図形と計量|正弦定理・余弦定理、面積への応用について

数学1

正弦定理、余弦定理、面積への応用

円に内接する四角形を扱った問題を解いてみよう

次の問題を考えてみましょう。円に内接する四角形を扱った問題です。こちらも基本的ですが、頻出の問題です。

円に内接する四角形を扱った問題
問2

問2(1)の解答・解説

問2(1)

円に内接する四角形 $ABCD$ において、$AB=2 \ , \ BC=1 \ , \ CD=3 \ , \ DA=2$ であるとき、次の問い答えよ。

$\triangle ABD$ において、$BD^{2}$ を $\cos A$ で表せ。

問2(1)は、BD2をcosAで表す問題です。与えられた条件をもとに作図しましょう。

線分BDは四角形ABCDの対角線ですが、△ABDの一辺でもあります。「△ABDにおいて」や「cosAを使って」という文言から、余弦定理を利用することが予想できます。

問2(1)の解答例

$\triangle ABD$ において、余弦定理より

\begin{align*} \quad BD^{2} &= AB^{2} + AD^{2} -2 \cdot AB \cdot AD \cdot \cos A \\[ 7pt ] &= 2^{2} + 2^{2} -2 \cdot 2 \cdot 2 \cos A \\[ 7pt ] &= 4 + 4 -8 \cos A \\[ 7pt ] &= 8-8 \cos A \end{align*}

したがって

\begin{align*} \quad BD^{2} = 8-8 \cos A \end{align*}
第2問(1)の作図
問2の図

公式に使われている文字と変わっていても惑わされず、公式を使いこなせるようになっておきましょう。

問2(2)の解答・解説

問2(2)

円に内接する四角形 $ABCD$ において、$AB=2 \ , \ BC=1 \ , \ CD=3 \ , \ DA=2$ であるとき、次の問い答えよ。

$\triangle BCD$ において、$BD^{2}$ を $\cos C$ で表せ。

問2(2)も(1)と同じように、△BCDにおいて余弦定理を利用します。

問2(2)の解答例

$\triangle BCD$ において、余弦定理より

\begin{align*} \quad BD^{2} &= BC^{2} + CD^{2} -2 \cdot BC \cdot CD \cdot \cos C \\[ 7pt ] &= 1^{2} + 3^{2} -2 \cdot 1 \cdot 3 \cos C \\[ 7pt ] &= 1 + 9 -6 \cos C \\[ 7pt ] &= 10-6 \cos C \end{align*}

したがって

\begin{align*} \quad BD^{2} = 10-6 \cos C \end{align*}
第2問(1)の作図
問2の図

問2(1)と同じように、公式と使っている文字が変わっても立式できるようにしておきましょう。

問2(3)の解答・解説

問2(3)

円に内接する四角形 $ABCD$ において、$AB=2 \ , \ BC=1 \ , \ CD=3 \ , \ DA=2$ であるとき、次の問い答えよ。

$\cos A$ と $\sin A$ の値を求めよ。

問2(3)は、cosAとsinAの値をそれぞれ求める問題です。問2(1),(2)では、ともにBD2を求めたので、等式を作ることができます。そこから式変形していきます。

問2(3)の解答例 1⃣

\begin{align*} &\quad BD^{2} = 8-8 \cos A \\[ 7pt ] &\quad BD^{2} = 10-6 \cos C \end{align*}

より

\begin{align*} &\quad 8-8 \cos A = 10-6 \cos C \\[ 7pt ] &\quad 4-4 \cos A = 5-3 \cos C \end{align*}

よって

\begin{align*} \quad 4 \cos A-3 \cos C = -1 \end{align*}
第2問(1)の作図
問2の図

とりあえず、(1),(2)の結果を利用しましたが、このままでは先に進めません。そこで図をもう一度よく観察します。

∠Aと∠Cは、円に内接する四角形の対角です。これらの和は180°です。このことを利用すると、∠Cを∠Aで表すことができます。

円に内接する四角形の対角の和と、三角比の相互関係を利用して変形します。

問2(3)の解答例 2⃣

\begin{align*} \quad &\vdots \\[ 7pt ] \quad 4 \cos A &-3 \cos C = -1 \end{align*}

$C = 180^{\circ}-A$ より

\begin{align*} &\quad 4 \cos A-3 \cos C = -1 \\[ 7pt ] &\quad 4 \cos A-3 \cos \left( 180^{\circ}-A \right) = -1 \\[ 7pt ] &\quad 4 \cos A-3 \left( -\cos A \right) = -1 \\[ 7pt ] &\quad 4 \cos A+3 \cos A = -1 \\[ 7pt ] &\quad 7 \cos A= -1 \\[ 7pt ] &\quad \cos A= -\frac{1}{7} \end{align*}
第2問(1)の作図
問2の図

