式と証明|相加平均・相乗平均を利用した不等式の証明について

数学2

数学2 式と証明

相加平均と相乗平均を利用する不等式の証明を扱った問題を解いてみよう

次の問題を解いてみましょう。

問1

$a \ , \ b \ , \ c \ , \ d$ は正の数とする。次の不等式が成り立つことを証明せよ。

また、等号が成り立つのはどのようなときか。

\begin{align*} &(1) \quad 4a+\frac{9}{a} \geqq 12 \\[ 10pt ] &(2) \quad \left( \frac{b}{a}+\frac{d}{c} \right) \left( \frac{a}{b}+\frac{c}{d} \right) \geqq 4 \\[ 10pt ] &(3) \quad a+\frac{4}{a+1} \geqq 3 \end{align*}

問2

$x \gt 1$ のとき、次の式の最小値を求めよ。

\begin{equation*} \quad x+\frac{1}{x-1} \end{equation*}

問1(1)の解答・解説

問1(1)

$a \ , \ b \ , \ c \ , \ d$ は正の数とする。次の不等式が成り立つことを証明せよ。

また、等号が成り立つのはどのようなときか。

\begin{equation*} \quad 4a+\frac{9}{a} \geqq 12 \end{equation*}

左辺には、積が定数となる逆数の和があります。相加平均と相乗平均の大小関係を利用します。

問1(1)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\quad 4a \gt 0 \ , \ \frac{9}{a} \gt 0 \\[ 7pt ] &\text{であるので、相加平均と} \\[ 5pt ] &\text{相乗平均の大小関係より} \\[ 5pt ] &\quad 4a+\frac{9}{a} \geqq 2\sqrt{4a \cdot \frac{9}{a}} \end{align*}

不等式の右辺を整理します。

問1(1)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad 4a+\frac{9}{a} \geqq 2\sqrt{4a \cdot \frac{9}{a}} \\[ 7pt ] &\text{右辺を整理すると} \\[ 5pt ] &\quad 2\sqrt{4a \cdot \frac{9}{a}} = 2 \cdot 6 =12 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad 4a+\frac{9}{a} \geqq 12 \end{align*}

等号が成り立つ条件を求めます。

問1(1)の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad 4a+\frac{9}{a} \geqq 12 \\[ 7pt ] &\text{また、等号が成り立つのは} \\[ 5pt ] &\quad 4a = \frac{9}{a} \\[ 7pt ] &\text{のときである。} \\[ 5pt ] &\text{これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad a^{\scriptsize{2}} = \frac{9}{4} \\[ 7pt ] &\text{より、$a \gt 0$ であるので} \\[ 5pt ] &\quad a = \frac{3}{2} \\[ 7pt ] &\text{のとき、等号が成り立つ。} \end{align*}

(1)では、与式を変形しなくても関係をそのまま利用できます。最も基本的な問題なので、完答できるようにしましょう。

問1(2)の解答・解説

問1(2)

$a \ , \ b \ , \ c \ , \ d$ は正の数とする。次の不等式が成り立つことを証明せよ。

また、等号が成り立つのはどのようなときか。

\begin{equation*} \quad \left( \frac{b}{a}+\frac{d}{c} \right) \left( \frac{a}{b}+\frac{c}{d} \right) \geqq 4 \end{equation*}

左辺は、多項式の積です。分数があるので、逆数のようですが、そうでもありません。(2)は、例題1(2)と同じタイプの問題です。

このままでは上手くいかないので、左辺を展開して整理します。

問1(2)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\text{与式の左辺を展開すると} \\[ 5pt ] &\qquad \left( \frac{b}{a}+\frac{d}{c} \right) \left( \frac{a}{b}+\frac{c}{d} \right) \\[ 10pt ] &\quad = \frac{b}{a} \cdot \frac{a}{b} +\frac{b}{a} \cdot \frac{c}{d} +\frac{d}{c} \cdot \frac{a}{b} + \frac{d}{c} \cdot \frac{c}{d} \\[ 10pt ] &\quad = \frac{bc}{ad} +\frac{ad}{bc} +2 \end{align*}

展開すると、やっと積が定数となる逆数の和ができました。その代わりに定数項ができましたが、後回しです。

相加平均と相乗平均の大小関係を利用します。

問1(2)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad = \frac{bc}{ad} +\frac{ad}{bc} +2 \\[ 7pt ] &\text{ここで} \\[ 5pt ] &\quad \frac{bc}{ad} \gt 0 \ , \ \frac{ad}{bc} \gt 0 \\[ 7pt ] &\text{であるので、相加平均と} \\[ 5pt ] &\text{相乗平均の大小関係より} \\[ 5pt ] &\quad \frac{bc}{ad} +\frac{ad}{bc} \geqq 2\sqrt{\frac{bc}{ad} \cdot \frac{ad}{bc}} \end{align*}

