図形と計量|正弦定理と余弦定理を扱った問題を解いてみよう

今回は、正弦定理や余弦定理を扱った問題を実際に解いてみましょう。
定理や公式は覚えるだけでなく、その使い方をマスターしなければ問題を解くことはできません。定理や公式は使ってこそです。
どんな条件のときに定理や公式を利用できるのか、しっかり把握することが大切です。覚えたくらいで満足しないようにしましょう。
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正弦定理や余弦定理を扱った問題を解いてみよう
基礎レベルの問題であれば、「正弦定理」などとタイトルが付いてることがあります。それが原因で、ネタが割れた状態で解くことになります。
基礎レベルの問題では、学習したことの使い方や問題のパターンを知ることが目的なので、使うネタが分かっているのは当然です。
ただ、問題のレベルが上がってくると、その辺りが巧妙に隠されています。そうなると、何を使えば良いか分かり辛くなってきます。
しかし、演習を重ねていくと、頭の中が整理されてきます。そこまで習熟度が上がると、問題文を読んだとき「あのパターンだな」と分かるようになります。
自分なりに問題をパターン化しておき、そのような問題では悩まずに秒殺しつつ、思考力や応用力を問われるような問題(楽しみたい問題)に時間を使えるようにしましょう。
正弦定理の使い方
問題を解く前に正弦定理の式を思い出してみましょう。
正弦定理
△ABC の外接円の半径を R とすると
asinA=bsinB=csinC=2R正弦定理の式は、一般に、4つの数量が等しいことを1つの等式にまとめて表します。ただし、実際に利用するとなると、2つの数量を選んで方程式を作ります。このとき、方程式の作り方には2パターンあります。
1つ目のパターンは、外接円の半径、角の大きさ、辺の長さの3つのうちどれかを求める使い方です。
角と辺は、対角と対辺の関係にあります。最も多く使われるのは、外接円の半径を求めるときです。
正弦定理の使い方パターン1
asinA=2RbsinB=2RcsinC=2R2つ目のパターンは、対角と対辺の関係にある2組から、角の大きさ、または辺の長さを求める使い方です。角が2つと辺が2つ使われた式なので、3つの数量が予め分かっていなければなりません。
正弦定理の使い方パターン2
asinA=bsinBbsinB=csinCcsinC=asinAどちらの使い方であっても、対角と対辺の関係に注目することが大切です。
正弦定理の使い方を整理できたところで、次の問題を解いてみましょう。
正弦定理を扱った問題を解いてみよう
問1(1)の解答・解説
問1(1)
△ABC において、次の値を求めよ。
b=6 , A=45∘ , B=30∘のとき a
問題をよく観察しつつ、作図してみましょう。図形の問題なので、作図すると角や辺の関係を把握しやすくなります。ただし、辺や角の大小関係に気を付けましょう。
公式を早く覚えるためにも、1行目にそのまま公式を書きます。求めたいaについて等式を変形してから、与えられた値を代入します。
問1(1)の解答例
正弦定理より
asinA=bsinBより
a=bsinAsinBb=6 , A=45∘ , B=30∘ より
a=6sin45∘sin30∘=6⋅1√212=6⋅2√2=6√2値を代入するのは、aについて変形する前でも構いません。とにかく計算ミスの少ないやり方を自分なりに見つけましょう。
問1(1)のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
学習したての頃は公式がうろ覚えであることが多い。できるだけ早く覚えるには、公式を使いながら覚えるのがコツ。
具体的には、問題を解くときに
- 公式を書く
- その文字に対応する数を代入する
の順に解いていくと良い。この手順で問題を解いていくと、割と短時間で公式を覚えることができる。
また、文字と数の対応関係も分かり、公式の使い方を要領よくマスターできるのも利点。
分数の中に分数がある計算
正弦定理を使った計算では、三角比が分数なので、分数の中に分数がある計算が出てきます。
仕組みを知っておくと、ちょっとしたコツで簡単に変形できるようになります。例を挙げて計算の仕組みを考えてみましょう。
分母に分数があるときを考えます。分母の分数は割る数になるので、分数を割り算に置き換えることができます。分数の割り算では、割る数の逆数をとって掛け算します。
分母に分数があるとき
325=3÷25=3×52=3×52∴計算過程から分かるように、分母に分数があるとき、分母の分数の逆数を取ります。その結果、分母の分数がひっくり返ったような分数になっています。
このことを知っていれば、わざわざ割り算に戻したり、逆数を取ったりする手間を掛けずに済みます。
分母にある分数はひっくり返せ。割り算に戻したり、分母と分子に数を掛けたりする必要なし。
問1(2)の解答・解説
問1(2)
\triangle ABC において、次の値を求めよ。
\begin{align*} \quad a=2\sqrt{6} \ , \ A=120^{\circ} \end{align*}のとき、外接円の半径 R
問1(2)では、外接円の半径という文言があるので、正弦定理のパターン1を利用する問題です。対角と対辺の関係にある角と辺が与えられています。
1行目にそのまま公式を書きます。求めたいRについて等式を変形してから、与えられた値を代入します。
問1(2)の解答例
正弦定理より
\begin{align*} \quad 2R = \frac{a}{\sin A} \end{align*}より
\begin{align*} \quad R=\frac{a}{2\sin B} \end{align*}a=2\sqrt{6} \ , \ A=120^{\circ} より
\begin{align*} \quad R &=\frac{2\sqrt{6}}{2\sin 120^{\circ}} \\[ 7pt ] &= \frac{2\sqrt{6}}{2 \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}} \\[ 7pt ] &= \frac{2\sqrt{6}}{\sqrt{3}} \\[ 7pt ] &= 2\sqrt{2} \end{align*}立式できたら、ミスのないように計算します。ここでも、分数の分母に分数が出てきます。ただし、解答例のように、等式を変形した後に値を代入すると、分数をひっくり返す作業が不要になります。
問1(2)のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。
分数の中に分数がある計算は、意外と頻繁に出てきます。扱いに慣れておきましょう。
次に、余弦定理を扱った問題を解いてみましょう。