数と式|平方根について
今回は平方根について学習します。中学では平方根だけを単体で扱っていましたが、高校では平方根を含む多項式も扱うようになります。
中学でも分母の有理化を学習しましたが、高校では少しばかり工夫が必要になります。
平方根の定義や性質、分母の有理化
平方根の定義
平方根とは、数に対して、平方(2乗)するともとの値に等しくなる数のことです。
たとえば、4の平方根は-2,2です。2の方が正の平方根、-2の方が負の平方根です。
正の平方根と負の平方根は、平方するとどちらも4になります。ちなみに、平方根が1つだけになるのは、0の平方根だけです。
平方根で使う記号
次に、3の平方根を考えてみましょう。
3の平方根は、2乗すると3に等しくなる数のことですが、すぐには思いつきそうにありません。なぜなら、3の平方根は1.73…となる無理数だからです。
無理数とは、循環しない無限小数であり、かつ分数で表せない数のことです。
無理数を何度も記述するのは苦労するので、根号(ルート)という記号を用いて表します。
3の平方根であれば、以下のように表せます。
3の平方根
$3$ の平方根は
\begin{align*} \quad -\sqrt{3} \ , \ \sqrt{3} \end{align*}根号を使うのは無理数となる場合です。根号を使わずに済む場合もあります。
たとえば、2乗して4になる数である4の平方根は±2です。平方根が有理数で存在する場合、根号を使わずに表します。
平方根の定義や記号のことをまとめると以下のようになります。
負の数の平方根について
負の数には平方根が存在しません。2乗して負の数になることは、実数の範囲で起こらないからです。
たとえば、負の数-4の平方根を考えてみましょう。
-4の平方根は、2乗すると-4に等しくなる数のことです。しかし、2乗(=同符号どうしの乗算)して-4という負の数が得られることはありません。
ある実数aについて、a2≧0が成り立つ。「実数を2乗すると、必ず0以上の数になる」は証明問題などで良く利用される性質。
なお、「負の」平方根は存在しますが、「負の数の」平方根は存在しません。間違いやすいので気を付けましょう。
平方根の性質その1
平方根は2つの性質を持っています。この性質を上手く利用すれば、根号を1つにまとめたり、根号の中の数をできる限り小さくしたりすることができます。
易しい演習問題から始めて、しっかりマスターしましょう。
1つ目の性質は、平方根は根号を使って表していても、実際には根号なしで表せる場合があります。無理数を有理数で表せる場合があるということです。計算でも良く使う性質です。
$\sqrt{{a}^{2}} = a$ は正しいのか
22の正の平方根 $\sqrt{{2}^{2}}$ について考えてみましょう。
aの平方根は $\pm \sqrt{a}$ で、正の平方根 $+ \sqrt{a}$ と負の平方根 $- \sqrt{a}$ の2つある。平方根の正負は、根号の前の符号で判断しよう。
22=4であるので、22の正の平方根は、4の正の平方根と言い換えることができます。
4の正の平方根は、2乗して4になる数のうち正の方なので2です。今の一連の流れを数式で書き換えていくと、以下のようになります。
22の正の平方根
\begin{align*} \sqrt{2^2} &= \sqrt{4} \\[ 7pt ] &= 2 \\[ 10pt ] \therefore \sqrt{2^2} &=2 \quad \cdots \text{①} \end{align*}①式から、根号と指数が消えて2乗する前の数2が残ったことが分かります。ある数の2乗の平方根は、2乗する前のある数になりそうです。
a2の正の平方根
$a \gt 0$ のとき
\begin{align*} \quad \sqrt{a^2} =a \end{align*}次は、(-2)2の正の平方根 $\sqrt{{\left( -2 \right)}^{2}}$ について考えてみましょう。
先の例が記憶に残っていれば、$\sqrt{{\left( -2 \right)}^{2}} = -2$ としたいですが、とりあえず順を追って確認してみましょう。
(-2)2=4であるので、(-2)2の正の平方根は、4の正の平方根と言い換えることができます。
4の正の平方根は、2乗して4になる数のうち正の方なので2です。今の一連の流れを数式で書き換えていくと、以下のようになります。
(-2)2の正の平方根
\begin{align*} \sqrt{\left(-2 \right)^2} &= \sqrt{4} \\[ 7pt ] &= 2 \\[ 10pt ] \therefore \sqrt{\left(-2 \right)^2} &=2 \quad \cdots \text{②} \end{align*}②式から、根号と指数が消えたところまでは先ほどの例と同じです。しかし、2乗する前の負の数-2が残らず、正の数2が残りました。
このことから、初めに予想した $\sqrt{{\left( -2 \right)}^{2}} = -2$ は間違いだということが分かります。これは、正の平方根 $\sqrt{{\left( -2 \right)}^{2}}$ であるので、根号なしでも正の数として扱うところをそうしなかったからです。
このような失敗は、実際に計算できる場合であれば起こることは少ないですが、文字になると面白いように間違います。ある実数aについて、$\sqrt{{a}^{2}} = a$ とする人が意外と多いのです。
実数aが正の数であれば正しいですが、負の数であれば間違いです。実数の正負が異なったとしても、正の平方根なので、根号がなくなったとしても正の数でなければなりません。
これを解決することができるのは、絶対値の記号です。先ほどの例であれば、絶対値の記号を使うことで、累乗の計算なしで表せます。
(-2)2の正の平方根
\begin{align*} \sqrt{\left(-2 \right)^2} &= \left| -2 \right| \\[ 7pt ] &= -\left(-2 \right) \\[ 7pt ] &= 2 \end{align*}実数aを用いて一般化すると以下のようになります。
