複素数と方程式|1の3乗根の性質について

数学2

1の3乗根の性質を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

$x$ についての方程式 $x^{\scriptsize{3}}=1$ の虚数解の $1$ つを $\omega$ とする。

このとき、次の式の値を求めよ。

\begin{align*} &(1) \quad \frac{1}{\omega}+\frac{1}{{\omega}^{\scriptsize{2}}}+1 \\[ 7pt ] &(2) \quad {\omega}^{\scriptsize{100}}+{\omega}^{\scriptsize{50}} \end{align*}

問(1)の解答・解説

問(1)

$x$ についての方程式 $x^{\scriptsize{3}}=1$ の虚数解の $1$ つを $\omega$ とする。

このとき、次の式の値を求めよ。

\begin{equation*} \quad \frac{1}{\omega}+\frac{1}{{\omega}^{\scriptsize{2}}}+1 \end{equation*}

まずは、1の3乗根の性質を表す式を導出しておきましょう。

問(1)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\quad x^{\scriptsize{3}}=1 \\[ 7pt ] &\text{を解くと} \\[ 5pt ] &\quad \left(x-1 \right) \left(x^{\scriptsize{2}}+x+1 \right)=0 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad x-1=0 \quad \text{または} \quad x^{\scriptsize{2}}+x+1=0 \\[ 7pt ] &\text{$\omega$ は方程式 $x^{\scriptsize{2}}+x+1=0$ の解であるので} \\[ 5pt ] &\quad {\omega}^{\scriptsize{2}}+{\omega}+1=0 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ] &\text{また、$\omega$ は方程式 $x^{\scriptsize{3}}=1$ の解でもあるので} \\[ 5pt ] &\quad {\omega}^{\scriptsize{3}}=1 \quad \cdots \text{②} \end{align*}

①,②式を利用して、式の値を求めます。

問(1)の与式を観察すると、最大次数が2次です。次数を下げることはできません。このままでは式の値を求めることができそうにありません。

与式は分数なので、通分して式変形してみましょう。何らかの変化がみられるはずです。

問(1)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\text{与式より} \\[ 5pt ] &\quad \frac{1}{\omega}+\frac{1}{{\omega}^{\scriptsize{2}}}+1=\frac{{\omega}+1+{\omega}^{\scriptsize{2}}}{{\omega}^{\scriptsize{2}}} \\[ 7pt ] &\text{すなわち} \\[ 5pt ] &\quad \frac{1}{\omega}+\frac{1}{{\omega}^{\scriptsize{2}}}+1=\frac{{\omega}^{\scriptsize{2}}+{\omega}+1}{{\omega}^{\scriptsize{2}}} \end{align*}

分子に注目すると、1の3乗根の性質(①式)を利用できます。

問(1)の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 5pt ] &\quad \frac{1}{\omega}+\frac{1}{{\omega}^{\scriptsize{2}}}+1=\frac{{\omega}^{\scriptsize{2}}+{\omega}+1}{{\omega}^{\scriptsize{2}}} \\[ 7pt ] &\text{①より} \\[ 5pt ] &\quad \frac{1}{\omega}+\frac{1}{{\omega}^{\scriptsize{2}}}+1=\frac{0}{{\omega}^{\scriptsize{2}}} \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad \therefore \ \frac{1}{\omega}+\frac{1}{{\omega}^{\scriptsize{2}}}+1=0 \end{align*}

性質をいつでも導出できるようになっておきましょう。

問(2)の解答・解説

問(2)

$x$ についての方程式 $x^{\scriptsize{3}}=1$ の虚数解の $1$ つを $\omega$ とする。

このとき、次の式の値を求めよ。

\begin{equation*} \quad {\omega}^{\scriptsize{100}}+{\omega}^{\scriptsize{50}} \end{equation*}

問(2)の与式を観察すると、2項式で、2つとも3次以上の項です。次数を下げましょう。先ほどの「覚えておきたい式」を意識して、次数だけで考えてみましょう。

次数を3で割ったとき

\begin{align*} &\quad 100=3 \times 33 +1 \\[ 7pt ] &\quad 50=3 \times 16 +2 \end{align*}

次数の100は3で割ると1余る数で、50は3で割ると2余る数です。これをもとにそれぞれの項を分解し、②式を利用して次数を下げます

問(2)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\quad {\omega}^{\scriptsize{100}}+{\omega}^{\scriptsize{50}}=\left( {\omega}^{\scriptsize{3}} \right)^{\scriptsize{33}} \cdot \omega+\left( {\omega}^{\scriptsize{3}} \right)^{\scriptsize{16}} \cdot {\omega}^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] &\text{②より} \\[ 5pt ] &\quad {\omega}^{\scriptsize{100}}+{\omega}^{\scriptsize{50}}=\omega+{\omega}^{\scriptsize{2}} \end{align*}

次数が2次以下になるまで次数を下げましょう。次は①式を利用します。

問(2)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 5pt ] &\quad {\omega}^{\scriptsize{100}}+{\omega}^{\scriptsize{50}}=\omega+{\omega}^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] &\text{ここで、①より} \\[ 5pt ] &\quad {\omega}^{\scriptsize{2}}+{\omega}=-1 \\[ 7pt ] &\text{であるので} \\[ 5pt ] &\quad \therefore \ {\omega}^{\scriptsize{100}}+{\omega}^{\scriptsize{50}}=-1 \end{align*}

1の3乗根の性質を扱った問題では「いかに次数を下げるか」がポイントです。ωの3乗がいくつできるかを考えて分解すると分かりやすいでしょう。また、指数法則を利用するので使いこなせるようにしておきましょう。

基本的にこのパターンの出題がほとんどなので、しっかりマスターしておきましょう。

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さいごにもう一度まとめ

  • 1の3乗根は全部で3つ。
  • 1の3乗根のうち、虚数はともに共役な複素数。
  • 1の3乗根の虚数解のうち、一方をωとすると、他方はω2
  • 3つの1つの3乗根を3乗すると、どれも1になる。
  • 1の3乗根の性質は主に次数下げに利用する。