数学2
特徴のある文言を含む証明問題を解いてみよう
次の問題を解いてみましょう。
問
\begin{align*}
&\quad a+b+c=1 \ , \ \frac{1}{a} +\frac{1}{b} +\frac{1}{c} = 1 \\[ 7pt ]
&\text{であるとき、$a \ , \ b \ , \ c$ のうち少なくとも} \\[ 5pt ]
&\text{$1$ つは $1$ であることを証明せよ。}
\end{align*}
問の解答・解説
結論から方針を立てるために、結論を式で表します。そのために表現を言い換えてみましょう。
「少なくとも1つは…」という表現の言い換え
a,b,cのうち少なくとも1つは1である。
⇔ a=1 または b=1 または c=1
ここまではすぐに言い換えることができます。ただ、これを数式で表すのは難しいです。abc=1では上手くいきません。この等式だと1以外の数でも成り立つからです。
数式にしやすい表現にさらに言い換えます。「~=0」の形を意識しましょう。ここがポイントです。
問の解答例 1⃣
\begin{align*}
&a \ , \ b \ , \ c \ \text{のうち少なくとも} \\[ 5pt ]
&\text{$1$ つは $1$ であることは、} \\[ 5pt ]
&a-1 \ , \ b-1 \ , \ c-1 \ \text{のうち} \\[ 5pt ]
&\text{少なくとも $1$ つは $0$ である} \\[ 5pt ]
&\text{ことと同値である。} \\[ 5pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad \left(a-1 \right) \left(b-1 \right) \left(c-1 \right) = 0 \\[ 7pt ]
&\text{が成り立つことを示せばよい。}
\end{align*}
「~のうち少なくとも1つが0である」という表現に置き換えることができれば、この問題も例題と同じ要領で解くことができるようになります。
目標となる式が分かったので、与えられた条件から式を導きます。記述するとすればここからです。
問の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \frac{1}{a} +\frac{1}{b} +\frac{1}{c} = 1 \\[ 7pt ]
&\text{の両辺に} \\[ 5pt ]
&\quad abc \ ( \neq 0) \\[ 7pt ]
&\text{を掛けると} \\[ 5pt ]
&\quad \left(\frac{1}{a} +\frac{1}{b} +\frac{1}{c} \right) \cdot abc = 1 \cdot abc \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad bc +ca +ab = abc \\[ 7pt ]
&\quad \left(a+b \right)c +ab \left(1-c \right) =0 \quad \cdots \text{①}
\end{align*}
もう1つの条件を①式に代入して、文字の種類を減らします。
問の解答例 3⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \left(a+b \right)c +ab \left(1-c \right) =0 \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\text{$a+b+c=1$ より} \\[ 5pt ]
&\quad c=1-\left(a+b \right) \\[ 7pt ]
&\text{これを①に代入すると} \\[ 5pt ]
&\quad \left(a+b \right)\left\{ 1-\left(a+b \right) \right\} +ab \left\{ 1-1+\left(a+b \right) \right\} =0 \\[ 10pt ]
&\quad \left(a+b \right)\left\{ 1-\left(a+b \right) \right\} +ab \left(a+b \right) =0 \\[ 10pt ]
&\quad \left(a+b \right)\left\{ 1-\left(a+b \right)+ab \right\} =0 \\[ 10pt ]
&\quad \left(a+b \right) \left(ab-a-b+1 \right) =0 \\[ 10pt ]
&\quad \left(a+b \right)\left\{ a \left(b-1 \right)-\left(b-1 \right) \right\} =0 \\[ 10pt ]
&\quad \left(a+b \right) \left( b-1 \right) \left(a-1 \right) =0 \\[ 10pt ]
&\text{$a+b=1-c$ より} \\[ 10pt ]
&\quad \left(1-c \right) \left(b-1 \right) \left(a-1 \right) =0 \\[ 10pt ]
&\text{よって} \\[ 10pt ]
&\quad \left(c-1 \right) \left(b-1 \right) \left(a-1 \right) =0
\end{align*}
目標の式を導くことができました。この式について吟味します。
問の解答例 4⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad \left(c-1 \right) \left(b-1 \right) \left(a-1 \right) =0 \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad c-1=0 \ \text{または} \ b-1=0 \ \text{または} \ a-1=0 \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad c=1 \ \text{または} \ b=1 \ \text{または} \ a=1 \\[ 7pt ]
&\text{したがって、$a \ , \ b \ , \ c$ のうち} \\[ 5pt ]
&\text{少なくとも $1$ つは $1$ である。}
\end{align*}
結論をどのような式で表すかがポイントです。ここがしっかりしていないと、上手く証明することができないので注意しましょう。
「少なくとも1つは…」という表現の言い換え
a,b,cのうち少なくとも1つは1である。
⇔ a=1 または b=1 または c=1
⇔ a-1=0 または b-1=0 または c-1=0 (←ここがポイント!)
