数学2
今回は、円によって切り取られる線分の長さについて学習しましょう。主に、円と直線を扱っているときに出てくる話題です。
円だけでなく、二等辺三角形や直角三角形などの性質も利用するので、図形の性質を確認しながら学習しましょう。
円を扱った問題は入試では頻出で、意外と難易度の高い問題が多いのが特徴です。何度も演習を重ねておきましょう。
円と直線(弦)
円の中心から直線(弦)へ引いた垂線
円と直線が異なる2点で交わるときを考えます。このとき、2つの共有点を結んだ線分のことを弦と言います。その弦に向けて円の中心から垂線を引くと、垂線は弦を2等分することが分かっています。
図のように、円の中心Oから弦ABへ垂線を下ろし、その足をMとします。
弦の両端A,Bと円の中心Oを結んだ線分OA,OBの長さは、円の半径に相当します。ですから、円の中心Oと2つの共有点A,Bでできる△OABは、二等辺三角形になります。
また、△OABは、垂線OMで2つの直角三角形(△OAM,△OBM)に分割されています。2つの直角三角形において、斜辺OA,OBが円の半径に等しく、かつ垂線OMが共通なので、斜辺と他の一辺がそれぞれ等しくなります。その結果、2つの直角三角形は合同となります。
2つの直角三角形が合同となるので、弦ABが垂線OMによって2等分されていることが分かります。
垂線が弦を2等分することの証明
\begin{align*}
&\text{$AB \perp OM$ より、$\triangle OAM$ と $\triangle OBM$ は直角三角形。} \\[ 5pt ]
&\text{$\triangle OAM$ と $\triangle OBM$ において} \\[ 5pt ]
&\quad OA=OB \quad \text{(円の半径)} \\[ 5pt ]
&\quad OM \ \text{共通} \\[ 5pt ]
&\text{となり、斜辺と他の一辺がそれぞれ等しいので、} \\[ 5pt ]
&\quad \triangle OAM \equiv \triangle OBM \\[ 5pt ]
&\text{よって、} \\[ 5pt ]
&\quad AM=BM \\[ 5pt ]
&\text{これより、垂線 $OM$ は弦 $AB$ を2等分する。}
\end{align*}
弦ABに円の中心Oから垂線OMを下ろしたとき、垂線OMが弦ABを2等分するので、それらの交点Mは弦ABの中点となっています。
弦ABの長さを求めるには、直角三角形を利用します。どちらかの直角三角形において、三平方の定理を利用すれば、弦の半分の長さ(AMまたはBMの長さ)を求めることができます。そして、求めた長さを2倍すれば、弦ABの長さとなります。
弦の長さ
\begin{align*}
&\text{$\triangle OAM$ において、三平方の定理より} \\[ 5pt ]
&\quad AM= \sqrt{OA^{\scriptsize{2}}-OM^{\scriptsize{2}}} \\[ 5pt ]
&\text{となるので、弦の長さは} \\[ 5pt ]
&\quad AB=2AM=2 \sqrt{OA^{\scriptsize{2}}-OM^{\scriptsize{2}}}
\end{align*}
この弦の長さが、円と直線が異なる2点で交わるときに円によって切り取られる線分の長さとなります。
以上を踏まえて、例題を解いてみましょう。
円が直線から切り取る線分の長さを求めてみよう
例題
円 $x^{\scriptsize{2}}+y^{\scriptsize{2}}=16$ が直線 $y=x+2$ から切り取る線分の長さを求めよ。
図形を扱った問題なので、計算だけで済ませるのではなく、作図してから考えましょう。
例題の解答・解説
図示すると以下のようになります。
円と直線が異なる2点で交わっています。2つの交点をA,Bとします。また、円の中心から弦ABに垂線を下ろし、その足をMとします。点Mは弦ABの中点です。
たとえば、△OAMにおいて三平方の定理を利用するためには、少なくとも線分OA,OMの長さを必要とします。線分OAの長さは、円の半径からすぐに分かります。
線分OMの長さについては、円の中心と直線の距離に等しいことを利用します。点と直線の距離の公式に代入して求めます。
例題の解答例 1⃣
円と直線の交点を $A \ , \ B$ とし、線分 $AB$ の中点を $M$ とする。
線分 $OM$ の 長さは、円の中心 $(0 \ , \ 0)$ と直線 $y=x+2$ の距離に等しいので、
\begin{align*}
