図形と方程式|円の接線の求め方4パターン【保存版】

数学2

図形と方程式 円、円と直線、2つの円

これまで円の接線の求め方を学習してきました。今回は、円の接線の求め方を整理してみましょう。

接線の接線の求め方にはいくつかあります。円の接線を求める問題は入試でも頻出なので、問題で与えられる条件に応じて使い分けられるようになっておきましょう。

2次方程式の解や点と直線の距離など、色々な知識を必要とします。関連のある分野についての復習を怠らないようにしましょう。

円の接線の求め方は4パターン

円の接線の求め方は、以下の4パターンです。

円の接線の求め方

パターン1.円の接線の公式を利用する

パターン2.中心と接線の距離と、円の半径との関係を利用する

パターン3.接線と円の半径との関係を利用する

パターン4.接点と重解の関係を利用する

問題で与えられた条件に応じて、これらを使い分けられるようにしましょう。

円の接線の公式を利用する

1つ目のパターンでは、円の接線の公式を利用します。

ちなみに円の接線の公式は以下のようになります。円の接線の方程式は、円の方程式に似ているので比較的覚えやすい式です。

円の接線の方程式

x2+y2=r2 上の点 P(x1 , y1) における接線の方程式は

x1 x+y1 y=r2

ただし

x12+y12=r2

中心以外の点を原点とする円の接線の方程式は、以下のようになります。

円の接線の方程式(一般化)

円の方程式を

(xa)2+(yb)2=r2

とする。

この円上の点 P(x1 , y1) における接線の方程式は

(x1a)(xa)+(y1b)(yb)=r2

なお、a=0 , b=0 のとき

x1x+y1y=r2

となり、①式は原点を中心とする円の接線の方程式を含むことが分かる。

カッコの中の式が似ているので注意しましょう。一方は定数になりますが、他方は変数x,yが用いられているので、ちゃんと1次関数の式になります。

また、この公式(①式)は原点を中心とする円の接線の方程式も含むので、こちらの式を覚えておけば応用が利くでしょう。

接線の公式を利用するための条件

接線の公式を利用するために必要な条件は2つです。必要な条件とは、円の方程式接点の座標の2つです。

円の接線の公式を利用するための条件(2つ)

  • 円の方程式
  • 接点の座標

公式を利用した解法が最も楽な解法かもしれませんが、公式だけを覚えただけではメリットは少ないかもしれません。

出題されるとすれば、図形の平行移動なども併せて出題される可能性があるからです。そのためには、公式の導出過程をきちんと理解しておくことが大切です。

公式の導出過程は前回の記事(円上の点における接線について)で解説しているので、そちらを参考にしましょう。

接線と円の半径との関係を利用する

2つ目のパターンでは、接線と円の半径との関係を利用します。この関係を利用するには、円の中心と接点の座標が必要です。

円の接線の公式を利用するための条件(2つ)

  • 円の中心の座標
  • 接点の座標

例題を解きながら確認しましょう。

例題

円の中心を C(3 , 3)、接点を A(1 , 0) とする。

A における接線の方程式を求めよ。

接線と円の半径との関係とは、具体的には接線と円の半径は垂直である関係のことです。この関係を利用すれば、接線の傾きを求めることができます。

例題の解答例

半径 CA の傾きは

031(3)=32

求める接線の傾きは半径 CA に垂直であるので

23

接線の方程式は、点 A を通り、傾きが 2/3 である直線の方程式であるので

y0=23{x(1)}

よって

y=23x+23

接線の傾きを求めるには、垂直な2直線の傾きの関係を利用します。

2直線の垂直条件

2 直線

y=m1x+n1y=m2x+n2

が垂直であるとき

m1m2=1

が成り立つ。

また、2 直線

a1x+b1y+c1=0a2x+b2y+c2=0

が垂直であるとき

a1a2+b1b2=0

が成り立つ。

また、接線の方程式を求めるには、傾きと1点の座標を利用します。公式があるので、それに代入するだけです。

直線の方程式②

[1] 点 (x1 , y1) を通り、傾きを m とする直線の方程式は

yy1=m(xx1)

[2] 点 (x1 , y1) を通り、x軸に垂直な直線の方程式は

x=x1

円の中心と接点の座標が最初から与えられている場合、このパターンを利用することが多いかもしれません。計算も簡単なので少ない負担で解くことができるでしょう。

中心と接線の距離と、円の半径との関係を利用する

3つ目のパターンでは、中心と接線の距離と、円の半径との関係を利用します。この関係を利用するには、2つ目のパタンと同様に円の中心と接点の座標が必要です。

中心と接線の距離と、円の半径との関係を利用するための条件(2つ)

  • 円の中心の座標
  • 接点の座標

例題を解きながら確認しましょう。

例題

円の中心を C(3 , 3)、接点を A(1 , 0) とする。

A における接線の方程式を求めよ。

中心と接線の距離と、円の半径との関係とは、具体的には中心と接線の距離が、円の半径に等しいという関係のことです。この関係を利用すれば、接線の傾きを求めることができます。

例題の解答例

A(1 , 0) を通り x 軸に垂直な直線は求める接線でない。

このとき、接線の傾きを m とすると、接線の方程式は

y=m(x+1)

