図形の性質|重心について

数学A

数学A 図形の性質

重心を扱った問題を解いてみよう

次の問題を考えてみましょう。

重心を扱った問題その1
問1
重心を扱った問題その2
問2

問1の解答・解説

問1

図において、点 $G$ は $\triangle {ABC}$ の重心である。辺 $AB$ 上に点 $P$ をとるとき、$\triangle {BPG}$ と $\triangle {BPM}$ の面積比を求めよ。

問1では、△BPGと△BPMの面積比を求めます。

△BPGと△BPMにおいて、底辺をそれぞれBG,BMとすると、頂点Pから下した垂線の長さが高さとなります。ですから、△BPGと△BPMは高さが等しい三角形となります。

このことに気付けば、(面積比)=(底辺の比)を利用する方針が思い浮かぶでしょう。この関係から、△BPGと△BPMの面積比を求めるには、線分BGと線分BMの比を考えれば良いことが分かります。

一般に、1つの三角形を2つの三角形に分割した図形の場合、高さが等しくなる。高さが等しければ(面積比)=(底辺比)を利用できる。

線分BMは重心Gを通るので中線です。重心の性質から、重心Gは線分BMを2:1に内分します。この内分比を利用すれば、BGとBMの比を求めることができます。

問1の解答例 1⃣

$\triangle {BPG}$ と $\triangle {BPM}$ の高さはともに等しいので

\begin{align*} \quad \triangle {BPG} : \triangle {BPM} = BG: BM \end{align*}

が成り立つ。

ここで

\begin{align*} \quad BG : GM = 2:1 \end{align*}

より

\begin{align*} \quad BG : BM = 2 : 3 \end{align*}
重心を扱った問題問(1)の図
問1の図

底辺の比が面積比に等しいので、得られた比が面積比となります。

問1の解答例 2⃣

\begin{align*} &\vdots \\[ 7pt ] \quad BG &: BM = 2 : 3 \end{align*}

したがって

\begin{align*} \quad \triangle {BPG} : \triangle {BPM} = 2: 3 \end{align*}

問1のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。

重心を扱った問題問(1)の解答例
問1のポイントと解答例

問2の解答・解説

問2

平行四辺形 $ABCD$ について、$\triangle {ABC}$ の重心 $G$ と $\triangle {ADC}$ の重心 $G’$ は線分 $BD$ 上にあることを示せ。また、$BD:GG’$ を求めよ。

問2では、2つの重心が同一線分上にあることを証明します。また、線分の比を求めます。

まず、△ABCの重心Gと△ADCの重心G’が線分BD上にあることを証明します。

重心を通る線分を考えてみると、そのような線分は中線以外に思いつきません。

2つの重心が線分BD上にあるということは、重心を通る中線も線分BD上にあるということです。

言い換えれば、中線が線分BDに重なるということです。このことを示せないかを考えましょう。

重心を扱った問題問(2)の図
問2の図

図のように、平行四辺形の2つの対角線の交点をOとおきます。平行四辺形の対角線AC,BDは互いに他を二等分するという性質をもちます。

平行四辺形の対角線の性質

$2$ 本の対角線は互いに他を二等分するので

\begin{align*} \quad OA = OC \ , \ OB = OD \end{align*}

(※図の平行四辺形を参照)

この対角線の性質から、点Oは線分ACの中点になります。このとき、線分OBは△ABCにおける中線になり、線分ODは△ADCにおける中線になります。

線分OBが中線であれば、△ABCにおいて重心Gは線分OB上にあると言えます。

同様に、線分ODが中線であれば、△ADCにおいて重心G’は線分OD上にあると言えます。

重心を扱った問題問(2)の図
問2の図

さいごに、線分OB,ODはともに線分BDの一部であるので、重心G,G’は線分BD上にあることが示せます。

次に、BD:GG’を求めます。重心による中線の内分比を書き込めばすぐに分かります。

ここでは、OB=ODに注目して求めています。後述する記述例とは異なりますが、こんな答案もあることを知っておくと良いでしょう。

問2の解答例

$2$ 点 $G \ , \ G’$ は重心であるので

\begin{align*} \quad BG : GO = DG’ : G’O = 2:1 \end{align*}

$OB = OD$ より

\begin{align*} \quad BG = DG’ \ , \ GO = G’O \end{align*}

よって

\begin{align*} \quad BD : GG’ = \left(OB + OD \right) : \left(GO + G’O \right) \end{align*}

また、$OB : GO = OD : G’O = 3 : 1$ より

\begin{align*} \quad OB = 3GO \ , \ OD = 3G’O \end{align*}

よって

\begin{align*} \quad BD : GG’ &= \left(3GO + 3G’O \right) : \left(GO + G’O \right) \\[ 7pt ] &= 3\left(GO + G’O \right) : \left(GO + G’O \right) \end{align*}

したがって

\begin{align*} \quad BD : GG’ = 3 : 1 \end{align*}
重心を扱った問題問(2)の図
問2の図

線分の比を求めること自体はそれほど難しくありません。しかし、比を求める過程を記述するのは意外と難しいです。図形を扱った証明問題を多くこなしておいた方が良いでしょう。

問2のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。

重心を扱った問題問(2)の解答例
問2のポイントと解答例

図形の証明問題では、図形の定義や性質を上手に利用する必要があります。図形の定義や性質をしっかり覚えておきましょう。

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さいごに、もう一度、頭の中を整理しよう

  • 中線は三角形の頂点と対辺の中点とを結ぶ線分。
  • 重心は三角形の3本の中線の交点。
  • 重心は中線を頂点の方から2:1に内分する。
  • 重心を頂点にもつ3つの三角形は、面積が等しい。