図形と計量|正弦定理について

今回は「正弦定理」について学習しましょう。「正弦定理」はこの後の「余弦定理」と併せて頻出事項です。
どのようにして導かれるのか、またどのような関係を表す定理なのかをしっかり理解しましょう。
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参考
図形と計量|三角比の定義について
参考
図形と計量|三角比の拡張について
参考
図形と計量|三角比の相互関係について その1
参考
図形と計量|三角比の相互関係について その2
三角比の正弦を用いた定理
正弦定理とは、その名の通り、3つある三角比のうち正弦に関する定理です。図形に関わる定理なので、作図しながら定理を確認していきましょう。
図形の基礎を確認
正弦定理を考えるにあたって、三角形を扱います。このとき、専門的な用語を使うのできちんと覚えておきましょう。
△ABCにおいて、3つの内角にはそれぞれ向かい合う辺があります。この辺を対辺と言います。また3つの辺から見れば、それらに向かい合う内角があるので、この内角を対角と言います。
三角形を扱うとき、一般に対辺の長さを対角の頂点に合わせて定義します。たとえば、∠Aの対辺BCをBC=aとおきます。このようにすると、対角と対辺の対応関係が分かりやすいので、図形をイメージしやすくなります。
正弦定理に出てくる図形は三角形とその外接円
正弦定理では、三角形はもちろんですが、その三角形に外接する円が登場します。三角形や四角形などの図形に外接する円のこを外接円と言います。
三角形とその外接円との間に成り立つ定理が正弦定理ですが、三角形と言っても、直角三角形だけでなく、鋭角三角形や鈍角三角形などがあります。すべての三角形に対して成り立つ定理なのか確認してみましょう。
鋭角三角形とその外接円の場合
鋭角三角形である△ABCとその外接円Oを考えます。
$\angle {BAC} = A \ , \ BC=a$、円Oの半径を $R$ 、∠Aに対する正弦を $\sin A$
とおく。
辺や半径の長さなどを定義しましたが、鋭角三角形であり、∠Aの大きさも不明なので三角比の定義を利用することができません。
このままでは正弦の値を求めることができません。そこで、円周角の性質を利用します。
頂点Aが円周上を動くと、△ABCの形が変わりますが、それでも同一の弧に対する円周角なので∠Aの大きさは変わりません。この性質を利用すると、外接円の直径を一辺とする三角形ができます。
この三角形を△DBCとすると、図では $\angle D = \angle A \ , \ BD = 2R \ \text{(直径)} \ , \ \angle C= 90^{\circ}$ となる直角三角形ができました。
△DBCは直角三角形なので、三角比を辺の長さから求めることができます。
&\sin D = \frac{BC}{BD} \\[ 5pt ]
&\angle D =\angle A \ , \ BC = a \ , \ BD = 2R \ \text{より} \\[ 5pt ]
&\sin A = \frac{a}{2R}
\end{align*}
同じように円周角の性質を利用して直角三角形を作ると、∠B , ∠Cに対する正弦も求めることができます。
&\angle B \ \text{の対辺ACを} \ AC=b \ , \angle C \ \text{の対辺ABを} \ AB=c \text{とすると} \\[ 5pt ]
&\sin B = \frac{b}{2R} \\[ 5pt ]
&\sin C = \frac{c}{2R}
\end{align*}
3つの内角について正弦の値を求めることができましたが、それぞれ $2R$ について変形します。
&2R = \frac{a}{\sin A} \\[ 5pt ]
&2R = \frac{b}{\sin B} \\[ 5pt ]
&2R = \frac{c}{\sin C}
\end{align*}
すべて $2R$ についての式であるので、3つの等式を1つの等式でまとめて表すことができます。
\frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C} = 2R
\end{equation*}
この等式は4つの値はすべて等しいことを表しています。
このように、鋭角三角形と外接円があるとき、正弦と外接円の半径の間には特定の関係が成り立ち、式で表せることが分かりました。このことを正弦定理と言います。
そして、鋭角三角形の1つの内角に対する正弦は、対辺の長さと外接円の半径が分かれば求めることができるということも分かりました。
式の導出自体は難しいものではありません。しかし、三角比の定義を使うためとはいえ、「円周角の性質を利用して∠Aと等しい内角をもつ直角三角形を作る」という発想は、初見では難しいかと思います。
このような視点を身に付けるためにも公式や定理の導出に積極的に取り組んでほしいです。センター試験でも導出に関わる問題が出題されることが意外と多いのでぜひ習慣付けたいものです。
次は鈍角三角形の場合です。