すなわち

mxy+m=0

と表せる。

また、円の半径は 2 点間の距離から

{1(3)}2+(03)2=13

円の中心 C(3 , 3) と接線の距離が円の半径に等しいので

|3m3+m|m2+1=13

これを解くと

|2m3|m2+1=13|2m3|=13(m2+1)(2m3)2=13(m2+1)4m2+12m+9=13m2+139m212m+4=0(3m2)2=03m2=0m=23

よって

y=23(x+1)=23x+23

複雑な計算に見えますが、それほど難しくありません。絶対値と根号を外すために、両辺を2乗してから両辺を整理するのが計算のポイントです。

また、最初から接点が特定されているので、傾きmの値が1つだけに定まることを知っておけば不安なく利用できるでしょう。

円の半径は、中心と接点の距離から得られます。

平面上の2点間の距離 1⃣

座標平面上の 2A (x1 ,y1) , B (x2 , y2) 間の距離 AB

AB=(x2x1)2+(y2y1)2

また、円と接線の距離は、点と直線の距離の公式から得られます。

点と直線の距離

(x1 , y1) と直線 ax+by+c=0 の距離 d

d=|ax1+by1+c|a2+b2

2つ目と3つ目のパターンは必要な条件が同じですが、一般的には、3つ目のパターンを利用すると簡単に解けることが多いです。入試レベルでも、3つ目のパターンを意識した問題が多く出題されます。

円の中心と接点の座標が与えられた場合、「接線⊥半径」または「中心と接線の距離=半径」を利用しよう。ただし、最優先は「中心と接線の距離=半径」のパターン。

接点と重解との関係を利用する

4つ目のパターンでは、接点と重解との関係を利用します。

接点と重解の関係とは、具体的には接線x座標が2次方程式の重解に等しいという関係のことです。この関係を利用すれば、接線の傾きを求めることができます。

ただし、これまでのパターンとは問題で与えられる条件が異なるので注意しましょう。

例題

円の方程式を

(x+3)2+(y3)2=13

とするとき、点 A(1 , 0) における接線の方程式を求めよ。

例題を見ると分かるように、円の方程式と接点の座標が与えられていることが条件です。

接点と重解の関係を利用するための条件(2つ)

  • 円の方程式
  • 接点の座標

接線の傾きを求めるために、円と接線の共有点が接点の1つだけであることを利用します。

共有点、すなわち接点のx座標は、円と接点の方程式を連立することで得られます。円と接点の方程式を連立すると、xについての2次方程式を導出することができます。

ただし、ここでは接点のx座標を求める必要がないので、判別式を利用します。2次方程式の判別式の値が0になるとき、2次方程式は重解をもちます。

2次方程式が重解をもつとき、円と接線の共有点は1つだけになります。このことを利用すれば、接線の傾きを求めることができます。

実際に例題を解いてみましょう。

例題の解答例

A(1 , 0) における接線の方程式を

円の方程式を

y=m(x+1)

とおいて、これを円の方程式に代入すると

(x+3)2+{m(x+1)3}2=13

これを整理すると

(m2+1)x2+2(m23m+3)x+m26m+5=0

この 2 次方程式の判別式を D とすると

D4=(m23m+3)2(m2+1)(m26m+5)=9m212m+4

円と接線は点 A で接するので

D=0

よって

9m212m+4=0

これを解くと

m=23

よって

y=23(x+1)=23x+23

4つ目のパターンでは、共有点の個数が、2次方程式の解の個数に対応していることを利用します。この性質は、図形の関係と方程式の解とをつなぐ大切な性質です。

ただし、円の方程式が絡む場合、計算が非常に面倒になることが多いのが欠点です。円が絡む問題では、判別式を利用するパターンを利用するのは最終手段にしましょう。

判別式を導出するとき、1次の項の係数が偶数であれば、基本的な公式ではなく次の公式を利用しましょう。

判別式の定義 2⃣

2 次方程式

ax2+bx+c=0

の解は

x=b±b24ac2a

ここで

D=b24ac

とおく。

b=2b のとき

D=(2b)24ac=4b24ac

両辺を 4 で割ると

D4=b2ac

また、判別式を整理するとき、3項式の乗法公式を利用します。

3項式の乗法公式

(a+b+c)2=a2+b2+c2+2ab+2bc+2ca

円が絡む問題では、判別式を利用するのは最終手段にしよう。

複数の方法で解ける、最適な解法を選択する

円の接線を求めると言っても、色々な方法で解くことができます。ただし、与えられた条件によっては使えない方法もあります。

また、複数の解決方法を知っているだけでは、最適な解法を選択できずに時間を掛けてしまうかもしれません。

試験では、限られた時間で問題を解かなければなりません。時間内で解くためには、どんな条件であれば利用できるのかを知っておくことも必要です。

複数の方法で解けることはもちろんですが、最適な解法を選択できるところまでを意識して学習しましょう。

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さいごにもう一度まとめ

  • 円の接線の公式を利用できれば、最短で解ける。ただし、円の方程式と接点の座標が必要。
  • 接線と半径の関係や、中心と接線の距離と半径との関係を利用するには、中心と接点の座標が必要。
  • 接点と重解の関係を利用するには、判別式や3項式の展開の公式を知っておくことが必要。
  • 円が絡む問題では、中心と接線の距離の公式を利用する頻度が高いのでしっかり覚えておこう。