集合と論理|背理法について

数学1

集合と論理

背理法を扱った問題を解いてみよう

次の問題を考えてみましょう。

背理法を扱った問題第1問
問1
背理法を扱った問題第2問
問2

2問とも無理数を扱った証明問題なので、迷うことなく背理法を利用しましょう。

問1の解答・解説

問1

$1+\sqrt{3}$ は無理数であることを証明せよ。ただし、$\sqrt{3}$ は無理数であることを用いてよい。

問1は、与えられた数が無理数であることを証明する問題です。このような問題では、背理法を利用します。

但し書きの条件はそのままに、結論「与えられた数が無理数である」ことが正しくない、言い換えると、結論の否定「与えられた数が有理数である」ことが正しいと仮定します。

問1の解答例 1⃣

$1+\sqrt{3}$ が有理数であると仮定する。

このとき、有理数 $a$ を用いて

\begin{align*} \quad 1+\sqrt{3}=a \end{align*}

と表せる。

結論の否定と、但し書きの条件との矛盾を引き出します。例題と同じ流れで進めていきましょう。

問1の解答例 2⃣

\begin{align*} \quad &\vdots \\[ 7pt ] \quad 1 &+\sqrt{3}=a \\[ 7pt ] \quad &\vdots \end{align*}

等式を変形すると

\begin{align*} \quad \sqrt{3}=a-1 \quad \cdots \text{①} \end{align*}

$a$ は有理数であるので、①の右辺は有理数である。

よって、①の左辺は有理数となり、$\sqrt{3}$ が無理数であることに矛盾する。

したがって、$1+\sqrt{3}$ は無理数である。

例題よりも両辺の関係が分かりやすいのではないでしょうか。

①式において、左辺は無理数ですが、右辺は有理数なので、等式が成り立っていません。矛盾が生じていることが分かります。

問1のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。

背理法を扱った問題第1問の解答例
問1のポイントと解答例
問題に但し書きがあるとき、但し書きの内容を利用することを前提に考えよう。

問2の解答・解説

問2

$\sqrt{2}+\sqrt{3}$ は無理数であることを証明せよ。ただし、$\sqrt{6}$ は無理数であることを用いてよい。

問2も背理法を利用する証明問題です。

但し書きの条件はそのままに、結論「与えられた数が無理数である」ことが正しくない、言い換えると、結論の否定「与えられた数が有理数である」ことが正しいと仮定します。

問2の解答例 1⃣

$\sqrt{2}+\sqrt{3}$ が有理数であると仮定する。

このとき、有理数 $a$ を用いて

\begin{align*} \quad \sqrt{2}+\sqrt{3}=a \end{align*}

と表せる。

問1と同じように、等式を変形したいのですが、少し注意が必要です。その理由は、等式を変形してみると分かります。

問1と同じような変形をしてみると…

\begin{align*} \quad \sqrt{2}+\sqrt{3} &= a \\[ 7pt ] \sqrt{3} &= a-\sqrt{2} \end{align*}

問1と同じ要領で変形すると、両辺がともに無理数になるので、等式が成り立ってしまいます。これでは矛盾を引き出すことができていません。

ここで、但し書きの条件に注目します。なぜ、6の平方根が出てくるのかを考えましょう。

6の平方根が出てくる計算

\begin{align*} \quad \sqrt{2} \times \sqrt{3} = \sqrt{6} \end{align*}

但し書きの無理数が出てくるのは、両辺を2乗したときです。

問2の解答例 2⃣

\begin{align*} \quad &\vdots \\[ 7pt ] \quad \sqrt{2} &+\sqrt{3}=a \\[ 7pt ] \quad &\vdots \end{align*}

等式の両辺を $2$ 乗すると

\begin{align*} \quad \left(\sqrt{2}+\sqrt{3} \right)^{2}=a^{2} \end{align*}

整理すると

\begin{align*} \quad \sqrt{6}=\frac{1}{2} \left(a^{2}-5 \right) \quad \cdots \text{①} \end{align*}

$a$ は有理数であるので、①の右辺は有理数である。

よって、①の左辺は有理数となり、$\sqrt{6}$ が無理数であることに矛盾する。

したがって、$\sqrt{2}+\sqrt{3}$ は無理数である。

(無理数)=(有理数)の形をつくるための変形のやり方が問1とは異なります。

問1のように、移項だけで済む問題もあります。それに対して、問2のように、両辺を2乗してから移項する問題もあります。目標は同じであっても、変形のやり方が異なるので気を付けましょう。

問2のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。

背理法を扱った問題第2問の解答例
問2のポイントと解答例

問1と問2は、基本方針が同じでも、変形の手順が異なります。

このような類題は、基本方針を念頭に置きつつ、相違点を意識することが大切です。類題を解くことのメリットは、パターン化できることですので、しっかりと分類して得点源にしましょう。

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さいごに、もう一度、頭の中を整理しよう

  • 背理法は結論が正しくないと仮定することが出発点。
  • 背理法は仮定から矛盾が生じることを示す。
  • 背理法を利用した証明は、無理数を扱った証明が頻出。
  • 無理数を扱った証明問題では、(無理数)=(有理数)を導く。