\quad OM= &\frac{|0-0+2|}{\sqrt{ 1^{\scriptsize{2}}+(-1)^{\scriptsize{2}} }} \\[ 5pt ]
= &\sqrt{2}
\end{align*}
また、円の半径は $4$ である。
これで直角三角形の2辺の長さが揃いました。あとは弦の長さを求めるだけです。
例題の解答例 2⃣
\begin{align*}
&\quad \vdots \\[ 5pt ]
&\text{$OA=4 \ , OM=\sqrt{2}$ より}
\end{align*}
\begin{align*}
\quad AB &= 2AM \\[ 5pt ]
\quad &= 2\sqrt{OA^{\scriptsize{2}}-OM^{\scriptsize{2}}} \\[ 5pt ]
\quad &= 2\sqrt{4^{\scriptsize{2}}-\left(\sqrt{2} \right)^{\scriptsize{2}}} \\[ 5pt ]
\quad &= 2\sqrt{14}
\end{align*}
円の中心から弦へ引いた垂線は、弦の垂直2等分線となることを忘れないようにしましょう。また、点と直線の距離の公式も使いこなせるようにしておきましょう。
円の中心から弦に引いた垂線は、弦を垂直に2等分する。
点と直線の距離の公式において、円の中心が原点の場合、分子のx,yに代入する値は0なので、分子には直線の切片しか残りません。ですから、以下の式の方が使いやすいでしょう。
原点と直線の距離
原点と直線 $ax+by+c=0$ の距離 $d$ は
\begin{equation*}
\quad d=\frac{|c|}{\sqrt{a^{\scriptsize{2}}+b^{\scriptsize{2}} } }
\end{equation*}
例題の別解1
上述の解答例では、図形的に解きましたが、別解では、円と直線の交点の座標を利用して解きます。
円と直線の方程式を連立させて解けば、交点のx座標を求めることができます。x座標が分かれば、y座標も分かります。交点の座標が分かれば、2点間の距離の公式から弦の長さを求めることができます。
ここで注意したいのは、交点の座標を求めると言いましたが、厳密には座標を求めるわけではないということです。求めるのは、2つの交点のx座標の和と積です。
2点間の距離の公式には、2つの交点のx座標の和と積を代入します。この解法であれば、交点のx座標を直接求める必要がないので、計算がだいぶ楽になります。
例題の別解例1
直線の方程式を円の方程式に代入して整理すると
\begin{align*}
&\quad x^{\scriptsize{2}}+(x+2)^{\scriptsize{2}}=16 \\[ 5pt ]
&\quad 2x^{\scriptsize{2}}+4x-12=0 \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+2x-6=0 \ \cdots \text{①}
\end{align*}
①の実数解を $\alpha \ , \ \beta$ とすると、解と係数の関係から
\begin{align*}
&\quad \alpha + \beta =-2 \\[ 5pt ]
&\quad \alpha \beta =-6 \\[ 5pt ]
&\text{円と直線の交点の座標は} \\[ 5pt ]
&\quad (\alpha \ , \ \alpha+2) \ , \ (\beta \ , \ \beta+2) \\[ 5pt ]
&\text{であるから、求める線分の長さは} \\[ 5pt ]
&\qquad \sqrt{ (\beta-\alpha)^{\scriptsize{2}} +\bigl\{(\beta+2)-(\alpha+2) \bigr\}^{\scriptsize{2}} } \\[ 5pt ]
&\quad =\sqrt{ 2(\beta-\alpha)^{\scriptsize{2}} } \\[ 5pt ]
&\quad =\sqrt{ 2\bigl\{ (\beta+\alpha)^{\scriptsize{2}}-4\alpha \beta \bigr\} } \\[ 5pt ]
&\quad =\sqrt{ 2\bigl\{ (-2)^{\scriptsize{2}}-4 \cdot (-6) \bigr\} } \\[ 5pt ]
&\quad =2\sqrt{14}
\end{align*}