不等式の右辺を整理します。

問1(2)の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \frac{bc}{ad} +\frac{ad}{bc} \geqq 2\sqrt{\frac{bc}{ad} \cdot \frac{ad}{bc}} \\[ 7pt ] &\text{右辺を整理すると} \\[ 5pt ] &\quad 2\sqrt{\frac{bc}{ad} \cdot \frac{ad}{bc}} = 2 \cdot 1 =2 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad \frac{bc}{ad} +\frac{ad}{bc} \geqq 2 \end{align*}

展開後の左辺にしないと、与式に戻りません。展開後の左辺に揃えるために、後回しにした定数項を両辺に加えます。

問1(2)の解答例 4⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \frac{bc}{ad} +\frac{ad}{bc} \geqq 2 \\[ 7pt ] &\text{両辺に $2$ を加えると} \\[ 5pt ] &\quad \frac{bc}{ad} +\frac{ad}{bc} +2 \geqq 2+2 \\[ 7pt ] &\text{より} \\[ 5pt ] &\quad \frac{bc}{ad} +\frac{ad}{bc}+2 \geqq 4 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 10pt ] &\quad \left( \frac{b}{a}+\frac{d}{c} \right) \left( \frac{a}{b}+\frac{c}{d} \right) \geqq 4 \end{align*}

最後に、等号が成り立つ条件を求めます。

問1(2)の解答例 5⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad \left( \frac{b}{a}+\frac{d}{c} \right) \left( \frac{a}{b}+\frac{c}{d} \right) \geqq 4 \\[ 7pt ] &\text{また、等号が成り立つのは} \\[ 5pt ] &\quad \frac{bc}{ad} = \frac{ad}{bc} \\[ 7pt ] &\text{のときである。} \\[ 5pt ] &\text{これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad \left( ad \right)^{\scriptsize{2}} = \left( bc \right)^{\scriptsize{2}} \\[ 7pt ] &ad \gt 0 \ , \ bc \gt 0 \ \text{であるので} \\[ 5pt ] &\quad ad = bc \\[ 7pt ] &\text{のとき、等号が成り立つ。} \end{align*}

分数イコール逆数ではないので気を付けましょう。また、本問のような問題では、まず展開するのが定石です。

問1(3)の解答・解説

問1(3)

$a \ , \ b \ , \ c \ , \ d$ は正の数とする。次の不等式が成り立つことを証明せよ。

また、等号が成り立つのはどのようなときか。

\begin{equation*} \quad a+\frac{4}{a+1} \geqq 3 \end{equation*}

(3)は例題2と同じパターンの問題です。

不等式の左辺を見て分かるように、積が定数となる逆数の和ではありません。分数の分母が多項式であることに注目しましょう。

分数の分母に合わせるように、不等式の左辺を変形しましょう。

問1(3)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\text{与式の左辺より} \\[ 5pt ] &\quad a+\frac{4}{a+1} = a+1+\frac{4}{a+1}-1 \end{align*}

定数項ができても構いません。定数項の処理は後回しです。

相加平均と相乗平均の大小関係を利用します。

問1(3)の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad a+\frac{4}{a+1} = a+1+\frac{4}{a+1}-1 \\[ 7pt ] &\text{ここで} \\[ 5pt ] &\quad a+1 \gt 0 \ , \ \frac{4}{a+1} \gt 0 \\[ 7pt ] &\text{であるので、相加平均と} \\[ 5pt ] &\text{相乗平均の大小関係より} \\[ 5pt ] &\quad a+1+\frac{4}{a+1} \geqq 2\sqrt{\left( a+1 \right) \cdot \frac{4}{a+1}} \end{align*}

不等式の右辺を整理します。

問1(3)の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad a+1+\frac{4}{a+1} \geqq 2\sqrt{\left( a+1 \right) \cdot \frac{4}{a+1}} \\[ 7pt ] &\text{右辺を整理すると} \\[ 5pt ] &\quad 2\sqrt{\left( a+1 \right) \cdot \frac{4}{a+1}} = 2 \cdot 2 =4 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad a+1+\frac{4}{a+1} \geqq 4 \end{align*}

変形後の左辺にしないと、与式に戻りません。変形後の左辺に揃えるために、後回しにした定数項を両辺に加えます。定数項の処理を忘れやすいので注意しましょう。

問1(3)の解答例 4⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad a+1+\frac{4}{a+1} \geqq 4 \\[ 7pt ] &\text{両辺に $-1$ を加えると} \\[ 5pt ] &\quad a+1+\frac{4}{a+1}-1 \geqq 4-1 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad a+\frac{4}{a+1} \geqq 3 \end{align*}

最後に、等号が成り立つ条件を求めます。

問1(3)の解答例 5⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad a+\frac{4}{a+1} \geqq 3 \\[ 7pt ] &\text{また、等号が成り立つのは} \\[ 5pt ] &\quad a+1 = \frac{4}{a+1} \\[ 7pt ] &\text{のときである。これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad \left(a+1 \right)^{\scriptsize{2}} = 4 \\[ 7pt ] &a+1 \gt 0 \ \text{であるので} \\[ 5pt ] &\quad a+1 = 2 \\[ 7pt ] &\text{すなわち} \\[ 5pt ] &\quad a=1 \\[ 7pt ] &\text{のとき、等号が成り立つ。} \end{align*}