やっとcosAの値を求めることができました。ここからさらにsinAの値を求めます。三角比の相互関係を利用します。

問2(3)の解答例 3⃣

\begin{align*} \quad &\vdots \\[ 7pt ] \quad \cos A &= -\frac{1}{7} \end{align*}

また

\begin{align*} \quad \sin^{\scriptsize{2}}{A} + \cos^{\scriptsize{2}}{A} = 1 \end{align*}

より

\begin{align*} \quad \sin^{\scriptsize{2}}{A} = 1 – \cos^{\scriptsize{2}}{A} \end{align*}

よって

\begin{align*} \quad \sin^{2}{A} &= 1-\left( -\frac{1}{7} \right)^{2} \\[ 7pt ] &= 1-\frac{1}{49} \\[ 7pt ] &= \frac{48}{49} \end{align*}

ここで

\begin{align*} \quad 0^{\circ} \lt A \lt 180^{\circ} \end{align*}

より

\begin{align*} \quad \sin A \gt 0 \end{align*}

したがって

\begin{align*} \quad \sin A = \frac{4\sqrt{3}}{7} \end{align*}
第2問(1)の作図
問2の図

さいごにsinAの値の吟味を忘れないようにしましょう。だいぶ長くなったので、流れをまとめておきます。

円に内接する四角形でcosA,sinAの求め方

  1. 四角形の対角線で2つの三角形を作る。
  2. それぞれの三角形において、対角線の長さを求める式を余弦定理で導出する。
  3. 導出した2式から等式を作り、cosAについて解く。このとき対角の和を利用する。
  4. 三角比の相互関係からsinAを求める。

問2(3)は初見であれば難しく感じるかもしれません。しかし、(1)からの一連の流れは入試でも頻出なので何とかマスターしたいところです。

問2(4)の解答・解説

問2(4)

円に内接する四角形 $ABCD$ において、$AB=2 \ , \ BC=1 \ , \ CD=3 \ , \ DA=2$ であるとき、次の問い答えよ。

四角形 $ABCD$ の面積を求めよ。

問2(4)は、四角形ABCDの面積を求める問題です。すでに対角線BDで2つの三角形に分割されているので、四角形ABCDの面積が2つの三角形の和に等しいことを利用します。

問2(4)の解答例 1⃣

四角形 $ABCD$ の面積を $S$ とすると

\begin{align*} \quad S = \triangle ABD + \triangle BCD \end{align*}

より

\begin{align*} S &= \frac{1}{2} \cdot AB \cdot AD \cdot \sin A + \frac{1}{2} \cdot BC \cdot CD \cdot \sin C \\[ 7pt ] &= \frac{1}{2} \cdot 2 \cdot 2 \cdot \sin A + \frac{1}{2} \cdot 1 \cdot 3 \cdot \sin C \\[ 7pt ] &= 2 \sin A + \frac{3}{2} \sin C \end{align*}
第2問(1)の作図
問2の図

ここで気付いたと思いますが、sinCの値が分かりません。しかし、ここでも対角の和を利用すれば、sinCをsinAで表すことができます。

問2(4)の解答例 2⃣

\begin{align*} \quad &\vdots \\[ 7pt ] \quad &= 2 \sin A + \frac{3}{2} \sin C \end{align*}

ここで

\begin{align*} \quad C = 180^{\circ}-A \end{align*}

より

\begin{align*} \quad S &= 2 \sin A + \frac{3}{2} \sin C \\[ 7pt ] &= 2 \sin A + \frac{3}{2} \sin \left( 180^{\circ}-A \right) \\[ 7pt ] &= 2 \sin A + \frac{3}{2} \sin A \\[ 7pt ] &= \frac{7}{2} \sin A \end{align*}

$(3)$ の結果から

\begin{align*} \quad \sin A = \frac{4\sqrt{3}}{7} \end{align*}

より

\begin{align*} \quad S &= \frac{7}{2} \cdot \frac{4\sqrt{3}}{7} \\[ 7pt ] &= 2\sqrt{3} \end{align*}
第2問(1)の作図
問2の図

(3)の結果を利用するので、計算ミスに注意しましょう。

問2のポイントと解答例をまとめると以下のようになります。計算のやり方が若干異なるかもしれませんが、方針に変わりはありません。自分なりに負担が少なくミスをしにくい計算のやり方を研究して下さい。

円に内接する四角形を扱った問題の解答例
問2のポイントと解答例

正弦定理や余弦定理に埋もれがちですが、三角比の相互関係の利用頻度は意外と高いです。しっかりと使いこなせるようにしておきたいところです。

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さいごに、もう一度、頭の中を整理しよう

  • 三角形の内接円の半径は、三角形の面積を利用して求める。
  • 円に内接する四角形において、対角の和は180度。
  • 対角の和と三角比の相互関係はセットで使おう。
  • 円に内接する四角形の面積は、対角線で切った2つの三角形の面積の和で求める。
  • 円に内接する四角形では、余弦定理を使うことを念頭に。