⇔ (a-1)(b-1)(c-1)=0 … (※)
問の別解例
上述の解答例では、条件として与えられた等式を用いて、結論を表す式を導きました。ただ、条件として等式がもう1つ与えられており、それも用いる必要がありました。そこに難しさを感じるかもしれません。
今後を考えると、このくらいの式変形はできた方が良いのですが、別解例では目標の式を導かずに解きます。
問の別解例 1⃣
\begin{align*}
&\quad \frac{1}{a} +\frac{1}{b} +\frac{1}{c} = 1 \\[ 7pt ]
&\text{の両辺に} \\[ 5pt ]
&\quad abc \ ( \neq 0) \\[ 7pt ]
&\text{を掛けると} \\[ 5pt ]
&\quad \left(\frac{1}{a} +\frac{1}{b} +\frac{1}{c} \right) \cdot abc = 1 \cdot abc \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad bc +ca +ab = abc \quad \cdots \text{①}
\end{align*}
ここから本格的に異なります。結論を表す式の値が0であることを計算して示します。
問の別解例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad bc +ca +ab = abc \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\text{ここで、} \\[ 5pt ]
&\quad P=\left(c-1 \right) \left(b-1 \right) \left(a-1 \right) \\[ 7pt ]
&\text{とおき、右辺を展開して整理すると} \\[ 5pt ]
&\quad P=abc-\left(bc+ca+ab \right) +\left(a+b+c \right)-1
\end{align*}
式の値を求めるために、条件として与えられた2つの等式を利用します。
問の別解例 3⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad bc +ca +ab = abc \quad \cdots \text{①} \\[ 7pt ]
&\quad \vdots \\[ 7pt ]
&\quad P=abc-\left(bc+ca+ab \right) +\left(a+b+c \right)-1 \\[ 7pt ]
&a+b+c=1 \ \text{と①より} \\[ 5pt ]
&\quad P=abc-abc +1-1=0 \\[ 7pt ]
&\text{すなわち} \\[ 5pt ]
&\quad \left(c-1 \right) \left(b-1 \right) \left(a-1 \right)= 0 \\[ 7pt ]
&\text{よって} \\[ 5pt ]
&\quad c-1=0 \ \text{または} \ b-1=0 \ \text{または} \ a-1=0 \\[ 7pt ]
&\text{したがって、$a \ , \ b \ , \ c$ のうち} \\[ 5pt ]
&\text{少なくとも $1$ つは $1$ である。}
\end{align*}
結論を表す式が分かったら、その式の値が0であることを示す方針で解いています。この解法では、条件として与えられた等式は、式の値を求めるために利用しています。
与えられた等式を変形して結論の式を導かなくても良いのが別解です。こちらの方が直接的なので、取り組みやすいかもしれません。
ただし、どのような式を示せば証明できるのかを知っておく必要があります。ですから、解答例と別解例のどちらであっても、結論から解決の方針を考えることに違いはありません。
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- 証明問題では、結論から解決の方針を立てよう。
- 結論を式で表せるようになろう。
- 条件として与えられた等式から、結論を表す式を導こう。
- 結論を表す式を導くのが難しいと感じたら、結論を表す式の値を求めよう。