順で得られます。
定点の座標の求め方(基本)
- 実数kについての恒等式と考えて、方程式をkについて整理する。
- 恒等式が成り立つ条件を考えると、2つの変数x,yについての1次方程式が2つ得られる。
- 2つの1次方程式を連立して解くと、定点の座標が分かる。
例題で確認してみましょう。
2直線の交点を通る直線の方程式を求めてみよう
次の例題を考えてみましょう。
例題
\begin{align*}
&\text{次の直線} \\[ 5pt ]
&\quad \left(4k-3 \right)y=\left(3k-1 \right)x-1 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\text{は、実数 $k$ の値にかかわらず、定点 $A$ を通る} \\[ 5pt ]
&\text{ことを示し、この点 $A$ の座標を求めよ。}
\end{align*}
例題の解答・解説
「実数kの値にかかわらず、定点を通る」という言い回しがあれば、この単元の話です。とにかく方程式を実数kについて整理しましょう。
例題の解答例 1⃣
\begin{align*}
&\quad \left(4k-3 \right)y=\left(3k-1 \right)x-1 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\text{直線の方程式①を $k$ について整理すると} \\[ 5pt ]
&\quad \left(3x-4y \right) k-\left(x-3y+1 \right)=0 \quad \cdots \text{②}
\end{align*}
②式は、実数kの値にかかわらず成り立つので、恒等式であるはずです。②式を実数kの恒等式と考えて、恒等式が成り立つための条件を導きます。
例題の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \left(3x-4y \right) k-\left(x-3y+1 \right)=0 \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ]
&\text{②が実数 $k$ の恒等式となるための条件は} \\[ 5pt ]
&\quad 3x-4y=0 \ , \ x-3y+1=0
\end{align*}
②式から変数x,yについての1次方程式を2つ導くことができました。これらはどちらも成り立たなければならないので、2つの方程式を連立して解きます。
例題の解答例 3⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad 3x-4y=0 \ , \ x-3y+1=0 \\[ 7pt ]
&\text{これを連立して解くと} \\[ 5pt ]
&\quad x=\frac{4}{5} \ , \ y=\frac{3}{5}
\end{align*}
連立方程式の解が、定点Aの座標となります。確認の意味を込めて断っておきます。
例題の解答例 4⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad x=\frac{4}{5} \ , \ y=\frac{3}{5} \\[ 7pt ]
&\text{このとき、②は $k$ の値にかかわらず成り立つ。} \\[ 5pt ]
&\text{よって、直線②、すなわち直線①は、} \\[ 5pt ]
&\text{$k$ の値にかかわらず、定点} \\[ 5pt ]
&\quad A \ \left(\frac{4}{5} \ , \ \frac{3}{5} \right) \\[ 7pt ]
&\text{を通る。}
\end{align*}
手順通りに解くだけなので、特に難しいことはありません。
ところで、②式についてもう少し考えてみましょう。②のような形の式に見覚えがあるはずです。
②式に注目しよう
\begin{align*}
&\quad \left(3x-4y \right) k-\left(x-3y+1 \right)=0 \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ]
&\text{②は $2$ 直線} \\[ 5pt ]
&\quad 3x-4y=0 \quad \cdots \text{④} \\[ 7pt ]
&\quad x-3y+1=0 \quad \cdots \text{⑤} \\[ 7pt ]
&\text{の交点を通る直線を表す。}
\end{align*}
式②は、2直線④,⑤の交点を通る直線を表す式です。
例題では、2直線④,⑤の方程式を連立して解いたので、2直線④,⑤の交点の座標を求めたことになります。つまり、直線①が通る定点は、2直線④,⑤の交点であることが分かります。
問題で与えられた①式は、2直線④,⑤の交点を通る直線の方程式だと分からないように、わざと変な形にしてあったと考えることもできます。
このことが理解できると、次のような解法でも良いことが分かります。
例題の別解例
実数kの値によって、①式は変わります。しかし、①式がどんな直線の方程式になったとしても、必ず2直線④,⑤の交点を通ります。このことを利用します。
実数kに適当な値を代入して、直線の方程式を具体的に2つ求めます。
例題の別解例
\begin{align*}
&\quad \left(4k-3 \right)y=\left(3k-1 \right)x-1 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\text{$k=0$ のとき、①は} \\[ 5pt ]
&\quad \left(4 \cdot 0-3 \right)y=\left(3 \cdot 0-1 \right)x-1 \\[ 7pt ]
&\text{整理すると} \\[ 5pt ]
&\quad x-3y+1=0 \quad \cdots \text{②} \\[ 7pt ]
&\text{$k=1$ のとき、①は} \\[ 5pt ]
&\quad \left(4 \cdot 1-3 \right)y=\left(3 \cdot 1-1 \right)x-1 \\[ 7pt ]
&\text{整理すると} \\[ 5pt ]
&\quad 2x-y-1=0 \quad \cdots \text{③} \\[ 7pt ]
&\text{$2$ 直線②,③の交点の座標は、②,③を連立して解くと} \\[ 5pt ]
&\quad \left(\frac{4}{5} \ , \ \frac{3}{5} \right) \\[ 7pt ]
&\text{逆に、このとき} \\[ 5pt ]
&\text{(①の左辺)} \ = \left(4k-3 \right) \cdot \frac{3}{5}=\frac{12}{5} k-\frac{9}{5} \\[ 7pt ]
&\text{(①の右辺)} \ = \left(3k-1 \right) \cdot \frac{4}{5} -1=\frac{12}{5} k-\frac{9}{5} \\[ 7pt ]
&\text{よって、①は $k$ の値にかかわらず成り立つ。} \\[ 5pt ]
&\text{したがって、直線②、すなわち直線①は、} \\[ 5pt ]
&\text{$k$ の値にかかわらず、定点} \\[ 5pt ]
&\quad A \ \left(\frac{4}{5} \ , \ \frac{3}{5} \right) \\[ 7pt ]
&\text{を通る。}
\end{align*}
定点が2直線の交点であることを知っていれば、別解のように、特定の2直線の方程式から交点の座標を求める解法でも良いことが分かります。
ただし、具体的な2直線の方程式から交点の座標を求めただけでは、必要条件が成り立つだけです。「逆に」以降で十分条件が成り立つことを確認しています。
また、実数kに代入する値は計算しやすいものにしましょう。たとえば、x,yの係数を0にするような値であれば、とても簡単に解けます。
次は、定点を通る直線の方程式を扱った問題を実際に解いてみましょう。