集合と論理|命題について
命題を扱った問題を解いてみよう
次の問題を考えてみましょう。
問1(1)の解答・解説
問1(1)
次の命題の真偽を調べよ。
実数 $x$ について
\begin{align*} \quad x \geqq 2 \ \Rightarrow \ x \geqq 1 \end{align*}問1は、命題を扱った問題です。その中でも基本的な部類に入ります。このような基本的な問題から身に付けたいことがあります。
それは、命題の真偽を考えるとき、集合と要素に置き換え、集合の包含関係を調べることです。これが命題の真偽を考えるときの基本作業になります。
集合の包含関係を調べるには、ベン図が有効ですが、問1(1)の仮定と結論は、ともに変数xの不等式が与えられています。このような問題では、ベン図の代わりに数直線を利用して集合の包含関係を調べます。
仮定を満たす実数と、結論を満たす実数の集まりをそれぞれ集合P,Qとして、2つの集合P,Qの包含関係を調べます。
問1(1)の解答例
$x \geqq 2$ を満たす実数の集まりを集合 $P$ とする。
また、$x \geqq 1$ を満たす実数の集まりを集合 $Q$ とする。
このとき
\begin{align*} \quad P \ \subset \ Q \end{align*}より、$x \geqq 2$ を満たす実数は、すべて $x \geqq 1$ を満たす。
よって、命題は真である。
集合の包含関係から、仮定を満たす実数xの値は、すべて結論を満たすことが分かりました。2つの集合に包含関係を調べるとき、数直線も利用するとより正確に解けるでしょう。
問1(1)のポイントと解答例をまとめると解答例は以下のようになります。
問1(2)の解答・解説
問1(2)
次の命題の真偽を調べよ。
$3$ の倍数は $6$ の倍数である。
問1(2)も同様に、集合や要素を使って調べたいところですが、要素が無数に存在します。
こんなとき、反例の有無を調べます。真よりも偽である根拠(=反例)を探す方が楽なときがあります。
仮定「3の倍数」が真となる数には、たとえば9や15があります。これらは、結論「6の倍数」を満たす数ではありません。つまり、9や15は反例になります。
問1(2)の解答例
$3$ の倍数には、たとえば
\begin{align*} \quad 3 \ , \ 6 \ , \ 9 \ , \ 12 \ , \ 15 \ , \cdots \end{align*}がある。このうち、$9$ や $15$ は $6$ の倍数ではない。
よって、命題は偽である。
このことから、命題「3の倍数は6の倍数である」はつねに正しいわけではないので、偽となります。なお、反例はいくつも挙げる必要はなく、一例を挙げます。
問1(2)のポイントと解答例をまとめると解答例は以下のようになります。
命題の真偽を考えるとき、反例の有無を調べることも解法の1つ。要素が無限にあるとき、反例を探してみよう。
第2問(1)の解答・解説
問2(1)
次の条件の否定を求めよ。
\begin{align*} \quad x \lt 3 \end{align*}問2は、条件の否定を求める問題です。否定の記号や数直線を上手に使って記述しましょう。
問2(1)は、条件「x<3」の否定を求める問題です。条件が真となる変数xの値(=要素)が属している集合を考えます。この集合を数直線上に表します。
条件「x<3」の否定は、x<3を除く範囲です。
問2(1)の解答例
$x \lt 3$ の否定は
\begin{align*} \quad \overline{x \lt 3} \end{align*}と表せる。
これは $x \lt 3$ を除く範囲であるので
\begin{align*} \quad x \geqq 3 \end{align*}数直線を利用すれば簡単に求めることができます。命題に不等式が含まれるときは、数直線を利用しましょう。
問2(1)のポイントと解答例をまとめると解答例は以下のようになります。
第2問(2)の解答・解説
問2(2)
次の条件の否定を求めよ。
\begin{align*} \quad x \lt -2 \ \text{または} \ 1 \leqq x \end{align*}問2(2)では、「ド・モルガンの法則」を利用することができます。数直線で確認しながら解くと良いでしょう。
ド・モルガンの法則を利用して、命題を書き換えます。
問2(2)の解答例 1⃣
\begin{align*} \quad x \lt -2 \ \text{または} \ 1 \leqq x \end{align*}の否定は
\begin{align*} \quad \overline{x \lt -2 \ \text{または} \ 1 \leqq x} \end{align*}ここで、ド・モルガンの法則より
\begin{align*} &\quad \overline{x \lt -2 \ \text{または} \ 1 \leqq x} \\[ 7pt ] &\Leftrightarrow \ \overline{x \lt -2} \ \text{かつ} \ \overline{1 \leqq x} \end{align*}これで終わりではありません。否定の記号なしで表さなければなりません。
問2(2)の解答例 2⃣
\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\Leftrightarrow \ \overline{x \lt -2} \ \text{かつ} \ \overline{1 \leqq x} \end{align*}ここで
\begin{align*} &\quad \overline{x \lt -2} \ \Leftrightarrow \ x \geqq -2 \\[ 7pt ] &\quad \overline{1 \leqq x} \ \Leftrightarrow \ 1 \gt x \end{align*}より
\begin{align*} \quad -2 \leqq x \ \text{かつ} \ x \lt 1 \end{align*}したがって、求める否定は
\begin{align*} \quad -2 \leqq x \lt 1 \end{align*}数直線を利用しないと、-2≦xかつx<1が出てきたところで終わりそうです。-2≦xかつx<1は、閉じた範囲になるので、1つの不等式で表せます。注意しましょう。
問2(2)のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
変数xの値の範囲は閉じた範囲になるが、数式だけでは見落としやすいので、数直線で可視化しながら解こう。
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さいごに、もう一度、頭の中を整理しよう
- 命題は、正しいか正しくないかを判定できる文や式のこと。
- 命題のうち、変数を用いたものを条件という。
- 命題「p⇒q」において、条件pを仮定、条件qを結論という。
- 命題「p⇒q」の真偽は、条件pを満たす値が、条件qも満たす値かどうかを考えれば良い。
- 「命題p⇒qが真である」とき、条件pを満たす値を要素とする集合Pは、条件qを満たす値を要素とする集合Qに含まれる(P⊂Q)。
- 条件pの否定を満たす値の集合は、条件pを満たす値の集合Pの補集合となる。
- 命題でも、ド・モルガンの法則を利用できる。
- ベン図や数直線を用いて集合の包含関係を考えることで、命題の真偽を判定できる。