解と係数の関係は入試でも頻出です。線分の長さだけでなく、定積分などでも利用されます。また、乗法公式を応用しないと式変形できません。式の値を扱った問題では頻出なので、しっかり覚えておきましょう。
乗法公式の応用
\begin{align*}
(\beta-\alpha)^{\scriptsize{2}}= \ &{\beta}^{\scriptsize{2}}-2\alpha \beta+{\alpha}^{\scriptsize{2}} \\[ 5pt ]
= \ &{\beta}^{\scriptsize{2}}+2\alpha \beta+{\alpha}^{\scriptsize{2}}-4\alpha \beta \\[ 5pt ]
= \ &(\beta+\alpha)^{\scriptsize{2}}-4\alpha \beta \\[ 5pt ]
\therefore \ (\beta-\alpha)^{\scriptsize{2}}= \ &(\beta+\alpha)^{\scriptsize{2}}-4\alpha \beta
\end{align*}
例題の別解2
もう1つ別解があります。相似を利用した解法です。
弦は直線上の線分なので、2点間の距離で求めることはできます。しかし、2つの交点のx座標が整数などの簡単な数で得られそうにない場合、この解法や別解1が役に立ちます。
弦を斜辺とし、x,y軸に平行な辺をもつ直角三角形が、直線の傾きをもとにした直角三角形と相似の関係にあることを利用します。
別解1と異なるのは、2つの交点のx座標を必要とするところです。しかし、この解法でもy座標を必要としないので、2点間の距離のときよりも計算が楽になります。
相似を利用した解法
直線 $y=mx+n$ において、傾きが $m$ であることから、
底辺 $1$、高さ $m$ の直角三角形の斜辺の長さは
\begin{equation*}
\quad \sqrt{1^{\scriptsize{2}}+m^{\scriptsize{2}}}
\end{equation*}
と表せる。
直線 $y=mx+n$ 上の2点を $A \ , \ B$ とし、その $x$ 座標を $\alpha \ , \ \beta$ とする。
このとき、線分 $AB$ の長さは
\begin{align*}
&\quad \left|\beta-\alpha \right| : 1 = AB : \sqrt{1^{\scriptsize{2}}+m^{\scriptsize{2}}} \\[ 5pt ]
&\text{よって、} \\[ 5pt ]
&\quad AB = \left|\beta-\alpha \right| \sqrt{1^{\scriptsize{2}}+m^{\scriptsize{2}}}
\end{align*}
この解法を利用した解答例は以下のようになります。
例題の別解例2
直線の方程式を円の方程式に代入して整理すると
\begin{align*}
&\quad x^{\scriptsize{2}}+(x+2)^{\scriptsize{2}}=16 \\[ 5pt ]
&\quad 2x^{\scriptsize{2}}+4x-12=0 \\[ 5pt ]
&\quad x^{\scriptsize{2}}+2x-6=0 \ \cdots \text{①}
\end{align*}
ここで、①の実数解を $\alpha \ , \ \beta$ とする。
①を解くと
\begin{align*}
&\quad x=-1 \pm \sqrt{7} \\[ 5pt ]
&\text{よって、} \\[ 5pt ]
&\quad \alpha=-1 – \sqrt{7} \\[ 5pt ]
&\quad \beta=-1 + \sqrt{7} \\[ 5pt ]
&\text{とすると、求める線分の長さは} \\[ 5pt ]
&\quad AB=\left| \left(-1 + \sqrt{7} \right)-\left(-1 – \sqrt{7} \right) \right| \sqrt{1^{\scriptsize{2}}+1^{\scriptsize{2}}} \\[ 5pt ]
&\qquad \ =2\sqrt{7} \cdot \sqrt{2} \\[ 5pt ]
&\therefore \ AB=2\sqrt{14}
\end{align*}
別解2の解法を利用することはほとんどないかもしれません。ただ、なかなか気付かない視点なので、このような考え方があることを知っておくと良いでしょう。
次は、円に切り取られる線分の長さを扱った問題を実際に解いてみましょう。