集合と論理|逆、裏、対偶について
逆、裏、対偶を扱った問題を解いてみよう
次の問題を考えてみましょう。
問1の解答・解説
問1
次の命題の逆、裏、対偶をつくり、それらの真偽を調べよ。
\begin{align*} \quad x \lt 0 \ \Rightarrow \ x \lt 2 \end{align*}問1は、与えられた命題の逆、裏、対偶とその真偽を求める問題です。
命題の逆は、仮定と結論を入れ替えたものです。命題の裏は、仮定と結論をそれぞれ否定したものです。
命題の対偶は、逆の裏を求めるか、裏の逆を求めるかのどちらかで得られます。
図からも分かるように、対偶は必ず逆と裏を経てつくられます。
命題の逆、裏、対偶をつくると以下のようになります。
問1の解答例 1⃣
命題「 $x \lt 0 \ \Rightarrow \ x \lt 2$ 」の逆、裏、対偶を求めると
命題の逆「 $x \lt 2 \ \Rightarrow \ x \lt 0$ 」
命題の裏「 $x \geqq 0 \ \Rightarrow \ x \geqq 2$ 」
命題の対偶「 $x \geqq 2 \ \Rightarrow \ x \geqq 0$ 」
命題の逆、裏、対偶が分かったら、それぞれの真偽を調べます。仮定や結論が不等式で与えられています。このような場合、数直線を利用すると、真偽を簡単に調べることができます。
問1の解答例 2⃣
命題の逆「 $x \lt 2 \ \Rightarrow \ x \lt 0$ 」の真偽を調べると
$x \lt 2$ を満たす実数は、$x \lt 0$ を満たすとは限らない。
反例は $x=1$ のとき。
よって、命題の逆は偽である。
命題の裏「 $x \geqq 0 \ \Rightarrow \ x \geqq 2$ 」の真偽を調べると
$x \geqq 0$ を満たす実数は、$x \geqq 2$ を満たすとは限らない。
反例は $x=1$ のとき。
よって、命題の裏は偽である。
命題の対偶「 $x \geqq 2 \ \Rightarrow \ x \geqq 0$ 」の真偽を調べると
$x \geqq 2$ を満たす実数は、すべて $x \geqq 0$ を満たす。
よって、命題の対偶は真である。
問1のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
命題の逆、裏、対偶は、十分条件や必要条件を扱った問題とも関係しています。
一般に、出題される問題では、命題の真偽がはっきりしません。ですから、まず命題の真偽を調べる必要があります。このとき、対偶を利用することがあります。そして、その真偽をもとに十分条件か必要条件かを吟味します。
問2の解答・解説
問2
次の命題を証明せよ。
整数 $n$ について、$n^{2}$ が偶数ならば、$n$ は偶数である。
問2は、与えられた命題を証明する問題です。もう少しことばを補うと、「与えられた命題が真である(=正しい)ことを証明しなさい」という問題です。本質的には、命題の真偽を調べる問題と変わりません。
証明問題では、与えられた事柄が成り立つことは当たり前なので、この問題の命題が真であることは決まっています。
しかし、この命題の真偽を調べるのは少し面倒です。
仮定を見ると「n2が偶数」とあります。基本通りにn2=2kとおいてしまうと、変数nの値が無理数になります。n2を上手に表せないと上手くいきそうにありません。
このようなとき、命題の対偶を利用します。与えられた命題の対偶を求めます。
問2の解答例 1⃣
命題「整数 $n$ について、$n^{2}$ が偶数ならば、$n$ は偶数である。」の対偶は
「整数 $n$ について、$n$ が奇数ならば、$n^{2}$ は奇数である。」
となる。
命題の対偶をつくると、仮定が「変数nが奇数」となります。これなら無理数が出てきません。
変数nを奇数であることが分かる式で表し、n2に代入します。実際に計算し、結論が成り立つかを調べます。
問2の解答例 2⃣
対偶の真偽を調べる。
$n$ が奇数であるとき
\begin{align*} \quad n=2k+1 \end{align*}とおく。ただし、$k$ は整数。
このとき
\begin{align*} \quad n^{2} &=\left(2k+1 \right)^{2} \\[ 7pt ] &=4k^{2}+4k+1 \\[ 7pt ] &=2\left(2k^{2}+2k \right)+1 \end{align*}より、$n^{2}$ は奇数である。
よって、命題の対偶は成り立つ。
対偶が証明されたので、もとの命題も成り立つ。
命題とその対偶の真偽は一致することを利用して、もとの命題の真偽を間接的に判定します。
問2のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
証明問題では、具体的な数を使わず、式で一般化して証明します。整数問題もセンター試験に出題されるようになりましたが、高校の授業では対策が充分ではないので、自分でしっかり準備しておくことが必要です。
偶数は2の倍数、奇数は(偶数±1)。kを整数とすると、偶数は2k、奇数は2k±1と表せる。
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さいごに、もう一度、頭の中を整理しよう
- 逆、裏、対偶は、もとの命題からつくる。
- もとの命題の真偽と一致するのは、対偶だけ。
- 対偶の真偽を利用して、もとの命題の真偽を求めることができる。
- 必要・十分条件を扱った問題との関係を把握しておこう。
- 証明問題に必要な数の定義や性質を覚えておこう。