a2の正の平方根
実数 $a$ について
\begin{align*} \quad \sqrt{a^2} = \left| a \right| \end{align*}ただし、根号を外した後は、絶対値を実数 $a$ の正負に合わせて外す。
このように絶対値の記号を使うことで、実数aの正負を気にしないで根号を外すことができます。
平方根の性質をまとめると以下のようになります。
正の平方根は、根号を外しても正の数。未知の数や式では、根号を外すとき、絶対値の記号を使って正の数として扱おう。
次は、平方根の性質の2つ目です。計算によく利用するので使いこなせるようにしておきましょう。
平方根の性質その2
平方根の性質の2つ目は、平方根の積や商についての性質です。平方根には正負があるので、符号にも注意しましょう。
平方根の積
2つの平方根の積を1つの根号だけで表せます。
平方根の積
\begin{align*} &\quad \sqrt{a} \sqrt{b} = \sqrt{ab} \\[ 7pt ] &\qquad (a \gt 0 \ , \ b \gt 0 ) \end{align*}証明
$x = \sqrt{a} \ , \ y = \sqrt{b}$ とおくと
また、${x}^{2} = a \ , \ {y}^{2} = b$ より
\begin{align*} \quad x^{2} y^{2} = ab \end{align*}指数法則を利用すると
\begin{align*} \quad \left(xy \right)^{2} = ab \end{align*}これより、$xy$ を $2$ 乗すると $ab$ になるので、$xy$ は $ab$ の平方根、すなわち $xy = \sqrt{ab}$ である。
よって
\begin{align*} \quad \sqrt{a} \sqrt{b} = \sqrt{ab} \end{align*}「aの平方根とbの平方根の積は、aとbの積の平方根に等しい」ことが成り立ちます。
平方根の商
2つの平方根の商を1つの根号だけで表せます。
平方根の商
\begin{align*} &\quad \frac{\sqrt{a}}{\sqrt{b}} = \sqrt{\frac{a}{b}} \\[ 7pt ] &\qquad (a \gt 0 \ , \ b \gt 0) \end{align*}証明
$x = \sqrt{a} \ , \ y = \sqrt{b}$ とおくと
\begin{align*} \quad \frac{x}{y} = \frac{\sqrt{a}}{\sqrt{b}} \end{align*}また、${x}^{2} = a \ , \ {y}^{2} = b$ より
\begin{align*} \quad \frac{{x}^{2}}{{y}^{2}} = \frac{a}{b} \end{align*}指数法則を利用すると
\begin{align*} \quad \left(\frac{x}{y} \right)^{\scriptsize{2}} = \frac{a}{b} \end{align*}これより、$x/y$ を $2$ 乗すると $a/b$ になるので、$x/y$ は $a/b$ の平方根、すなわち $x/y = \sqrt{a/b}$ である。
よって
\begin{align*} \quad \frac{\sqrt{a}}{\sqrt{b}} = \sqrt{\frac{a}{b}} \end{align*}「aの平方根とbの平方根の商は、aとbの商の平方根に等しい」ことが成り立ちます。
商については、1つの根号だけで表す(右辺)よりも、分母と分子にそれぞれ根号がついた形(左辺)で表す方が多い。
有理数と平方根の積
$k\sqrt{a}$ は、有理数kと平方根 $\sqrt{a}$ の積を表します。有理数と無理数の積なので計算しません。
平方根を文字のように扱い、有理数、平方根の順に並べるように記述します。乗算を簡略化したときと同じ要領で記述します。
有理数と平方根の積
\begin{align*} &\quad \sqrt{k^{2} a} = k \sqrt{a} \\[ 7pt ] &\qquad (a \gt 0 \ , \ b \gt 0) \end{align*}証明
\begin{align*} \quad \sqrt{ab} = \sqrt{a} \sqrt{b} \end{align*}が成り立つので
\begin{align*} \quad \sqrt{k^{2} a} = \sqrt{k^2} \sqrt{a} \end{align*}ここで、$k \gt 0$ のとき
\begin{align*} \quad \sqrt{k^{2}} = k \end{align*}であるので
\begin{align*} \quad \sqrt{k^{2}} \sqrt{a} = k \sqrt{a} \end{align*}よって、$a \gt 0 \ , \ k \gt 0$ のとき
\begin{align*} \quad \sqrt{k^{2} a} = k \sqrt{a} \end{align*}平方根の性質の2つ目をまとめると以下のようになります。条件も併せて覚えましょう。
他にも公式として挙げられるものもあるが、上記の性質からの派生になる。まずは上記の性質を使いこなせるようになろう。
次は平方根を扱うときに頻出の「分母の有理化」についてです。分母の有理化では、平方根の性質を利用します。
分母の有理化
分数の分母が根号を含む数や式であるとき、分母に根号のない形で表すのが一般的です。分母に根号のない形に分数を変形することを分母の有理化と言います。
分母の有理化が面白いのは、分数の見た目が変わるだけで、分数そのものの値は変わらないことです。変形したい分数に対して、分母と分子が同じ分数、つまり1を掛けています。そういうわけで、もとの数の値は変化しません。
もとの数の値は変化しないが、分数の見た目が変わる変形が分母の有理化。
最後に、平方根を扱った基本的な問題を解いてみましょう。