与式を展開したり、変形したりする場合、定数項の存在を忘れがちです。定数項の処理をしないと、与えられた不等式を導けないので注意しましょう。

問2の解答・解説

問2

$x \gt 1$ のとき、次の式の最小値を求めよ。

\begin{equation*} \quad x+\frac{1}{x-1} \end{equation*}

問2は、式の最小値を求める問題なので、例題2と同じパターンの問題です。

与式に少し手を加えて、積が定数となる逆数の和を作ります。

問2の解答例 1⃣

\begin{align*} &\text{与式より} \\[ 5pt ] &\quad x+\frac{1}{x-1} = x-1+\frac{1}{x-1}+1 \end{align*}

相加平均と相乗平均の関係を利用するためには、積が定数となる逆数の和が必要です。定数項のことは気にせずに、逆数の和を作ることを優先しましょう。

逆数の和ができたので、相加平均と相乗平均の大小関係を利用します。

問2の解答例 2⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x+\frac{1}{x-1} = x-1+\frac{1}{x-1}+1 \\[ 7pt ] &\text{ここで、$x \gt 1$ より} \\[ 5pt ] &\quad x-1 \gt 0 \ , \ \frac{1}{x-1} \gt 0 \\[ 7pt ] &\text{であるので、相加平均と} \\[ 5pt ] &\text{相乗平均の大小関係より} \\[ 5pt ] &\quad x-1 +\frac{1}{x-1} \geqq 2\sqrt{\left(x-1 \right) \cdot \frac{1}{x-1}} \end{align*}

不等式の右辺を整理します。

問2の解答例 3⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x-1 +\frac{1}{x-1} \geqq 2\sqrt{\left(x-1 \right) \cdot \frac{1}{x-1}} \\[ 7pt ] &\text{右辺を整理すると} \\[ 5pt ] &\quad 2\sqrt{\left(x-1 \right) \cdot \frac{1}{x-1}} = 2 \cdot 1 = 2 \\[ 7pt ] &\text{よって} \\[ 5pt ] &\quad x-1 +\frac{1}{x-1} \geqq 2 \end{align*}

変形後の左辺にしないと、与式に戻りません。変形後の左辺に揃えるために、後回しにした定数項を両辺に加えます。

問2の解答例 4⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x-1 +\frac{1}{x-1} \geqq 2 \\[ 7pt ] &\text{両辺に $1$ を加えると} \\[ 5pt ] &\quad x-1 +\frac{1}{x-1}+1 \geqq 2+1 \\[ 7pt ] &\text{したがって} \\[ 5pt ] &\quad x+\frac{1}{x-1} \geqq 3 \end{align*}

不等式の左辺が与式になりました。不等式の左辺が与式と同じであることを必ず確認しましょう。

与式が最小値となるのは、不等式において等号が成り立つときです。等号が成り立つ条件を求めます。

問2の解答例 5⃣

\begin{align*} &\quad \vdots \\[ 7pt ] &\quad x+\frac{1}{x-1} \geqq 3 \\[ 7pt ] &\text{また、等号が成り立つのは} \\[ 5pt ] &\quad x-1 = \frac{1}{x-1} \\[ 7pt ] &\text{のときである。} \\[ 5pt ] &\text{これを解くと} \\[ 5pt ] &\quad \left(x-1 \right)^{\scriptsize{2}} = 1 \\[ 7pt ] &x-1 \gt 0 \ \text{であるので} \\[ 5pt ] &\quad x-1 = 1 \\[ 7pt ] &\text{すなわち} \\[ 5pt ] &\quad x= 2 \\[ 7pt ] &\text{したがって} \\[ 5pt ] &\quad x=2 \ \text{のとき最小値} \ 3 \end{align*}

これまでの不等式の証明では、与式の左辺と右辺の差を求め、その差の正負を調べました。差の正負から、左辺と右辺の大小関係が分かります。直接的で分かりやすい、基本的な解法です。

それに対して、相加平均と相乗平均の大小関係を利用する場合、積が定数となる2数を与式から決定します。そして、2数を公式に代入すると、与えられた不等式やそれに準じた不等式が出来上がります。

与式に近付けていくような解法になるので、基本的な解法とはアプローチの仕方が異なります。

相加平均と相乗平均の大小関係を利用する問題は、入試でも頻出で、分野をまたいで出題されます。正の数や逆数が出てきたら検討してみましょう。

正の数・分数(逆数)・不等式・最小値などが出てきたら、相加平均と相乗平均の関係を利用できないか検討しよう。

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さいごにもう一度まとめ

  • 正の数、逆数の和が含まれる不等式では、相加平均と相乗平均の大小関係を利用しよう。
  • 相加平均と相乗平均の大小関係は、2つの数や式が正であることが絶対条件
  • 逆数の和に近い形があれば、自分で変形しよう。
  • 逆数の積は1になることから、不等式の右辺は定数になる。
  • 最小値は等号が成り立つときの値。